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僕らは天才じゃない  作者: 七寒六温
29/31

(青木 千春)

「私さ、友だち少ないからさ。男に対してがめついからか分かんないけどさ、私はわりと嫌われてるし」

茉優美の口からそんな言葉が出てきたのは意外だった。茉優美は、男女問わず色んな人と話をしている印象がある。休み時間に、固定された誰かといるような感じのタイプではないし。それはやはり茉優美が誰とでも仲良くみんなに好かれているから出来ることだと思う。


まあ、私も茉優美のことを友だちかって聞かれると、まだ うんとは言えない。というより、茉優美の方も私のことを仲のいい同級生の1人として接しているんだろうなと思っていたから。


「こないだ くるみと2人きりで帰ったんだけど、くるみは私と2人きりが嫌そうだった。終始、私に心を許していない感じでさ。そういうの私さ、分かっちゃうからさ」

こんなことを言われたとき、なんて返せばいいんだろう。茉優美がネガティブなことを言うとは思っていなかったのもあるけど、そもそも私は相談事とか得意じゃない。気の利いたこととか言えるタイプじゃないし、観察力が優れてるわけでもない。


「そんなことはないとは思うけど。茉優美は私よりは友だち多いよ」


「いや、少ないさ、今日ので分かった」

「仲いいと思ってた里沙がさ、私の悪口を言ってたんだよね。尻軽女だとか、男に飢えてるだとか。それに花子と恵理那も賛同していたしさ」

この話を聞く限りだと、里沙ちゃんは茉優美に文句があるとしても、花子ちゃんと恵理那ちゃんが茉優美に文句があるとは限らない。女子は、思っていないことでも賛同しないといけない場面が多々ある。「分かる~分かる~」「私も私も~」「それなそれな」を多用して生き抜くのが女子高生という生き物だから。

それは、茉優美も分かってると思っていた。分かっていて分かった上でそんな子たちのことを馬鹿にしていると思っていた。自分は自分。人は人ってタイプだからこそ、自由に恋愛しているんだと。


ただ、正直 私も付き合っては別れて、別れては付き合ってを繰り返している茉優美のことをよくは思わなかったことは何度かあったから、私も仲のいい子が茉優美の悪口を言ってたら同じように頷いていたかもしれない。


「あ! そうだそうだ!」 

「こんな時こそ、俊哉なんじゃないかな?」

私はひらめいた。

女子は弱っている時に優しくされるのに弱い! 

私も失恋の時、俊哉が傍にいてくれて嬉しかったし、失恋後に優しくされてそのまま付き合いましたなんて恋愛エピソードもよく聞く。そんなドラマを前に見たことがある。

今の茉優美に俊哉をぶつけてみれば……俊哉は優しいから相談ごとや悩みにも親身になって聞いてくれるだろうし。

これは、我ながら いいことを思いついた。


「あ、でもこういうのって、多くの人に相談した方がいいと思うんだよね。私よりも俊哉とかに相談してみるのはどうかな?」

少し無責任に聞こえるかもしれないけど、私が解決策を出さず、少し冷たくすることで、より俊哉の好感度が上がると思う。


「鈴木?」

「なんで鈴木が出てくんのさ?」


「俊哉は、えっと 優しいし……真面目だし……」

「茉優美のことなら親身になって、相談に乗ってくれると思うよ、そうだよ俊哉がいいよ」


「千春ってさ…… もしかして、鈴木は私のことを好きだって思っている?」

バレた。さすが勘のいい茉優美。ああ、この際本当のことを直接言った方がいいかな。いいよね俊哉? これはチャンスだもんね。


「私の推測だけど 多分ね 99% 俊哉は茉優美のことが好きだと思う」

「幼馴染みだからね、知りたくなくても分かっちゃうの。俊哉はいいやつだけど、私に対しては噓がつけないからね~」

99%茉優美。残りの1%は別の人が好き。

だけど、それだと私にバレるのが嫌で上手く噓をついているってことになる。私を上手く騙してる? ないない。 もし、そうだとしたらあっぱれだよ俊哉。大人になったね。


「あのさ、千春」

「それさ、本気で言ってる?」


「え? 本気って?」

「本気というか、事実っていうか、私の勘」


「相談はされた? 鈴木から?」

「されてないでしょ?」


「うん……確かに相談はされてない」

「でもね、俊哉とは幼なじみだからそう言うの分かるの。俊哉は昔から俊哉だから私には分かる」


「じゃあ その推理 全く当たってないよ?」

「千春みたいにね、のほほーんと生きてると気付かないかも知れないけど、鈴木は千春のことが好きなんだよ。私は鈴木とは幼馴染みでもなんでもないけど分かる」

「あ、これ言っちゃっていいのか分かんないことをつい、言っちゃったけど、そろそろ気付いてあげなきゃさ」

え? 茉優美は何を言ってるの?

それはない、それはない。


「違うよ、俊哉が私を好きって言ってるのは、幼馴染みとしてって意味だよ」

「LoveじゃなくてLikeだよ」

私と俊哉は幼馴染みだから、俊哉の私に対する好きっていうのはそういうのじゃない。どちらかといえば、妹のことが好きっていうのと似ている。恋愛感情の好きじゃないよ。


「千春がこんな様子じゃあ、鈴木はかわいそうだわ。幼馴染みって言われることも辛かったはずさ。だって、私にとってあなたはいつまでも幼なじみ それ以上になることはない。その関係はこれ以上進展しないよ、って言われてるような気がしてさ」

「LoveじゃなくてLike?」

「違う、LikeでもありLoveだから余計に辛いんじゃない!ただの同級生ってだけなら告白してそれで終わり、Loveがdislikeになって終わりで済むかも知れないけどさ、幼馴染みだから、幼馴染みとしての関係も崩したくないから余計に告白するに出来なかったんじゃないの?」


