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終焉の聖女は皺を隠さない ~追放した若手パーティが、コスプレ老婆の神罰で塵に還るまで~  作者: La Mistral
第1章 : 聖女の解雇、老婆の処方箋

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第2話:灰の街と、血を啜る聖女の降臨

お待たせいたしました。

「お荷物」と呼ばれた老婆による、聖なる断罪の時間です。

かつて自分を嘲笑った若者たちが、その圧倒的な力にひれ伏し、命乞いをする。

その醜い叫びこそが、彼女にとっての最高の賛美歌アリアとなります。

炎と、肉の焦げる臭いと、絶望の味。

五感を焼き尽くすような復讐の終焉を、どうぞ特等席でご覧ください。

「熱い……助けて……身体が、溶ける……っ!」


ガイルの絶叫が、灼熱の渦巻く空気の中で、ひび割れたガラスのように砕け散る。


鼻腔を刺すのは、彼らの自慢だった革鎧が焼け、ドロドロに溶け落ちる獣脂の臭い。


「あら、聖女に助けを求めるなんて。あなたたち、無神論者ではなかったかしら?」


老婆の声は、業火の爆ぜる音を従え、涼やかな氷の結晶のように冷たく響く。


指先に触れる大気は、魔力の暴走で分子が震え、チリチリと産毛を焼く熱を帯びた。


「あ、あああ……! 指が、私の指が、炭みたいに……!」


ミラが伸ばした白い腕が、老婆の放つ神聖な光に触れ、一瞬で黒く爆ぜて粉砕される。


口の中に広がるのは、他者の絶望を糧にした時に感じる、芳醇な赤ワインの味。


視界を埋める酒場の残骸は、真っ赤な炭火となって、老婆の足元で崩れ落ちた。


「見て。この光景、まるで地獄の底に咲いた、真っ赤な蓮の花みたいで美しいわ」


老婆の足裏に伝わる地面の熱は、心地よい微熱となって、老いた血流を加速させる。


心臓の鼓動は、若者のそれよりも激しく、ドクンと世界を揺らすほど重厚に鳴り響く。


「さあ、お祈りの時間よ。あなたたちの罪を、この火で丁寧に焼き尽くしてあげる」


彼女の背筋は、昇天する龍のように、威厳を持って天を突き刺していた。


周囲の炎が、彼女の意志に従い、巨大な蛇のように鎌首をもたげて踊り狂う。


「やめろ……頼む、金ならやる! 全部やるから、この火を消してくれ!」


ガイルの喉から漏れるのは、焼けた肺が絞り出す、ゼェゼェという濁った異音。


鼻を突くのは、高級な絨毯が熱で燻され、化学繊維が溶ける鼻持ちならない悪臭。


「お金? ふふ、あの世へ持っていけるのは、己のカルマだけよ」


老婆は、杖の先でガイルの頬に触れ、皮膚がジュッと焼ける音を冷徹に聞いた。


指先に伝わるのは、肉が焦げる際のヌチャリとした、不快なほど生々しい感触。


「ひぎゃあああ! 痛い、痛いよお……お師匠様、助けてえ!」


ミラの泣き叫ぶ声が、燃え盛る梁の崩落音と共に、夜の底へと虚しく吸い込まれる。


口内に広がるのは、他人の命が尽きる瞬間の、噎せ返るような濃厚な蜜の味。


視界に映るガイルの顔は、脂汗と煤にまみれ、もはや人間の尊厳など欠片もない。


「お師匠様なんて、素敵な響き。でも、ゴミに教える言葉はもう持ち合わせていないわ」


老婆の足元で、溶け出した金貨が泥のように広がり、不気味な黄金の輝きを放つ。


周囲の温度はさらに上昇し、彼女の鼓膜は、熱膨張する空気のキーンという高音を捉える。


「さあ、もっと熱くしてあげる。あなたたちの冷え切った心が、溶け去るまでね」


彼女の瞳の中で、獄炎が逆巻く渦となり、老婆のシワ一つ一つを紅く照らし出した。


背後の炎は意志を持つ猛獣のように、逃げ場を失った若者たちの背中を執拗に舐める。


「ひっ、こっちに来るな……! 化け物、このコスプレ糞婆ッ!」


ガイルが這いずりながら吐き捨てた罵声は、熱風に煽られ、弱々しく宙に霧散する。


鼻腔を貫くのは、焼け落ちた建材から立ち昇る、咽せ返るような白煙と木炭の粉。


「化け物……? ええ、あなたたちが作り上げた、復讐という名の偶像よ」


老婆は、熱を帯びた床を素足で踏みしめ、皮膚が床に吸い付くような感触を楽しんだ。


耳朶を打つのは、爆ぜる火の粉がパチパチと奏でる、死者への鎮魂歌のような不協和音。


「腕が……私の魔法を使う腕が、動かない……!」


ミラが炭化した自身の腕を凝視し、ガチガチと歯の根が合わない音を立てて震える。


