6、遭遇
最近、あいつは学校に通いだした。
何でも、入学手続きに時間がかかって、今までは通えてなかったらしい。
学校に通いだしてから、あいつが俺の家に来る頻度は減った。
…ふん、良いことじゃねぇか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ、フェアラート!」
呼び捨てかよ。
って、おい!
「何でお前がこんなとこいんだよ!?」
俺はとある仕事で住んでる街の隣の隣くらいの街にいる。
「私は、…学校帰りよ!」
にしては、かなり遠くへ来てやがる。
「……お前、さては迷ったか?」
俺は、じとりとした目を向けた。
「そ、そんなわけないでしょ! あと、私はお前じゃなくてサファリよ!」
「はっ、ガキはお前で十分だよ」
やっぱり迷ったか?
「ちっ。仕様がねぇな」
そう言って俺は子供の手を掴んで歩きだした。
「ちょっと! 迷ってないって言ってるでしょ!? だいたい、フェアラートのほうこそ、こんなとこいるの!?」
「あーあー。続きは家で聞いてやる」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「んで? 何だってあんなとこにいたんだ?」
あの街は、治安が悪い。子供が一人で歩いてたら、いつ誘拐されてもおかしくないくらいには。
まあ、だからこそ俺みたいな奴はこぞって集まるのだが。
「…うち、お父さんいないの」
「へー」
そう言えば会ったこと無いもんな。
「だから、お母さんは毎日、外で働いてるの」
「……で?」
「家で、いつも疲れた顔をしてて…だから、私が少しでも働けばって思ったの」
「バレないように遠くの街でか…」
「そう」
なるほどなぁ。
「……でも、あの街は止めとけ。あそこは、ヤバい奴が多いから」
「やだ」
…はー。
「なんでだ?」
「あの街だと、学校にバレづらいって友達が言ってたの。私の学校、仕事をしながら通うのは禁止だから」
……本当に人間ってのは、面倒なルールが多いな。
「よし、分かった。お前はバイトしたいんだな?」
「うん。給料も多い方が良い」
っとに、面倒くせぇな。
「俺に任せろ」
何せ、俺は神様なんでな。
人間の願いを叶えることなんか、お手のものさ。




