ある偽善者の独り言
あなたは、考えたことがある?
言葉はとっても重たいんだよ。
例えばさ、君は自分の言った言葉を後悔したことが一度でもあるとしよう。
もしかしたら、自分の言うことは全て正しいんだからそんなことありえないかもしれないけどさ。今回はそういうことにしておいて欲しいんだ。
人ってものは案外単純だって、どっかの偉い人が言っていたように簡単なものなんだよ。
簡単だからこそ、難しく考えすぎて解らなくなってしまうのかもしれないけど。よくあるだろう?なぞなぞみたいな頭の柔軟性が問われる問題が。頭が良いやつほど解らなくなったりするそれが。
だからなのかもしれない。単純明快に物事を捉えてしまえば解らなかったものも解るようになっているんじゃないのかな。
ん?話がずれているんじゃないかって?
ああ、これは前置きってやつだよ。今から僕が言うことは難しく考えないでくれって、そういうためのね。
それじゃあ、本題に入ろうか。
君は、【言霊】を信じているかい?
日本に昔からあると信じられている、言葉に宿っている不思議な力。あるときには発した言葉の通りの未来がやってくることさえあるんだから、面白いよね。
それこそ、有言実行ってことばも、もしかしたらここから来てるのかもしれないね。
言葉の通り、言ったことを現実にしてしまう。簡単なようでとても難しいそれ。君はその通りに出来ている?
まぁ、そんなことはどうでもいいや。
結局は自分が信じるかどうか、そこに戻ってきてしまうから、この話はここで止めておこう。
言葉ってものはさ、案外難しいものなんだ。無ければ困るけど、あったとしても有効に言葉を使うことなんて殆ど出来ないと僕は思うよ。
だって、言葉ってものは相手の顔を見て聞くのと、紙に書かれたものを見るのじゃ、全く違う捉え方をしてしまうときがあるだろう?本当は怒っているのに、相手にはその怒りが全く通じないんだ。
不思議なものだよ。
だから、今僕が君に語りかけている言葉だって、真意は僕にしか解らないんだから。皮肉なものだよ。伝えたいことは半分程しか相手に解ってもらえないのだから。全てをわかり合うことは一生出来ないんだ。
それでもさ、聞いて欲しいと思ってしまうのが人間なんだろうけど。実際、僕も解ってもらいたいからこうやって君に話しかけているんだよ。
言葉は魔法の一つなんだろうね。
ありもしない幻を、人は昔から探し続けているんだ。だって、ファンタジー小説に出てくる魔法は絶対に何か言葉を発しているだろう?
きっと、無意識のうちに探し出したんだろうね。言葉って魔法を。
そうとしか思えないんだよ。僕からしてみればさ。
だって、そうだろう?
褒めてもらえば嬉しくなる。怒られれば悲しくなったり、苛立ちが募ったりする。嫌いだと言われれば胸が痛くなる。好きだと言われれば温かな気持ちになる。
言葉って言うのは、とても重たいものなんだよ。
何気ない一言が、他の誰かを変えてしまうんだ。
君だって、解らないわけじゃないだろう?
例えば、ある女の子がいるとしようか。
その女の子はとても明るい友達思いのいい子でした。
でも、あるとき女の子がいじめにあいました。昨日まで仲がよかったはずの友達が、急に変わってしまったのです。
いつものように挨拶をしても、誰も返事を返してくれません。だって、女の子は友達のくだらない嫉妬のせいで嫌われ者にされてしまったのですから。
学校に行けば、女の子は必ず除け者にされてしまいます。毎日、心無い言葉をかけられます。
「あんたなんか嫌い」「なんでここにいるの」「死んじゃえばいいのに」
そんな言葉ばかりが女の子にかけられるのでした。
あるとき、耐え切れなくなった女の子は自ら命を絶ってしまいました。
友達だった子達は驚きました。まさか死んでしまうとは思ってもいなかったのですから。
今の世の中にありふれた一つの話。ニュースとかでも取り上げられているようなもの。
これだって、【言霊】の一つに含まれるんじゃない?
「死ね」この言葉一つで本当に一人の命が消えたんだから。女の子の友達はまさに有言実行をしたんだ。
ほら、そう考えるととても恐ろしいと思わない?
自分の言葉一つで一人の人間が死んでしまうんだよ。それをわかってない人達はさ、何度も殺人を繰り返すんだよ。
だって、自分自身じゃ気づくことが出来ないから。言われなきゃ気づかないことってあるんだよ。
でもさ、解らないからそのまま。そうやって放置するだけじゃ人間って成長なんか出来ないんだ。ほんと、面倒くさいったらありゃしない。
別にさ、全部が全部悪いほうに変わるってわけじゃないんだ。良い方にも変われる。ただ、難しいだけで。
人間関係と一緒なんだよ。作り上げるのにはすごく時間がかかるけど、壊すときは一瞬で十分。
それと似てるんだと僕は思うよ。
良いことしていたって、たった一度の悪いことで全て上書きされちゃうみたいに。
だからさ、僕は伝えたいだけなんだよ。
少しは自分のことを振り返って見てよ、ってさ。
今の自分が思う格好いい生き方、本当に実行できてる?まだ学生だからって胡坐かいて座ってさ、親がいなくたって自分一人でなんとか出来るんだって。そんなことばっか考えてんじゃない?
何したって許される。そうやって勘違いしてんじゃないの?くだらない理想掲げて自分の未来を潰したって、あんたのせいんだ。
周りの大人の意見に逆らうのが格好いい?結局はさ、自分の間違いを認めたくない意地。そのことにすら気づけない人にならないで。
たった一度の人生を捨てようとしないでって。自分が思っている以上に言葉は重いんだ。
何気ない一言でさえ、人生を変えてしまうんだ。
……うん。解らないよね。
いいんだ、君は僕と違うからね。解らなくて当たり前なんだ。
ただ、そういう考え方もあるんだって、認めて欲しいんだよ。
これは僕の独り善がり。偽善者だ、そう言って笑ってくれてもいいさ。
だって、僕は僕をやめることが出来ないんだから。
もう、この話はやめにしようか。
こんなくだらない話、すぐに君は忘れてしまうんだろう。
でも、心の奥底に少しでも残ってくれていたら、きっと君はまだ変われるんだよ。
誰もいない部屋で、僕は一人で呟いた。