口内に充満するのは、魔力の過剰摂取による、えぐみの強い野草のような渋い後味。


視界に広がる炎は、老婆の背後で巨大な円環を描き、神々しい後光となって夜を穿つ。


「魔法はね、指先で紡ぐものじゃない。絶望の淵で、命を削って叫ぶものよ」


老婆の掌が、ミラの頬を愛撫するように触れると、脂の浮いた肌がカサリと音を立てた。 


指の腹に伝わる、死を目前にした若者の異常な体温が、老婆の心臓を狂喜で跳ねさせる。


「さあ、最後のレッスンを始めましょう。聖女の怒りが、どれほど重いものかを」


彼女の法衣の裾が、溶岩のような熱を帯び、引きずるたびに地面を黒く焼き焦がしていく。


背後に残されたガイルの泣き声が、炎の咆哮にかき消され、静かに絶望へと塗り替えられた。


「やめて……お願い……、何でもするから……っ!」


ミラの懇願は、沸騰した大気の振動に混ざり、耳障りな耳鳴りとなって脳を突く。


鼻を突くのは、彼女の自慢だった金髪がチリチリと焼け、縮れる時のゴムのような異臭。


「何でもする? ならば、その若さを私に捧げて、静かに灰になりなさい」


老婆はミラの喉元に杖の先を添え、喉仏が恐怖で上下に跳ねる振動を掌で味わった。


指先に伝わるのは、極限状態の人間が放つ、ドロリとした粘り気のある脂汗の感触。


「あ、が……あ……っ!」


声にならない悲鳴が、気化した水分の抜けた喉から、カサカサという乾いた音で漏れる。


口の中に広がるのは、他者の生命力が霧散する際に漂う、熟しすぎた果実の腐敗した甘み。


視界では、ミラの瞳に映る老婆の姿が、逆光の中で巨大な死神の鎌のように揺れている。


「あら、良い表情ね。その絶望こそが、私の乾いた肌を潤す最高の化粧水だわ」


老婆の足元で、ひび割れた地面から魔力が噴出し、シュウシュウと大気を白く焦がす。


心臓の奥底では、若者の精気を吸い上げるような、形容しがたい充足感がドクドクと脈打つ。


「地獄へ行く前に、一つだけ教えてあげる。聖女の慈悲は、死者にしか与えられないの」


彼女の笑みは、月の裏側のように冷たく、昏い悦びに満ちて頬のシワを深く刻んだ。


背後でガイルが放った無様な投石は、彼女に届く前に、炎の障壁に触れて一瞬で灰と化した。


「がふっ……助け、て……ギル、ガイル……っ!」


ミラの指先が、老婆の純白の裾を掴もうとして、力なく石畳にズリリと音を立てて滑る。


鼻腔を貫くのは、彼女が隠し持っていた秘薬の瓶が割れ、鼻を突く薬草の青臭い臭気。


「仲間を呼んでも無駄よ。あの男は今、自分の指を数えるので精一杯だもの」


老婆は、ミラの喉元に置いた杖に体重をかけ、喉の骨がミシミシと軋む感触を掌に集めた。


指先に伝わるのは、死の淵で藻掻く命が放つ、ドロリと重く、湿った不快な熱量。


「あ、ぐ……ぁ……っ」


ミラの瞳から溢れた涙が、熱せられた頬を伝い、ジュッという音と共に蒸発して消える。


口内に充満するのは、魔力の奔流が喉を焼いたことによる、ザラついた鉄錆と砂の味。


視界に映るミラの顔は、恐怖で白目を剥き、美しい面影はもはや煤の中に埋没していた。


「あら、もう終わり? 私との『お遊戯』は、まだ始まったばかりなのに」


老婆の足元で、溶け出した魔力の残滓が、ネチャリと音を立てて彼女の影と混ざり合う。


心臓の鼓動は、周囲の爆ぜる音に同調し、暴力的なまでの力強さで胸板を叩き上げた。


「さあ、その若々しい悲鳴を、もっと天高く響かせなさいな。神様も喜んでいらっしゃるわ」


彼女の背筋は、獲物を狙う大蛇のようにしなやかに、かつ傲慢に夜の闇を睥睨している。


逃げ場を失ったミラの指が、最後の抵抗として地面を掻きむしり、爪が剥がれる鈍い音が響いた。


「ひ、ぎぃ……っ! やめ……て……」


ミラの爪が石畳を掻きむしり、生爪が剥がれるミチャリという湿った音が鼓膜を刺す。


鼻を突くのは、恐怖に耐えかねた彼女が漏らした、鼻を突くアンモニアの刺激臭。


「あら、お行儀が悪いわね。聖女様の前で、そんな不浄なものを撒き散らすなんて」


老婆は、ミラの喉を圧迫していた杖を引き抜き、代わりにその顔面を素足で踏みつけた。


足の裏に伝わる、柔らかな若い頬肉の弾力と、その奥にある硬い顎の骨の感触。


「あ、がっ……あう……っ」


潰れた声と共に、ミラの口端からドロリとした鮮血が溢れ、老婆の指を紅く染める。 


口の中に広がるのは、他者の苦悶を視覚で味わうことで生じる、冷たい金属の甘み。


