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僕らは天才じゃない  作者: 七寒六温
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(鈴木 俊哉)

「千春が俺以外の誰かと付き合うことになったら、俺はどうするんだろうか。新しい恋なんて簡単にできるか? ずっと好きだったんだ、この次に好きになる人は妥協になる。千春が1番でその人が2番。そんな風に思うとその人にも悪い」


「生まれてからこれまで、1度も誰かに告白されたことはないが、今 仮に千春以外の誰かに告白をされたら、答えはYes?No?」

「好きだって言ってもらえればそれは嬉しいけれど、ここでYesっていったら千春のことは諦めることになる。千春ともしかしたらうまくいったかもしれないけれど、それを千春が耳にしたら、おめでとうって言われて、俺らは一生仲のいい幼馴染みだ」

そんなことを1人、屋上で考えていると千春が嬉しそうにこちらに向かってくる。笑顔でスキップをしている。この姿がまた可愛いこと可愛いこと。この姿を録画して永久保存しておきたい。


笑顔でスキップなんて、よほどいいことがあったな千春。好きなアーティストのライブのチケットが手に入ったのか?出来の悪いと思っていた日本史のテストで、まさかの100点が取れたのか?今日の夕飯が、千春の大好きなシーフードカレーなのか?


そう、千春は昔から嬉しいことがあると真っ先に俺に伝えてきた。嬉しそうに俺の元に来ては、今のようにスキップをして。


「ねえ、としや……サンタさんがね、お人形さんをくれたの。私ががんばっているからって、こんなにかわいいのをくれたんだよ。それも2つも、2つもくれたんだよ」

サンタクロースがプレゼントを届けてくれたといって新品の人形を2つ、その日のうちに見せに来たり、


「としや、タジーが生き返った、生き返ったんだよ」

「クウのピンチに突然助けに来たんだよ。カッコよかった カッコよかった」

死んだと思われていた千春が好きだったトゲトゲ頭のアニメのキャラクターが突如 復活し、主人公の元に現れたときは、そのキャラクターのフィギュアを使ってトゲトゲ頭突きなどという謎の攻撃を仕掛けてきた。


「懐かしいな~変わらないな~」

昔から変わってない。千春は正直者だから嬉しいときはその嬉しさを正直に精一杯 表現する。これがまたかわいいのだが。


「俊哉、やっぱりここにいた」


「どうした? やけに上機嫌じゃないか?」


「分かる? さすが俊哉。 どう 聞きたい?」


「う、うん……」

聞きたい?じゃなくて言いたいんじゃないのか?聞いて欲しそうな顔で俺の方を見てくる。まあ千春が落ち込んで泣いているよりかは、上機嫌で笑っている方がいいけど。


「私、告白されました~~!!」

「はい、パチパチパチパチパチ~~」


「えっ?」

えっいつ? えっどこで? えっ誰に? えっ返事は?

いきなりすぎないか?

聞きたいことがたくさんある。

待って、待って、待って、待て

俺はどうすればいいんだこの場合?


そんな~いや俺は嬉しい……嬉しくない?

冷静になれ、冷静になるんだ俺……

いっぺんに色々なことを考えてしまい、脳内は処理が追い付いていない。優秀なプログラマーを早く脳内に連れてきてほしい。


「3組に、小野君っているでしょ?」

「その子に呼び出されて、告白された。昼休みにこの場所で」


「小野か? いや小野め~~!」

「このいざこざにまぎれて勢いで告白しやがったな! しかもこの場所でだと!」

「でも、千春。小野だよ、小野? 小野に告白されて喜ぶ?」

小野はピーマンの肉詰めではない、ほうれん草のおひたしレベルだ。30位とかじゃない。圏外だ。名前すら出てくるか怪しいくらいのレベル。

情けない。自分がびびって告白できなかったくせに心の中で小野のことを悪く言っている。


「あ、そうなんだ小野が……」

「で、返事はしたの?」

落ち着け俺、あくまで幼馴染みとして話をするんだ、焦りを見せたらいけない。


「悩んでる。どうしようかなって思って」


「ああ、そうか」

少しホッとしたけど、ホッとしている場合じゃない。断ったではなくて悩んでるって言われたんだ。千春がこれからYesって返事する可能性もあるってことじゃないか。


「小野君と話したこともないし、顔もあんまし覚えてなかったから告白されたのはビックリしたな~好きとか嫌いとか意識したこともなかったから」

よかった。

千春は小野のことを全く意識してなかった。それもそうか、千春には庭野しか見えてなかったんだもんな。


「今は好きではないけど、小野くんはさ、私のこと好きだっていってくれてるからOKしてもいいのかなって思っている」

「付き合ってみたらいいところも見えてくるだろうし、好きになるかもしれない。みんながみんな両思いで付き合うわけじゃないでしょ?」


「やばい、まずい……」

「これなら庭野と、千春が好きだっていう人とくっついて欲しかった。今は好きではないけどってわかんねーよ、それじゃあ納得できないよ。今は好きじゃないんなら俺でいいじゃないか」

