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けむり

田中賢二 46歳 サラリーマン 家族は嫁と二人の子供 長男と次男 長男は今高校2年生 次男は中学3年生 

田中賢二の趣味はゴルフ と 魚釣り ゴルフはときたま 嫁も同伴して楽しんでいる

子供達もそんな日は学校へ行っているか あるいは 休みの日は友達と遊びに出かけている

もしくは趣味でスポーツクラブに行っている

何一つ問題のない家族で平凡な家庭である


田中健二の勤め先も順調で業績をわずかだが毎年 伸ばしていレる


平成5年11月11日

田中健二の職場は隔週で土曜日が休みであったのでこの日は朝からのんびりとしていて子供たちは弟が受験を控えていたので 塾へ通っていて 兄は中学の時から頑張っている卓球クラブへ 練習に出かけていた

妻は最近始めた 手芸教室にいそいそと 朝から出かけて行った


まるで 時間が止まったように夫 田中健二は

午前中は家庭菜園に励み 午後からも昼寝をしてそれから再び 家庭菜園

夕方になりやや肌寒くなったこともあって

一日じゅう家庭 菜園でできた 草などを燃やしていた

お隣の家に少しは煙も到達していたが それも別に問題もなく それによって トラブルになることも一切なかったから いつもそのようにしていた


枯れ草などを燃やしながら なんとなく 煙の流れていく方を見つめているとそれはお隣の家の応接間 近くのガラス戸に煙は届いていた


だけど しばらくして火の勢いも収まったので

目線をそこから外し また 周りの燃え残った枯れ草を集めていた


ほぼ 40分ほど時間が過ぎていて

やがて 草も燃え尽きて ほとんどが灰になったので周りの土をかぶせて部屋に入ることにした


そうこうしてる時に妻のみのりも帰ってきて

夕飯の時間になってきた頃には長男洋一も次男の直哉 も顔を揃えていた


平和すぎるぐらい平和な 田中家であったが

翌日

お隣の山川 源氏さんの家に何人もの 警察官が

やって来ていて慌ただしく 出入りを繰り返している


お隣の家がなんとなく 騒々しく思えたので

田中健二は玄関から外に出ておまわりさんに

一体何が起こったんですか と聞くことにした

いやぁこちらのご主人が 昨日の間に亡くなっていてそれで

そこまで 警察官が言ったから 田中健二はとにかく 驚いた

まさか!

だけど警察官はそれ以上のことは口にしなかったので無理は言えなかった

隣の旦那さんとは挨拶するだけじゃなくて1年に2回ほどはゴルフをご一緒したり また 無理に誘った釣りにも付き合ってもらったりしていた

だから なぜ死ぬことになったのか それを とにかく知りたかったが


どうしたんだろう 源氏さん?

まさか死ぬなんて 昨日は見かけなかったけどおとついは元気にされている姿を見ているんだけど

本当にどうしたんだろう?


田中健二は妻に不思議そうに言いながら まるで独り言のようにどうしてだろう どうしてだろうと 繰り返していた


やがて お隣の 山川 源氏さんの死因が風の噂のように 田中健二の家族の耳に入ってきた


殺された?

どうも 殺されたらしい 他殺の可能性があると警察は言っているみたい

山川さん どうも 背中からと脇腹にナイフで刺された大きな傷があるみたい


だから警察は間違いなく 他殺であると


田中健二は 山川 源氏さんがどうして殺されなければならない理由があったのか

信じられなかった 別に人に嫌われるような性格でもまた そのような行動を見たこともなかったからむしろ 協力的で理解力があり 優しさもあり ゴルフをしていても釣りを一緒にしていてもいつも 角張ったことの言えるような人ではなかった むしろ 協力的で優しかった


田中健二は 山川源治さんを何度も思い出しながら なぜ殺されなければならなかったかを何度も何度もしつこく考えていた


その日の夕方2人の刑事が 田中健二の家を訪ねてきた


何か気づかれたことはございませんでしたか

お気の毒に お隣さんはどうも 殺されておりますね 背中と脇腹にナイフで刺された跡があり

最近流行っている 闇バイトの犯行かもしれませんね 大きな物音がしたとかガラスが割れる音がしたとか 叫び声が したとか 何でもいいです 何かお気づきの点がございませんか?


