「職業模倣(ジョブコピー)」
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「そういえば倒れる寸前になにか言いかけてなかった?」
それなりの早足で走っているというのにたいして息を切らさずに走るソフィーが尋ねてくる。
「は、はい。そ、それは……気づいたんです、ハアハア」
「一体なにを?」
鏡花が聞いてくる、こちらも息切れしていない。
「なんていったら……いいんだろ? 人やモンスターに触れると……触れた対象の力を使えるみたいなんだ、ハア……ふぅ」
「へぇ、それは面白そうだな」
不吉な笑いを浮かべつつ、こちらへとゆっくりと海斗が接近してくる。
「よっと」
軽くオレの肩に触れる。
「どうだ? なにか変わった?」
「うーん?」
立ち止まって指を動かしたり体のあちこちを見たりしたが、
「なんにも変わってなさそうだけど……」
「なんでだ? 触ったり触られたら能力を得れるんじゃないのか?」
「なにか特定の条件があるとかなのかしら?」
今度はソフィーが触れた。
「どう?」
「なにも……ただ、なんだか頭がすっきりしたような気がするけど確証が持てないな。これが変化なのだとしたら、そうなのかもしれないけど」
「なんだよその喋り方。くどい言い回しになってるぞ」
海斗は少しオレから距離を取り、体をのけ反らせている。
少し引いているようだ。
「もしかしてこれが私から得た受け取った能力って事? なんだか、嫌だな」
いや、ソフィーの能力なんだけど。何故オレが使うとこんな変化の仕方をしてしまったのだろうか? オレの元々の素質と噛み合わさって出来た突然変異のようなものなのか、それとも彼女には当たり前すぎて能力としての必然性がなくなってしまった、もしくはデメリットだった鬱陶しさが消えてしまっているのか。
どちらにせよ、いまのオレには答えを出す事が出来ない問題だった。
「じゃあ私も」
そう言って鏡花も触れ……あれ?
なんだかさっきまでの頭の冴えみたいなものが消えた。
「どこか変わった?」
「いや……体感的にはなんにも」
体のあちこち見ても特に目立った変化はないみたいだ。
「そっか、残念」
なぜ、残念? 鏡花さん、ちょっと説明をしてもらいたいんですけど? もしかして、鏡花さんも楽しんでます?
「出来る出来ないがあるってのはどういう事なんだ? なにかややこしい条件でもあるっていうのか?」
海斗の疑問に、
「可能性としてはありえそうだけど、そうなのかしら? 単純に今の状況だと分からない能力なのかもしれないし。というか、シンゴ君のスキルをいちいち能力能力って言うのも面倒ね。なにか名前を決めましょう。なにかある?」
と、言いながら先程より少し遅めの速度で走り出した。
「人の能力を使えるんだから、窃盗とか?」
海斗、それは酷くない?
「信吾のアレって、貰うだけで能力そのものを奪ってはないんじゃないかな? さっきだって岩の巨人が持っている岩で体を構成する力を使っても、巨人の岩が体から全部なくなったわけじゃなかったし」
鏡花のフォローにソフィーが頷く。
「能力を奪い取ってる訳じゃない……つまり、模倣って事かしら? けど、スキルを奪うなら出来る出来ないがあるのは……? もしかしてひとつのスキルを使えるようになるんじゃなくて、職業 自体を模倣 してる?」
ひとりごとのような彼女の言葉を聞き、
「職業模倣?」
そんな単語が口を衝いて出た。
「お、それいいんじゃない?」
と、ソフィーが言い、ふたりも頷く。
「スキル名を決まったし、それに……着いたよ」
建物の外観は一切変わっていないはずなのに、前に来た時とは空気が違うように思えた。
「……行くぞ」
海斗を先頭に階段を登る。




