勇者と王女の出会い
「はいどーもー、俺ら二人で、ハーレム狙いな召喚勇者と魔族で僕っ娘王女様て名前でやらせてもろてるんですけど」
「…」
「なんか言えや」
「嫌や」
「舞台の上でまで喧嘩続けたらあかんやん」
「それでも嫌や」
「仕事とプライベートは別、社会人やろ一応」
「僕、王女やからええねん」
「ええことあるか!」
「ええもんパパもええって言うてたもん!」
「魔王さんの魔王はあれ仕事ちゃうくて称号やからええねん!あすいませんね。ちょっと今喧嘩中でね。まさか仕事に引きずるとは思てなかったんですけど」
「僕、悪ないもん」
「それとこれとは別やろ」
「自分が謝らへんのが悪いんやろ」
「謝ってるやん」
「僕の方向いて、僕の目え見て謝って」
「うわめんど」
「誰が面倒やねん、僕、面倒ちゃうやんええ子やん」
「あーわかったわかった」
「ちゃんと、なんで僕が怒ってるかも説明して謝って」
「なんで客の前でこんなことせなアカンの」
「せんのやったらもう今日は漫才せえへん、僕は帰る」
「まてまて!わかった謝るから」
「ちゃんと言うて」
「わかった。あんな、さっきよそ見してたんは、ちゃうねん」
「なにが」
「別の女の子見てたからちゃうねんホンマに」
「そしたら何で僕の話もよー聞かんとよそ見してん、僕正妻ちゃうがか。僕でええがいね。寧ろ自分の好みやん、僕だけ見とけばええわいね、僕以外見んでええやんか。僕だけにせえよ。なんで他の女見るがいね」
「ホンマにヤバいしなんで微妙な金沢弁やねん」
「やっぱ実はハーレム狙ってるがか、目につく女ならなんでもええがやろ」
「ちゃうわ、ハーレムとか言うな」
「そしたら、ちゃんと僕の目みて、僕だけやって言うて」
「おい待て、何でお前だけやって今ここで言わんとアカンの罰ゲームかこれ」
「言うて」
「そやかて」
「はよ言うて」
「あー、あのな」
「うん」
「お前のことちゃんと」
「うん」
「大事やと思てるぞ、第一夫人」
「殺すぞ」
「どつくなや、嘘やん甘いジョークやん」
「甘ないし今の僕にそれ言うたらどないなるか分かってるやんな、自分」
「つうか正妻ジョーク持ち出したんはお前やないかい」
「え、遊びなん?」
「なんか俺がお前と遊び倒して今捨てるとこみたいな言い方すなや」
「あ、遊びのつもりやったんか」
「言い直すなや。世間一般的に遊びと思われるような事、してないですよね俺」
「したやん」
「待て待てまるで俺がお前になにかしたような言い方すんなや俺なんもしてへんやん寧ろ二人で歩いてる時にあれ知り合いかなまさか元の世界の知り合いがこんな所に?て気になったらそっち向くの普通やん四六時中お前の方を向いてたら怖いやろ、逆に歩いてる時にお前の方ばっか向いてたら危ないやろ!」
「そんな言い訳聞きたない」
「言い訳ちゃうよねこれ。一般常識やぞ」
「僕が怒るのは当然やと思う」
「二人でここに向かう最中に、知り合いに似た人がおったからそっち向いただけで、なんで舞台の上でここまで怒られなアカンねん!」
「僕は大事な話してた」
「なんやお前なんの話してたっけ?」
「ほら覚えてへん。最低や」
「いやそれはごめんて、なんの話してたっけ?」
「めっちゃ大事な話やったのに」
「ホンマごめんて、何の話?」
「自分のハーレム、次に誰を迎えよかって話や」
「おいめちゃくちゃどうでもええ話しとるやんけ!」
「どうでもええわけあるか!僕正妻やぞ第一夫人として気にするの当然やん」
「第一夫人てお前も言うてるやんけ!」
「そら正妻こと第一夫人にはハーレム束ねる義務あるし」
「そんな義務ないし、俺はハーレムつくりたないんじゃあ!」
「ホンマは?」
「あー美女に囲まれて暮らしたいですわーってなるかボケ嫌じゃ!」
「僕という絶世の美女に飽き足らず」
「あのな、お前が正妻なんもお前が言うてるだけで俺は聞いてないからな」
「え、遊びなん」
「なんでそこに戻んの」
「僕とのあれこれはすべて、そっか遊びやったんやね」
