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僕らは天才じゃない  作者: 七寒六温
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(小野 翔三朗)

僕は青木さんが泣いていた屋上に、青木さんを呼び出した。そう、僕はこれから青木さんに告白をする。


「動じることだけが戦略ではない。待つことも1つの手であることを覚えておけ」

信繁の教えの通り、告白なんて勇気のいる行為なんてせずに、待つという作戦でいくつもりだったのに。


僕が青木さんを好きだってことは、学校中のみんなが知っている。庭野を殴ったのは、小野が青木さんのことが好きだったからだなんて噂が広がったからだ。これは庭野が絡んでいるからか。みんなが興味があるのは庭野、どうせ庭野。これが、僕とまっつんの喧嘩とかだったらこんなに噂にはなってなかっただろうに。


それは仕方ないとして、ムカつくのはその噂は最終的には、

「小野は、青木さんにフラれたからその腹いせで庭野君のことを殴ったらしいよ」

なんて言われ方をされているのが腹が立つ。僕は別に青木さんにフラれたわけじゃない、まだフラれていない。僕だって、フラれた腹いせで庭野のことを殴ったりはしない。ただ、庭野が青木さんのことを泣かせた傷付けたってことが、それだけが気に入らなかったから、あんな風に殴っただけ、それに庭野本人は傷付けたことに全く気付いていなかったから、あいつのためにもあれくらいしてやったんだ。まだ足りないくらいだ。僕の力がもう少しあれば。


告白をしていないのに、勝手にフラれたってことにされているくらいなら、いっそ告白してやる。まだ、フラれると決まったわけじゃない。これでフラれても別に構わない。

ただ、青木さん。庭野なんてやつのことなんて早く忘れな?

僕が忘れさせてあげるよ。僕が、トウキョー戦士カウバイザーのアラヤマが使う忘却魔法「ワスレマワース」を使うことができたら、真っ先に青木さんに使う。庭野という存在を忘れてさせてあげるよ。あなたに酷いことをする人間のことは忘れさせてあげた方がいい。


告白をする場所として、青木さんが泣いていたこの場所を選んだのには、僕なりの考えがある。

この場所が青木さんにとって悲しい場所ではなく、新しい1歩を踏むための場所にして欲しかったから。仮に、OKをもらったら、6年後 僕たちはまたこの場所にきて、今度はプロポーズをする。結婚してくださいとたくさんのバラの花束を持って言うんだ。


僕がついて10分ほどたってから、青木さんが屋上に来た。彼女が来た瞬間 屋上の汚れでただの汚かった地面が、赤青黄緑紫とカラフルな色に変わるように世界、空気が変わった。青木さんはこの汚い世界を一瞬にして清々しく変えてくれる。虹を作り出しているのはもしかして、青木さんですか?


青木さんは生まれるべくして生まれた、この世界にいなくてはならない存在。僕のような存在とは比べものにならない。

青木さんはこれからも、苦いも酸っぱいも辛いも口にせずに、甘いだけを浴びて幸せに成長してほしい。汚れた男たちはみんな、青木さんに近づくな。


「びっくりしたよ。こんな所に呼び出されるなんて」

笑顔でそう言う青木さんは、やっぱり天使だった。ここは屋上ではなく、天界か何かですか? もしかして、神舞武闘士 マルマニンに出てくるお目付役の可愛い天使 ニャルルムのモデルは青木さんですか?ニャルルムは毎年人気投票でも上位にくるような可愛い人気キャラクターだ。


「じ、実は、話したいことがありまして、そそ、そ、そのですね、僕の定規を拾ってくれた時から、ぼ、僕にとって、あ、青木さんは、て、天使でした。天使っていうのはその、天使みたいに神秘的というか…… あの時 青木さんは、僕のことを一切 馬鹿にせず、優しく僕にじ、定規を渡してくれました」


「馬鹿になんてしないよ。あれは、だって小野君にとって大切なものでしょ?」

なんて素敵な台詞なんだ。普通はこんな台詞言えない。やっぱり天使だ。前世は、天使で間違えない。


「その時から、僕にとって青木さんは、て、て、天使でした。か、かわいくて、や、やさしくて、僕の言語力では、天使としか表現することが出来ませんでした」


「天使?」

「小野君、それは褒めすぎだよ。私は天使なんかじゃないよ。それに、褒めても私、何も持っていないよ、何もあげることはできないよ?」


「何もいりません。ただ、ぼ、僕はつ、伝えたいことがあります。あ、あなたのことが、好きです。ぜひともぼ、僕と、付き合ってください、無理なのは分かっています、ただどうしても伝えたかったんです」

やっとかっとでこの言葉を言えた。もう、これだけで十分満足だ 後悔はない。フラれても仕方がない。いや、フラれるのが当たり前だ。こんな天使に告白をさせてもらえるだけでありがたいと思わないと。

もしかしたら、これで青木さんに嫌われてしまうかもしれない。けれども、こんな風になってしまったし、言わないより言う方がいい。いや、言うしかなかったんだ。


「ありがとう。小野君」

やっぱり青木さんは違った。まず告白した僕に対して感謝の言葉をくれる。別に感謝されるようなことをしてないのに、告白した僕に対して、敬意と感謝、これは、僕のことを大切に扱ってくれているということだ。


「純粋に、嬉しいよ。人に好きって言ってもらえることは。でもね、少しだけ、返事を待ってもらってもいいかな?」


「は、はい。も、もちろんです」

「待ちます、待ちます、待たせてもらいます」

すぐに結果は出なかったけれど、これはある意味可能性が少しでもあるってことを意味するから喜ばしいことだ。0%なら、即座に断ってしまった方が楽だからわざわざ持ち越すなんてことはない。5%、10%……いや、30%くらいはあるか。 


あ、でも青木さんのことだから、僕に気を遣って、すぐに答えを出さなかったのかも知れない。本当は0%だったけど……

それは就職試験における結果は後日送付しますと同じように。あれも不採用は決まっていたとしても、相手に気を遣って少しくらい時間をおいてから不採用を伝えるかというちょっとしたマナー。すぐに断るのではなく、何日間かじっくりと考えた上で、やっぱり無理でしたという呈で断られた方が悪い気がしないと思うのだろう。


「も、もし、答えがでたら、また教えてもらえますか? 僕はそれまで待ちますので、お、お願いします」


「ご、ごめんね」

「少し待たせてしまうことになるけれど」


「いや、全然、全然大丈夫です。待ちます、待たせていただきます」

「ぼ、僕は、僕の話を聞いてもらえただけで、幸せです」

出来るかぎりのことはやった。自己アピールはしたつもりだ。もう、これ以上出来ることもない。あとは、いい結果が出ること願って、恋愛の神様に精一杯媚びを売るだけだ。サクラサク、僕は、自分の受験番号があるかを必死に探す受験生のよう。恋愛は、受験戦争のように厳しくて、激しい。



今回はこのことは誰にも言わない、絶対に。

僕の心の中にとどめておく。また、バレて変な風に噂話をされたら、今度は青木さんにも迷惑がかかる。どうせ、結果を貰う前から、小野なんか気持ち悪すぎてOKなんて貰えるわけないだろーとか、小野のやつが、屋上に無理矢理青木さんを呼び出したんだって、気持ち悪い近寄るな。何て言われるんだ。


だけど、もし仮に、もし仮に付き合うことになったら、2人には真っ先に自慢する。僕は色々なものを失ったかもしれないけれど、天使のハートを射止めることが出来た。勇気のない君たちには、とても真似できないだろうと自慢してやる。







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