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『魔物』の脅威

予想以上に難産でした、諦めて明日投稿にするか迷うくらいには。

戦闘シーンって難しいんじゃァ!(魔物の悲鳴)

「とりあえずライ兄ちゃんは出来るだけ動かないで!」


「わかった!」


 フウカの怒鳴るような力強い言葉に俺は素直に従う。

 歯がゆい思いだが俺にはあの異様な獣と戦う力が無いのは確かだ、ならせめて足手まといにならないよう気を付けなければならない。


 フウカは滑るように移動し至近距離へ近づき、獣はそれを待っていたかの様に前足を振るう。


「当たるか!」


「ヒョゥ……!」


 フウカはその前足が当たる寸前、倒れるように姿勢を低くし遠心力と体重を乗せた蹴りを放った、どうやら今はあの結界のようなものは張られていないようだ。

 その鋭い蹴りは獣の顔面を捉え防ぐこともままならず直撃する。


「ビャァウ……ァァアア!!」


「あぶねっ!」


 しかし痛みになれたのか、それともそういうものだと考えたのか、一切の侮りを捨て憤怒と闘争をその目に移した獣は振っていない片足と後ろ足で跳躍し、その体躯を生かしてフウカにタックルを仕掛ける。

 ギリギリそれを躱したフウカだったが、その表情は暗い。


「くそっ、人間相手ならともかく、やりにくいなぁ!」


「ファァウ!!!」


 今度は獣から仕掛け、その筋肉質で硬そうな身体とは対照的な酷くしなやかな動きでフウカに攻撃をする。

 噛みつき、爪撃、飛び掛かり。その攻撃をフウカは躱し、逸らし、的確にカウンターを決めているが、どうにも獣には効いている感じがしない。


「なんかさっきより硬くなってるんだけど!」


「ファシャァァァァ!!!」


「あーもう!」


 フウカは飛び掛かってきた獣に対して前転し、落下してくる獣の下に移動、逆立ちのような格好から全力で身体を伸ばしその腹に突き立てる。


「ブロロォォォ!」


「これなら流石に効くだろ!」


 獣は激しく嘔吐するように口を大きく開け、濁った声を上げる。

 しかしその口からは何も出てきていない……いや待て、何かが吐き出されているかのような感覚がある。

 奴の身体を覆い治していたのと同じもの、仮に魔力なのだとすると、それが吐き出されているのだろうか。


 普通の生物なら食べ物や胃酸を吐瀉するはずなのに魔力を吐き出す、つまりあの獣の中には魔力が詰まっているという事か?普通の食べ物などではなく。

 そんなの、俺が知っている生き物ではない……。


 魔力ってのは観測者が言うには歪みから生み出される、歪みから生み出される魔力を蓄え生きているあの獣、不思議な結界や首を折られたはずなのに難なく再生したあの様子。


 超常の存在、歪みより生まれた人の抑止力。つまりあれこそがフウカが狩るべき敵。


「『魔物』……。」


「魔物?あれがそうなの?」


 いつの間にか俺の隣に戻ってきたフウカが、俺の呟いた言葉に反応する。


「じゃあ、オレはこれからあれを沢山殺さないといけないって事か?」


「そう、なんだろうね……。」


 あんな化け物を相手にしないといけないなんて、フウカも怖く感じるのだろうか、そう思い横を見てみると、フウカは笑っていた。


「フ、フウ?」


「そっか、なら負けれらんねぇよな!」


 不思議に思い声をかけるが、聞こえていないようだ、自分の世界に入っている。

 というか、喜んでいるのか?ペット願望だけでなく戦闘狂の気もあったと……。


「でもどうするの?倒す手段がないよ。」


「んー……。」


 俺の発言に、冷静に戻ったフウカも困ったように唸る。

 

 外皮が硬いせいで攻撃は通りにくく、致命傷を与えようともすぐに再生してしまう、さっきの全身を使った腹蹴りも精々少しダメージを与えた程度だろう。

 恐らくは再生の原因である魔力も無限ではないはずだ、それならいつかは倒せるのかもしれないが先にフウカの体力が尽きる。


 ……いや待て、魔力なら俺にも宿っているんじゃなかったか?