「やめて俺が騙してるみたいやんか」
「え、僕ホンマに騙されてたん?」
「なんでそう都合よく話をこじらせんねん!」
「ひど!自分ホンマに酷いな!僕の純情弄んでなにが楽しいの!」
「お前の純情ってなんや!」
「僕を第一夫人にしてくれるって言うたやないか」
「お前さっき第一夫人でメッチャ切れてたよな!?」
「嬉しかったのに!」
「お前は嬉しかったら相方を殺すぞ言うてどつくんかい!」
「照れ隠しや!」
「そんな照れ隠しがあるかマジギレやんけ!」
「まあ、それはもうどうでもええんやけど」
「うっそおおお!」
「そんな前フリでいかせていただきます僕っ娘でーすお願いしまーす!」
「前フリてお前な」
「そんなわけでね、今でこそ、こう押しかけ女房やらせてもらってますけどね」
「古い言い方しよんなあ」
「うるさいな、最初の頃は全然そんなことあらへんかったんですよ。マジで」
「最初のころ?」
「そうや、人類の救世主たる自分と、魔王の娘な僕が初めて出会った時や」
「そんなドラマあったか?」
「魔王の城でな」
「あれお前ん家って城ちゃうよな」
「城やってんて。乗っとけ自分」
「ええ?何が始まんねん」
「自分が、こう、ボロボロの剣を、構えててな」
「え?そんな事あったっけ?」
「パパがふんぞり返って自分に言うてたわ」
「なんて」
「お前の力はそんなんもんかいな、て」
「なんやら急に微妙になったわ」
「そんで僕が、はやく終わらせてこの本読んでパパ!て後ろでな」
「お前フリーダムやな!」
「僕が寝る前に絵本読んでくれる約束やってん」
「魔王とは思えんいいパパやし、お前いい年してなんなんそれ?」
「めっちゃ優しい自慢のパパやからな!」
「魔王やん。そんな戦い娘に見せたらアカンのと違うか」
「僕がどうしても、てせがんでん。終わったらすぐに本読んでもらおと思て」
「それ勇者やったらメッチャ引くわ〜」
「引いてたやん」
「記憶まったくないなあそれ。いつの話や」
「僕が五歳ん時かなあ」
「そしたら俺六歳!絶対それ俺ちゃうよ!」
「いやいや、僕も絵本読んでなんて子供のころに決まってるやん」
「俺はそんなちっちゃい時から勇者やってへんねん!」
「いや自分やで、ちっちゃい自分がボロボロのな」
「ほんまに?」
「ほら、あの、スポーツチャンバラ構えててな」
「遊びやん!」
「そやで全世界ちびっこスポーツチャンバラ決勝戦や」
「なんでそんなん魔王の城で開催しとんねん!」
「各世界ごとの出場者を呼び出すとか魔王のパパ以外誰ができんねん!」
「全世界ってそういう意味か!そんな無駄な努力はいらん!」
「無駄ちゃうわ!大会は大盛況やってんで!」
「お前ら以外の世界は大会あることすら知らんやろそれ!」
「ええやん盛り上がってんから!」
「そしたらお前はなんでそこで絵本持って待ってんねん!寝る直前やんけ!」
「もうお眠やけど、パパを待ちきれへんかってん!」
「そんな言い訳通用するか!しかもちびっこ言うて魔王なんで出とんねん」
「優勝者とのエキシビジョンマッチやった」
「殺す気満々やん」
「そや。決勝が押しててな、僕もう寝る時間なのに大会終わらんくてな」
「押すってなにが」
「決勝戦が長すぎてな、僕寝る時間やし優勝者僕ちゃうし、もう寝よかなあ思ててんけど、パパが、もうどうでもええわ早よこのガキしばいて帰って絵本読んだるからなあ、て僕に言うてくれたから。僕もええよ待ってるで、て待ってたんよ」
「酷い話やなあ」
「そやで、それに決勝まで残ってたから、僕も疲れてたんよ」
「え、待って」
「なによ」
「優勝は俺やんなそれ、記憶ないけど」
「ん、そやで悔しかったけど僕、準優勝や」
「そしたら出会いは決勝戦ちゃうんかい!」
「記憶ないねんなあ、そこは」
「なんでやねん!覚えとけよそこまで言うなら」
「そやけど、不っ細工なチビガキとの戦いなんてそんな記憶残らんやろ」
「初対面の六歳の俺に謝れや!」
