撃ってピコピコ、当たってピコピコ
子供はもっと素直に生きておりますが、ちょっと大人的な思考を加えておりますことご了承ください。
ボタンなんてものは2つもあれば充分なんです。
かの有名なスマホなんて、メインのボタンは1つですよ。
(いや、あれはタッチ操作がありますからね)
右を押せば→右に、左を押せば←左に、チュートリアルなんて不要です。
完璧な直感操作感覚、シンプルな2ボタン配置、これこそは究極の!
ユーザーインターフェース!
手のひらサイズで薄型液晶、常時携帯可能、電源なんてボタン電池でぶっ続けプレイも余裕のエコ使用。
突然ですが、サメに喰われる瞬間ってきっとアドレナリンでまくりですよね、
その寸前に、救出されたらもう、英雄万歳!
そうです、なぜか上空のヘリからパラシュートで降ってくる~人を(たまに連続で2人とか)海上に浮かべた、ボートでキャッチをひたすら繰り返す~なんてシンプルなルーチンワーク……そして、キャッチを失敗すると、海中に落ちちゃった人はサメに美味しく頂かれると、なんてショッキング……。
腕の力が無くなるまで右に左にボタンを連打、これを繰り返しているとそのうち脳波も安定、アドレナリンもでまくること、間違いなしです、――液晶小型ゲーム機万歳。
――と、いうことで、ゲームといっても、決してあの有名な家族電脳装置ではありませんよ。その方に出会うのはもう少し先ですよ。
当時なんて、2本のレバーを両方に開いて極太レーザーだしたくなるくらい、ゲームの専用のコントーラーなんて当たり前で、というか、ゲームって専用の端末に入ってましたね。違うゲームしたけりゃ、別の専用端末用意してましたよね。
それでは、子供視点に移ります。
――今日から、サマーホリデー。
ついに攻略のときがきたようだ。
この日のために単2電池も大量に準備した。
いける、いけるぞ、体調も問題ない、且つ、プールから帰ってきたこの気だるい時間帯は、水をけりまくって疲れきった足を癒しつつ、寝そべって、集中にはもってこいのコンディション。
「今日こそ、嘆きの壁を突破だぁ!、スイッチONと」
目の前に広がる、真っ暗なコンソールの右端に突然、赤い日が灯ると同時に、画面いっぱいに、緑色に点滅する文字から、このときが始まったことを実感した。
ついには視界が開けてくると、せまりくる高層ビルの数々、それを遥か上空から、かわしならが、ひたすら前方へと失踪する緑色に輝く機体、そう今はこの戦闘ヘリに乗り込み戦場へと突入するところだ!
――まずは、左手元にあるレバーを軽く360度回し、久しぶりの操作感にズレが無いか確認する。
「レバー操作も順調だな、ひっかかり感もなくこの黄色いレバーはよく動いてくれる。右手はどうだ?」
右手側には2つのボタンが備えられている、1つは、連射することで前方へ激しく弾をうちだすことができるメインウェポンバルカンと、もう1つは、一度発射すると、次弾装填に時間がかかり、マニュアル照準且つ自由落下を計算し尽したものだけが操ることができるまさに、爆発する機能しか無い、爆弾の中の爆弾、投下爆弾だ。
この2つのボタンを器用におしわけて、目前に迫る砲台をこわしつつ、後方では先ほど投下した爆弾が謎の赤い建造物を破壊したことをしめす、破壊音が鳴り響いていた。
「よしっ、投下タイミングも問題ない、フフフ、ついに突破かこれは」
右手のレバー操作により上下にふれる機体、それにそって撃ちだされるバルカンはまるで、生きているかのように、うねりをあげて、
敵施設の砲台を破壊する。
と同時に、上下にふれる機体から投下された爆弾は数秒後には予測した地点へとまるで吸い込まれるように落ちていき、限られた弾数ながら確実な戦果をあげていく。
「ははははっ、順調すぎる、圧倒的だな我が軍は」
敵の前線基地を破壊しつくし、圧倒的な火力をみせつけた機体が、高層ビル群をつきぬけると、突然のアラートが脳内に響きわたり、本来であれば、何も無い荒野が広がる空間に多数の、物体が押し寄せきていることを示す、敵影の姿が画面いっぱいに広がった。
