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勇者を狙いに来る女

「はいどーもー」

「はい、俺ら二人で、ハーレム狙いな召喚勇者と魔族で僕っ娘王女様って言います。長くてわけわからんかもしれんけど名前だけは覚えてくれると嬉しいなあ、て思いますおねがいしまーす!」

「別に、勇者と僕っ娘でもええんですよ。ググればええんやし」

「んーネットに頼りすぎちゃう?」

「僕の事は美人、王女で検索したらすぐ出てきますから」

「なんやその私美人、みたいなノリ嫌われんで」

「こっちは勇者、不細工、芸人て3つ入れな出てきません」

「真ん中に必要ないのがあるー」

「えめっちゃ必要やん」

「なんで」

「勇者、芸人だけやと、昔流行した深夜ドラマしか出て来いへん」

「あーあれな」

「多分自分が考えたんと違う奴やし、それよりもっと下ってことやで」

「まあそやろなあ。けど不細工要るんか凹むなあ」

「不細工極めた顔してなんでそんな事言うの」

「お前が酷い扱いしてるだけや、そんでお前はなんやねん。なんで二つでええの」

「いや美人、芸人、王女で検索したら僕だけんなんで」

「そらそやな」

「美人、王女でもトップ僕やから、僕の凄さが際立つやん」

「やらしいこと言うてる」

「いや美人て入れても真ん中に出てくるけどな」

「なんやそれ」

「王女、でも上位には出てくるし」

「その自画自賛はイラつくね」

「なんやかんや言うてね、漫才やってる僕っ娘の王女で絶世の美女なんて結構属性てんこもりですし」

「この前、お前単品で雑誌表紙のオファー来たからな」

「マネージャが断ってましたけど」

「お前のオトンな」

「なんか、パパ雑誌潰す勢いで切れたからな」

「そや、ワシの娘に何ハレンチな恰好させる気じゃ殺すぞ〜て叫んでたぞ」

「そやねん、雑誌ホンマに休刊してん!やっぱパパ凄いな!」

「怖すぎや」

「別に僕の水着とか、ええと思うけどな」

「え、お前、乗り気なん?」

「まあ僕アイドルやし」

「違うけどな」

「僕かてなんか芸能デビューして、なんかちょっとアバンチュール的なのあってもええと思うんやけど。自分がハーレムしてんねんから」

「そこや!」

「うわビックリした」

「俺は無理やり漫才させられてる元予備校生であって、毎回、舞台立つ度、雑誌の取材でも劇場のコンビ紹介のとこでもなんならウェブの紹介ページでも、無理やりハーレム勇者にさせられそうな可愛そうな予備校生って真実を伝えてきた積もりなんですけどね」

