普通盗賊の襲ってる馬車には貴族のお嬢様が乗ってるよね?
「あーいいねぇ異世界何か空気が美味しい気がする」
俺は先程から上機嫌でお世辞にも綺麗に舗装されてるとは言えない、馬車が走れますよと申し訳程度に整備された道を歩いていた。
「うん!やっぱり全然疲れない、これが身体能力強化の効果か〜やばいな。名前はしょぼいのに効果がここまで出るとは」
俺は歩きながら身体能力強化のスキルを確認していた。
ちなみに俺がこのスキルに気付いたのは少し前に狼に襲われた時だ。
俺が20kmという数字を聞いて気を落としながら歩いていたら何か鉄のような嫌な臭いを感じて興味本位でそこに向かったのだ、そうしたら赤毛の狼さんの様な生物がお食事中だったわけですね。
……正直死ぬかと思った。戦おうとは思わず文字通り必死で走っていたらどんどん狼が離れていったのだ、その時俺はこのスキルに思い至ったという訳だ。
「いや〜にしてもこのスキル便利だな〜もしかしてかなりのチートじゃないか?」
このスキルはかなり強力だった、自分の予想を遙に上回る位には。
俺は道中で出来る範囲で身体能力強化の出来ることを確認していた。
そこで分かった事は自分の身長(約170cm)と同じくらいの岩を砕く事が出来る事。(暫く手がジンジンした)3m位の丸太を振り回せる事。(振り回していた丸太を思いっきり木にぶつけてまたも手がジンジンした。)
かなりの速度で飛行している鳥?を細部まで確認出来る位の動体視力と視力のアップ(その鳥をずっと見ていたせいで段差でコケた)などだ。
「で、アイここから一番近い街ってあとどれくらい?」
《解、この道を真っ直ぐ約25km先に進んだ所に人の住む街があります。》
そう、俺は狼に襲われた時に無我夢中で走った結果迷って何か森の近くらへんに来てしまっていたのだ、だが!俺はそんな事を気にしない程に身体能力強化のスキルが強かった事で浮かれていた。
「よーし!順々にテンプレこなしてやるぜ!っと、そういえば俺が向かってる街の名前ってなんて名前なの?」
《解、街の名前はガルズという名前です。夢見る若者の街と呼ばれる事も多いです》
アイが豆知識と共に名前を教えてくれる。
なるほどなぁ…ガルズか〜楽しみだなぁ、と俺がそんな事を考えていると何か鉄の塊を硬い物にぶつけた様な嫌な音が耳に入った。
「あーこれはもしかしていきなりテンプレのやつですか?」
何故か敬語になりながら俺はその音の発生源だと思われる場所に向かう。
「あっやっぱり」
そう呟いてしまう程度にはその光景は俺の予想通りだった。そう、盗賊が馬車を襲っていたのだ。
「これはあれだね?俺がこの盗賊を倒して中にいる貴族のお嬢様と仲良くなるフラグだね?」
俺は中に乗っているのが女性かもわからない状態なのにこれは貴族のお嬢様と仲良くなる切っ掛けだと決め付けていた。
「問題は俺が盗賊に勝てるかだが、うーん、まあ身体能力強化もあるしいけるだろ」
俺は異世界転移と身体能力強化の恩恵を受けて浮かれていたのだろう。普段なら絶対しないだろうに真正面から声を上げ馬車に向かって走り出した。
「うおおおおぉ!待っててくださいね!貴族のお嬢様!」
するとその声を聞いた盗賊と馬車を守るように戦っていた護衛だろう人達は呆気に取られた様にこちらを眺めていた。
俺は物凄い勢いで馬車に近づいて行くと遠くから俺を見て呆気に取られていた盗賊の1人が正気に戻って弓を放った。
弓から放たれた矢は俺がかなりの勢いで向かって行ったのも相まって物凄い勢いで俺に近付いてくる。
あっ、これやばくね?俺は加速した思考の中で迫ってくる矢を眺めながらそう思い、体を横に転がる様に動かした
「うわおおおぉぉぉ!」
俺は情けない声を上げながら勢いよく転がる。
そうしてる間にも盗賊は次々と正気を取り戻し、こちらに向かって第2の矢を飛ばしてくるが、流石は身体能力強化と言うべきか俺にはその矢が全て見えていた。
「見える!見えるぞ!私にも矢が見える!」
俺は次々と飛んでくる矢を避わしながら馬車に近づいて行く。
「何だあの化物は!?矢を全て避ける何て人間業じゃないぞ!」
誰かが俺を見てそう叫ぶ。
ふっふっふ……もっと言ってもいいんだぜ?俺はそんな事を考えながら最後の矢をカッコつけて掴む。
出来そうだったからやってみたけど意外と何とかなるもんだな……。
俺は決まったと思いながら笑った瞬間、視界が回転した。
文字通りクルクルと地面と空が交互に視界に入る。
俺は何が起きたのかが分からず思考を停止しているとその時。首が無い自分の体が力なく倒れていく姿と剣を振り抜いた姿で固まる盗賊の姿が目に入って悟った。
あ、俺死んだのか。それに気付いた瞬間視界がブラックアウトした。
俺達の冒険はまだ始まったばかりだ!……すみませんやってみたかったんです。m(_ _)m物語はまだまだ続きます(*´ω`*)