私服の刑事は田中賢二とその家族にとにかく何かを話してくださいと言わん ばかりにしつこく 質問を繰り返してきた


だけど 田中家の家族全員には全く何も気づいたことはなく答えようがなかった


刑事が帰った後 お隣の家も静寂を取り戻し

まるで何もなかったかのように静かであった

そして夕刻になって 雨がパラパラと振り出してきて

その雨 音だけが静かに聞こえる 日曜日の夕暮れとなっていた


刑事さんも言っていたけどまさかあのテレビで やかましく 言っている 闇バイトとかでは

そうだろうか 怖いね だけど お隣の山川 源氏さんも 特別 お金があるとか 裕福であるとか

そのようには思わないけどな

ゴルフにご一緒しても釣りに誘っても結構 彼は無駄なお金を使わないタイプだから

どうして彼が狙われたのか 本当に分からないな


田中健二がそのように言うと

息子の次男の直哉が

でもわからないよ 隣のおじさん なぜかと言うとね いつか見たよ 若い女の人と仲良く 2人で歩いている姿を  


すると 母のみのりが

へえー隣のおじさんがそんなことを


その言葉に対して二男の直哉が

確かにね おじさん 腕を組んだり肩を寄せて

だき寄せるようにしたり

とっても仲良く見えたよ


それを聞いていた 田中健二は

そうか 山川さんってそんなようなところがあったのか 知らなかったな 子供さんも うちと一緒で男の子もいてるのになぁ


長男がこれまでは黙って聞いていたが その時

ちょっと大きな声で


おじさん 浮気してたって ことだね 不倫って言うか


その言葉で誰もがそれ以上のことは言わなかった

何しろ 前の日に殺されているのだから家族全員が不謹慎に思えてきた


しばらくして ニュースを家族全員で見ることにした


昨夜 深夜に奈良県ヤマト市で殺人事件が起こりました

被害者はヤマト市在住の山川 源氏さんという方でした奥さんと お子さんが1人おられましたが2人とも外出していて奥さんのお話では土曜日から日曜日にかけて親戚に出かけていて旦那さん1人だったようです 


土曜日の夕方から日曜日の深夜に 背中と脇腹に刃物で刺された跡があり出血多量で

新聞配達の方が発見した時にはすでに意識不明で救急隊員によって死亡が確認されました


田中健二と家族が全員で重たい空気が流れる中で


源氏さん 1人で いたんだ 昨日から

押し込み 強盗とかそんな連中にやられたのかな 土曜日の夕方 からって言っていたね

そのように言うと 長男が

背中に刺されているのが最初かな それから 振り返ったら 今度は 脇腹を刺された

それとも 脇腹を刺されて逃げようとして背中を 犯人に見せて突き刺されたのかな?


妻 みのりも黙っていられなくなって

お気の毒に 源氏さん 痛かったでしょうね

奥さんと息子さんは たまたま 外出していて

助かっただけでも不幸中の幸いかもしれませんね


弟の直哉も

おじさん浮気なんかしてるから罰が当たったのかもしれないね


みんなが黙ってしまった


源氏さんは警察によって解剖されることになり お隣の山川家は残された嫁のノブさんと一人息子の 達也が重い空気の中で言葉も忘れて 時間の流れを感じていた


山川 源氏さんが亡くなられて5日ほど過ぎた頃に2人の私服警官が田中健二の家にやってきて


申し訳ありません 何度も

ところで ご主人 お隣の旦那さんと奥さんは

どのように思われましたか?

例えばとても仲が良かったとか あるいは 再三喧嘩をしていたとか

それにお父さんと息子さんとの関係もどうでしたかな?


どうしてそんなことを聞かれるんですか?


いやーこういったことはどなたにも聞かせてもらっていますから 奥さんも何かお気づきの点がありましたら

なかなかお隣のことだからあまり気は 進まないとは思いますが

何しろ 殺人事件ですから ご理解ください


妻のみのりも頭をかしげて眉間にしわ も寄せて

さあ、あまり気にしたこともないですので分かりませんね


そのように言うと警察官は仁王立ちになって


ちょっとね 変な噂を耳にしておりますので

それははっきり言って 旦那さんの女性関係です


その言葉に田中賢二と妻 みのりは目を合わせて表情を少し変えた


それを見抜いた 警察官はすぐさま

何か思い当たることがございますか?

