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「エレメンツ・プラン」


「開けるぞ、いいな?」


 いつでもすぐに戦えるように動ける体制をとったまま頷く。

 海斗は両手を正面に出して左手で黄色い壁を張り、空いてる手を横へ動かした。それと同時に両開きの扉が一気に開け放たれる。


 だが、そこにはなにもいなかった。


「なにが仕掛けてあるか分からないわ、気をつけてね」


 ソフィーの言葉に気を引き締まる。


「その通りだな……そこだッ!」


 海斗が手を床へ向けると拳大こぶしだいの光弾を発射した。

 バン! と大きな音の後に、光弾の当たった場所から植物の蔓のような物が一瞬にして伸び上がり、そのまま床に広がり、ウネウネと床につくと動きを止めた。


「蔓で動きを止めてこちらをなぶろうとしたのだろうが、そんなモノは俺達には通じないぞ!」


 海斗の声がホールに響く。

 それを合図にするかのように無造作に置いてある観葉植物がガサガサと音を立てはじめ、そのうちのひとつがゆっくりと人の形を作り始める。

 それは体のあちこちに蔦が巻きつき葉が生え、緑色で半透明な女性の姿をしていた。


「あれは精霊人せいれいびと?」


 鏡花と同じ疑問がオレにも浮かんでいた、あれはショーラさんと同じ精霊人せいれいびとのように見えた。ただ、なんとなくその目には生気が感じられなかった。


「違うわ。アレは『エレメンツ』 意思はなくただ本能のみで生きるモンスターの一種。その中で植物や草木を元にしたモノがあの『プラン』 よ」


 プランはスルスルと地面を滑るようにこちらへと接近してくる。


「フフ……」


 言葉を喋った!?


「エレメンツって喋るの!?」


「鏡花、アレは違うわ。人の真似をしているだけ、そうやってこちらの油断を誘うの」


 プランはこちらを真っ直ぐに見つめ、手のひらで招くような仕草をした。


「信吾! かわせ!」


 海斗の言葉にとっさに横へと避ける。

 それと同時に頭の上をなにかが飛んでいったのが見えた。壁に突き刺さった物を見ると、巨大な植物の棘だった。

 海斗の言葉がなければ、アレが直撃……?

 全身に寒気が走り、体を異様に冷たい汗が伝うのを感じた。


「コイツ!」


 海斗が光弾をフランに目がけて発射した。


「フフ……」


 プランはそう呟くと光弾をまるでたかってきたハエを払うかのようにいともたやすく弾き飛ばし、天井に大きな煤を作った。


「どうして!?」


 今までならば容易く倒していたはずの海斗の攻撃がはじかれ、咄嗟にそんな言葉が出た。


「やはり魔力が元になったモンスターの相手には駄目だな」


 海斗が呟いた。


「魔王の力の源は魔力だ。そしてエレメンツ達もそれは一緒、だから相性が良くない。隙を突かない限り、威力は下がるし、光弾は火なんかの属性を混ぜない純粋な魔力の塊だからな」


