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プロローグ
あの日、僕は願った。
それでも、願いは叶わなかった。
神様を恨んだりもした。
いるかどうかもわからない神様を、恨んだ。
どうして彼女を助けてくれなかったんだ。
どうして僕を見捨てたんだ。
泡のように儚い願いは、きっと、神様に届かないまま、弾けて消えてしまったのかもしれない。
彼女の姿が瞼の裏に浮かぶ。
美しいフォームで僕の前を駆け抜ける。
僕はその背中に追い付けない。
彼女はいつも僕を置いていってしまうのだ。
彼女はその事に気づかないまま、どんどん遠ざかる。
だからボールを使ったのだ。
彼女に触れるための、僕なりの最善策だった。
ボールが弾む。僕の心臓は波打つ。
力いっぱい打ったボールは、床を跳ね返って飛んでいく。
そしてそのまま消えてしまった。