そう思いながらも心のどこかで小野と庭野という人間を比べて差別していた自分がいる。好きだった女優が、イケメン俳優と噂になるのと顔の分からない一般男性と噂になるのを比べるのと似ている。


「そうか、そうなんだな……」

そっけない返事をすると、それに反応したのか千春が、俺のことを指でつついて言う。


「どうしたの? 俊哉」

「あ、私が先に彼氏が出来そうだから悔しいんでしょう?」

「でも大丈夫だよ! 俊哉はいい人なの私は知ってる。みんながまだ気づいていないだけだよ」

悔しいんじゃない、悲しいんだよ。俺がいい人?いい人かは自分自身では分からないが、他の人に気づかれなくてもいい、気づかれなくてもいいから、千春に気づいてほしい俺の気持ちを。


かわいい、何度見ても可愛い。

この可愛さがもう少しで小野のものになってしまうのか……

ある世界大会に、参加者が1名であったとした時、その大会が中止や延期にならなければ、その瞬間 世界王者は決まる。その参加していた1名だ。他にも参加者はいたかも知れないけど、他に強いやつはいたかも知れないけど、その日その場にいなかった、参加しなかったやつらが悪い。


だとしたら、このまま俺は、気持ちを伝えないままでいいのか?どうせなら、戦わずに負けるより戦って負けろ。理由のない不戦敗は恥ずかしいと思え!



「俊哉はどう思う?」


「幼馴染みとして意見が聞きたいな?」

これは俺が貰えた最後のラストチャンスか?

思いを伝えるなら今だと神様が言ってくれてるのか?


「神様、ならもう1回だけ奇跡を、チャンスを俺にください」

「告白できるチャンスを俺に……」


「分かった……幼馴染みとして俺1人が決めてしまうと、何かあったときに責任とれないし……」

「そうだ、神様に決めてもらうことにしよう……」

俺は、空を指差して、いるかいないか分からない神様に言った。その神様は男だろうか、女だろうか。


「俺とお前で、じゃんけんをしよう……」


「勝負は1回。お前が勝ったら小野の告白を受けるも受けないも好きにすればいい。ただ、俺が勝ったら、俺から1つ お前に言いたいことがある。それを聞いてから判断してほしい」

告白をするぞと予告しているような発言になっているが、千春のことだ、多分 気づいていない。 


「それ、あいこだったらどうするの?」


「あいこ……」

「そん時は、俺に、焼きそば奢れ!」


「えっ? 何それ?」


「心配しなくてもこの勝負はどちらかが勝って終わる。あいこなんて考えられない。それが俺とお前だよ」

神様よ、もし俺に勇気を出すチャンスをくれるというのならこの勝負、俺に勝たせてください。


「じゃあ、いくぞ」

「最初はグー。じゃんけん ポン!」

俺の掛け声で、俺と千春は手を出した。




結果から言ってしまえば、俺の勝ち……

俺は、チョキを出したというのに勝てた。


「えっ? どうして?」

千春はじゃんけんの1回目は、必ず グーを出すからパーを出せば必ず勝てるけど、ここでずるは、したくないと思って負けるとは思っていたけど、チョキを出した。


「あ~~俊哉の勝ちだね……ははははっ」

「昔から本当に変わっていない。俊哉は昔からじゃんけんの時はチョキしか出さないもんね。だから私はいつもグーを出して勝たせてもらってたの。だけど、今日は気まぐれで、パーにしたの」

気づいていたのか……俺がチョキしか出さないんじゃなくてお前がグーしか出さないから俺がずっとチョキを出してたんだよ。


「奇跡? が起きたのかな?」

「これは自分の思いを伝えなきゃいけないな」

神様が勝たせてくれたのか、千春様のきまぐれなのか?


もういい、じゃんけんにも勝てたし、今しか言うタイミングはない。ずっと心の中にとどめていたことをやっとここで言うことができる。いや、言わなきゃいけない。


「千春……好きだ……」

ずっと言えなかったことをやっと言えたと言うのに、結局俺は、運がいいのか悪いのか?

俺の渾身の告白のタイミングで、強めの風が吹いて俺の声がかき消される。恋愛ドラマを見習って、恥ずかしいけど大きめの声で言ったのに。


「えっ、何?」

「聞こえなかった。もう1度言って!」

本当に聞こえていなかったのか……?

千春は顔を赤くして言った。


「もう1度? 仕方ないな~~もう1度だけ、特別に言ってやる」

今度は千春にだけ聞こえるようにぐっと千春に近づいて千春の耳元で囁いた。


「千春……好きだ……」

微笑んだ千春の顔は今までで1番可愛かった。


静かな屋上で、かすかに聞こえてくるは、吹奏楽部が演奏している、よく聞く定番のラブソングだった。






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