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ジミジミ地味子さん

作者: らすく

 ===== ジリリリリン =====

 大きな目覚ましの音で私は飛び起きた。そして時間を確認した。

 (なんだ。まだ早いじゃん・・・。)

 安心した私は、またゴロンとベッドに横になった。しかし・・・。

 (はっ!)

 でも直に気がついた。目覚まし時計は間違っていない。実を言うと、この時間にセットしていたことは間違っていないのだ。

 何故なら私は、この春から高校生。そして中学時代は近所への登校だったのが、家から離れた高校へと変わったのである。だから強制的に早起きをしなければいけないのであった。

 自分自身で決めた進路だ。誰にも文句は言えない・・・。

 私は眠い目をこすりながら洗面所に行き顔を洗ったのだった。

 そして鏡に映った自分の顔を見て、溜息をついた。それには理由があった。

 ===== 地味子 =====

 これが私の中学時代のあだ名だ。全く馬鹿にしている。

 でも本当にその通りだ。私は顔はパッしない。そして何の取り柄もない。

 自分でも分かっているんだ。

 ===== 私は地味子だ =====

 自虐的な考察をしながら身支度をした私は、電車の時刻遅れないように小走りに家を出た。


 ===== ガタンガタン =====

 電車は私を揺らす。当たり前のことだが・・・。

 (はあ・・・。)ち たぶん私は端から見ても、全く魅力のない女子高生であろう・・・。

 だからナンパされることなどは無いだろうし、電車で痴漢に会う事も無いであろう・・・。

 まあこんな事を言えばまるで自分が、痴漢してもらいたい願望があるみたいだが完全に否定できないところがまた悲しい・・・。

 その時まだ私は気が付かなかった。間もなく自分自身の運命が大きく動き出すという事を・・・。


 (ん・・・・・?)

 何気に視線を上げたら、とある吊り下げ広告が目に入った。それは何かといわれたら・・・。

 ~~~~~ 貴女も美しく生まれ変わる ~~~~~

 なんだか使い古されたようなキャッチコピーだ。それは美容整形の広告をだった。

 金額をみて驚いた。とても私には手を出せる金額ではない。

 「ふう・・・。」

 また溜息をついて、私は俯き加減になった。でも・・・。

 なにか引っ掛かるものがある・・・。

 思わず私はスマホを取り出し、その吊り下げ広告に記載されているQRコードをスキャンして保存した。そのとき自分の人生の分岐点を決める音がした・・・。

 

 ~ 放課後 ~

 私はその整形外科にいた。やはり気になるのだ。しかしお金がない。


 すると整形医師から提案を受けた。

 「私が研究中の新しい手術方法のモニターになっていただけたら、無料でさせていただきます。」

 勿論、私は不安だった。しかし自分が変わりたい、という気持ちが打ち勝った。

 私は手術で起こることに関して一切訴えない、という誓約書にサインをした。

 そう私はあの電車の吊り下げ広告のQRコードから、整形外科にアクセスしたのだった。

 そしていま私は大きな決断をしたのだった。

 

 ===== 私は整形手術をした =====

 (これが私・・・・・。)

 絶句した・・・。その鏡の中には、今までも自分では考えられないような、あか抜けた顔があったのである。

 もともとスタイルは人並みだと思っていたので、一気に性的な魅力を持った女子高生に生まれ変わったのだ・・・、この私は・・・。

 余りに上手くいったので周りの目も気にせずに歓喜したかったのだが、恥ずかしいからやめた。


 こうして私は別の女になった。

 帰宅した。しかし・・・。

 「どちら様ですか?」

 玄関に母が出てきた。

 「お母さん、私だよ。」

 「え!?何を言ってるんですか?」

 何と母でも私と分からないのだ。そして事態は悪い方向へと動く。

 「警察呼びますよ!」

 「ひいい!?」

 いつもからは想像もつかないような、母の迫力に押されて私は家を出てしまった。


 特に当ても無いのだが、私は電車に乗っていた。すると・・・。

 (はっ・・・・!)

 この私のお尻を触ってくる手があったのだ。何とこの私の尻をだ・・・・。

 痴漢にあったことなど生まれて初めてだ。

 すると自分に不思議な感情が芽生えた・・・。

 本来なら手を跳ねのけるなり、叫び声をあげるなり、拒否の反応を示すべきなのであるが・・・。

 しかし今日の私は違ったのだ・・・。ねじ曲がったことかもしれないが、自分の女としての魅力と認められたような感覚に陥ってしまったのである。

 そしてその事によって、この私は痴漢に尻だけでなくまだ恥ずかしい部分を触るのを許してしまったのであった・・・。


 当てもなくよるの街を制服姿で彷徨った。

 案の定、中年の男性が声をかけてきた。

 背にはらを変えられない私は、中年男性に身を委ねた。


 ~~~~~ それから数年後 ~~~~~

 私は自分自身の望み通りに、派手な女になった。

 夜の蝶として持て囃される。

 私は不安を抱きながらも、今の自分を楽しむことにしている。

 いつか整形した顔が崩れるその日まで。

                   

                           ~ ジミジミ地味子さん ~ <完>

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