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変わった身体

 いわゆるステータス表示ってやつですね、でも出すのはこれっきりにしたい……。

 ぶっちゃけ書いてて楽しく無いし、そこに書いてある事全部回収しないといけないと思うと筆に錘が乗る思いです。


 まあ、書くんですけどね、最初で最後のステータス表示になる可能性は否めませんが。

 そういえば、と前置きし、俺の腕の中にいた楓果が腕の中から脱出し、指摘をしてくる。


「オレの耳の事も良いけど、ライ兄ちゃんだって同じじゃん。」


「え?」


 楓果は手を伸ばし、俺の顔の方に手を伸ばす。

 それは俺の耳、顔の横の辺りに伸ばされると、途端におかしな感覚が遅い声が漏れる。


「んっ……!」


「ほら、何か長い……、それに柔くてきもちー。」


「ちょ、ちょっとやめて!」


 急いで楓果の手を取り俺の耳に触れているのであろうそれをもとの位置に戻させる。

 そして改めて自分でもそれに恐る恐る触れる。


「何だこれ……、エルフっぽい?」


 明らかに長くなった耳、垂れた耳の先端は少し尖っているが、骨張って硬いわけではなく柔らかいシリコンのような感触。

 しかしそんな感触であるのにも関わらずしっかりと触られているという事は感じられ、しかし痛覚は無いようで強く摘まんでみても痛みは無い。

 痛覚のみに作用する麻酔でも打たれているような、変な感覚だ。


 尖った耳というのは、ファンタジーで良く出てくるエルフによくみられる特徴だろう、垂れ耳なのもいなくはない。


「後ね、ライ兄ちゃんの首に黄色いのある。」


「首?」


 触ってみると少し硬い感触、小指の先程のサイズで大きいかさぶたのようだが少し表面は滑々している。

 肌の中に埋まっているようだが、違和感は感じない。


「俺にもあるよ、ほら。」


 楓果も喉元を見せるように上を見上げ首輪を少し持ち上げると、確かに俺と同じような、しかし緑色の石が埋まっているのが見えた。

 