視界では、ガイルが腰を抜かし、ガチガチと歯を鳴らしながら無様に後退している。


「次はあなたの番よ、リーダー様。その勇ましい筋肉、どれほどで炭になるかしら」


老婆の足元で、熱せられた空気が陽炎となり、彼女の姿を不気味に歪めて見せた。


胸の奥では、失われた若さを他者の絶望で補填するような、昏い全能感が脈打つ。


「嫌だ……来るな! この狂ったババアが! 化け物! 悪魔!」


ガイルの叫びは、炎が建物をなぎ倒すドォンという重低音に、無慈悲にかき消された。


彼女の指先が虚空をなぞると、火の粉が意志を持ち、紅い鎖となって彼に絡みつく。


「悪魔? 心外ね。私はただ、あなたたちが蒔いた種を刈り取っているだけよ」


老婆の指先が宙で踊ると、紅い鎖がガイルの四肢を締め上げ、肉の焼けるジウジウという音が響く。


鼻腔を支配するのは、重厚な鉄の鎖が熱せられ、酸素と反応して放つツンとした酸化臭。


「が、ああああッ! 離せ、熱い! 皮が……皮が剥ける……っ!」


ガイルの巨体が石畳の上で跳ねるたび、鎖との摩擦で生じるベチャリとした嫌な音が空気を震わせる。


手のひらに伝わる杖の振動は、悲鳴を吸収するごとに、ドクドクと不気味な熱量を増していく。


「その強靭な皮膚も、神の裁きの前では、古びた羊皮紙よりも脆いのね」


口内に広がるのは、熱風が喉の粘膜を焼き、自身の唾液が苦く粘りつくような渇きの味。


視界に映るガイルの瞳は、脂汗と涙で濁り、かつての傲慢な光はもはや一欠片も残っていない。


「助け……て……ギル……ガイル様が……死んじゃう……」


足元で虫のように丸まったミラが、血の混じった唾液を吐き出し、カサカサと乾いた声で喘ぐ。


老婆の心臓は、若者の断末魔を燃料にするかのように、若返ったような力強い鼓動を刻む。


「死ぬ? いいえ、まだよ。私の衣装コスプレを笑った罰は、死よりも長く続くのだから」


彼女が一歩踏み出すと、足裏の熱が石畳を溶かし、ネチャリと黒い足跡を刻んでいく。


周囲の炎は、老婆の冷徹な微笑みに呼応するように、さらに高く、より禍々しい紅蓮へと膨れ上がった。


「ひ、ひぃ……あ、あぁ……」


ガイルの喉から漏れるのは、もはや言葉を成さない、肺の奥が裂けるようなヒューヒューという異音。


鼻を突くのは、限界まで熱せられた石畳が雨露と反応し、立ち上る噎せ返るような硫黄の蒸気。


「あら、もうお別れ? 私が用意した最高の舞台は、まだフィナーレを迎えていないわ」


老婆の指先が杖の頭を優しく撫でると、冷たい木肌がバチリと紫の電光を放ち、神経を鋭く刺す。


掌に伝わるのは、建物の柱が折れるドスンという地響きと、崩落する瓦礫の暴力的な震動。


「ババア……お前、だけは……呪って……やる……」


ガイルが吐き出した最期の言葉は、ドロリとした血塊と共に、老婆の純白の靴を赤く汚した。


口の中に広がるのは、復讐を完遂した瞬間にのみ許される、極上のスパイスのような痺れる味。


視界を埋め尽くしていた紅蓮の炎は、老婆の吐息一つで、静寂という名の闇に飲み込まれていく。


「呪い? 結構よ。その重みが、私のこの深いシワを美しく彩ってくれるのだから」


老婆の足元で、かつての仲間だった肉塊が、炭化した薪のように静かに、ただ沈黙を保っている。


胸の奥で渦巻いていた黒い熱は、今や冷徹なまでの静謐へと変わり、老婆の背筋を氷のように冷やす。


「さあ、次の街へ行きましょう。まだ私の『聖女の祈り』を待っている愚か者が、たくさんいるわ」


彼女が翻した法衣の裾は、灰にまみれながらも、夜の底で星のように残酷な輝きを放ち続けていた。

第2話をお読みいただき、ありがとうございました。

若さゆえの慢心に溺れたガイルとミラ。

彼らにとっての「お荷物」は、実は自分たちの命を繋ぎ止めていた唯一の「神の糸」だったことに、最期の瞬間まで気づくことはありませんでした。

「聖女の慈悲は、死者にしか与えられない」

彼女が放ったその言葉の通り、灰になった彼らだけが、ようやく老婆からの「救済」を得たのかもしれません。

そして、復讐を糧にさらなる輝きを増す老聖女。彼女の旅は、ここからが本当の始まりです。

この結末に「スッキリした!」「老婆のキャラが強烈すぎる」と感じていただけましたら、ブックマークやポイント評価をいただけますと、執筆の大きな励みになります。

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