「まあ、そういう設定をな」

「それで毎回お前がちゃうやんお前ホンマにハーレム狙ってるやんて言うてネタにしてきたんです。今みたいにな」

「ネタちゃうやん」

「そしたら先週ね、先週の話なんですけど」

「なんや」

「俺ん()にあなたのハーレムに加えて下さいって女が来たんですよ!」

「マジで!ホンマに!」

「ガチ話や!」

「僕の差し金ちゃうよそれ!」

「それやったらお前ぶん殴って終わりや!ちゃうねん、マジの子やってん」

「自分みたいな不細工でもええんやな」

「今ぶん殴るぞ」

「ええやん、そんでそんで?」

「本当に俺ハーレム要らないんですごめんなさいってね、断ったんですけど」

「へー」

「ドアホン越しにね、顔もよー見てないんですけど」

「見てへんの」

「帽子で顔隠しててん、それが三時間玄関に居座られてみ?」

「ああ、家バレてるんや怖いなそれ」

「そやねん!警察来るのもめっちゃ遅くてな!ほんま怖かってん!」

「かわいそやな」

「そんなん男だけで十分やねん!」

「え、男ならええの!?」

「ちゃうちゃう、お前に惚れてる男子ファンが週二くらいで突撃してくんのよ」

「そんなんもあんの!」

「まそれはね、警察呼んだ後ね、近所の公園で話し合って終わらせたりしてるんですけど」

「大人の対応〜」

「相手は純真な男の子やからね、お前のファンなんて狂ってると思うけど」

「なんやそれ」

「けどまさかハーレムネタに乗っかってね、しかも自分も加えてくれって子が来るとは全く思って無かったからね、ビックリしすぎて怖いんですよ」

「こんな水抜いた田んぼみたいな顔んとこよう来ようと思たなその子」

「その俺に対して正妻やの第一夫人やの毎回言うてくる人もおるけどな」

「誰やそれ」

「お前やろ、そんでまた新しいディス考えんでええねん」

「え、田んぼみたいな顔しとるやん」

「今時の若い子って田んぼ見たこと無い子もおんねん!」

「それがなんや!」

「ディスかどうかもわからんやろ!」

「あー、そういう」

「なんでお前が俺をディスるとこまで考えたらなアカンねん、なんで漫才してるだけで女の子家に来てまうねん、もう怖いわ辞めたいわ」

「アカンし、女の子来るの嬉しいやろ?」

「嬉しないわ怖いわ!」

「そんなん有名税やろ諦めたら?」

「ここで言っとかんと、また別の子来てまうやん!俺ホンマに違うから!狙ってないから来やんといて!マジ頼んます!」

「しゃあないなあ、そしたらな、僕がトレーニングしたる」

「なに?トレーニングって」

「自分のハーレムに加えて下さい、ていう女の子やったるから、自分僕を撃退してみい」

「いや普通に警察呼んでるから」

「ええ、やってよお。ちゃんとトレーニングしようやー」

「なんやねんそれ」

「自分のハーレム加えさせてくれってこんな不細工ん所来るってなんか理由あるはずやん、それを知りたいしなんかシミュレーションしたらわかるかなって」

「たとえ事実であっても、舞台ちゃうかったらどついてるぞその台詞」

「わかってるよ舞台やから言うてんねん、な、やってみよ?」

「しゃあないなあ、普通に警察呼ぶんやけどなあ、一回だけやで」

「わかった、そしたらピンポーン」

「はいはい、どちらさんですか〜!」

「ただいまあなた!」

「はい警察」

「待って待って、自分ちょっと待って」

「どこに待つ要素あんねん、いきなりあなた呼ばわりとか知らん人からただいまって言われたら警察じゃ」

「軽いジャブに全力カウンターはやめ〜や」

「うるさい普通に警察呼ぶって言うたやんけ」

「話続かんやん」

「話する気もないねん」

「ファンかもしれんし」

「ファンはな、いきなり俺のハーレム入れてください、とは言わん」

「ファンクラブのノリかもしれんやん」

「そしたらファンクラブのルールに、ハーレムと勘違いするなさせるような事言うなってつけてもらうわ!」

「自分なんかトラウマでもあんのかエラい対応固いぞ」

「ええねん、よしトレーニングできたな」

「出来てへん、出来てへん!もう一回やらせて!」

「なんでやねん」

「面白くない!」

「俺は、本気で!怖い!面白さ要らん!」

「そんな事言わんと、な、もう一回だけ!な!」

「まあ仕方ないなあ、あと一回だけやで」

「やったありがと!ほないくで!ピンポーン」