そのように 早口で


田中健二はそこまで警察が分かっているならと思い ためらうことなく 警察官に


そんなこともご存知ですか 実は私の次男が

言うには

隣のおじさんは結構若い女の人と遊んでいるか それとも 恋愛関係にあるか かもしれないと昨日いっておりました


どうして分かりましたか?


どうもね 弟の直哉がお隣さんが若い女性と手を繋ぎ合って寄り添うようにして歩いている姿を見かけたらしいです


そうでしたか

警察官は頷きながら何かを悟るように黙っていたので


おまわりさん そのことと 今回の事件が何か関係があるのですか?


妻のみのりが遠慮もなくそのように口にして警察官の目を覗き込んだ


いや、分かりませんが 何しろ 山川源氏さんは殺されたわけですから

可能性としては若い女性と付き合っていてその女性に彼氏がおるとなると これは殺人事件に発展することも考えられますから

この頃の若い人は ある意味 残酷でもありますから 多くの事件から同じようなケースもありますからね


そうですか 怖いですね


ところで 息子さんはお隣さんを見かけたのは

その場所分かりますかね?

もし かまわないのなら私どもに息子さんにお聞きになって電話いただけますか?


分かりました


二人の警察官は20分ほど聞き込みをした後

田中家を後にした


軽く会釈をして玄関ドアを閉めて2人は中へ入りながら


怖いですね お隣さん どうしたんでしょうね やっぱり女性関係かな?


