人命救助
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実験をした2日後の朝、私は朝食用の山菜を探していた。
今更だが、私の見た目の年齢は人間の7歳程度しかない。
私はいつか旅をしたいと思っていたので、このままでは結構困る事になる。
そこで私は考えた。日本の妖怪伝説には、人間に化ける事が出来る妖怪がいたそうだ。
私も曲がりなりにも妖怪なら、見た目を大人っぽく出来ないだろうか?
「ここはやはり、妖力を使った方がいいでしょうね。私の元々の力じゃないと、親和性が悪そうですし、ですがどうやるのか、さっぱり分かりません。…………やっぱりイメージが重要なのでしょうか?」
私は一人で何を行っているのだろう?
それにしてもこの口調はもう治らないのかな。
元クソ上司が、常日頃から敬語を使えと言われて、敬語口調になってしまったが。
今なら敬語を使わなくてもいいのだろうが、すでに敬語の方が楽なので、気にしない事にする。
「イメージはこの姿が20歳位が最低限ですね。…さて、やってみましょう。」
まずは目を閉じ、自分の姿を想像する。
………………………………しばらくすると、自分の体が変化している感覚がして、目を開けてみる。
「おお、目線が高くなっています!これは成功したのでしょうか?…………いや、きちんと確認しないと、まだ成功だと断言できません。湖に行って確認してから、今後の予定を決めることになりますね。」
早速湖に向かう。ちょどいいので、湖に向かう間は、能力で熱エネルギーや光エネルギーなどの力を貯め込みつつ、貯めていた運動エネルギーで、身体能力強化の練習をして、湖に向かうとしよう。
「はぁ〜やっぱりいつ来てもこの景色は良いものですね。社畜時代にここに来ていれば、どんなに心が癒やされたことでしょう。」
湖の周りは、所々に花が咲いている草原で囲まれており、湖の中には後ろの山が写り込んでいた。
ここの湖は、鏡代わりにもなるので、結構実用的な面もあるので、それら全部含めて私はここの湖がお気に入りだ。
早速、湖の水面を覗き込む。
「ふむ、身長は約156cmしかないのですか………まぁ、幼女から少女の方がまだマシでしょう。」
「ダレカイナイノカ~」
「ん?誰かが助けを求めていますね。聞こえてしまったからには、流石に無視すると目覚めが悪いですし、助けに行きますか。…………そろそろ人に会いたいですし」
少女移動中
走り出してから、数分後の今ここでは、惨状が広がっていた。
人間の数は5人、その内3人が四肢の一部が無い。
残り二人は、商人の夫婦だろう。
年齢は大体30歳くらいだろうか?
それにしても不思議だ。普通この惨状を見たら私でも少し動揺すると思ったが、やはり妖怪になった影響か、冷静にこの事実を受け止める事ができる。
香燃「もしも〜し、助けはいりますか?」
商人「だっ誰だ!?…………」
香燃「あの〜固まっていますけど、どうかしましたか?」
商人「……ハッ、な、なんでもない。それより頼みがある!薬や包帯は持ってないか!?仲間の護衛が重症を負ってしまって、このままでは死んでしまう!勝手なのは承知だが、あとで対価は払うので、薬や包帯があれば分けてくれないか?!」
商人妻「私からもお願いです!どうか仲間たちを助けてください!」
香燃「すみません。薬や包帯は持ってないのです。」
商人「そ、そんな……」
香燃「ですがその怪我を治すものならありますよ?」
商人「なっ!?本当なのか!?」
香燃「はい、この癒玉を飲ませれば助かりますよ?」
私が癒を三つ目の前で生成してすると、商人に癒玉を差し出す。
商人「な、何だこれは、本当にこんなもので助かるのか?」
香燃「はい、治りますよ。ほら早くしないと出血多量で死にますよ?」
商人妻「あなた、もう他に頼れるものがないのなら、一か八かでも試してみるしかありませんよ!」
商人「そ、そうだな。もう頼れるものがないんだ。ここから一番近い村でも後、一日はかかる。……やるしかないか」
香燃「早く飲ませた方がいいですよ?ほら、もう今にも死にそうです」
私がそう伝えると、商人は直ぐに護衛達に癒玉を飲ませた。
すると、何かに噛み千切られ、無くなってる四肢と傷が緑の光に包まれて、あっという間に傷が、消え失せていた。
商人「なっ、傷だけじゃなく、無くなっていた四肢まである!?」
商人妻「あぁ…奇跡よこれは。」
商人「あ、ありがとうございます!貴女様のお陰で、仲間が助かりました。本当にありがとうございます!」
香燃「いいですよそんなこと、死んでいたら目覚めが悪くなりますからね」
商人「それにしても、貴方様は何者ですか?……高名な神だと存じますが」
ん?何か神様だと思われている!?
正体は妖怪何だけど。
どうせ後3ヶ月で旅に出るし、もう合わないから言っちゃうか。
香燃「いや、私は妖怪ですよ?ほら」
私が妖怪だと証明するために、少し浮いてみる。
そう!私は訓練の末、やっと少しだけ飛べるようになったのだ。
商人夫婦「「は!?」」
香燃「だから、私は妖怪ですよ」
固まっていたので、もう一度伝えると、商人夫婦の顔が恐怖に染まりだした。
すると、また新たな『力』を貯め込めた。
恐怖や驚愕の感情から出る負の力だ。
本能が私が生きていくには、この力が必要だと告げている。
だが、私は恐怖など必要ではないのだ。
私の能力は、力を別の力に変換出来る。
だが、変換をすると約半分位のロスが生じる。
でも私の存在を維持する分は、そこ等の熱エネルギーでも作ることができる。
だから私に恐怖などいらない。
私はただ人と話したかっただけだ。
…………なのに
私の目元がじんわりと潤んでいく。
香燃「あの、私はただ助けたいと思って、1ヶ月間誰とも話せてないから、寂しくて……それに私は恐怖の力を自分で作れるから。別に人間さんを驚かせたりしないので…………ぐすっ……だから、怖がらないでよ…」
私は俯いて、なんとか言葉をつないでいたが、遂に涙が目元からこぼれ落ちた。
数十秒間は泣き続けただろうか?
すると、私の体に柔らかい何かが包み込んでくれた様な感触がした。私は驚いて顔を上げる。
商人妻「ごめんなさいね。私達を助けてくれたのに怖がっちゃって、この際貴女の種族などは気にしません。……寂しかったのでしょう?良く頑張りました。」
うぅ、別に寂しく何てなかった。
少しだけ話が出来ればそれで良かった。
ついでに癒玉が効くかどうかの実験が出来れば、それで良かった。
でも、精神は体に引っ張られるのか、元の見た目年齢7歳の体では、涙が止まらない。心の片隅では、やはり寂しかったのだ。
香燃「ぐすっ……う、うわあああぁぁぁん!」
私は泣いた。きっと社畜時代の心の傷もあり、抑えきれなかった。
商人の妻さんは優しくなででくれた。
ああ、私も家族が欲しい。この商人夫婦は人間だ。きっと後50年もすれば、死んでしまうだろう。
だから半年後の旅は、私の家族になってくれる奴を探しに行こう。主に母として。
だから、ここで心の膿を全て吐き出す。
そうすれば、後腐れなく、旅が出来そうだから。
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