104話 新天地への旅路③
その後も景色で飽きる事は無かった。
農村の脇を通り、ラディが風車に興味を持ち。
その説明をしてる内に、行商人の荷馬車を見つけ、説明が混雑し。
ひと段落付いたと思ったら今度は魔動式の荷車とすれ違い、さらに話は続き。
人里離れて落ち着いたと思ったら、今度は野生の魔物たちの日常生活。
木陰の居眠りや、兄弟のじゃれ合い。そして、草食を狩る肉食魔物。
普段のように対峙した時には見られないような様相は、中々新鮮だった。
やがて再び地上の道が明確に見えてきて。
その先ににシントが見えてきたのは夕方頃だった。
緩やかな丘の上にある建物は色合いが落ち着いていて、整然としている。
そんな中に点在する、背の高い塔。おおよその間隔からして区画毎に建ってるといったところだろうか。
そして遠く奥に辛うじて見える綺麗な建物群、そして一際豪華なのが一棟。
そこまで確認できたところで高度が下がり始める。
やがてディエルが着陸、エンの籠操作と合わせて減速していく。
そしてすぐ近くまで着いたところで足を止め、浮遊が解除される。
「ここから私達とは、別ルートになるね。」
降りた所で、エンが籠の中から。
この後、エン達は中央部に行くとの事。自分達とは、ここでお別れだ。
「あぁ。ここまでありがとな。」
そう言い、ディエルの首浦をなでる。ひんやりした鱗の下に、強かな筋肉の感触。
「…それはこっちのセリフだ。この恩は、絶対忘れぬ。」
ディエルのその言葉に続き、エンが言う。
「…セイル達も気を付けてね。原因が分からない以上、ラディ君が『ああなる』可能性も否定できない。
原因が分かればそれが一番いいし、起こらないのが一番いいんだけどね。
けど、もしもの時に同じ思いをしてほしくないから、ラディ君がが暴走した時に止めれる方法、考えておいた方がいいと思う。無茶な話だとは思うけど。」
「そう、だな。分かった。」
言われて咄嗟に思いつくような話でもない。が、思考の片隅には常に据えておこう。
「じゃあね。検査が終わって自由になったら、今度はディエルも一緒に。」
「あぁ、またな。」
「またいつか、一緒に冒険しましょう!」
そう言い再び籠を浮上させ、空へと消えていった。