みのりがそのように言うと夫健二も

全く怖いね

それだけ を二人は口にして台所に向かい

冷たいお茶をすすいだ


翌日お隣の奥さん のぶさんが神妙な顔つきで田中の家にやってきて


色々お世話になりました でもこれから 大変です 息子も 来年は大学も卒業するから働いてくれるけど でも今はやっぱり主人がいないと

本当につらいですね


うつむいたままで 時たま 目を上げ 妻 みのりの目を見るがその目はこわばっていていかにも 辛そうな目である

泣き続けたような その目は さらに 悲壮さを思わせている


妻 みのりはそんなお隣のノブさんに


奥さん

かける言葉も分かりません

私なら どうなっているやら

でも奥さん

辛い時は遠慮しないで来てください 気晴らしになるくらいのことですが


ええ ありがとうございます だけどどう考えても 何度考えても

我が家に こんな不幸が来るとは考えたこともなかったし 今でも信じられないし

お父さんの背中をナイフで刺して そして脇腹もナイフでさして

そんなことをする 犯人がおるかと思うと


震えてきて


息を詰まらせて角張った声でノブさんはそのように口にしてうつむいた


のぶさん

息子さんが頑張ってくれますよ

男の子 だし お葬式でも涙一つ見せていなかったですよ

あれは犯人に対する怒りだと思いますよ


今泣いている場合じゃないと心の中は怒りでいっぱいになっていたと思いますよ


妻 みのりがそのように 俯いたのぶさんの肩にそっと手を当て 励ましの言葉をかけた


のぶさんはうつむいたまま 涙を ポタポタポタッと 落としながら何度も頭を下げていた


辛すぎたのか ノブさんは

本当にお世話になりました ありがとうございました

そのように 小さな声で 絞り出すように口にして玄関の扉を閉めて 足音だけ残して帰っていった


お隣の山川源二 さんが殺されてから1ヶ月が過ぎていた頃

まるで何もなかったかのように お隣さんも

これまでの生活を取り戻しているかに見えた

田中健二が務めに行く 早朝はすでに お隣の のぶさんも 家の周りをほうきを持って掃除されていて

おはようございますとお互いに会釈をしていた


息子さんは大学へ行っていて時間がないのか お父さんと同じような 釣りにはあまり興味がないのか

息子さんも一緒に釣りに行ったことは一度もなかった 田中健二は

お母さんのノブさんとは親しげに話していたけど息子さんとはそうでもなかった


平穏な生活に戻りつつあった 田中健二に

考えられないような出来事が起こることとなった


ちょうど あの事件から1ヶ月半 ぐらいが過ぎていて 田中健二はいつものように会社に行きそしていつものように電車に乗って帰宅をするつもりであったが


プラットフォームで電車を待っている時に

まさか であったが 電車が入ってきた その同じ時に後ろから誰かから突き落とされたのである


びっくりした 田中健二は入ってきた 先頭車両の角の部分に手を伸ばしてなんとか 命拾いはしたが


あと1秒でも早く押されていたなら 電車の車輪の下敷きになっていたことは間違いなかった


誰か分からない 何が起こったかもわからない

湧き出る 冷や汗を流しながら プラットフォームに横たわった 健二は

後ろを振り返った時は 多くの人が彼を囲むようにしていた


まるで自殺をしたように周りの人には見えたかもしれない


多くの目が田中健二を見つめているが

その目は 異様なまでに 彼には思えた


そのうち 駅員が2人 飛んできて電車も停車駅 だからゆっくりは走っていたが それでも 急ブレーキを踏んだから プラットフォームに焼けたような臭いが隅々まで漂った


大丈夫ですか?


駅員が彼に声をかけているがだけどそれは

心配しての声とあるいは迷惑なことをしてくれたな という 怒りを込めた声にも健二には思えた


後ろから誰かに突き落とされました

殺されかかったのかも分かりません

いや 殺すつもりだったようにも思います

ビデオに映ってるはずです

どうか調べてください 間違いなく 誰かが私を突き落としております



田中研二は事務室にとりあえず 案内され怪我の具合をまず 尋ねられ


手が痛いです 手が電車を思いっきり押しましたから手首をくじいてしまったようです

それと背中も痛いですね

だけど前に突き出した手で 電車を押すようにしたから下に落ちなくてすんだと思います

落ちていたなら

多分死んでいたでしょうね


すぐに救急車を手配しましたから

もちろん 警察にも


そうですか  でもこのようにして 骨までは折れていないですから 大事には至ってないとは思っておりますが

とりあえず怪我 程度で済んでよかったです


まだ今 興奮されていると思うから 病院でしっかり検査してもらってください

それと 少し落ち着いたらまた警察と私どもにも詳しく知らせてください


はいわかりました


しばらくして救急車がサイレンを鳴らしてやってきて 田中健二は病院に運ばれて行き

それから2時間ほどして警察官がやってきた


詳しくお聞かせください


いや 何も詳しくも さっぱり分かりません

何年もあの電車に乗って出勤し 帰宅しておりますから

25年ぐらい 同じことを繰り返しておりますから

だから 偶然 後ろの人が例えば 気を失うとか貧血になるとか病気がちとか そのような人がたまたま 私の後ろで電車を待っていて

それで気を失うようにして私を後ろから押したかもしれないし

あるいは故意的に私を後ろから押したとなるとどうして かなと それも 疑問ですし

あるいは悪質ないたずら で 私を殺すつもりであった

変質者かもしれない


正直言って 分かりません

だから駅員さんに言いましたが とにかく ビデオにどのように映っているか調べてください と強く言いました


分かりました この後 駅員さんにも詳しく聞くことになりますので またわかることもあるかと思われます


とにかく大事に至らなくて良かったと思いますね 1秒でも早かったらもしかすると電車の下敷きになっていたかもしれないと 駅員さんからも聞いておりますから


そうですか でも怖かったです

プラットホー厶て何回か 跳ね飛ばされて それで 他のお客さんが私を囲んでいて


あの時のあの人たちの目が怖かったですね

この中の誰かが私を突き落とそうとした そして殺そうとしていたかもしれないと思うと

怒りがこみ上げてきたり

何とも言えない 怖さが込み上げてきて

本当につらいでした

どうかあの時一体何が起こったのか バトロールカメラでしっかり観察していただき

犯人らしきものがいるなら追求してもらいたいです

よろしくお願いします


その時すでに駅から連絡をもらっていた妻 みのり長男 洋一とともに病院に駆けつけて 控え室で警察が出て行くのを待っていた 



来てくれたんだ


その瞬間に健二は 頬を緩ませて二人の目を見つめた

妻みのりは顔色を変えて健二に向かって

駅からも連絡来ましたが 一体何があったのですか

それで お体は大丈夫ですか?


大丈夫!

別に 骨も折れてないみたいだし 打撲症ってところかな

ただね 冷静に考えて怖かったのはいつもの乗る電車にひかれそうになったことかな 誰かに押されて


誰かに押されてって なんかそのような恨みを買うような人がいたんですか?


いや全く心当たりがない

会社に25年ほど通っているけど たった一度の揉め事もなかったように思う 喧嘩をしたこともない

ゴルフや釣りに行っていてもそんなことは一度もなかった


では どこに 原因が?

