☆甘え甘やかし?
(作者)暴走回その1です。一応BLモノなんですからこれくらいはセーフですよね?ね?
「なあ、本当に食べなくて大丈夫なのか?」
「うん、何でか分からないけど、食欲があんまり湧かないんだよね。」
「んー、ライ兄ちゃんが良いならそれで良いけど……。」
家に帰ってきた俺たちは、まず初めに今日森の中で手に入れた物を確認した。
何もただ歩いて水辺を探していたわけじゃない、途中で食べられそうな植物だとか果物だとか、あとは普通の野生動物だとかを狩って、観測者の持たせてくれた革袋の中に入れて持ち帰ってきたのだ。
ちなみに魔物の死骸も一応中に保管してある、あの凄まじい臭気が中に入れた物に伝染するんじゃないかと一瞬心配ではあったが、恐れていた事態になる事は無かった。中の空間では時間が止まっていたりするのだろうか、今度果物を何日間か中で放置して確認してみよう。
狩った獣はフウカが絞めた時に、彼に頼んで首をねじ切ってもらい血抜きをしておいた。
最近はよくラノベなどで、血抜きをしない肉はゲロ不味い、という雑学が出てくる。それに興味をそそられ前にネットで調べたことがあったのだが、まさかこんなところで調べた知識が役立つことになろうとは思うまい。
実際血抜きなどしなかったフウカは二日間の間、肉が臭すぎて食べ物だと思えないような肉を焼いて無理やり腹に収めていたようだ。
ちなみに、獣の頭をねじ切る少年というその風景は中々にスプラッタで恐ろしいもののはずだが、魔物との戦闘で慣れたのか、感覚が麻痺して普通になんとも思わなかった。
そしてこの小さな小屋だが、手狭で設備が足りていないというのは疑いようもなく確かであり、しかし一部設備は妙に整っている。
例えば天井には吊るされているランタンのような小さな球体、触れるだけで燃料もなく明かりが灯る。
他にはドアから入って右奥にある、ビー玉のような水晶が嵌められた石板、横の部分にある出っ張りを押すと熱が宿るのだ、それこそ肉を焼けるくらいに。
これを利用してフウカ適当に狩った獣を焼いていたらしい。
そして今回俺は、その血抜きした肉と魔力による判別で強力な毒がない事を確認した草……いや、ギリギリ山菜と言っていいはずだ、その肉と山菜の二つにギリギリ調理と呼べるほどの処置を施し、これまたギリギリ料理と呼べるようなものを作り出した。
まあ、少なくとも食べれるなら良いだろう。実際フウカは一切まずそうな顔をせずに食べているし、まあ美味しそうな顔もしてないが。
それと、フウカはまだ服を着ていない。魔物の体液でドロっヌメっとした服は湖で洗いまくり、何とか全部汚れを落とすことは出来たのだが、まだ水気が乾いていない。
流石に重くて体に張り付くような濡れた服を着るよりは、裸の方がましだ。
俺のこの服もフウカのあれも、どちらとも俺たちの一張羅。少しでもダメになれば裸で過ごさなくてはいけなくなる為、早急に別の服を用意する必要があるだろう。
そして俺はフウカがモグモグと肉を頬張っている所を眺めている訳だが、何故だかお腹が減っていない、それどころか減る気配も無いのだ。
流石に何も食べないとまずいとは思い焼いた肉を少し食べたが既に腹八分目に感じている、恐らく俺の身体が改造される過程で何かされたのだろう、そうに違いない。
さて、俺は俺でやる事をしておくか。
「よいしょっと。」
「むぐ? んぐむぐんん?」
「口の中の肉を飲み込んでから喋ってね。」
「んぐ、んっく。何してんの?」
「色々作ろうと思ってね。」
そう言って俺は手元を見せる、そこにあるのは、根元で数本の茎に枝分かれした細い植物だ。
それを、中心に近い四本を除いて茎を千切り取り、左右の二本を中心の二本に規則的に絡ませ編んで行く。
細かく引き絞りながらそれを続けていくと、出来上がったのは細かい凹凸のある草編みである。
