タイムジャンパー発進‼︎
エレベーターが地下4階で停止する。
ここは、タイムジャンパー並びに真田博士の研究室で構成される。
白髪頭の真田博士が、俺を見つけ言う。
「石山くん。タイムジャンパーの準備はカンペキじゃ。必要な機材も積み込んでおいたぞい」
真田広之博士。彼の歳はすでに100歳を超えているらしいが…
見た目では70代後半くらいにしか見えない。
彼の正確な年齢は、坂本隊長でさえ分からないという。
まぁ年齢不詳の真田博士が目の前にいる。
俺は前の任務時に起こったアクシデントを思い出して、博士にぶつける。
「博士。前回15世紀に向かった際に、ひと月時間がずれてましたよ…ちゃんと整備お願いしますよホント…」
前回のタイムジャンプの時だった。指定時間から1ヶ月も前の時間に時空移動した時は、本当に焦った。しかも交戦中の真っただ中に実体化したのだから、たまったもんじゃない‼︎
「すまん、すまん。石山くん。報告をうけて調査したんじゃが…原因は分からずじまいじゃ」
真田博士が、アタマをぽりぽり掻いて答える。
出発時刻が迫る。
どうやら出発時刻を過ぎてしまうと、到着時刻にズレが生じるらしい。
前回は、出発時刻ぴったりに出たのだが…
俺は、また前回のようなアクシデントが起きない様に祈りながら、博士に言う。
「石山隊員、これより時空調査の任に付きます。では、博士行ってまいります」
タイムジャンパーに乗り込む。
まあ、形状は21世紀末に存在したジェット機の様だが、しいて言えば可変翼で、最高速度は光速の15倍らしい。
操縦席に滑り込み、ドアを閉める。
機体は垂直に立っており、上空2万メートルで水平飛行に移行する。
全ての機器のチェックを終えた俺は、本部に連絡を入れる。
「こちら、タイムジャンパー109号。石山です。発進準備完了、発進許可を求めます」
通信機から本部の女性オペレーターの声が入る。
『タイムジャンパー109号。天候は曇り。風は南からの風、3.5ノット。1013hPa。発進を許可します』
俺は、許可が出たのを確認して返信する。
「了解。天候は曇り。風は南から3.5ノット。1013hPa」
『石山くん。いい旅を!』
オペレーターからの声と同時に、スタートスイッチを入れる。
キィィィーーーンと、かん高い音と共に補助エンジンが始動した。
「補助エンジン始動。推力3万…4万…5万…」
同時に核融合エンジンへの動力が伝達され始める。
核融合エンジンは、光速への移行並びにタイムトラベルに使われており、その起動にも大量なエネルギーを必要とする。
俺は、手元の推力計が8万を過ぎた辺りで横にあるレバーを力一杯引いた。
『リフト切離し』と書かれたこのレバーを、「リフト切り離し‼︎」と歓呼しながら引く。
昔のロケットなら、その瞬間莫大なGがかかっただろう。しかし、タイムジャンパーは操縦席付近にはGのかからない特殊なフィールドが設置してあるらしく…
地球上と何の変わりもない。
「このフィールドなければ、ペッシャンこだなぁ…タブン」
俺は思わず呟いた。