分からない 警察にも 駅員さんにもいったけど


殺意のあるものがいた

変質者であった

病気がちの人が貧血を起こして 私にぶつかってきた

つまずいたとか何かで前に倒れてきた


色々言ったけど 果たして どれが正しいのか 今の時点では 全くわからない

バトロール カメラをしっかり見て調べてくださいとは言っている


でも本当にお体だ大丈夫ですか?


大丈夫と思う

大きな怪我もしてないみたいだし

明日 精密検査をして別に問題がなかったなら帰ってくれていいからって


そうでしたか とりあえず大事にならなくてよかった


それまで黙っていた長男も笑顔で


怖いねお父さん 万が一 だよ お父さんの命を狙うような人がこの世の中におるとするなら本当に怖いね

多分 殺されるようなことなんか 1ミリもしてないと思うから


そうだね 実際 誰かがお父さんの命を狙って それで失敗したのも分かった

その考えなら また 狙われるかもわからないね


とにかく お隣さんも現実殺されたのだから

何か そこに原因がないのかな?


なんか 平凡で毎日のんびりと生きている 私たち家族もお隣の 源氏さんの家族も平和な家族だけど 源氏さんは殺されるし 私も こうやって命狙らわれたかもしれないし

なんか本当に怖くなってきたな


これまで想像もしなかった 見えない 怖さが 家族全員に覆いかぶさり暫しの間 誰もが言葉をなくしていた


翌日の正午

田中健二は無事退院することになった


だけど実家に戻ってくるとまるで今までとは違った景色に周りが見え始めたように思えた


お隣の山川 源氏さんは殺される そして 間髪を入れず 田中健二も命を狙われた となるとこれまでは全く持ち合わせていなかった 警戒心が

この二軒の家を容赦なく包んでいた


そして 先日 訪れた警察官がまた2人 やってきた


お聞きしました 大変でしたね

今のところまだ ビデオカメラも 検証 の最中ですから それはまた後日で


ところで前にお聞きしました お隣の 山川 源氏さんの女性関係ですが


全く 心当たりがないですかな?

そうでしたね 息子さんが駅の近くで見られたという女性ですが


だからヤマト 西口駅の 聞かせてもらってる あの辺りの喫茶店やレストランなどを何度も調べさせてもらいましたが

それらしい人物が今のところ うかんでは来ておりません


それで 息子さんにどのようなイメージか またお聞きしてもらいたいのですが


年齢と背の高さや もしかして 何か特徴があるとか実は前にも聞かせてもらったのは 主に山川源二 さんと出会った場所でしたから

それは ローラー作戦で徹底的に調べましたから問題は 女性の具体的な姿を


刑事がそこまで話したから


分かりました息子にまた聞くようにします

何しろ 彼は今 高校入試のことで頭がいっぱいで


そうでしたね とにかく お隣さんの家で殺人事件が起こったのですからできる限りのご協力をお願いします


ところが 刑事たちが帰ってから10日ほど経った頃にお隣さんに若い女性と中年の男性がやってきた


たまたま 次男がその時家でぶらぶら としていて勉強の一休みということで 玄関先に出て野球のバットを振っていた時に


隣にやってきた女性と男性を ちらっと見て

あることに気がついた


そして夕食になり

次男の直也が誰も思いつかなかったことを口にしだした

それは父親と母親から駅前で以前に隣のおじさんと手を組み合って歩いていた若い女性の背丈や 年齢 などを思い出してほしいと言われていたからそれをある程度 具体的に 警察に伝えていて

その記憶は 頭の中で まだまだ しっかり生き続けていた


お父さんにお母さん

直也は自信は全くなかったが


あのね 今日夕方お隣さんに若い女性とおじさんが入っていくのを見たけど


あー その人たちは 前にも私も見たよ 確か おじさんのお葬式の日に

男の人って白髪頭のおじさんじゃなかった


そのように妻 みのりも言葉を添えた

さらに

その人達って多分 保険会社の人だと思う

なんとか生命っていう お花もそえられていたから

確か 車にも 金の文字で書かれていたと思う なんとか生命って


そこまで みのりが口を挟んで 次男の直也が

さらに続けた


そうだよ 間違いない白髪頭のおじさんだった


あのね

僕駅前でね おじさんと手をつないで仲良く歩いていた女の人って

もしかすると 今日夕方 見たあの女の人と同じように思えたのだけど

駅前で見た時は大きなサングラスをかけていて自信なんかないけど

でもなんとなく似ているような気がする


つまり 直哉は

保険勧誘の女性と隣のおじさんが親密な関係になっていたかもしれないと言うのか?