「フウ、少しの時間で良いからあの魔物をこっちに来させないようにしてくれないかな。そうだね……、向こうの樹の裏にいる。」


「つまり時間稼ぎだな、わかった行ってくる!」


 そういうとフウカは魔物の方へ突っ込んでいき、再び攻防戦を始める。

 その間に俺も宣言通り樹の裏に急いで身を隠し、座り込んで自らの内側に意識を向けた。

 俺の言葉を一切疑う事無く信じてくれたフウカの為にも、絶対に何とかしないといけない。


 右手に伝わる持ち手の振動が樹の裏側で行われている戦いの激しさを物語っているが、今は気を取られないようにしないと。


「確か……こうもやっとした……。」


 俺は今も後ろ側から感じるもやもやとした魔力なのであろう感覚を思い出し、同時に感じながら、それを自らの内にも存在しないか意識を研ぎ澄ませる。


 変化は存外すぐに見つかった、俺の中心、心臓より少し下で濁流のように渦巻いている謎の力の塊。

 確かにそこにある、それを認識した瞬間世界は変わった。


「うわっ……!」


 今まで感じなかったものをはっきりと感じられる、まるで感覚器官が一つ増えたかのような、今までかけていたモザイクを排除したかのような解放感と真後ろから感じられる穢れた魔力の不快感が同時に俺を襲う。


