14、愚問
「……なあ」
「なによ」
「お前、父親のことはどう思ってる?」
正直、踏み込みすぎな気もするが。
目撃した以上、一応は話しておくのが筋だという結論が出た。
「……父親? おとうさんってこと?」
「ああ」
聞かれるとは思ってもいなかったとでも言うように、あいつは言い淀んだ。
暫く宙を見つめた後、思いもよらない回答が帰ってきた。
「…よく、知らない」
「……」
おいおい、あの男はこいつの母親の旦那だって名乗ったよな?
……予想以上に面倒事の予感がするな…。
「物心ついた頃にはお母さんと二人暮らしだったし……おとうさんがいるって
話も聞いたことない」
「……そうか」
じゃあ、こいつには話すべきじゃないのかも知れねぇ。
よし、タイミングを見計らってこいつのお袋さんに言っとくか。
「人の事よりさ、フェアラートはどうなの?」
「は?」
「フェアラート、独り暮らしでしょ? お父さんとかお母さんとか、どうして
るの?」
……んんん、いやぁそいつは愚問だな。
「俺には父親も母親もいないのさ」
「……は?」
「だから、いねぇのさ」
「……死んだってこと?」
「いいや? もともといねぇんだ」
「…いや、そんなわけないでしょッ!」
無いわけないだろ。
俺、神様だし。
暫く経った後、あいつは口を開いた。
「……寂しくないの?」
「はぁ? 寂しくなんかねぇけど?」
俺はいつも通りヘラリと笑った。
神様やってた頃は、何億年も一人なんて、ザラだし。
いちいち寂しく思ってたら、仕事になんねーじゃん。
「……ふーん」
あいつは納得のいかなそうな顔をしていた。