だからかもしれないという程度の話だよ


ちょっと焦り口調で父親の田中健二が


その話はでも漏らしたらいけないな

何しろ万が一 違う女性だったら迷惑かけるからな

それに 保険会社の社員なら変な噂が立つと信用問題に関わるから

その話は警察には言わないほど 今の時点ではいいと思うよ


あーわかった 確定的じゃないものね


締めくくるように父親の健二が


家族だけの話として 万が一保険屋さんの女性とおじさんが付き合っていた女性が同じ人物なら

そのように考えてみるとちょっと怖くなってくるね


その女性に彼氏がいるとか 旦那さんがあるとか それでも顧客である 隣のおじさんと付き合っていた となると想像もつかないね

源氏さんもしかすると 事件になる原因を作っていたのかもしれないしそれに私がなぜ狙われたのかも

狙われたと考えた時に

とにかく何もかもまだはっきりしてないから警察にも余計なことは今の時点では絶対言わないことだね


分かったわ 直也も十分気をつけて かりに 警察が直接訪ねてきたとしても

洋一はこの話 何も知らないけど でもちゃんと私の方から言っておきます


妻 みのりがそのように言って 締めくくった

 

それから 何日かが過ぎて また田中健二は警察に今度は 呼び出された

プラットホームで起こった事故に対してのパトロールカメラの映像の説明であった


田中賢二 が警察に着くなり

パトロールカメラの写っている内容を見せられた

刑事はお茶を注ぎながら


何度も何度も見ていますが

正直言って はっきり分かりません

確かにあなたの真後ろに若い男性が写っていますね だけどこの人物があなたをついているようには見えませんね 

ただ突いているかもしれないとも

想像はつきますが

だけど この映像では 断言はできません


田中健二はもっと違うセリフを期待していたが

警察の口にする内容は歯がゆい くらい緩やかなものであった


刑事さん

でも 私間違いなくかなりの力で押されたのは覚えておりますよ 腰の辺り

逆らうようにそのように言ったが

刑事もまたこちらも逆らうように


でもそのように見えないでしょう?

優しく 目を細めてそのように言い返した


納得いかなかった 田中健二は

でもね 確かにおされたのは間違いなかったと思っていますから

この若い人のこと調べてもらいましたか?

私の家 あるいは 最近 お隣さんの旦那さんが殺されたこともあり それに 会社関係で何か トラブルでもあったのかもしれないし

犯人がいるとしたなら 多分この若い人でしょう?


ちょっと焦りながらそれでいて 苛立ち も覚えて 田中健二は刑事の目を睨んでそのように言った


刑事は

この人を調べろっていうわけですか?

だけどそれは大変ですね

今回の出来事を 殺人未遂事件と捉えるなら 調べないといけないですが

さて そこまでする余裕があるかな?上司が どのように判断するかとなってきますね


刑事の言葉は案外 冷たかった


田中健二はその言葉に納得したわけではなくて駅員さんに協力してもらってせめてこの人の住所とか年齢とか調べてもらえませんか?

ヤマト駅を利用している人なら毎日のように パトロールカメラに写っていることも考えられるでしょう?

定期券も持っているかも

第一それに職務質問だってできるのではないのですか?