 地面に生える草からは涼し気な魔力が、樹からは暖かな魔力が、そして後ろからは強大で禍々しい魔力と荒々しく、しかしどこか安心する少量の魔力のぶつかり合いが。


 しかしその感覚に酔っている暇はない、感知できても利用できなければ意味が無いのだ。


 俺はすぐに自分の中で渦巻く魔力の奔流に意識を向け、どうにか動かす手段を模索していく。


「……あれ?」


 いや、模索なんていう程苦労はしなかった。まるで長年使い慣れた手足の様に、身体の一部と同じように自由自在に動いた。

 あまりの簡単さに戸惑いを覚えたが、しかし使い方が分からない。


 いや、良い手本がいるじゃないか、既に強く集中しなくても魔力ははっきりと感じられる、ならばわざわざ戦闘に意識を向けない為木陰にいる必要はない。

 俺はフウカと魔物の戦闘現場にすぐさま戻ると、魔物を観察し始めた。


「ライ兄ちゃん! どうにかなりそうか!?」


「ごめん! もう少し待って!」


 フウカは苦しそうだ、体力が尽きてきたのだろうか。

 心配で胸が張り裂けそうだが今は俺に出来る事をしなければ、心を鬼にして魔物を巡る魔力を見定める。


 禍々しく恐ろしい、まるでドブのような汚らしさと忌避感を覚える魔力だが、その根本的な部分は確かに魔力に違いない。

 その魔力は魔物の硬い外皮の中に、膜の様に均等に張られている、あれが魔物が急に硬くなった原因だろうか。


 そしてその魔力の出どころは……。


「フウ! 多分胸を貫けば殺せるよ!」


「胸!? どうやってさ!」


 胸は分厚い筋肉で覆われ、そして魔力の膜も健在だ。

 確かに今のフウカではあれを突き破る手段がない。


 どうにか、どうにかフウカの力を増大させる手段は無いものか……。

 例え魔力を手足の様に扱えようと、手足はどう頑張っても他人に分けることは出来ない。

 他人を手助けすることと他人に分けることは別だ、魔力は手足とは違うから可能なのかもしれないが、まだ俺にはその方法が分からないのである。


 まず『支援』とは何なのだろう、今の俺に出来る事と言ったら魔力を感知する事と、後は覚えたての魔力操作で何とかする事……。

 体表を魔力で覆ってフウカの盾にでもなるか?いや、戦いに邪魔になるだけだろう。


「ファァァウ!!!」


「あっ、うぐッ!」


「フウ!」


 疲労からか若干重心の崩れたフウカに向かって魔物が突進を放つ。

 ギリギリでそれを察知し身体を捻ったものの、左足を巻き込まれおかしな方向に曲がった。


 遂に負傷したフウカの様子を好機と見たのか魔物は今までにも増して苛烈にフウカを攻め立て、それを身体を転がすことで何とか躱している状況だ。


「うぁぁぁああ! だい、じょうぶ! 尻尾がまだある!」


「フウ……!」


 叫んで痛みを誤魔化しながら、まだ扱いなれないであろう尻尾を地面に突き立て折れた片足の代わりに使うフウカ、何がフウカをそこまで駆り立てるのかは分からない。

 けれどまだ子供の、学校に通いながら日々を楽しく過ごしているはずの年齢のフウカが陥っているその現状が非常に痛ましく、見ていられないようなものである事は確かだ。


「俺が、俺が何とかしないと……!」


 半ば使命感から口から自然と声が漏れる。

 どうすればいいか考える、まず第一に必要なのは魔力の伝達だろう、どうにかして俺から魔力をフウカに伝えなければ話にならない。


 俺とフウカの繋がり……いや、深く考えるまでもあるじゃないか。

 右手の持ち手を視線を向ける、何度か手から外そうと思ったけれどどういう訳か肌に張り付いて外すことが出来なかった、まるで呪いの装備のような首輪の持ち手。


 フウカと俺との距離は離れている。

 リードの大部分は透明化し、首輪と持ち手に近い各々で一本分くらいしか目視することが出来ない。

 虚空が首輪と持ち手を繋いでいるように見えるが繋がっている事は事実である……多分。


 魔力をリードに流し込む、俺の身体の中を移動させるのとは感覚が違い動かしにくかったが、まるでホースに水を通すかのようにすんなりと魔力が伝わっていく。


 虚空に消えたリードを伝い魔力が伝搬、リードを伝った魔力が虚空に消えると同時に首輪側のリードから魔力が現れる、この先ほどから虚空と表現している互いを繋ぐ見えない力はポータルのような役割を果たしているのだろうか。

 そうしてフウカの首元にまで俺の魔力が到達した。


 フウカは無我夢中で尻尾も駆使し魔物の猛攻を避け続け、しかし何とか途中で攻撃のチャンスを見つけ身体の回転から足を持ち上げ蹴りを繰り出そうとする、俺はそのことに気が付いたからか無意識に魔力をそこに移動させる。


 そして思わず願う、どうかフウカの攻撃が相手に有効打となりますように、と。


 俺に魔力が変質するむず痒いような感覚が奔る、何かが成功したと確信するよりも先に、目の前で突然起こったその予想外の結果に声が漏れた。


「ブファァァァ!!!」


「……え?」


 フウカは蹴った体勢そのままで固まっている、俺と同じく目と口を開き、目の前の予想だにしない結果と自らの足を交互に見つめる。

 そして俺の存在を認識し、見て叫ぶ。


「凄いよライ兄ちゃん!」


 俺は悟った、しっくり来たという方が正確かもしれない。


 赤く光るフウカの蹴り足と変質した魔力、これこそが『支援』であると。

最初はもっと支援の力に目覚めるまでの過程を長く書き過ぎて1万文字近くになりまして、半分ほどに削った結果、物足りなかったり味気なかったり文章おかしかったり作者おかしかったりしているかもしれませんが、どうかご容赦ください。

そしておかしかったらご指摘お願いいたします。


続きが気になるという方はブックマークを、気に入って頂けたり、期待して下さる方は下の☆☆☆☆☆から評価をして下されば、作者は脳に時限爆弾を植え付けられたまま敵戦艦に突撃し自爆するくらい喜びます。

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