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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

穢れの聖女

作者: 黒ユリ

 フェルンの職業は“聖女”である。

 聖女のみが使える聖魔法は穢れを滅する魔法である。

 よって聖女は一人で悪魔と闘い、戦死するまで聖女という仕事から逃げることは出来ない。


 フェルンの聖魔法は歴代の聖女を群抜いて強かった。

 清く、澄んだ歌声は悪魔を一瞬にして倒し、雪のような白い髪は鋼となって身を守る盾となった。


 順調に悪魔を倒したフェルンは誰にも成し遂げられなかった、悪魔全滅という偉業を成し遂げた。


「聖女!!」


「聖女万歳!」


 フェルンは機嫌よく、国民に手を振ると王宮へと向かった。


























「聖女、ご苦労であった」


 はち切れんばかりのお腹をした王様ハゲデブが食べかすの着いた汚らしい髭を撫でながら言った。



「この国が幸せであることが私の幸せですもの」

(聖女でいれば“殺す”ことが正当化されるもの)


 にっこりと優しく慈愛の満ちた微笑む聖女の仮面を完璧に被ったフェルン。誰も彼女が猫被っているなんて思わないだろう。

 

 聖女は悪魔を倒すことの出来る唯一の存在である。フェルンは聖女としての仕事を非常に楽しんでいた。



「私からも礼を言いますわぁ」


 胸元を強調させたドレスはスリットが入っており、むっちりした白い太股を大胆に出していた。毒婦を思わせる王妃は血の繋がらない息子である王子に抱き付きながら言った。


「光栄ですわ」


 淡いピンク色のスカートの裾をつまみ、馴れた動作でお辞儀をする。


 「王様、悪魔を全滅させた報酬を頂きたいのです」


 くすくすと笑いたくなる衝動を抑え、王に問う。

 約束していた報酬。フェルンは悪魔を殺すことには飽きていたのだ。


「聖女の働きでこの国はより過ごしやすくなった。何でも与えよう」


 王は全く警戒せずに言った。

 皆の知っている聖女は美しく、謙虚で慈悲深い。これが偽りの姿とは知らず、聖女は完全なる善人と信じていた。


「私の欲しい物は“人間を殺す権利”です。なので、頂きますね? うふふふ」


 フェルンは聖女である仮面を脱いだ。

 聖女では無く、殺すことに快感を感じているただのフェルンになった。

 悪魔を殺していたその歌声で王を八つ裂きにした。


「あぎゃっ」


 歌が体をさいた瞬間断絶魔がきこえた。

 まだ温かい肉片はあちらこちらに飛び散り、血と油のの臭いが立ちこめた。

 温かいものが降り注ぎ、むっとする匂いが自分を興奮させていることを感じていた。


「あははは!! なんて、素敵なメロディー!! もっともっともっと聴きたいわ!!」


 死んでしまった王に興味は失われ、転がっていた頭を蹴って端に寄せておく。

 殺すことに愉しさがあるのであって、遺体には興味が無いのがフェルンであった。


「い、いやぁぁぁあ」


 甲高い悲鳴が聞こえたので後ろを振り向くと、腰が抜けてしまったのか座り込んでいる王妃がいた。

 いつも自信ありげな笑みを浮かべている王妃はこのときばかりは恐怖で顔を歪めていた。


 良い獲物がいた。


「あら、良い声してるわね。すぐ終わらすのは勿体ないわね」


 つん、と鼻をつくアンモニアの匂いがした。どうやら王妃は恐ろしさのあまり漏らしてしまったらしい。次のターゲットは自分だと知り、体は小刻みに震えていた。


「王妃に手を出すな!」


 野太い声がした方を向けば、いつも偉そうで気に食わなかった将軍がいた。将軍は王妃の愛人であった。愛する人を守ろうとフェルンにたちはだかった。


 馬鹿な恋愛ゴッコに笑いがこみ上げてくる。


「ふふふっ。守れるの?」


 少し前までは決してこんな見下すような表情はしなかっただろう。見下されるどころか、自分が見下していたのだから。

 プライドを傷つけられた将軍は青筋を浮かべて怒鳴った。

 


「たかが小娘の分際でその態度は何だ! 男の前では跪け! さもなければ──あぎゃっ」



 下顎から上が無くなっていた。血で真っ赤になった舌と歯が丸見えだ。それもすぐに血で隠れてしまったが。


 フェルンの絹のような白い髪は鋼の刃となっていた。それは赤く血塗られていることから、それで将軍を殺したことがわかる。


 将軍の後ろいた王妃に血は降り注ぎ、脳を失った体は後ろに倒れた。


「うーん、将軍の悲鳴はやっぱり汚いな。お口直しならぬ、お耳直しで………」


 王妃に近づくとスリットから出た将軍の血で赤く染まった太股がを掴むと足を根刮ぎ取った。

 バリバリと骨が砕ける音と肉が引き千切れるブチブチという大きな音が王宮を包んだ。護衛者は誰一人恐怖で動けず、王妃を守ろうとする者は現れなかった。


「キャァァアア!! 私の足! 痛い痛い痛いイタイイタイイタイッ!!」


 王妃はフェルンから自分の足を取り返すとくっつけようと断面に力を入れて押しつける。手を離しては足はころりと横に倒れ、またくっつけてはまた手を離してくっついたかを確認していた。

 当然のことだが、それで元に戻るはずが無い。しかし、正常な判断が出来ない今は必死にくっつけようとしている。



「うふふふ、良い声。あら、自分の足をくっつけることに必死なせいかしら? 悲鳴がちいさくなってるわね」


 あ、いいこと思いついたと顔を輝かせると、口を大きく開いて、相変わらず美しい声で歌った。


 歌声は刃となって、王妃の細い両腕を切断した。

 ぼとりぼとりと胴体についていた腕は地面に落ちた。


 これで足に触ることはできないわね。と血で濡れた顔で満足気にえみをうかべた。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ」


 王妃は白目を向き、妖艶な笑みを浮かべていた赤い唇は大きく開かれ、涎が垂れていた。

 声でも、悲鳴でもない、音が王妃の咽から絞り出される。



「うふふふ、いいわね」


 手拍子をしながら悲鳴に耳を澄ます。

 





 王妃が気を失えば体を切り刻み、死ぬまで悲鳴を堪能するとフェルンは小さくなってしまった王妃を遠くに投げ捨てた。


「せ、聖女様……。どうして、聖魔法は悪魔にしか効かないはずでは」


 王子は恐怖で顔を青ざめ、震えさせながら問うてきた。

 


「聖魔法は邪悪なものを浄化するという魔法だもの。人間だって立派な邪悪なものですよ?」


 気付かなかったの? と笑った。


 殺すための清らかで美しい矛盾した歌を歌う。


 綺麗に掃除された王宮は屍と血で汚れた。



 穢れの充満した中に立つ聖女は狂ったように嗤った。


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