 あれ、そういえばネックレスが無い。


「楓果、ネックレスは?」


「それがさー、こっちに持って来たいって言ったはずなのに何処にもなかったんだよな。ライ兄ちゃんもじゃない?」


「まず俺は俺の要求を聞いてくれる雰囲気じゃなかったんだけど……そういえば俺も持ってないね。」


 そう、俺が持たされたのは首輪の持ち手と、腰ひもに括り付けてある革袋、そして中に入れた説明書っぽい紙……。


「あ、そうだ、これ読まないと。」


 俺は腰ひもに括り付けてあった革袋止め紐を解くと、中に手を突っ込みそこにあった紙の感触を掴み取り出す。


 革袋内には結構な大きさの空間が広がっているはずだが、すぐに見つかったのは何か俺が知らない仕掛けでもあるからだろう。


「あー! 説明書じゃん、オレも貰ったよー!」


 そういうと楓果は部屋の隅に歩いていき、そこに置いてあった紙を俺の方へ持ってきた。

 恐らく俺のと同じものだろう、まあ確かに俺にだけ説明書を渡すなんて事は無いか。

 忘れてたならこの革袋のように俺に楓果の分も持たせていただろうし、渡されなかったって事は楓果が貰っているのは当たり前だ。


「オレのも見せるからさ、ライ兄ちゃんのも見せてよ。」


「そうだね。いいよ。」


 俺は楓果から説明書を受け取り、部屋の中央にある簡素なテーブルの上に二つを並べた。


 その辺の椅子をテーブルの前に持ってきて、もう一つ椅子を探そうと思ったが見当たらない。

 あくまでこの家は楓果の一人暮らしを想定された家という事なのだろう。


「ライ兄ちゃん座って。」


「え、でもここフウの家だし。」


「いいから。」


 いくら楓果を座らせようと思っても折れそうになかったので、悪いと思いながらも俺が椅子に座る。

 すると俺の膝の上に楓果が乗っかってきた、前が見えずらい。


「フウ?」


「えっへへー。」


 嬉しそうだ、ご満悦の三文字が顔に書いてある。

 まあこのままで良いか。


 さて、俺は二枚の説明書の内、楓果のものを先に手に取る。


「フウのから先に見ていい?」


「どうぞー。」


 許可を得て楓果の説明書に目を通していく。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

放棄対象【サワ() フウカ(楓果)】の基礎能力情報


身体能力『A+』

学習能力『B+』

保有魔力『D-』

成長期待『A+』


放棄対象【サワ() フウカ(楓果)】の特筆能力情報


精神形質『依存』『従属』『強欲』

歪曲概念『獣』

装備概念『首輪』『緑の繋珠』

習熟技術『武道+9』『教養+3』

追記情報

・能力は非常に高いが、『依存』する存在がいなければ能力が著しく低下する。※『依存』先決定済


・能力は非常に高いが、『従属』する存在がいなければ能力が著しく低下する。※『従属』先決定済


・能力は高いが、欲しいものを何としてでも手に入れようとする『強欲』の気質がある。『寛容』を持つ相手と相性が良い。※『寛容』保持者発見済


・対象は『獣』の歪曲概念に晒されており、獣の特徴を引き出すことが出来る。

└・『獣』は以下の能力を対象者に与える。

   身体能力の向上

   嗅覚視覚六感の向上

   バランス感覚の向上

   尻尾の取得

   獣化

   狂暴化

   倫理観の鈍化

   保有魔力の減少


・『首輪』を装着している間、全能力が向上する。首輪は対象の願望の現れであり、理想の主君へ自動的に『持手』が付与される。


・対象に埋め込まれた『緑の繋珠』は、対となる『黄の繋珠』を保持する存在を大まかに感じ取れる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 見た感じ分からないところは無い……事もないが、大まかには全て何となく理解できる。

 『獣』の歪曲概念が何なのか知らないが、恐らくは楓果、いや異世界風にフウカと言った方が良いか、フウカの獣耳や尻尾に関係しているのは書いてある通りだが、それが何なのかはわからない。


 というか、そこよりも、だ。


「『依存』……『従属』……『強欲』……。」


「えへへ。」


 強欲はともかく、依存と従属はよくわかる。

 絶賛俺に依存しているし、従属は……まあ、ペット願望だろう。


 ただ、この横の米印は。


「ねえフウ、この米印だけど……。」


「あれ? オレが見た時こんなの無かったぞ?」


 フウカが不思議そうな顔をしてそこを見つめる、つまり俺が来るまでの間に書き足されたという事だろうか、一体誰に……いや深く考えるのは止そう、というか自動的に書き足されてくシステムなのかもしれない、あの観測者なら出来るだろう。


 それを読んでいたフウカの困惑している顔に徐々に喜色が宿る、そしてこっちを見て口を開いた。


「つまり、ライ兄ちゃんって事だろ!」


「俺?」


「ライ兄ちゃんが、オレの依存先で従属先って事!

 従属、つまりペットって事だよな!」


 嬉しそうにするんじゃない……。

 でも状況的に考えてそれ以外に無いのも確かだ、俺は知らないうちにフウカというペットの主人になることを受け入れていたのか?……自分の事ながらわからない。

 

 それと、『首輪』か……。

 

 俺はふと右手の持ち手を見る。

 いやこれこそが『持手』なのだろう、つまり俺がフウカの理想の主君って事になる。


「フウ、俺が理想の主君なの?」


「う、え、えっとね。」


 俺は少し悪い顔をしているかもしれない、膝に座るフウカにそんな質問をする。

 フウカは「ペット、ペット♪」と浮かれていたのだが、途端に顔を赤くし、恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。


「そうだよ……。だって、ライ兄ちゃん優しいし、オレの事考えてくれるし、嫌な事殆どしないし……。」


 まて、それは要するに俺がただ甘いってだけの話じゃないのか?流石に甘すぎるのもまずいだろう、少し厳しくするべきか、そんな事を考えていたが、フウカの言葉が続く。


「一緒にいて楽しいし、悪い事したらちゃんと叱ってくれるし、よ、よく頭撫でてくれるし……。」


 俺の心にストライクを打ちそうな言葉の数々に、思わず俺は顔に熱を持つ。それに目の前でそういう事を言われると何だか無性に恥ずかしい。

 しかしそれはフウカも同じだったようだ、顔が赤いしなんだか体温が上がってきた。


「あーもう! この話終わりな! さっさと次ライ兄ちゃんの見よ!」


 フウカは機敏な動きで俺から紙を奪い取り、代わりに俺の説明書をさっと取り俺に渡してくる。

 まあ、俺も恥ずかしかったし丁度良い、俺はフウカと一緒にそれに目を通し始めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

