善と悪
第6章 善と悪
1
トモとトム、そしてトモの父である元オダの4人で話しをしてから半年程が経っていた
元オダによると
もうしばらくは、ある町を見ているフリをしといた方が良いとの事だった
その間にも4人での話し合いをあの民家でしながら
ある町にも口出し人として何度も足を運ぶようにした
元オダが言うには
あの民家に面談場所を異動出来たのも
国の監視下に無いところで出来るように
国が信頼するまで長い年月をかけて国に忠実に行動しているフリをしてきた賜物との事だった
ある町に何度も足を運ぶことで
国に対して懸命にやっている印象もつき
監視の目も緩むとの事だった
なんでも、リセットなどを行う研究施設が、
ある町のエリア内の隠れた場所にあると言う事で
トモと元オダが入るのにはいろいろな許可が必要になるとの事で
研究施設に怪しまれずに入る為にも
少しでも監視の目を緩める必要があるとの事だった
話し合いの中では
まず住民を助け出す事
研究所を機能停止させる事
そしていかに国から気づかれずに作戦を遂行出来るか
この議題を中心に話しがすすめられていった
住民を助け出す
言葉では一言ではあるが、もちろん簡単なことではない
ある町の人口は約2万人
一気にといってもバレてしまうだろうし
仮に1日1000人ずつだとしても20日はかかり
その間にバレてしまうリスクがある
研究所の機能停止
どのようにして操作するのかも
停止するのかも分からない
ただ、監視が緩くなって
研究所内に入るスキが出来てくれば
なんとかなるかもしれない
作戦の遂行の為にも
その後もある町を良くする事も考えて遂行していった
はじめの頃と違うのは、自分と元オダとのやり取りだけでなく
4人で相談していける事で
町からの不満の声なども聴こえてこなかった
町は以前よりも発展をし
バスの本数も増え
郊外地を循環型の電車も走るようになり
各郊外地のアトラクション周りにも商業施設が建つようになってきた
…といってもプログラムで出来る事だから
人以外のところは通常では考えられないような恐るべきスピードで出来上がった
そんなこんなでまた半年が経ち
はじめて4人で話してから
1年が経過していた
その頃には
ある町の良い発展もあり
国はオレの事も信用しているとの事だった
元オダとトモにしても
以前よりも信用が増し
研究所にも2人だけで入ることも許され
特に監視がつくことも無くなったとの事だった
そんな状態にもなり
オレが研究所に入っても
特に問題は無いとの事だった
ーこうなる時を待っていた
町に関わっていく中で
作戦も何度も練られていった
住民の救出
ここに関しては
プログラムを逆手にとって
人間と瓜二つのロボットを動かすようにし
その間に午前午後で5000人ずつ動かし
2日間で作戦を遂行後に研究所も停止させる
研究所に関しては
元オダとトモが調べまくり
停止出来るでだてがたったようだった
国から監視役が来るのが1週間に一度ほど
どの曜日に来るかは未定との事だったが
作戦決行日は次の監視がきた翌日にしようとの事になった
ーここまでは滞りなくいっている
作戦も練りに練った
あとは実行するだけ
…次の監視が来るまであと1週間だ
2
監視と言っても
特に町全体を見るわけではない
研究所を1時間程みて帰っていく
それだけの時間なのだが
どの曜日のどの時間に来るのかが分からない
でも1週間に一度だけというのは決まっていた
そしていよいよ監視の姿が見えた
オレは研究所の外の物陰に隠れながら様子を見ている
研究所にしか現れないこともあって
姿を見るのははじめてだった
サラリーマンが着るようなスーツを着て
SPが付けてそうなデカめのサングラス
髪はキッチリ七三に分けられていた
体格はガッチリしており
2メートル近くはありそうな身長と
大人でも軽く持ち上げそうな筋肉隆々とした
格闘技でもやっていそうな身体つきだった
長年の信頼もあって
監視の内容は簡単なものだった
研究所の窓からそっと中を覗くと
元オダとトモと話しを少しの時間して
サッと周りを見渡して
ものの15分程で帰っていってしまった
監視役が帰り
トモが合図をすると
オレも研究所の中にはいっていった
研究所の中はいたってシンプルで
6畳程の広さの中に
部屋の半分くらいを大きなコンピュータが
埋めていた
コンピュータは様々な形をしたボタンが
コンピュータの3分の1を占めており
他の部分は町のあらゆる所を映すモニターとなっていた
オレは研究所に入るなりトモにむかって
「準備は出来てるのか?
