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僕らは天才じゃない  作者: 七寒六温
11/31

(小野 翔三朗)

「40分くらい、待っててくれたっていいじゃない」

補習が終わるまでたった40分だというのに、てっちゃんとまっつんが待っていてくれなかった。僕のことをおいて2人だけで帰っていた。

そのことに関しては、ムカついたけど、仕方ない。補習になったのはあくまでも僕が頭が悪かったからで、2人のせいではないのだから。


数学の補習が終わり1人寂しく帰ろうと思ったときだった。どこかで大きな声が聞こえる。野球部の掛け声にしてはむさむさしさがない。大きな声であるのに柔らかい心地のいい声だ。


「青春の~~馬鹿野郎~~」


「えっ? 青木さん……」

声のする方を見ると、青木さんが屋上で何かを大きな声で叫んでいた。どおりで心地のいい声だったこと。


「何をしているんだ あんなところで?」

「悩みごとでもあるのだろうか?」

青木さんに悩みごと、そんなの嫌だ。

青木さんには幸せな気持ちでいてほしい、僕にはなんにも出来ないけれど。


「青春の~~馬鹿野郎~~」

再び青木さんの叫び声が聞こえる。

屋上で1人、あんな大きな声で何かを叫ぶなんて僕にはとても真似できない。例え叫びたくなるような嫌なことや悩みがあったとしても。


「あんなところで叫んでいるなんて何かあったに違いない」

ここで僕が青木さんの元に行ったところで何もできるわけではないが、そう悩んでいる間に、男が屋上へと向かっていくのが見えた。

あれはおそらく鈴木俊哉。うるさいと注意しにいったのか。とりあえず青木さんのことは鈴木に任せておこう。


「それより 今日は、小説『転生したワールドはパラレルだったはず』 の最新刊の発売日だったんだ。早く買いにいかないと売り切れる。あの小説は人気なのに、僕の行きつけの書店には在庫が少ないからすぐに売り切れてしまう。保存用と読む用の2冊欲しいからな、急がないと」

昔、この小説の展開の予想をめぐって、まっつんと激しい言い争いをしたことがある。2人とも好きな小説だからこそ熱くなってしまったのだけど。てっちゃんが仲裁に入ってくれたので僕たちは絶交しなくてよかった。


「結果的にいえば、僕の予想の方が間違っていなかったけど」

前巻で、主人公の幼馴染みとして初回から活躍してきたカリンという女剣士が悪の組織に寝返った。結果的に僕が予想していた通りの展開になった。所々で伏線が張られてからそうなることは、小説をじっくり読んでいる人、ファンであれば、まず気づく。



「今さら、まっつんに謝ってほしいとは思っていない」

あのときは僕もまっつんにひどいことをしてしまった。カリンはまっつんの好きなキャラクターだと分かっていながら、

「寝返るんだよ」

「寝返ってもどうせ使えやしないお荷物だったからいらない」

などと言ってバカにしてしまったから、僕にも少しだけ否がある。僕も謝る気はないからこのことはお互いに水に流せばいいことだ。僕はそんな小さな男ではない。 


てっちゃんとまっつんが僕のオタク仲間でいてくれて。2人とも優しくて性格もいいから2人とはずっと友だちでいられそうだ。


「友だちなのに、たった40分の補習は待っていてくれなかったのは気に入らない。転生したワールドはパラレルだったはず の発売日だから尚更待っていて欲しかったのに」

ワクワクと喜びを2人と分かち合いたかったのに。2人は、楽しんでいるんだろうね。2人きりで本屋に言って、今頃、家に帰って読んでいるところかな。もしかしたらどちらかの家に行って遊んでいるはず。いや、絶対に遊んでいるはずだ。僕が鋭い推理をするからって仲間はずれにしなくていいのに。




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