「はいはい、どちらさんですか〜」

「あ、あの、勇者さんのお宅ですか?」

「はい警察」

「待て待て待って自分早すぎひん?」

「勇者かって聞いてるやん、分かってる人ならそんなうわずった声で聞かん、自宅押しかけるヤバいファンには違いないからまず警察」

「いつもと(ちご)うて冷静かつ論理的に突いてくる自分のが怖いんやけど」

「真面目にやっとるからな」

「トレーニングにならんやん」

「トレーニングせなアカン程関わったらアカンねん。まず警察やで」

「冷静すぎる」

「そら怖いもん」

「けど、もしかしたら〜ていう場合もあるやん、もう一回やらせて!」

「お前面倒いなあ、もう好きにしたら」

「ありがとう!ほないくで、ピンポーン」

「はいはい、どちらさまですか〜」

「あー、勇者さん宛に小包でーすサインお願いします」

「はい警察〜」

「待ってて!おかしいやん!僕、普通の宅配のアンちゃんやん」

「あ俺、物を送ってもらう時全部事務所にしてもらってるから」

「はあ?」

「俺ん家に来るわけないもん」

「え、けど誰か間違ってやな」

「住所も誰にも教えてない」

「怖い!その徹底ぶりこわい!」

「当たり前や俺勇者やぞ、いつ魔王とその娘の命狙うワレ殺ったるっちゅう若い奴来るか、爆弾送りつけるか分からんねんぞ、気いつけるやろ」

「え自分それ本気で言うてる?」

「あのな初舞台の直後に実際爆弾届いて怪我してんねん俺」

「それも初耳!」

「爆発してな、部屋ぐっちゃぐちゃなってな」

「え、自分怪我なんかしてたっけ」

「指、火傷しとんねん」

「頑丈!大丈夫やん!」

「部屋の片付け面倒いねん!」

「そんな理由か!」

「当たり前や!ちなみにこれ、お前のオトンは知っとるで」

「パパなんも言うてないよ!」

「なんなら今は、二四時間ボディガードつけられへんか頼んでるぞ、事務所っちゅうかお前のオトンの経費で。渋い顔してるけどな」

「若手漫才師に対するケアちゃうもんな」

「全部相方とそのマネージャのせいやねんけどな!俺のせい違うから!」

「そうなんや」

「そや、よっしゃ今度はどんな手で来んねん、やってみい」

「んーほなこんなんはどや!ピンポーン」

「はい、どちらさま?」

「あー警察のもんですけど、いつもの巡回で」

「はい警察」

「えー警察やで!」

「見回りに来てくれる警察署の人とは一通り面通しすませてんねん。知らん人が警察って言うたら即通報やし多分逮捕できるし」

「なんなん?自分ゴルゴなん?SPなん?」

「そんな単純な手には引っかからん、ちゅうこと」

「なんかむかついてきた、そしたらピンポーン!」

「はいどちらさまですか」

「あのー、裏の高校の者なんですけどお、週末文化祭がありまして、お休みの所ご迷惑お掛けしますので、近所の人にご挨拶に伺ってるんです」

「あ、そういうの結構なんで」

「いえいえ、それでご近所の方には無料で入場券も差し上げておりますので」

「はい警察」

「なんや上手いこといってたのに!なんで!」

「あの裏の高校はな、一昨年入場券転売されて変質者が侵入して騒ぎんなってん、そんときからご近所に入場券は配ってへん」

「自分怖いな!ホンマに怖いな!なんでそんなことまで知っとんねん」

「そら自分の家の周りの公共施設、学校、その他の施設で何があったかはいつもチェックしてるし、場合によっては警察沙汰んなりそな人近所におらんかチェックしてるぞ」

「いやホンマに自分誰やねん」

「普通ちゃうん?」

「普通ちゃうんちゃう?」

「命狙われてる人の普通や」

「命狙われてんの!」

「爆弾送りつけられてるからね俺!」

「そやったな」

「そやで、ほらそんなガチな俺を騙せるもんなら騙してみい」

「なんか燃えてきた僕。いくぞ。ピンポーン」

「はいはい何ですか〜」

「あのー隣の部屋の」

「はい警察」

「はーやーいーて。隣の部屋しか言うてないよ」

「俺、住んでるフロアの部屋3つ借りてんねん」

「え?」

「並びで3つ。そんで真ん中住んでんねん。隣の部屋な時点でアウト」

「くそ、そしたらピンポーン」

「はいなんですかー」

「上の階のものなんで」

「はい警察」

「なんでー」

「住んでるフロアだけやと思うな。当然上も下も借りとるわ」

「当然違うと思う僕」

「せやから、命狙われてる人間の普通や」

