17、勧誘
その後、俺の予想は見事に当たり、旦那は奥さんの下にやってきた。
始めは両者なかなかに緊張しているようだったが、まあもとは夫婦であっただけあって、きちんと和解ができたようだった。
俺が思うに、あいつがいたからじゃねぇかと思う。
よく言えば、子は鎹。悪く言えば……ってか、空気固まってる横で、ガキにあんな心配そうな顔されりゃ、何とかするしかねぇよな。
あいつはある意味最強だ。
俺は何故か話し合いの場に参加させられた。
……何故だ。俺は普通に家族水入らずを勧めたのに。
旦那によると、旦那の両親…つまり先代伯爵は旦那が全力で説得したらしい。
……というか、脅したんじゃねぇか?あの旦那、若干俺と同類の匂いがしたぞ。
まあそれはどうでも良いとして。
とにかく、あの一家は貴族に戻って、屋敷で一緒に暮らすことにしたらしい。
離れて暮らしてた家族は廻り合い、俺の楽しい人生ももとに戻る!
最高じゃねぇか!あいつのお守りから解放だッ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ガチャ。
いつも通り、俺はボロボロのシャツとパーカー、ジーンズを着こみ、安物のスニーカーを引っかけて家の扉を開けた。……すると。
「……何でお前がいるんだよ」
「……いちゃ悪いの?」
名門伯爵令嬢となったはずのお嬢様が、扉の前で仁王立ちしていた。
「お前、貴族様だろ?何でこんなボロアパートに、一人で来たんだよ」
「なッ…ここは、私もこの間まで住んでたのッ!ボロアパートじゃないわよッ!」
「ああそう言えば。で、こんなとこに一人で何の用だ?」
そう聞くと、あいつは得意そうに笑った。
…チョロいな。
「ふふふ、あのねぇ。私ねえ、今度パーティーを開くの!」
「…へー」
「フェアラート、参加しない?」
「……は?」
パーティーって、あれだろ?
なんか、貴族の仲間入りおめでとー的なやつだろ?
……何で俺が参加するんだよ。
「ってか、俺今、平民なんだがッ!」
「大丈夫!お父様に頼んだら、良いって言われたからッ!」
へー。意外と仲良くやってんだな。
……じゃなくて!
お前んち、そこそこ名門だろうが!
平民をそう簡単に参加させんなッ!
「わざわざ抜け出して伝えに来てやったんだから、感謝して参加なさいッ!」
「まさかの無断外出かよッ!」
駄目だこいつ!
貴族の自覚、まるでねぇ!
「仕様がねぇな……」
「来てくれる!?」
輝く瞳を向けられた。
…眩しいんだが。
俺は黙ってあいつを担ぎ上げた。
「ちょッ、……レディに何するの!?」
「家を黙って抜け出すやつは、レディじゃねぇッ!ってか、誘拐されるかもしれねぇんだから、二度とやるなッ!」
…ったく、手のかかるやつだ。カジノに行くのが遅れちまうじゃねぇか。




