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第四話 Fランクの新人

森を抜けた俺は、最寄りの街「アルバ」に到着した。

門番に冒険者カードを見せて中に入る。

カードの表示は【レベル1】のままだ。

ギルドに行って魔道具にかざして更新しない限り、ステータスの数値は書き換わらない仕組みになっている。


「おいおい、レベル1でよくあの森を抜けてこられたな。運が良かったな、坊主」


門番のおじさんに呆れられたが、俺は愛想笑いでやり過ごした。


(運が良かった、か。まあ、間違ってないかもな)


俺はそのまま、街の中心にある冒険者ギルドへと向かった。

ガヤガヤとした喧騒。

酒の匂いと、冒険者たちの熱気。

懐かしい雰囲気だが、ここには俺を「穀潰ごくつぶし」と罵る勇者たちはいない。


「いらっしゃいませ! 本日はどのようなご用件ですか?」


カウンターに行くと、栗色の髪をした優しそうな受付嬢さんが声をかけてくれた。


「えっと、依頼を受けたくて。あと、これ……」


俺は冒険者カードを差し出した。


「はい、確認しますね……あら? カイ様、最後のステータス更新からだいぶ経っているようですが、更新されますか?」


受付嬢さんが、更新用の水晶玉を指差す。


「あ、はい。お願……」


言いかけて、俺はハッと息を飲んだ。


(待てよ……!?)


今、俺のステータスはどうなっている?

レベル、マイナス50。

ステータス、オール5000。

もしここで更新して、その数値がカードに印字されたら……?


『ええええ!? なんですかこの数値!? 測定機器の故障ですか!?』


『レベルがマイナス!? 前代未聞だぞ!』

『おい、あいつを確保しろ! 国の研究機関に送り込め!』


……なんてことになりかねない。

「平穏なスローライフ」なんて、夢のまた夢になってしまう!

俺は冷や汗をダラダラ流しながら、慌てて首を横に振った。


「い、いえ! 更新はいいです! まだレベル上がってないと思うんで!」 


「え? でも、念のために……」


「いいんです! レベル1のままなのは自分が一番よく分かってるんで! 手数料ももったいないし!」


俺が必死に拒否すると、受付嬢さんは不思議そうな顔をしつつも、「は、はぁ……分かりました」と引いてくれた。

ふぅ、危なかった……。

その時、背後から下品な笑い声が聞こえてきた。


「ギャハハ! 見ろよあいつ、更新代がもったいないだってよ!」


「レベル1の万年Fランクか? 貧乏人は辛いなぁオイ!」


振り返ると、強そうな鎧を着た冒険者たちが、ニヤニヤと俺を見ていた。

どうやら、俺の会話が聞こえていたらしい。


「おい新人、悪いことは言わねえ。ママのミルクでも飲んで寝てな!」


ギルド中がドッと笑いに包まれる。

以前の俺なら、この空気の居心地の悪さに縮こまっていただろう。

でも、今の俺は違った。


(よかった……)


俺は心の中で、深く安堵していた。

彼らは俺を「ただの雑魚」だと思っている。

レベル1の、貧乏で弱い、Fランク冒険者。 


(それこそが、俺が望んでいた扱いだ!)


「……どうも忠告ありがとう。無理しないようにするよ」


俺は彼らに軽く頭を下げると、掲示板の端っこにある「薬草採取(Fランク)」の依頼書を剥がして、カウンターに出した。


「これ、お願いします」


「え、あ、はい。薬草採取ですね。……本当にこれだけでいいんですか?」


「はい。俺にはこれくらいが丁度いいので」


俺は手続きを済ませると、馬鹿にするような視線を背中に浴びながら、足取り軽くギルドを出た。

今の俺なら、薬草採取なんて一瞬で終わる。

さっさと終わらせて、宿屋でうまい飯でも食おう。

そう思って路地裏を歩いていた、その時だった。


「いやだ! 放してよ! お願い!」


少女の悲鳴が聞こえた。

さらに、男の怒鳴り声と、何かが打たれるような鈍い音。


「うるせえ! 逃げられるとでも思ったか、この半端者が!」


俺は足を止めた。

路地の奥、暗がりの中で、みすぼらしい服を着た小柄な少女が、大柄な男に蹴り飛ばされているのが見えた。

少女の頭には、猫のような耳。

彼女は、亜人だった。

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