5000人規模の移動手段とか
救助した住人たちに一度エリア外で集まってもらって事情を話したり…」
心配をよそにトモは淡々と話す
「心配ないよ。
移動手段はブンの発案のピストンバスを使って集合場所に行くようにプログラムするし
事情を素直に聞き入れられるようにもプログラムして、その後のそれぞれの生活場所も考えて割り振り出来るようにしてあるよ
その為の長い年月と
この2年近くの準備だったからね。」
トモの落ち着き払った態度に
少し安堵の気持ちになり
ふぅっと思わず息をついた
ーいよいよか…
失敗したら何されるか分からない
生命のエネルギーを使っていることに何とも思ってなく、なおかつ軍事利用もするかもしれない
そんな相手のする事…
消されるかもしれないな
そう思うと背筋がゾクっとなるのを感じた
作戦の流れは
まずプログラムを作動させて住民がバス等を使って各郊外まで行き
郊外に住んでいる住民と合流してから町のエリア外に移動し
エリア外のプログラムに設定した場所にて説明会を行い
順次、各々の住める場所に移動していく
住民が移動したすぐ後に人間と同じ形をしたロボットを出現させる
それを2日に分けて行い
2日目の移動が終わり次第に
研究所の機能を停止させる
いたってシンプルだが
複雑すぎても遂行しずらく
上手くいかない可能性が増えるとの事だった
作戦の動きのメインは元オダとトモ
オレは監視役や、不審な人物が来たら報告する
トムはプログラムの影響を受けないように集合場所に待機して
集合場所にも不審な人物等がいたら報告するという役だった
そして、あまり眠れぬ夜を経過して
決行の日となった
決行時間は午前9:00
元オダとトモが研究所に入っていくと
オレは近くで周囲を見張りながら待機となった
元オダとトモが研究所に入ってから10分程経った頃、元オダが研究所から出てきた
「ブン、研究所のモニターで調子悪いのがあって、ちょっと見てもらえないか?」
仕事で機械をイジることもあるオレは
元オダについて研究所に一緒に入り調子の悪いモニターをみてみることにした
モニターは時折画面が歪み
線も入ってみづらくなっていた
コンピュータからモニターを外すと
中の基盤を見ていった
モニターをイジりはじめて10分程たったころ
後ろから元オダとトモ以外の足音が聞こえてきた
不思議に思い振り返ると
そこには何故か
監視役の男が立っていた
「…えっ…」
言葉を失ったようにそれだけ呟くと
監視役の隣に歩み寄ったトモと元オダが
オレを冷たい瞳で見つめながら
トモが口を開いた
「もうそろそろ良いかなって。
ブン。
真実は残酷なものだよ。
悪いけど僕たちは国の人間。
国に勝てるかなんてハナから思ってないよ。
ここまでの時間は、国にいかに信用してもらって
僕たちがもっと大きな立場に立てるようにする為の作戦さ。
ブンとトムは真実を知りすぎた。
墓場まで持っていってもらうか。
…まあ、2人の性格上難しいだろうから
この町と一緒にリセットしてもらおうかなって。
トムも研究所の裏に呼び出してあるし
ブン、君は国に手渡しさせてもらうよ。」
トモはそこまで言うと
コンピュータにゆっくりと歩み寄り
ショックで身動きがとれないオレをよそに
「ブン。
…じゃあね。」
冷たい言葉とともに
冷たくボタンを押そうとした時
ピタッとトモが動きを止めると
「そうそう。
国の目的が、軍事利用ってだけ言ってたけど
アレってクローンを兵隊として利用する
そもそも形を自在に変えられる技術で兵器を大量に産み出す
…ってとこなんだけど
実はその奥の最終的な目的は
人間とクローン人間の入れ替えなんだ。
なんでも言う事を聞いて
なんでも好きな姿形に変えられる
こんなに使い勝手の良いものは他にはないだろ?
まあ、ブンには関係のない話しになるけどね。
それじゃあ、今度こそ本当に…」
トモはそう言うと
一度止めた指を動かし
ボタンをゆっくりと押し込んだ
あたりは一面真っ白になり
何も見えなくなった
オレの意識もその瞬間に真っ白になった