「なんで若手漫才師がそこまでセキュリティ気にすんの!」

「魔族の王女なんてヤバいのとコンビ組まされたからや!これ何回目や!」

「むー」

「むーとか言うな。ここまで注意しとる俺んとこ来る奴って、既に危険やねん」

「なるほどなー」

「わかったやろ。ハーレム加わりたいって女の怖さが」

「自分ゴメン」

「なんや」

「実は先週のその人」

「え、なに?やっぱお前の差し金か?嘘ついたん?」

「嘘はついてへんけど、それ、ドッキリやねん」

「なんて?」

「ほら、僕単品のオファーの話してたやん」

「あ、雑誌つぶれたっつうな」

「あれの他に、僕がスタジオで自分がドッキリかかるって企画あってん」

「まさかのテレビオファー!」

「舞台でハーレムネタしてるから、本当にそういうの来たっていたずらしたら面白そやなって」

「悪い企画や」

「そんでな、自分があんまり引っかからんからな、企画潰れてん」

「なんじゃそりゃ」

「最初の爆弾からドッキリやねん」

「お前アレ、ドッキリで許される爆弾ちゃうぞ!」

「いやパパがノリノリでな、どうせ自分爆弾ごときでは死なん言うて」

「部屋ぐっちゃぐちゃんなってんねんけどなあ」

「最初はな、自分のビビリ具合とか笑えてんけどな」

「そらあんなんビビるよ」

「途中から自分のガチ具合に皆テレビの人も引いてもうて」

「まるで俺がヤバいみたいな言い方すんなや」

「いや、自分がガチすぎんねん」

「命狙われたら皆そーなります!」

「そんで企画没んなってん」

「お前らのせいやと思うぞ」

「デビュー時から仕込んでたドッキリ潰された僕らの気持ちわかる?」

「全然わからんしざまあみろと思うわ」

「そんでな」

「うっわアレ全部ドッキリなん?ドッキリで警察の警備まで頼んでもうたよ」

「あ、その警察の人もドッキリやから」

「俺、警察署まで面通し行ってるんですけど!」

「そこは魔王パワーでなんとかしました」

「何も信じられんくなってきたわ」

「そやねん、事務所全面協力でやってんのにさ」

「魔王が全面協力してる時点でそれドッキリの範囲大幅に超えてるからな」

「ドッキリかからへんから、てってれー、ドッキリでした〜、て出来んし」

「たしかにそれ言われた俺はどいつもコイツもぶち殺す勢いんなるわ」

「もう、自分にドッキリでしたって言うのやめとこかってなってな」

「おい!」

「自分のせいやで」

「ドッキリってネタばらしせんとドッキリしたら、それは単なる嫌がらせ!」

「ちゃうもん!ドッキリやもん」

「つうかな?」

「なんやのん」

「これ、ネタちゃうやん、殆ど実録やん」

「実生活から面白くてええな!」

「お前な、最終的に誰がバラすで揉めて、魔王(お義父)さんにバラさせてな」

「大変やったねえ」

「勇者と魔王が一晩中ガチ殴り合いするハメなってんねんで」

「自分、めっちゃキレてたもんな明け方ついにパパに謝らせたもんな」

「どこが面白い話なんか教えてくれ」

「え全部」

「見てみい。お客さんが全員ドン引きしとるわ」

「笑てるやん」

「引き笑いや、反省せいお前」

「折角のテレビ企画潰してんねんから自分もちょっとは反省してほしい」

「企画の不味さをどうにかせい!またキレるぞ!」

「やめて、片付け大変やし」

「そんでこれ、ネタにしよとか何が面白いねんコレ」

「え、笑えるよ」

「俺が単に魔王一家にいじめられてる話やんけ」

「いやいや、お客さんまた痴話喧嘩か〜犬も食わんわーてなってるって」

「今のどこに痴話の要素あったんですかね!」

「何で僕が、自分の家の裏に高校あるの知ってるか、てとこちゃう?」

「あー、そこかー」

「ええねん、自分は危ない女なんかおらへんかったんや、でええやん」

「そこだけやんか」

「僕は、自分はやっぱり浮気なんかする男違かった、で嬉しいし」

「お前のそこが一番怖いねん」

「万々歳や!」

「俺の被害無視すな!もう俺やめさせて」

「もらえると思ってんのか僕こんなんやし僕に付き合うてくれる自分離すわけないやん?ふふ」

「せめて最後まで喋らせてくれ怖いっちゅうねん!もうええっちゅうねん離せ!」

「ふふ、ありがとございましたー!」

「怖い!」

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