「くっ、なんて数だ、まるで突然大量の海月がひしめきあう海原にぶち込まれたみたいな状況じゃないか、しかもバルカンで破壊できないやつばかりか、くぐりぬけるので精一杯だな。」
前方から押し寄せる、下だけが空いたようになった緑色に輝く箱のような物体を、いくつも避けながらも、本来の目的である、地上にある、赤い謎の敵施設を投下爆弾で破壊していく、避けながら、投下のタイミングをあわせるのはまさに職人技、いくつもの儚く散ってきた機体を操ってきた成果が今問われている。
「いつまで、いつまで、つづくんだこの海月の大群は、もう、もう腕がもたない」
無駄に連射するバルカンを止めれば、まだまだ余裕があるはずだが、日々の癖のようになっている前方掃射は、臆病な自分には、とめることはできなかった。
「くっ、もう少し、もう少しだ、もう少しで、越えられるはず……」
爆弾投下も諦め、ひたすらに前方からくる物体をよけることに徹したことが項を労したのか、徐々に敵影が減ってきたことが黒い画面コンソールから敵を表す緑の表示が少なくなってきたことからうかがいしれる。
「よしっ、抜けた、抜けたぞ、ついに、ついに嘆きの壁まで到達……」
あれほどの数があった敵影ははるか後方へと過ぎ去り、一瞬の静寂ののちに、目の前に迫り来るものがあった。
はるか上空から垂れ下がる緑に輝く圧倒的な存在感を示す超高層建造物! これだけの構造物をささえる土台として、一体上空には何があるのか…… また地上からもまったく地面がみえないくらいにせりだしてきた高層建造物にはさまれ、
前方には機体数機分くらいの隙間しかみえていないのがわかる。
その隙間さえも、多数の砲台、赤い謎の建造物がひしめきあい、機体が通るにはスレスレまで寄せないと進めない、まるで悪魔の口のようにも思えるステージだ。
「フフフ、ついにここまできたか、あとは正確な機体位置調整と、確実な掃射ができるかどうか……戦いの日々が試されるときがきたようだ――」
突入と共に、バルカン掃射により砲台を壊せる位置へと機体の高度を調整しながら、高度調整レバーの感度を、再度確認し、これからの激しい戦いに、プールあがりの冷えた身体が芯から燃え上がる――とたんに、耳をつんざく叫び声を確認し、意識が蒼白になる。
「ば、馬鹿な、なんてタイミングだ、まさかまだ時間はあったはず……しまった、サマータイムを計算にいれて無……」
制御を失い、まっすぐに砲台へと突入する機体を横目に、震える左手は、一番左にある戦いのさなかに決して押すべきではない、黒く無骨な四角な突起にギザギザに刻まれた表面を惜しむようになでていた。
「す、すまん、ここまで来ておきなが、これを押すことになるとは、次だ、次の機会には必ず、あの壁をこえてみせる」
躊躇している中、再びあの叫び声が聞こえてきた、一刻の猶予も無い、もう限界だ。
「ぐぁぁああ、もうだめだ、すまん。ポチッとな。電源OFF」
そして聞こえてくる声が、
「ごはんよぉぉお、はやく来なさい、何してるのぉ!」
――、はい、皆様ご存知の全てを停止させる呪文ですね、何より最優先させないと今後のサマーライフに影響するもっとも偉大な時の声です。
覚えておきましょう。――もちろん、あの頃の専用機には一時停止などというぬるいギミックはありません、その一瞬一瞬が、戦いのときなのです、戦いにのぞむためには、外的要因も全てコントロールした上で挑まないと先ほどのような悲劇が発生するのです。
ちなみに、この時の専用ゲーム機は『スーパーコブラ?(記憶では)』だったように覚えてますが、間違ってたらすいません。
きっと私の中ではこういう名前だったのでしょう。
かるく斜めになった真っ黒なディスプレイを囲む青と白のボディが特徴的で、コンソールとしては、左側が360度グリグリ回せる、スティック(斜め入力できたかは不明)、右側は2つボタンがあり、説明にもあります通りなかなかシビアなマニュアル照準が必要なシステムで、一体、どれだけの時間をこいつと過ごしたかは、意外と長持ちした電池達多数を取り替えた記憶からも、ハマッてたんだろうなぁというお話でしたとさ。
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