遭遇
タイムトラベル中は真っ白な景色しか見えない。これは、ある意味隊員の目を保護する役目をもつ。
時間移動中は、コクピット上の現在年月日の表示のみが頼りだ。
指定年月日まで遡ると、機械が起こしてくれる。
俺は、到着まで暫く眠る事にした。
指定年月日まで遡ると、白い保護フィールドが解除され、あとはマニュアルで着陸する。
着陸はオートでも可能だが、マニュアルの方が細かい動作が出来る。
もちろん、現地住民に見つからない様に光学遮蔽もしなければならない。
何処から調査するか考えているうち、俺は深い眠りにおちた。
『・・・時空転移・・・・異常・・・さい。・・・装置に・・・・手動・・・。時空転移装置に異常発生!手動に切り替えて下さい。時空転移装置に異常発生!手動に切り替えて下さい。・・・』
俺はこの音声に、叩き起こされた。
目を開けると、西暦300年位まで遡ってきている。手動で時空移動を操作しなければならなくなった。
「冗談じゃねえぞ‼︎ったく!」
俺は叫んだ。速やかに手動に切り替えて、減速せねばならない。
緊急時マニュアルに従い、手動モードへの変更を試みる。
数分後に何とか手動モードへの変更を終えた。だが、刻々と234年が迫る。
時空反動スラスターを手動で操作し、時間移動速度を下げる。
『250年…249年…248年……』
タイムジャンパーは少しづつ減速している。
『247年……246年……245年………』
俺は、減速率から到着予想年月日を調べた。
到着予想年月日は…
西暦231年6月。蜀の建興9年。孔明が亡くなる3年前になる。
「ヤバい!!3年もずれてるじゃねぇか…」
タイムジャンパーが時空移動を終え、実体化する。同時に遮蔽装置もオンライン。
ここは西暦231年6月12日深夜。
俺は、とりあえず地表に降りることにした。
着陸場所は、目立たないように山の中腹を選ぶ。
まさか、そこにあの人がいるとは…つゆ知らず………
核融合エンジンを切り、補助エンジンで着陸を試みる。
地表まで、20メートルをきった時点でそこに人が居るのに気づく。
もし、人がそこにいる場合。警報が500メートル手前で知らせる事になっているが、どうやら、それも故障だった。
「人だ‼︎」と叫んだ時には、もう遅かった。
タイムジャンパーと現地の人間が接触し、跳ね飛ばしてしまった。
不幸中の幸い、遮蔽装置が付いているので外からは何も見えない。
俺は、着陸後機体を降り、跳ね飛ばしてしまった人物を探しに行く。
その人物を見たとき、俺は血の気が引いた。
そこに倒れている人物の衣装で。
人物スキャン掛ける事なく分かる。
『諸葛亮孔明』
彼が、俺の前で倒れていた。
「マジかよ、どっから見ても諸葛孔明だよなぁ……」