「これを加熱して殺菌してから、このザラザラの部分で歯を擦れば歯ブラシになるかなって思って。」
「すげーライ兄ちゃん!」
「あはは、ありがとー。」
後ろから抱き着いてくるフウカを支えながら、俺はふとフウカの事を考える。
こちらへ来てから妙にスキンシップが多くなった、こっちの世界ではフウカにとって俺が唯一の家族みたいなものだから、より一層甘えてきているのかもしれない、まあ俺にとってもそれは同じだし、甘えられた嫌な気はしないから問題は全くない。
まあ、今自分が服を身に着けていないというのは考えてほしいが。
もしこれから人のいる村や街などに行って親しくなった人と一緒に水浴びや風呂に行ったとする。
そういう人にも抱き着いたら嫌がる人もいるかもしれない、それにフウカは可愛いのだし間違いを犯す人もいるかもしれ……と、思考が飛躍したか、とにかくまずいだろう。
そんなことを考えながら二つ目の歯ブラシを作り終わった時、俺の背中に体重をかけていたフウカが少し声のトーンを抑え、俺の肩に頭を乗せたまま話しかけてきた。
「あのさ、オレ頑張ったよな。」
「うん?そうだね、フウは凄く頑張ってるよ。」
二日間一人だけでサバイバル生活をして、魔物を倒して、激痛にも耐え、湖を見つけて……それを11歳の少年が成したというのは余りにも大きい。
何度同じことを考えたかは分からないが、フウカはまだ子供なのだ。
「だからさ……。」
「ん?」
フウカは首元の首輪を少し弄り、俺の眼を見つめて真剣そうな表情で口を開いた。
「ご褒美が欲しいんだ。」
「ご褒美?」
ご褒美と言われて俺は少し困る。
ここにはぶっちゃけ何もない、ご褒美になるようなものなんて……いや待て。
フウカは首輪を抑えながらそう言った、つまり、そういう事か?
「えっと、俺は何をすればいいの?」
「んー、じゃあライ兄ちゃん立って。あと、リードを実体化して。」
「わかった。」
まあ、無理のない範囲で答えよう、フウカが頑張ったのは事実だし、それに酬いることが出来るのなら応えてあげたい。
まあ、俺の精神はすり減るだろうけど。
俺が立ち上がりリードを言われた通り実体化させる。
すると立った俺とは対照的にフウカは地面に手をつき、膝で地面を支える、所謂四つん這いの状態になりこちらに顔を向けた。
その目に浮かんでいるのは期待と欲。蕩けたとまでは言わないが、それに近い輝きを宿した瞳でこちらを見つめてくる。
あ、これやばい。
この状況を第三者視点で表すと、首輪を付けた裸の獣耳美少年が四つん這いの状態で年上の少年にリードで引っ張られている、だ。
……いやアウトだろう、レッドカードだ、ただの事案、それ以外の何物でもない。
「くぅーん……!」
「フ、フウ?」
フウカは犬が甘えた時のような声を出しながら俺の足にすり寄って来て、頭や顔を足に擦りつけてくる、俺も足を露出しているためその感覚が直に伝わって来てなんとも形容しがたい気持ちよさを感じてしまうのだ。そしてそれがまた俺の正気度を下げていく。
「ん!」
「えっと、撫でればいいのかな?」
「(コクコク)」
突き出された頭を撫でると、満足げに目を細めながら手に頭を擦りつけてくる、なんとも可愛らしいその仕草は、俺の正気度を犠牲に幸福感を召喚する、一種の麻薬のようなものだと感じた。
それに、撫で心地が凄くいい。
フウカのきめ細やかなこげ茶色の髪の毛はしっかりと洗ったという事でふわふわとしており、そこに同じくフワフワとした毛質の獣耳の軟骨がコリコリとした感触を手の平に伝えてきて、そして温かい。
俺はしゃがみ込み、本当の犬にするようにフウカの頭を両手で包み込み、ワシャワシャと少し乱暴目に撫でてやる。
