上昇〜タイムトラベル〜234年へ
タイムジャンパーは地下4階の発着場から、地上36階を超え成層圏を目指す。
途中、高度2万メートルをこえた付近でいったん向きを水平にし、ここで核融合エンジンを始動させる。
地上36階の本部ビルを突き抜いて、タイムジャンパーは高度をぐんぐん上げる。
「高度…1千…2千…3千……」
雲を勢いよく抜ける。
発射から3分も経たないうちに、高度は1万を超える。
「……1万5千…1万6千…1万7千…1万8千……」
水平飛行並びに、核融合エンジンの最終チェックをする俺。
「姿勢制御装置………………正常
反重力制御ダンパー………………正常
核融合エンジン始動シーケンサー………………正常
時空転移装置………………正常
ワープドライブジェネレーター………………正常
……………………………………
全システム…オールグリーン!」
システムチェックを終えた辺りでちょうど高度が2万メートルを超える。
俺は姿勢制御装置のレバーを握る。
『垂直』と書かれた位置から、『水平』の位置へ。
直後、ガチャン…という音とともに
機はゆっくりと垂直上昇から水平飛行へと、移行する。
操縦席は、例のフィールドに守られている為
何も感じない。ただ…コクピットのパネルに状態表示が出ているが…
完全に水平飛行に推移したのを確認して、俺は核融合エンジンに火をいれる。
「姿勢制御…水平飛行に移行を確認。核融合エンジン始動シークエンス開始」
重水素プラズマ燃料が、エンジン内部の核融合炉に送り込まれる。それに高出力中性子レーザーを照射する。
勿論、レーザーの動力は補助エンジンから供給されたものだ。
一瞬で核融合エンジンは始動して、機は再び上昇を再開する。
「本部へ。核融合エンジン点火。全て異常無し。外気圏への上昇を開始します。以上」
俺は、本部へ超圧縮電文を送る。
タイムジャンパーは一気に加速し、外気圏のある高度1千キロまで上昇する。
いくらタイムジャンパーでも成層圏から外気圏までは5分近くかかる。
外気圏1千キロまで上昇すると、さらにワープジェネレーターを起動して光速の4.5倍まで加速をする。
それで、やっと時間の壁を突き破る事が可能になるのだ。
ただ、時空転移装置がなければ何処に跳ぶのか定まらないという。
俺は、外気圏への上昇中に本部へ最後のメッセージを送る。
「タイムジャンパー109号。外気圏への上昇を現在継続中。今日も地球は青いです。以上」
これが、本部に送る最後の電文になった。
『今日も地球は青いです』
この言葉は、昔の宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンの言葉がもとになっている。
いつの間にか、隊員の中で時空移動の直前に『異常無し』の代わりとして使われるようになったという。
最初に使われた時は、本部側で何の意味か分からず……苦悩したらしいが…
それを思い出し、俺は苦笑いする。
「異常あったなら…『地球は赤くなった』とかになるんだろーなぁ」
実際、地球は赤くなったという電文は未だに無い。
外気圏へ突入し、指定高度に達する。
ここで、ワープジェネレーターと時空転移装置も起動し光速の4.5倍まで加速を行う。
「ワープジェネレーター、オンライン!
続けて、時空転移装置オンライン!
加速を続行!」
外気圏までくると、星々が綺麗に見える。
光の速度まで達すると、それまで見えていた景色が一気に変わる。
アルベルト・アインシュタインの相対性理論により、光速を超える事は不可能と思われたが、それを解決させたのが…
あの真田博士だった。
しかし、あの博士ホントすげぇよなぁ…
規定の光速4.5倍まで加速し、時間の壁を越え西暦234年を目指す。