同伴装備【ヒイラギ(柊木) ライン(来寅)】の装備能力情報


装備能力『生体 人』『黄の繋珠』『超魔力』『支援』


『生体 人』の基礎能力情報


身体能力『C+』

学習能力『B-』

保有魔力『A+』

成長期待『─』


『生体 人』の特筆能力情報


精神形質『温厚』『情愛』『寛容』

歪曲概念『妖霊』     

装備概念『持手』

習熟技術『教養+5』『支援+1』

特殊条件『直接攻撃禁止』『成長同機 【サワ フウカ】』『支援限定 【サワ フウカ】』

追記情報

・対象は装備でありながら『生体 人』としての特徴を持つ。

└・『生体 人』は以下の能力を対象に与える。

   基礎能力の取得

   特筆能力の取得

   自我の取得

   肉体の取得

   その他『人』としての全要素の取得


・対象に埋め込まれた『黄の繋珠』は、対となる『緑の繋珠』を保持する存在を大まかに感じ取れる。


・『超魔力』が宿っており、並大抵の事では尽きることは無い。


・他の存在を魔力を使い『支援』し、様々な恩恵を齎すことが出来る。


・『温厚』な性格であり、怒りが溜まりにくいが、一定を超えた時怒りが収まりにくい。


・『情愛』を抱いた相手への対応は何処までも慈愛に満ちており、相手から受け取る好感が大きくなる。


・直接攻撃の威力が減少するが、他者にプラスの効果を持つ行動に補正がかかる。対象は心が広く他者の全てを受け入れる事が出来る『寛容』な性格である。『強欲』を持つ相手と相性が良い。※『強欲』保持者発見済


・対象は『妖霊』の歪曲概念に晒されており、妖霊の特徴を引き出すことが出来る。

└・『妖霊』は以下の能力を対象者に与える。

   魔力増大

   感覚の鋭敏化

   魔力操作技術向上

   欲の希薄化

   愛情の増大


・『首輪』保持者の理想の主君である。『持手』は『首輪』の保持者が首輪を装備している間対象の腕に固定される。


・観測者の力により『直接攻撃禁止』の枷が嵌められているが、ポテンシャルが増大している。


・観測者の力により『成長同機』の枷が嵌められており、自らの経験により能力の成長が起こることは無いが、【サワ フウカ】の能力の成長と同機する。


・観測者の力により『支援限定』の枷が嵌められており、対象の『支援』は本来の力の0.1倍しか発揮できないが、【サワ フウカ】に対しては本来の力の1.5倍を発揮する。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「うわ、凄く長い……。」


「……。」


「ん? フウどうしたの?」


 何故か黙っているフウカの顔を覗き込むと何処か不満げな顔をしていた、頭の上の耳も後ろに反らされている。


「装備なんかじゃない。」


「え?」


「ライ兄ちゃんは装備なんかじゃない。」


 勢いよく文句を言うフウカに納得する。

 あぁなる程、ここに書いていた、同伴装備っていう部分で怒ってくれていたのか、それは凄く嬉しいけど、間違ってはいないんだよな。


「フウ、あくまで俺はフウの為に観測者が連れてきたおまけなんだよ。だからそんな怒る必要無いよ。」


「でも……。」


「それに『生体』にも書いてるじゃない、『人』としての全要素の取得ってさ。

 つまり俺は人で、もちろん中身が変わったわけじゃない。

 気にしなくて良いんだよ?」


「んー……。」


 まだ不満げなのは変わらないが、何も言ってこないって事は納得してくれたって事だろう。

 納得すると黙るのはフウカの昔からの癖だ。


「でも、温厚、情愛、寛容か……俺そんな感じかな?」


「ライ兄ちゃんはそんな感じだぞ。」


 俺のつぶやきにフウカは即答する。

 

「ライ兄ちゃんあんまり怒んないし、優しいし、こんなオレだって受け入れようとしてくれてるし?

 それに、オレの『強欲』? と相性が良いって書いてるでしょ、合ってるじゃんか。」


 自分と相性が良いから合っているという理由が何とも微笑ましい、なら、俺もそれで納得することにしようか。

 色々と分からない事はある。枷だとか禁止だとか不穏な単語もある程度混じってるし、不安な要素も多々ある。


 けどまずは、出来る事からやっていこうか、検証とかその辺は追々理解していけば良い。

 幸い時間は沢山あるのだ、ここには何も無いけれど、だからこそ自由である。


 ふと窓を見ると外は明るい、まだまだ日が落ちる様子は無い。

 一緒に外に行ってみようか、まずは水浴びできる場所を探す、もしくは食料の調達だろう。

 とりあえず外に出なければ始まらない、フウカに二日間の話を聞きながら色々やってみようか。


「ふぅ……。」


「ん?んふふー。」


 俺は解放感と多忙さを同時に感じ思わず息を吐き、膝に座っていたフウカの頭を撫でる。

 それに気が付いたフウカは頬を緩ませながら俺の首元に頭を押し付けてきた。

 その仕草は犬や猫のようで、これだと本当にペットみたいじゃないか。


 けど、外に出るのはもう少し後にしよう、一応この紙には更に追記があって、この首輪の詳細や革袋の詳細等が書かれた部分もあるけれどそれに目を通すのも後回しだ。


 今はただ、この平穏を味っていよう。


 暫くの間、部屋にはフウカの可愛らしい鼻歌だけが響いていた。

 今回は説明回的な感じになってしまいました、まあそれでもフウカくんにはずっと甘えてて貰ってますが。


 続きが気になったという方はブックマークを、気に入って頂けたり期待して下さる方は下の☆☆☆☆☆から評価を頂けると、作者はパソコンで重量挙げを始める程喜びます。

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