宴〜策略
昼間から宴会を始めた孔明とその配下たち。その中に副軍師として任命された俺も含まれている。
俺の席の前に、王平がやってきた。酒樽を持って…
「石山殿、お初にお目にかかる。王平、字を子均と申す。これは成都の美酒にござる。ささ、一献…」
王平が、俺の盃に酒を注ぐ。
盃の酒を飲み干す前に、入れ替わりで別な武将が俺の前に来た。
こうやって…数人の武将から酒を勧められ…
たった数杯の酒だけで、俺は飲み潰れてしまった。
もともと、酒に対する抵抗力ないからなぁ…俺。
その俺を見て、孔明がいう。
「副軍師は、酒にかなり弱いとみえる。姜維、後ほど彼を邸宅に送り届けてくれ」
「はっ。しかし…こんなに酒に弱い者は見た事がありませぬな」
姜維が、答えた。
……………
翌朝、俺は目が覚めた。やはり、酒のせいなのか、頭痛がする。
俺はカバンから医療用スキャナーを取り出し、自分自身をスキャンする。
結果は…軽いアルコール中毒。
あまり、飲み慣れない物を飲むものではないな。
体内のアルコールを中和させる薬を注射する事にした。
中和して数分後、俺の身体からアルコールがぬけた。
アルコールの入った酒は、23世紀中頃には全て廃絶された。ノンアルコールに近い成分が発明されたからだ。
アルコールより安全性が高く、飲んでも数時間で完全に分解される。
そこに孔明が現れた。
俺は孔明に挨拶をする。
「孔明様、おはようございます。昨日は酒の席で大変ご迷惑を…」
「石山殿、おはようでござる。よく眠れましたかな。どうやら貴殿は酒に弱いようですな…」
孔明が扇であおぎながら言う。
俺は、自分が酒に弱い理由を教える。
「ええ、未来の人間は酒に弱い者が多く…私もその中の一人です」
俺は、孔明に答えながら、再び身体のスキャンをする。どうやら、アルコールは完全に中和されたようだ。
孔明、俺のもっている機械に興味がわいたらしい。
「で、石山殿が手に持っている物は何でごさるか?」
孔明が尋ねる。
「はい、これは医療用スキャナーと言いまして、身体の中の異常を検知するものです」
「いりょう…よう…すきゃなあと申すか。それで、病いとかが分かるんだな…」
俺は、スキャナーを孔明に渡してみた。
この場合、彼はどんな反応を示すのか気になったからだ…
「その丸い奴を押して、身体の近くにかざすと、異常箇所が表示されますよ」と…
俺は言う。
孔明、さっそく医療用スキャナーを使ってみる。
胸の辺りをスキャンしていると、突然ブザーが鳴る。
孔明、突然のブザーに驚いた。
「わ!なんじゃ?なにかが鳴ったが…」
俺は孔明からスキャナーを受け取り、表示を確認する。
それには、こう出ていた。
『コード:1458』
コード:1458は、右肺の肺胞病的損傷。
いわゆる、肺結核の初期というところか…
そういえば、正規の歴史では…孔明は肺の病いがもとで、亡くなったんだったな。
「孔明様、最近咳に悩まされる事はありませんか?」
孔明、胸に手をおいて考える。
「いや、今の所は何も無いが…どうしたのだ?」
孔明に、肺結核の前兆がある事を説明する。
「……、今はまだ治療する程では有りませんが、もう少し酷くなるようならば治療した方がいいですね。定期的にスキャンしてみた方がいいかと」
孔明頷きながら、俺に念を指す。
「これは、他言無用じゃ。皆の者を心配させるからのう…そうだった…」
孔明、何かを思い出した様だ
「そうじゃ、忘れておった。今度の戦で仲達をアッと、驚かしたいんじゃが……
なんかいい手はないかのう?」
「司馬懿殿をですか?例えば、どんなかたちで驚かせるのですか?」
俺は聞いた。
孔明、ヒゲを撫でながら考える。
『!』
どうやら、孔明閃いたらしい。
「仲達をだな…こうやって……、あの様に驚かす事は出来るのか?」
ひそひそ声で、俺に聞く。
さすがは孔明様だ。まず、この時代の普通の人間はそんな発想しないからなぁ…
俺は、孔明が言った事が可能かどうか考えた。
『そうだなぁ、あれとそれを使えば可能かもしれないな。あれのちょっとした改造が必要だがな』
俺は、孔明に答えた。
「可能ですよ。準備にちょっと時間かかりますが…」
しかし、あれだけの影響が敵味方に出るとはなぁ思わなかったぞ。マジで!