表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

15 内通者

人間というものは、言葉と行動の一部でしか、他者を認識できない。

その真意や感情、思い込みまでは、他者には、いや、本人さえも理解できない場合がある。


特に認識や思い込みに関しては、先に刷り込まれた情報が優先してしまい、結果的に得た情報が同じでも、結果が真逆になる事は少なくない。



◆◆◆◆◆



「聞いたか?桂川沿いのテレホンセンターが燃えた件」

「ああ、聞いた。センターからデータめダウンロードされたらしいって話だ」


町中で出会った二人の男性は、カフェテリアで席を囲みながら話している。

彼等は面識が無いが、共に陰陽師だと解っているので、仲間を見付けて情報交換をしようとしているのだ。


「これから、どうやって連絡や指示を受けたら良いのか判らないよな」


一人が、困った顔をする。

それを見た、もう一人が、携帯を出してきた。


「他のアクセス番号も出来たらしいぜ。教えてやろうか?」

「助かるよ。他にも知りたがっている奴が居るんだ」


二人は赤外線でアドレスの一つをやり取りし、受け取った方は短文を付け加えて、メールに添付する。


二人は、前世の話から、記憶に目覚めてからの苦労話、その後の活躍について話し込んだ。

途中でメールも来たが、タイトルチェックだけで話は続く。


「へーっ。なかなか凄いじゃないか?メアドと話の御礼に、凄い人を紹介するよ」


会計を済ませて、カフェテリアを出ると、少し移動して人通りの多い道路際に出た。


「どこに行くんだ?」

「もう少しだよ」


肩を組んできたが、人目も多いし、相手は同じ陰陽師だ。

向かう先には、道路際に停まった一台の白いワンボックスカーが有った。


「よーっ久しぶりじゃん」


見知らぬ男が、反対側の肩を組んできた。

狐憑きでも陰陽師でも無い一般人だ。

気が付くと、周りを何人かの男が並走し、仲の良いグループの様になっている。


「何だ?誰だコレ?」


声をあげたが、そのまま、ドアの開いたワンボックスの後部座席に連れ込まれた。


車内で羽交い締めにされた彼は、後部座席の奥に座る女性に目が行った。


「狐憑き?なんでだ?」


男は、自分を連れ込んだ陰陽師の顔を睨む。


「お嬢。新しい番号と陰陽師を手に入れました」

「よくやったな、清次。これであんたの組も本家に顔出し出来るわよ」

「ありがとうございます。お嬢」


アユミと清次の二人は、笑顔で語り合う。


「裏切ったな?」

「よく考えてみろ。こっちの身内を助けたくて、昔の知合いを裏切って殺しとるのは、お前らだろう?俺の身内は、この組なんぁ。向こうでも、こっちでもな」


異世界では、こちらで異世界人同士で対立している事を知っており、むしろ陰陽師を敵視している。


だが、陰陽師になると、人間側の感情が優先して、侵略を嫌悪してしまう。


ただし、陰陽師に転生しても、周りに陰陽師が居らず、狐憑きだけが居れば、その価値観は変わってくる。

清次にとって、守るべき身内は陰陽師ではなく、狐憑きなのだ。


陰陽師は、首元にスタンガンを当てられ、意識を失った。


白いワンボックスは、大阪湾目指して走り出す。


「山根。また、黒ベンツの出番や。準備してえいて」

〔わかりやした、お嬢〕


電話のやり取りを終わると、アユミは清次に目をやる。


元々、ツーフェイス/狐憑きも陰陽師も、同じ存在だ。

転生する環境も同じで、僅かなタイミングの様な物で分岐してしまう。

当然、身内や知人に、相反する者が生まれる事もある。


陰陽師の場合、身近に狐憑きが発生した場合は、すぐに始末をする。

どんなに教育しても、人間が猿を見る様な関係に変化してしまう。

そして、同じ高度な記憶を持つが、価値観の違う陰陽師とは、敵対的になっていく。


逆に狐憑き/ツーフェイスの元に陰陽師が発生した場合は、狐憑きが陰陽師を指導し、教育する事で、狐憑きと同じ価値観を持つ事も可能だ。

元々の記憶が、同じ侵略者なのだから。


「ツーフェイスと陰陽師も、仲良く出来るのに、何で争いたがるかねぇ?」


アユミは首をひねっていた。


「まぁ、仕方ない。好戦的な奴等を排除する為に、清次には、もっと働いてもらわないけど、よろしくね」


実は、アユミと清次の前世での年齢は、逆の立場にある。

こちらでの年齢を合算しても、アユミの方が、親と子程に離れている。

前世の記憶に理解があり、こちらでの家族に便宜を図ってくれるアユミは、清次にとって、数少ない理解者だ。


「お嬢の為なら喜んで!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