届いた願い
宇宙探査の任務を帯びた地球の探査船が、ある星に着陸した。隊長は近くに見える森を指差し隊員達に命じる。
「よし、まずは植物の調査からだ。あの森へ行ってみよう。皆、この星にはどんな生物がいるかわからない。武器の所持を忘れるな」
さっそく出発の準備がなされ、調査隊は隊長を先頭に森へと向かった。森に到着した一行が、それぞれの仕事に取りかかろうとしたその時、突然木々の合間からその星の住人であろう者達が姿を現した。驚き身構える調査隊。緊張した空気が辺りを支配する。
しかし、住人の発した予期せぬ言葉が緊迫した空気を一変させた。
「ようこそおいでくださいました。神の使いであるあなた方を心から歓迎します」
にこやかに話す住人に拍子抜けし、思わず笑顔になる隊長は言った。
「歓迎してくださるとはありがたい。しかし、我々は神の使いなどではありません」
「いえいえ、あなた方は立派な神の使いです。毎日祈り続けた私共の願いを叶えにやってきてくださったではありませんか」
「願い? 一体何の事ですか?」
話が見えず、尋ねる隊長に住人は説明した。
「この星で金属は少量しか採れない大変貴重な資源です。そこで私達は、神に金属を与えくださるよう祈り続けました。するとどうです、空から金属の塊が降ってきたではありませんか。あなた方は神の使いです」
事態を理解した隊長が、自分達の探査船を見た時には全てが手遅れで、探査船は住人達の手により、修復不能な程バラバラにされた後だった…。