101話 幕間:魔石
時は少し遡り、医療施設でのとある日の事。
「魔石の質って、そんなに影響するものなので?」
義手の動作テストの合間に、疑問に思った質問をコンジュさんに。
「そもそも魔石の事どれくらい知ってる?」
「ある程度の用法くらいなら。」
「じゃあどうやってできるかは?」
「そこに関しては、は全く。」
「魔石っていうのは凝固した魔力の塊。自然に存在する魔力がふとした拍子に圧で固まり、それを中心に魔力がこびりつき肥大化した物。
だけど見た事がある魔石って模様がついてたんじゃない? 例えばまだら模様とか。」
「確かに以前見た物は、縞模様がありましたね。」
「それが複数の魔力がまじりあってる、今回で言う所の『低質な魔石』ね。
食用の氷に麦でもが混じり込んだようなもの、とでも思えばイメージはつくかな。」
「…大概な状態ですね。」
「外表から魔力が溶け出して、それをエネルギーとして活用するから、層があったりすると出力が一定じゃなくて安定しないの。
設置型の設備とか大きい物なら別途魔力調整のシステムを付ける事で使えるけど、その腕輪の場合はできなくてね。」
「けど、混じり気の無い魔力がそんな自然に集まる事なんて……。」
「普通は、ね。
けど一色の高濃度魔力が発生する状態、体験したでしょ?」
「…魔王、ですか。」
「そ。魔王が発生すればそこに魔力が集まり、同時に支配域として魔王の魔力に染まる。
だから昔話の魔王討伐報酬が豪華なのは、そういう事もありき。」
「なら今回の一件で、いくらか採れるのでは?」
「そーしたいのは山々なんだけどねぇ。
研究資料でもあるから研究者として触れる事はできるだろうけど、個人的に貰い受けるのは無理だろうね。
そもそも前例の魔王と比べると濃度も期間も低く短いから、魔石ができてるかどうかも分からないし。」