発進準備
エレベーターを降り、最上階の隊長室に入る。
そこには、丸々と太ったおっさんがいる。
彼こそ、本調査隊を結成した張本人である。
彼の名は「坂本 大輔」年齢は・・・
え〜と… わからん!
かなりの大富豪らしく、タイムトラベル専用機「タイムジャンパー」ほか
いろいろな機材の開発・製作に投資している…らしい。
「石山、今回行ってもらうのは、中国陝西省。時代は234年だ」
陝西省で234年といえば、あの三国志で有名な諸葛亮孔明が第五次北伐で、命を落とした場所じゃないか!
前から、訪れてみたい場所だった石山は目を輝かせた。
表情を読み取った隊長は、こう付け足す。
「石山! 間違っても、歴史に介入する事は許されん。向こうの人物に接触する事もだ‼︎」
たとえ一人の農民だとしても、場合によっては歴史を変えてしまう可能性が無いわけではない。
俺は黒くて短い髪の頭を掻きながら答えた。
「坂本隊長。その辺はしっかり頭に入れて行動しますよ」
俺が言った直後、隊長室に連絡が入る。
『真田です。隊長、タイムジャンパー109号の調整整備完了しました。場所は中国陝西省。時間は234年3月15日にセッティング済みです』
「真田博士、承知した。直ちに石山隊員をそちらに向かわせる」
真田広之博士。彼は世界で一番タイムトラベル理論に関しての権威である。
また、タイムジャンパー並びに多種多様な装置の発明者でもあるのだ。
「石山、出発の前に例の如く大三規則の読み上げだ!」
隊長の座る椅子の背後に、時空調査隊大三規則の書かれた版がある。
なんか毎回コレ読み上げるのウザいんだよなーと、思いながら俺は読み上げた。
「第1条 本隊員はいかなる理由があろうとも、歴史を改変してはならない
第2条 本隊員は歴史が改変されそうな場合は、全力でこれを阻止しなければならない
第3条 タイムトラベル先では、いかなる理由があろうとも現地の人物に接触してはならない」
隊長は、俺が全て朗読したのを確認して、隊員証に『出発許可』と書かれたハンコを押して、隊員証を渡して言った。
「石山。くれぐれも注意しながら行動してくれたまえ。では、調査並びに記録よろしく」
隊長室を出て、エレベーターで地下の発着場に向かう俺。
エレベーターが到着した。中から出て来たのは、同僚の高木先輩だ。
どうやら高木先輩は調査を終え帰還した直後らしい。
「おう、石山。今から出発か?こんどは何処行くんだ?」
高木先輩は報告書代わりのディスクを首にかけながら聞いてきた。
「あ、高木先輩。お疲れ様っす。自分、今回はどうやら三国時代の五丈原らしいです。多分、第五次北伐の辺りかと…」
高木先輩は、顔に負けないくらいの顎髭を貯えている。
そして、髭をなぞりながら…
「確か、諸葛孔明が没する頃だな。ちゃんと、調査してこいよ」
高木先輩と別れ、エレベーターに乗る。
地下の発着場に向かって。