しかしその乱暴な撫で方すらも何かフウカの中の琴線に触れたのか、それでも嬉しそうに口角を上げ目を細めた。
暫くそうして撫でていると俺の手から頭を外し、四つん這いになっていた身体をゴローンと床に倒すと、そのまま仰向けになる。
そして肩の前で手を丸め、まるで犬がこちらに撫でろと要求してくるようなポーズでこちらを見返してきた。
心なしか顔が赤いような気もしなくもない、というかそれは犬のやるポーズであり、普通は人間が嬉々として取るポーズではないだろう。
彼の肌は元々傷だらけではあったが、骨が折れたり重傷だったという訳ではなかったので魔力を利用した治療によりすぐに治すことが出来た。
それによりスベスベモチモチを取り戻している、何となく直視しにくく目を逸らす。
「くぅーん……。」
「フ、フウ……その格好で、撫でろって?」
「ん……。」
まるで捨てられた子犬のような声を出したフウカに、俺は逸らしていた目を戻すと、上擦った精神を元に戻す為にも冷静に観察を始めた
日に焼けた淡褐色の健康的な肌と年相応の体躯ながら程よく引き締まった筋肉は、まるで彫刻や絵画のような完成された美を宿しており、その少し下がり力が抜けたような表情と合わさりとてもではないが本人の前では言えない雰囲気を醸し出す。
俺は変な表情をしていないだろうか、こんな時は何を考えれば良いんだ?そうだ、フウカの可愛い思い出を想起しよう。
朝に挨拶をすると元気よく返してくれるフウカの姿。道場に誘われて見学に行った時、俺の前で技を決めてどや顔をしていたフウカの姿。俺が風邪を引いた時、率先して看病をしてくれたフウカの姿。
よし、こいつは俺の可愛い大事な幼馴染だ、何も問題はない。
「んっ。」
「よしよし、今日は頑張ったなー。」
仰向けになるフウカの横に座り、そのお腹に手を当てて労いの言葉をかけながらそのお腹を撫でる。
柔らかくも筋肉により引き締まった肉、サラサラとしていながらどこかしっとりとした肌触り、あばら骨やおへそといった完全になだらかではない感触、そして少し高めの体温が手に伝わり、極上の触り心地を実現している。
俺が撫でると、くすぐったそうに声を上げるフウカ、だけれどその顔は幸せそうだ。
本当にいいのか、お前は人間だぞ。そう言ってやりたい気もするけれど、わざわざ水を差す必要もないだろう。
暫く撫で続けていると俺も楽しくなってくる。
ただ撫でるだけではなく、ちょっとスピードを早めたり色々と撫で方を変える。
そして俺はお腹の中ほどにあるおへそが目についた、少しの悪戯心でそこに指を軽く差し込む。
「えい。」
「ひゃっ!?」
「あっ、ご、ごめんね?」
おかしな声を上げて、身体を小さく跳ねさせたフウカに俺は思わず謝る。
まさかあそこまで反応されると思わなかったのだ、俺は再び普通の撫で方に戻して、お腹をさすり続けた。
しかし、徐々に嬉しそうな表情から悩まし気な表情へと変化していったフウカは突然飛び起きる。
「ライ兄ちゃん、きょ、今日はもう大丈夫!」
「えっと、もう良いの?」
「おう!」
少し早足でドアを開け、ちょっと外の空気吸ってくる!と宣言したフウカは止める間もなく外へ飛び出していった。
おへその事で気分を害したか?それとも流石に恥ずかしくなったのか?我に返ると俺も中々な事をしていたわけだし。
帰ってきたらとりあえず謝ろうか、それにしても。
俺はさっきまで撫でていた手の平を見て思わず呟いた。
「俺、幼馴染になにやってんの……?」
でも、触り心地は良かったな、出来ればまた触りたいな。そんなことを考えてしまう俺は完全に病気である。
大丈夫、R15ですよ(真顔)。ちなみに次回もこの調子の回になる予定です、作者暴走回その2予告。
それと、朝起きてみるとレビューを貰えてました!やったぜ。書いてくださった方本当にありがとうございます。




