眩い記憶
姉が目の前を歩いている。眼科で射された目薬のせいで明るい街並みは白く、空を見上げると目が眩んで痛いくらい。知らない街は迷路のようで姉がくるくると急ぐ様を離れないよう追って歩く。白昼夢とはこういう記憶を言うのではないかと思う現在。
こんな風に、郷愁に浸るのは幾度あったろうか。失っていったものの記憶、その記憶すらも忘れていくことを、幾度哀しんだのだろう。
今から私が語ることは、そういう種類のものだ。私が語ることはいつか忘れられる。そんな安全がなければ私は何一つここに記すことはできない。それは私が、弱くしたたかに現実を生きるために、私自身に示す安全神話。