それからの日々
「校内放送ジャック部! もとい、放送同好会、放送部昇格スペシャル!」
氷室先輩のBGMとともに、部長が大きな声でタイトルコールをする。
「皆さんこんにちは! ジャック部の部長のヒロキです! 今回私たち放送同好会は、放送部として正式に認められることになりました!」
「いろいろあったね~!」
結城先輩の明るい声が響く。
「ほんとにな」
和泉君が他人事のようにつぶやく。
「だいたい和泉君のせいでしょ?」
私がそう言うと、和泉君は不機嫌そうにそれに応える。
「そうかもしれないけどな……とにかく大変だった、っていう話だよ」
「そうね。でもおかげで、いい経験もしたわ」
氷室先輩がミキサーのマイクを通して話す。
「ふーん。例えば、どんな?」
「別にいいでしょ、そんなこと。まあ、いろんなことを考えるきっかけになったってことよ」
結城先輩が尋ねると、氷室先輩はそれだけ言って黙ってしまった。
「とにかく、私たちはこれから、さらにより良い放送ができるように頑張りますので、よろしくお願いします!」
「みんな、お疲れ様―!」
放送を終え、部長の明るい声が響く。私たちが防音室の外に出ると、放送室のドアが開く音がした。そこには、生徒会長が立っていた。
「さっきから、そこにいたんだろ? 何で止めなかったんだ」
部長がそれを見て会長に話しかけると、会長は視線をそらしたまま言った。
「今日だけだ。これからはもう許さん」
「おっ、怖いこと言うね」
会長は一瞬あきれたような表情を浮かべてから部長に言う。
「生徒会の放送機関は、昨日付で放送委員会として学校側に承認された。放送委員会は引き続き、ここ放送室を活動場所とする」
生徒会長はまっすぐ部長を見据えて言った。
「放送がしたければ、奪いに来い。……それだけだ」
会長はそれだけ告げると、ゆっくりと放送室から出て行った。
部長はしばらくその様子を見ていたけれど、姿が見えなくなると私たちの方に振り向いて満面の笑顔で言った。
「それじゃ、音響室に戻るか。早く打ち上げしようぜ」
音響室に行くと、たくさんのお菓子と飲み物が並んでいた。今日はパーティーだ。屋上につながるドアを開けると、青い空と白い雲。正面には階段を下りる生徒たちが見える。時々風が入ってきて、すごく気持ちいい。
「それじゃあみんな、文化祭と一学期、お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でした!!」
部長のパーティー開始の合図に、みんなも笑顔で応える。氷室先輩がコップにジュースを注いでくれたので、私はそれを受け取る。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
すると、部長がお菓子の袋を持ってきた。
「みんな、お菓子食べようぜ」
「わーい、やったー! 食べよ食べよー」
結城先輩もとても嬉しそうだ。私と和泉君がお菓子を食べていると、部長がこっちに近づいてきた。
「この前は、ごめんな。何もできなくて」
「どうして先輩が謝るんですか」
和泉君が驚いた表情で尋ねる。すると、部長は一呼吸おいてから話し始めた。
「俺さ、お前たちの放送聞くまで、自分が何をしたいのか分かんなくなってさ。でも、お前たちを見てて、思い出したよ。自分のやりたいことが何か分かってたら、きっと大丈夫なんだってこと。ダメだな、俺が忘れてちゃ」
部長は少しだけ穏やかな表情を見せてから、すぐに明るい笑顔に変わった。
「なんてな。ほら、二人とももっとお菓子食べろよ」
部長はお菓子の袋を差し出すと、向こうの方を向いてしまった。
「和泉君は、自分のやりたいことと、何か分かった?」
「ああ」
「そっか、よかった」
「っていうかお前、知ってて言ってるだろ」
「そうかもね」
すると、部長がこっちに向けて手招きしていた。
「おい、お前らもこっち来いよ!」
「ほら、みんなでケーキ食べよー!」
結城先輩が満面の笑みで振り向く。
「なかなかおいしいわね。どこのお店かしら」
氷室先輩はすでにケーキを味わっている。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「うんっ」
今日が終業式で、明日から夏休み。これから、いろんなことができるだろう。だって私たちはジャック部で、仲間だから。これから、ますます楽しくなってきそうだ。そう思うと、また風が吹いた気がした。
お読みいただき、本当にありがとうございます。楽しんでいただけましたら幸いです。それでは、もしまた機会がありましたらお会いしましょう。




