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僕らは天才じゃない  作者: 七寒六温
27/31

(庭野 正)

「なあなあ、あいつ何で殴ってきたの?」

「小野 ムカつくなあ 」

「殴ってきて、お前はどうしたんだ? やり返しちゃえば」

あいつのせいで、面倒くさいことになった。朝学校に来るやいなや、これだよ。どうせあらかたの内容は知っているだろうに、俺を囲んで質問攻めをする。何の時間だこれ、何なんだよ? みんなでよってたかってあいつの悪口を言うんだろ?


「いや、大した理由じゃないよ」

「彼には彼なりの言い分があったみたいで、もう和解したから大丈夫だよ。彼の立場もあるこれ以上掘り返さないであげて欲しい」


「なんだよそれ~」

「やっぱり庭野だな。いくらなんでも優しすぎるだろお前」

「そうだよ。あんなやつに絡まれたってだけで面倒くさいのに、殴られてもこの対応。さすがに神過ぎるだろ」

うるせえな。

知ってることを質問して、これといった回答をしなかった相手を持ち上げる。俺によいしょしておきたいのか、はたまた小野ってやつをただ、追い詰めたいのか? 俺には何がしたいのか全く分からない。


「小野が庭野を殴ったんだよな? 庭野が小野を殴ったんじゃないよなって。どちらかといえばそっちの方があるかなって思って」


「うっそー それマジだったら小野のやつサイテーなんですけどー お前が触れていい相手じゃないって」


「しかも、殴った理由って逆恨みらしいよ。陰キャラは陰キャラらしく端っこにいろってよ」

どこもかしこも俺たちのことを話しているのが聞こえる。そのほとんどが、あいつの悪口を言って俺を立てる。こんなことになるから、あいつに忠告したのだが。

こちらが官軍になることは、あいつだって分かりきっていただろう。黙っておけばいいものを余計なことをして。


「確かにね意味が分からない、でも意味が分からないのが恋愛なのよね。何故その人とその人が好きになるのとか? 好きな人と付き合いたいという気持ちは強いのに、それ以上に好きな人の恋を応援したくなったりと、その本人さえも分からなくなるくらい、意味が分からないのよ」


「知ってる? 夫が不倫相手に一方的に捨てられる。それはそれで妻は不倫相手に頭にくるんだって……奪われそうになって腹立たしいけど、それ以上に自分の夫が魅力がないって思われることが悔しいらしい」


「まあ、あなたには分からないでしょうね。私もあんまり分かんないけどあなたほどではないと思う」

「ただ、何があったとしても、自分の感情を暴力を振るって表現するのは間違っているとは思うけど。言葉で伝える。そのために人として生まれたんだから」


「だよな、普通は暴力を振るう前にまず話し合うだろ? まあ 痛くはなかったけど、いきなり殴ってきたからな、やってることはチンピラと変わんないよ」

やはり彼女と話していると心地がいいな。他の奴らとは違う。彼女といる方が楽だからいい。結婚って~こういう人とすると上手くいくんじゃないだろうか。でもこれ以上彼女が、辛い思いをしてるところを見たくない。


俺が彼女と別れれば、彼女が無視されることも彼女に対する扱いも少しはマシになるんじゃないんだろうか?この彼女に対する思いは恋と表現できるのか?いや、ないない。彼女のことを信じているかと言われても、まだ100%とは言えないしな。


「別れようか?」

「別れたことにした方が君が無視されることも減るんじゃないのか? 俺とこうなったがためにひどい目あってるんだろ?嫉妬って感情だったっけ?」

付き合っていたわけではないが、そう提案したが、彼女は拒否した。俺が彼女との関係をたちたかったわけではない。あくまで、彼女のことを思って提案してみたのだが。


「あなたと別れてからも無視されていたら、その無視は嫉妬じゃなくてただ私が嫌われているだけになるから、そっちの方が辛い。今の方が周りも私のことを無視しながらも少しばかりは劣等感を感じているだろうし」

「私がただ嫌われているだけ。そうなった時は私のいる意味はなくなるから、その時は、死ぬかもしれない」


「うん ああそうか……」


「もし、あなたがそうしたいって思っているなら今すぐにでもそうしていいから。なんなら付き合っていなかったってことにしてもいい。実際付き合っていたわけではないし」


「違うんだ、君が嫌じゃなければこのままでいい。俺は君といると楽でいいから」 

楽だからいい、居心地がいい。それは、彼女のことを好きってことになるのだろうか?

少なくとも嫌いではない。近くに嫌いなヤツがいたら、いくら自分の家だろうと、高級なホテルの中だろうと居心地が言えないだろうし。


「じゃあさ……」

「それならさ、俺たち本当に付き合ってみないか?いいじゃんか、どうせ付き合っていることになっているんだし」

気づいたら彼女にこんなことを言っていた。あれ、これが俺にとって初めての告白か。なんかイメージしてたのとは違う。前の日からそわそわしてどうしようなんて言おうみたいな緊張感があるわけでもない、流れで言ったこの感じを告白と呼べるのか。


「ん? えっ?」

彼女は俺の言葉に戸惑っている。

わりと冷静にしている彼女だが、今は瞬きの回数が明らかに多くなっている。動揺を隠せないのか、冷静さを失っているような気がする。それもそうか、一応告白した相手はこの俺だし、彼女も結局は女子だったということか。


「あ、あなたがそう言うんなら私は断る理由はない」

「本当に私でいいの?あなたなら他の子たちも喜んで手を挙げルんじゃない。中には貢いでくれる子もいるんじゃない?」   


「いや、君がいいんだよ」


「また、思ってもないことを……」

「それでも、嬉しい」


「なら、今日からちゃんと付き合っているってことで……」

「俺たちのことだからな、いつまで持つかな。正直 2週間ですら保証は出来ないけれどな」

正式に俺たちは付き合うことになった。今まで何人もの女子たちを泣かしてきた俺が初めて付き合うことになったのは彼女だった。顔だけでいえば、今まで告白してきた子たちの方が断然 可愛いというのに。この決断を馬鹿だなって言うやつはきっとたくさんいる。それでも彼女には、俺の隣で笑っていて欲しい。また、裏切られることになるのかも知れないけど、少しだけ、少しだけ彼女のことを信じてみようと思う。



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