「でもさ、でもさ こないだ茉優美とか明日香とかが唐揚げだって言ってたし」


「唐揚げ?」


「あ、例え話なんだけど、1番可愛いと思う人のことを唐揚げだとしたら誰が当てはまるのって話をしていた時に、その2人が唐揚げだった」


「それだよ それ」

「そこまで言っといてさ、何で相談しないのよ? 暴露するだけして。それ暴露損じゃんさ?」

「鈴木が、私か明日香のことを好きならその流れで相談するさ 普通? その勢いで、それでも相談しないのは、好きな人が千春だからでしょ?」


「うーんそうかな?」


「そりゃそうでしょ?」

「相談もしないで、可愛いって思う子の名前挙げる普通? 恥ずかしかったらそこも濁すさ。本人を目にして本人の名前は出せなかったから適当に名前出したんだろ」


「言っとくと私さ、付き合っては別れて付き合っては別れてを繰り返しているから、相手が私に気があるかどうか、可能性があるかどうかっていうの何となく分かるんさ」

確かに、茉優美の観察眼は優れているのかも知れないけど、俊哉のことに関しては私の方が詳しいはず。

それに、俊哉が私のことを好き? だとしたらいつから? 今まで幼馴染みって関係をずっと続けてきた。変わったことといえば、中学生になってからは、私のことを名前で呼んでくれなくなったってこと以外は特に変わってはいない。接し方とかも今までどおりだし、特に顔が赤くなるようなこともない。


仮に、仮に俊哉が私のことを好きだって言ってくれるんなら、それは勿論 嬉しいけど。


「ごめん!」

「俊哉に頼もうとしたのは私が悪かったよ。人任せにした感じで」

こんな状態で俊哉にバトンパスはできないし、茉優美も余計に怒っている。これは次の策を考えよう。といっても茉優美は本当に嫌われるような子じゃないからな。


「茉優美は、茉優美が思っているほど嫌われてはないよ。もし茉優美が嫌いっていう人が嫉妬でそうしているのだとしたら誇らしいことだよ。それは1つの才能だと思うし」

「嫉妬される人間は嫉妬する人間に比べてはるかに少ない。なれるんなら 私も嫉妬されるような人間になりたい」

私も茉優美の可愛さには少しだけ嫉妬している。こんなに可愛い顔に生まれたら、私の人生はまた違ったのかななんて考えることもある。


「嫉妬ね……」

「それでいったら私は周りの色んな人に嫉妬してるさ。親友や幼馴染みのような、悩んだり、落ち込んだ時に励ましてくれたり、困った時に力を貸してくれるような絶対的安心感の存在が私にはさ いないから」


「そういう存在が欲しいのもあってさ 彼氏を作っては見るけど、そんな存在は見つからなかった。結局さ 私のどこが好きだったのかって話さ」

茉優美が付き合っては別れて、別れては付き合ってを繰り返しているそんな理由があったとは。その理由を知っていれば、里沙ちゃんも尻軽女なんて悪口は言わなかったかもしれない。それでもまた、別の悪口は言ったかも知れないけど。


「それは、茉優美は完璧に見えるからじゃないかな? 可愛くて自信があって強くて、色んな人と話しているから、悩みがないように見えるんだよ」

「ごめん 私も茉優美が悩みがあるような人間だとは思っていなかったよ」

茉優美は、私が励ますためにテキトーなことを言ったと思っているかも知れないけど、この言葉のほとんどが本心だ。可愛くて自信のある茉優美が、私なんかに助言を求めるわけがないと思っていたから。そんな冷たい言い方はデキないから少しオブラートに話した。


「悩みはあるさ。人間だったら誰だって」

「ないっていったらそれはロボットか、元々向上心のない人かのどちらかだからさ」

「1つ幸せを手に入れても、さらに1つの幸せを手に入れたくなる。その幸せが手に入れなくて悩む。ワガママだけど、それが人間なんだよ」

そう言われればそうだ。

薬指にあるほくろ 可愛くないから嫌だな~ もう少し綺麗な手になればいいのに。

明日は私の嫌いな古文の授業が2時間もある。嫌だな~学校 休みたいな~。 

私も、人に話すほどのことでもない小さな悩みも入れたら、常に何かしら悩んでいる。


「それを言ったら人間は、愚痴をこぼさずにはいられない生き物だよ。特に女子は人の悪口を言いたがる生き物だし。でもそれは本心じゃなくて会話のネタの1つとして利用しているだけなのもあると思うから一概には言えないよ」


「なんか意外だわ……」

「千春が、そんなこと言うとは思っていなかった。千春って のほほんと生きてるイメージだったから、そんなこと考えているとは思わなかった」


「いや、私だってそういうのくらい分かるよ。私も女子だし……」

「そういうのはそれなりに上手くやってきたつもり」

千春はいいね気楽そうで。何も考えていないから悩みとかそんなないでしょ。そんな風に言われることが多い。こう見られることは嬉しいような悔しいような。


「でも、なんかさ 千春と話ししてると気持ちが楽になるからいいわ。千春にその気はなかったとしても、ほんわかとしたそんな雰囲気を作り出せるのは、それは千春の長所だわ」


「あ、ありがとう」

「茉優美が少しでも楽になったんならよかったよ。私は相談とか自信がなかったから」

楽になる そんな風に言ってもらえて嬉しかった。

楽になる、安心できる、落ち着く

そんな存在は私の中でいったらやっぱり俊哉かな。くるみも礼実も優しくて頼りになる友だちだけど、俊哉とはやっぱり違う。俊哉は私にとって特別な存在。



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