実像世界
第5章 実像世界
1
トモは少し優しい笑みを浮かべて話しを続けた
「オダさん。よろしいですよね。
ブンはやはり、ボクたちが求めてきた人だと思います。
ブン。
君には全てを話そうと思う。」
オダはトモの言葉に賛同するように
はじめの頃の優しい表情でゆっくりと頷いた
「…あと、そろそろいいかな?
居間のドアの向こうにスペシャルゲストが来ているんだ。
…聴こえていただろ?
ここから先は一緒に話しを聞いてくれないか?」
トモが玄関に向かう廊下へのドアに向かってそう言うと
そのトビラはゆっくりと開いた
ーその姿は何度も見たことある姿だった
その足には、トモからの話しを聞くまではそれほど気にしていなかったものがついていた
106
10 ト
6 ム
そこには少し顔が青ざめたトムが立っていた
トムは下を見たまま、ゆっくりとオレの隣のイスに座った
トムが座るのを待つように、トムが席に座るとトモは早速話しはじめた
「さて、まずはいろいろと混乱させてしまって申し訳なかったね…。
ただ、ここまで話した事は事実なんだ。
ボクは父の会社の手伝いという事で、はじめは言われるがままに業務に取り組んでいたんだけどね。
ボク自身も疑問を感じるようになってきてね。
何とかしていきたいと思ってきたんだ。
でもさすがに国直営ってこともあって、1人の力で何とかしようと思っても難しいって感じて…
そこで浮かんできたのがブンだったんだ。
ただ、ブンに助けを求めようとも、ボク自身の力を高めないと簡単に潰されて終わるなと思って、疑問を抱いてる感を出さずに業務を遂行し続けて、国からも疑われる事なく、内部事情を聞けて、業務全般を任せてもらえる立場まであげてから動きだそうと思ってたんだ。」
トモはそこまで話すと、こちらの言葉を待つようにこちらをチラッと見た
オレはその視線に答えるように反応した
「…制度を潰すのか?
…国を相手にするってことか?」
その言葉を口にしながらも、心臓の鼓動が高まるのを感じた
トモはゆっくりうなずくと
「…潰す。
ボクの想いは
ブン、さっきキミが言ってくれた想いと同じ。
ボクは人として生きていきたい。
試すようで申し訳なかったんだけど、はじめから真実を話しても、人間性を出してこない人間もいるからね。
ブン。
一緒に協力してくれないか?」
ートモの言っている意味は分かった
最近の急展開だらけのおかけで、驚きもそこまでなく、トモを見据えて答えを言った
「…分かった。
少しでも役に立てればと思う。
でも一つ解決しなきゃいけないことがある。
そこが解決するのなら、快くやりたいと思う。」
そう言うと、オレはトムを見た
トムは変わらず青ざめた表情をしている
さっきのリセットの会話を聞いてから気が気でないのだろう
トムは不安そうに少し上を向くと、トモとオダをゆっくりと見た
再びトモが話しだそうとした瞬間
それを制するようにトモの前に手を差し出し
オダが話しはじめた
「トムさんの件に関してはわたくしの方からお話しさせて頂きましょう。
トムさんも今回の件に深く関わっていますので…。」
オダは一息フゥっと息をつくと
ゆっくり落ち着いたトーンで話しはじめた
「…ご察しの通り、トムさんは私たちの会社で作られたクローン人間です。
ただ、赤ん坊の状態で作られ、その時に、ある方によって養子として、いまのトムさんのご両親のもとに行かれました。
なので、その後にここまで成長されることは想像できませんでしたし、これから先もどうなるかは予想はつきません。
あの町からは離れているので、ミサンガが反応することはないですし、これから先もあの町に行かなければプログラムを変化させる事は起きえないです。
…だからご安心をというわけではないですが、いますぐ生命が危ないという事はないはずです。」
ートモは押し黙って話しを聞いていた
す
目には不安の色が映っていたが
その目は真実を求めるように
まっすぐとオダの目を見ていた
オダがトムの言葉を少し待つように間をあけると
トムが乾いた口をゆっくりとあけた
「ある方によってって言ってましたけど
それはあなた達はご存知なんですか?」
オダは再びフゥと息をつくと
トモと目を合わせ頷き合った
するとオダが
「…話しをお伝えしてもその落ち着いた反応。
もうよろしいですかね。」
そう言うと
オダは顔の皮をめくり始めた
特殊メイクを剥がすように
首の下からピリピリと音を立てながら皮をむいていく
ゆっくりとはがしていき
頭の上まではがすと
そこにはオダよりも少し若く
50代くらいの男の顔が出てきた
オレとトムが驚いた顔で見つめていると
その男は口を開き
「…はじめましてというのかな。
わたしはトモトキといいます。
君たちの言うところの
トモの父です。」
ーええっーーーーー!