「ごめんな六歳ん時の自分」
「今謝るなやそん時謝っとけや!」
「え、けどそん時はもー見るからに倒れそうでボッロボロでな」
「そら魔王さんにしばかれてたらそやろな」
「いや僕に」
「あ決勝戦の話!?それで俺が勝ったの!?」
「そや無意識でな」
「俺すごいなあ」
「ちゃうよ、眠くて僕が意識失う思た瞬間や」
「試合中に寝るなや!」
「そやかて眠かってんもん。自分もしばきまくったのに諦めへんし」
「どつかれまくってるやん。よー勝てたな俺」
「そんであー眠いなて目え閉じた瞬間にな、すいっと正確に胴をパーンてされてな」
「目閉じるなよ」
「長かってん試合が!そら眠なるよ」
「ま、なんやらええ勝負しとるな俺」
「その後、僕が倒れてパパが乱入してな」
「なんでやねん」
「僕はもう、半分寝てもうててな」
「俺のせいではないなあ、それ」
「パパは、俺の娘に勝つとか空気読んどけやワレって叫んだんよ」
「エキシビジョンマッチちゃうやんそれ。えこひいきからの親バカやん」
「な、ええパパやろ?」
「そん時から親バカなんは、別にそれ知らんでもわかるけどな」
「そんで優勝したんやから、俺ともやれーてパパが言い出して」
「もう一回言うけど、殺す気満々やん」
「自分、パパにボッコボコにしばかれてな、それでもチャンバラソードを構えてな、諦めんとな、山みたいなパパにな突っ込んでいくのよ」
「俺、六歳ん時そんな根性なかったと思うけどなあ」
「負けても殺す、勝っても殺すってパパに脅されて泣きながらな」
「虐待やでそれ」
「おしっこ漏らしてな、うあうあーって言いながら」
「ホンマに虐待やん!」
「めっちゃ格好良かったわ」
「それホンマ?大丈夫か五歳のお前?」
「うん。そん時思ったんよ」
「なにをいね」
「勇者やなあって」
「そうきたか、うるさいわ」
「パパもあーコイツ勇者やったわ不味いわ〜て気づいてな。そこであわてて元の世界に送り返してな」
「あ、ホンマに勇者やって気づいたんか」
「そやで、遊びとはいえ魔王に立ち向かえるんは勇者だけやし」
「なんでそれでエキシビジョンマッチしよ思とんねんお義父さんは」
「僕が負けて切れてたんやろねえ」
「六歳児にきれたらアカンやろ魔王が」
「後でなんで勇者を出場者に選んだか、で揉めたわ」
「選ぶ時に調査くらいしとけや、企画グッダグダやないかい」
「そやねん。決勝からのエキシビジョンのグダグダも批判されてな」
「まあ俺でも批判するわ。おもに児童虐待の観点から」
「そんでパパが切れて会場で大暴れしてん」
「たしか、自分ん家やんな会場って」
「そやで、そんで城もぶっ壊れて、後片付けやらなんやら忙しくて、結局パパはその日、絵本読んでくれへんかったからよー覚えてるわ」
「絵本が中心なん、その記憶!」
「当たり前や。僕とパパの話やろ」
「違うわ俺とお前の出会いの話や!しかも俺も知らん!記憶もない!」
「けど自分、恰好よかったで、てことで僕自分のこと覚えたんやで」
「え、ホンマに?」
「嘘や」
「うっそやん!」
「あたりまえやん。そんなおもろい話あったら出会うた時に言うてるよ」
「そやな、さっきも言うたけどお前ん家、城ちゃうもんなあ!」
「二人で歩いてる時によそ見するよな人にホンマの事言うわけないやん」
「え、まだ怒ってるんかい」
「結局、目え見て謝ってないやん自分」
「なんども謝ってるやん」
「謝っても殺す、謝らんでも殺すって言われるで、ていうか言うで」
「嫌じゃ!なんでよそ見しただけで殺されんねん」
「僕以外を見てるからや、僕だけ見とけばええねん自分は」
「それ本当に怖いからやめい。執着すごいなお前」
「そら五歳ん時にあんなん見せられたらそうなるわ」
「え五歳て嘘やったんちゃうんかい!どっちやねん」
「どっちでもええわ!もうええわ!」
「よくない!どっちでもええことない!それはホンマの話かだけでも言えや!どうもありあたっしたーってホントにどっちか教えろよお前後で!」