9、勉強
「で? 結局、何が分からないんだよ」
俺は部屋の椅子に座り、向かいに座るあいつに聞いた。
因みにここは、あいつの家のリビングルーム。
二人掛けの食事用のテーブルに座っている。
「…分からない…」
「…は?」
「何が分からないのか、分からない…」
おおぅ。
「もう、末期症状じゃねぇか…。お前、馬鹿なんだな」
「うるさい! しみじみと言うのは止めて!!」
取り敢えず、学校で出された宿題をやらせた。
…が。
「…お前、十歳だよな?」
「そうよ」
「…なんで…かけ算を間違えてるんだ…?」
「間違えてないわよ?」
「…シチゴ?」
「…37?」
「………」
「え、嘘、違う?」
「……35、だ」
「惜しい!」
「惜しくねぇよ! 算数や数学は、2つもズレたらアウトだ!!」
大体の教科が、この調子だった。
……俺、何か今日、無駄に疲れさせられてるな…。
「…取り敢えず、バイトは諦めろ」
「え、何で?」
「何でじゃねぇよ! 一年生からやり直せ!」
「失礼ねー」
「いや、マジだ」
「…勉強なんか出来なくても、仕事が出来れば良いのよ」
「諦める前に勉強しろ! 学生の本分は勉強だ!」
「……フェアラート、意外とウザい」
「ああ?」
「ナンデモナイ、です」
普段と俺たちの立場は逆転した。
っておい! 俺、いつもナチュラルに尻に敷かれてるのかよ!