っと聴こえてきそうな顔でトムが元オダを見ていて
おそらく自分もそんな表情なんだろうと思った
2
「君たちには全てを話そうと思う。
トムくんの反応を見てから話すか決めようと思っていたものでね。
2度もだますような感じになってしまって申し訳ない。
…ひとまず、コーヒーでも飲もうか。」
自分たちの驚きを感じ、少し落ち着く時間を置こうと思ったのか
元オダの言うように2人は一旦コーヒーを飲んだ
オレとトムが二人そろって
はぁっと息を吐くと
二人で元オダを見て
次の言葉を待った
「…まず、ここまでトモが言ったこと、わたしが演じていたオダが言ったことは、ほぼ事実だ。
少し違う点としては、町のリセットと国の目的に関してだ。
わたしは元々研究者として、このクローンの研究を進めてきた。
研究を進めていくうちにこの町のシステムを造りだしたんだが、おいおいになって国に利用されるようになってしまった。
システムを知り尽くしている以上、それを実行するにはわたしには強い抵抗があった。
だが、国が相手の事。変な気を起こせば自分自身の身が危ないと思い。国の命令には従うしかなかった。
でもそこは少しでも抵抗をしようと思って、リセットの時には、そこの人間自体は変えず、周りの環境を変化するようにした。
ただ、そこの人間の記憶の部分だけ変化をした。
実際のところ、そこの人間のリセットをすると、世界のエネルギーがどう変化するかは分からないんだ。
人間自体にものすごいエネルギーが集約している。
計算上では、クローン人間一人をリセットするのに人間一人分のエネルギーを世界で消費することになっているが
もしかすると、それだけでは済まない事になるかもしれないんだ。
それに…だ。
国はおそらくだが、この研究を軍事に使おうともしてるようなんだ。
そうなると、本当にヤバいことになりかねない。
…トムくん。
君のことに関しても話さなくてはね。」
そこまで話すと
元オダはコーヒーをゆっくりすすり
再び話し始めた
「わたしが研究していた研究所には
わたしの妻になる人がいた。
研究所で出会い
恋愛し
いたって普通の結婚。
…のはずだった。
トモが生まれた頃。
わたしの研究は国に利用され始めていた。
すると国はトモをクローンの実験にするよう求めてきた。
…はじめは強く拒否した。
しかし、危険が妻や子供にまでいく可能性を感じ
しぶしぶ了承することにした。
ここまで話したら何となく察しはついてきたかもしれないが
その時のクローンの子
それがトム
君だ。」
元オダがトムを見つめてそう告げると
トムは少しトーンを挙げて
「…いや、ちょっと待ってよ。
てことは兄弟もしくは双子みたいなものってことだよね。
にしては、全然似てなくね?」
元オダが質問そこかいと
突っ込みたくなるような質問だったが
元オダは少しも笑うことなく
「そこは造り出す時のプログラムで少し変化した。
ただ、そこから先があの町の住人とトムくんと別れる要因となる。
わたしの妻が君を連れて失踪したんだ。
おそらく、クローンとは言え自分で生んだ子のもう一つの生命を利用される事だけは許せなかったんだと思う。
そして、君の育ての両親に君を託し、妻は姿を消した。
わたしは妻の身を案じ、あえて捜しださず、世間的には別れた事にした。
もちろん、その後の経過は追わせてもらったがね。
これが君の出生に関わる全てのことだ。
いままで、本当にすまなかったと思っている。
…ただその上で、君にも今回の件に協力をお願いしたく、全ての事を話そうと思った。
本当に身勝手な話しだとは思っている。
だが、このまま国を上手くごまかせれば良いが、いつかバレて世界そのものが崩れる可能性がある事をこのままにはしておけないんだ…!」
元オダはそこまで話すと少しうつむいて、トムを見つめた。
ー元オダの言葉を最後に
しばしの沈黙が続き
時計の音だけが響き続けた
しばらく時間が経つと
はぁ…と大きな息をついて
トムが話しはじめた
「…まあ、いろいろ考えても解決しないし
オレにとっての親が変わるわけでもないし
なんかがんばったら世界を救うヒーローになるみたいだし
とにかくやってみっかぁ!
って感じ。」
やけに明るい声でトムが答えると
元オダは目を丸くして少し驚いた顔をしたが
元々の性格を知っているオレとトモは
トムらしさが戻った感じがして
少しプッと吹き出してしまった
トムは続けて
「てか、トモと兄弟かよ!
にしては性格正反対じゃね?
まっ、これからもよろしくな!兄弟!」
ー昔はこんな感じだった
オレが話しを起こして
トムがそれに乗ってくる
そしてトモが冷静に突っ込んだり
何となく過ごしやすい空間だった
状況は良くないのに
空気があの頃の空間のようになって
なんだかこれからの事すら楽しみになっていった
元オダがその状況を見て少し微笑みながら話した
「…時だったのかもしれないな
今まで耐えて耐えて耐えてやってきたのは
今この時に巡り合う為だったのかもしれないな
ありがとう。本当にありがとう。
ただ、相手は国になる。
緻密な作戦と行動で世界を救おう。」
ーそうなのだ。
相手は国なのだ。
でも、何とかなるかもしれない
トムの勢いにも押されて
すでにヒーロー気分になりかかっていた