 魔力を温存したいから強力なのは避けたいしな、と続けた。


「防御自体は俺がなんとかするから、攻撃はみんなに任せてもいいか?」


 海斗の提案に、


「……それなら、私がやるよ」


 鏡花が剣を構えながら言う。


「勇者の剣は元々魔王を倒す為の武器なんだから、それに近しい存在のエレメンツにも対応出来るはずだから」


「鏡花……やれるのか?」


 彼女はしっかりと頷く。


「分かった。ソフィー、信吾、援護を頼む」


 オレ達の会話を遮るように、プランは再度手招きをした。


「そう何度も同じ手は食らわない!」


 海斗が即座に紫の渦を展開させて、飛んできた棘を弾き飛ばした。


「反撃開始だ!」


 海斗生み出した複数の光弾がプランへ向かって飛んでいく。


「なら、こっちも!」


 ソフィーが叫ぶと同時に銃を構え、カートリッジを入れる。


「植物には、やっぱり火でしょ! これでもくらえ!!」


 銃口から火球が飛び出して、プランへと接近する。


「フフ……」


 プランは手を地面へと向ける、光弾と火球が迫る方向に植物の壁が発生する。両方の攻撃は壁に阻まれて、プランに当たる事はなかった。


「やはり魔法では無理か」


「こっちの魔銃も魔法の力を使ってるからね。もうちょっと強力な火の魔法ならいけたかもしれないけど……いまはこれが精一杯よ、残念ながら」


 鏡花の方へ視線を向ける。


「私はいつでもいいよ」


 こちらを向かずにそう答えた。


「牽制し続けるから隙を見つけてくれ! 信吾も頼むぞ!」


 叫ぶと同時に海斗とソフィーは波状攻撃を始め、それに合わせてオレはプランの左側へ、鏡花は右側へと移動する。プランは右手を上げてもう一度正面に植物の壁を張ると、反対側に居る鏡花へと目を向けた。

 一瞬、扉を開ける前にソフィーが言っていた事を思い出した。


(さっき飲んでもらった改良型栄養剤「リフレッシュンクロス」 だけど、残りが一瓶しかないの。だから、あんまりモンスターに接触しないようにね。人からの模倣コピーは大丈夫みたいだけど、人として使えるはずのないスキルを使おうとするせいか、モンスターからの模倣コピーは気絶するほどに疲労してしまうんだと思うの。そういう訳だから注意してね)


 けど、そんな事を考えていられる状況じゃない!

 数歩前へと進み、こちらへと意識を向けさせようとしたがプランは見向きもしない。


 プランの左腕がゆっくりと鏡花の方へ向かう。


「こっちを見ろよ、この……枯れ葉!」


 叫ぶと同時に飛び出してプランを斬れる距離まで接近した。


「フフ……」


 プランと目が合う、背筋がぞわぞわとし全身が粟立あわだつのが分かったけど無理矢理に恐怖心を抑え込み、その一挙手一投足を見逃さないようにした。

 敵の左腕は人ではありえない動きをして一瞬でこちらへと向いていた。その手は細長く形状を変えて、鞭のようにこちらへと振りかぶられた!


「このッ!」


 迫り来る草鞭をホウチョ-ソードで防ごうと横薙ぎにする。ザンッ! と、小気味良い音で鞭を切断した。

 けど、プランの攻撃の手は止まらない。即座に再生された腕は鞭へと再度変化し襲ってくる。振り下ろされる鞭に剣をあてがうように動かし切断する、三度の再生した鞭に今度は剣を振り下ろし斬り落とす。

 四度目の再生をした鞭を見て剣を振り撃ち落とそうとしたが止めて、後ろへと退いた。


 真正面に剣を振りかぶる鏡花の姿が見えた。

 彼女の勇者の剣が振り下ろされ、プランの体に肩口から胸部へと斜めに切れ込みが入る、その威力は植物の壁の一部さえも切り裂くほどだった。


「フフ……!!」


 プランの声には焦りが混じっているように感じる。

 植物の壁にソフィーの火炎弾が当たった、けどその反応はさっきまでとは明らかに違った。

 鏡花が一部を切断したことにより、壁としての能力が薄れた植物へと火が移り燃え始めた。そこへ海斗の光弾が接触するとバラバラと壁の形状が保てなくなり、瓦解がかいし始めた。


「ハァッ!」


 鏡花は剣を引き抜くと反対の胸部から斜めへと剣を振り下ろす、オレも併せて足を切断する。


「フ、フ……」


 切断された体にソフィーの火炎弾が当たり、プランは声を残して灰になり消滅した。


「なんとかなったね」


 鏡花が肩で息をしながらそう言った。


「ナイスだ、二人共!」


 海斗が言うと、ソフィーも頷いた。


「それは良かったな」


 ホールの奥、階段の上から誰かの声が響いた。

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