そこまでいったので 刑事も少しは困った様子を見せて


分かりました ヤマト駅に協力してもらってこの人物の詳細を突き止めさせてもらいます


お願いします

私がもし本当に命を狙われたのならこれからのこともありますから

よろしくお願いしておきます


田中研二は自宅に向かいながら

まるで 煙に包まれたように 不安に包まれて先日 プラットフォームで起こったことがいくら考えても理解できなかった


長らく勤めている会社のことが頭に浮かんできて そしてパトロールカメラで写っていた人物と同じような人物が会社にはいないかと思い出すように確認していた


だけど映像に映っていた若い男性と同じようなタイプの従業員は思い当たるものがいなかった


さらにお隣の山川源治さんの関係者で心当たりがないか それも頭に浮かべながら自宅に向かっていた


次男の直也が言っていたお隣に出入りしている保険の外交員の女性と

生前 山川源治さんが仲良く 連れ出して歩いていた女性が同じ人物ではないかと


その言葉が頭の中を駆け巡った


プラットフォームで自分を突き

落としたかもしれない あの後ろに写っている 若い男がお隣の誰かと何かの関係がないのかと思う 飛躍していたが考えることにした


だけど全く検討がつかなかったが

ただ 次男の直也が言うように

山川 源氏さんと い い 仲になっていた女性が保険関係の女性でお隣の山川さん 宅に出入りしていて

山川源治さんのお葬式にも顔を出していた


だけどそこまで考えた時に

おそらく 弟の直哉は勘違いしているのだろうと思う気持ちが強くなってきた

ただこの話は お隣さんのことでしかも 奥さんの耳に入れば心痛めるだろうと思うことから

それから 何日もの間 次男の直哉に

あえて聞くこともせず 黙っていた


ところがしばらくしてまた警察官がやってきて

それはお隣の 山川さんに用事があったらしく車が止まってるのを見かけたが 1時間も過ぎてから 田中健二の宅を訪ねてきた


刑事は もし 申し訳なさそうに


何度もすいませんね なんとかアジトと言うかお隣の旦那さんと若い女性が出会っていた場所を突き止めました


郡山の駅の近くの喫茶店でした

それで女性はこの方であることが分かりました

今日は息子さんは?


刑事はそのように言って 目線を広げた


はいおりますよ 次男の直哉でいいんですね 彼が言い出した話ですからね


ええお願いします


あーすいませんね  ご迷惑をおかけして


刑事は申し訳なさそうに そのように口にして


この女性で間違いないですか?

間違いないと思って来させてもらいましたが


はい 多分そうだと思います

この写真を見て今思い出しましたがこの人 この写真も前に見た時も同じような髪の毛の色をしていましたから多分 同じだと思います


その時 口にしてはいけなかったのであったが直哉はあのデリケートの話まで口に出した


おまわりさん 実はこの女性ね

隣のおじさんちへこの前来ているのを見ました 

ただ髪の毛は黒でしたが

もし間違っていたら忘れてください


そこまで直也が口にしたので慌てて 父親の健二は


直哉 刑事さんにあまりいい加減なことを言わないほどいいよ

はっきり分かっていないなら

憶測のことは言わないほどいいよ


あー 刑事さん 今の話は忘れてください


ところが刑事はその話にかなり興味を持ったようで


そのお隣に この女性が来たかもしれないというのはいつのことですか?


つい最近です 10日か15日ほど前に

でもお母さんはおじさんのお葬式の時に見かけたと言っていました


そうですか なるほど

実はこの女性は生命保険の外交員で亡くなられた 山川源二 さんと何らかの形で繋がっていたことが考えられます


その言葉に 田中健二は


そうでしたか そこまでお分かりなんですね それでは やはりこの女性とお葬式とかに参列していた女性が同じってことになっても不思議ではないですね


おそらくね

大和郡山の駅近くの喫茶店でももうかなり前から二人は出会っていたみたいですよ


そうでしたか 奥さんもお気の毒に


健二はそのように口にしながら頷いていた


刑事は帰っていったが

なんとなく重苦しい 空気が漂っていて

あまり良くない方向にお隣さんは進んで行っているように思えて仕方なかった


それは 田中健二がプラットフォームで嫌な思いをさせられたことが

まるで尾を引くようにのしかかっていたからかもしれない


山川 源氏さんの殺害事件は何一つ進展することなく 年末に近づいていた


田中家ではお隣の山川源治さんの犯人について 何度も家族で話し合っていた


妻 みのりが

おじさんお気の毒に殺されてしまって 今頃 犯人は何の感情もなく お正月を迎えるのでしょうね


健二はその言葉に

結局動機があるとするなら

その保険の外交員の女性の男関係

あるいは 今 頻繁に起こっている 闇バイト それでも源氏さんは何か私の知らないところで派手なことでもやっていたのかな?

分からないなあ


でも お父さん

あなたも 駅で変なことがあったから気をつけないとね

怖い時代になってきましたね

人間関係がどんどん と疎遠になってきているから こんな事件も起こるのでしょうかね


二人の会話を聞いていた長男の 洋一 も次男の直也も


うちも防犯のカメラとかつけたらどう?

玄関に警察 関係の何かを

看板とかないのかな?

今度おまわりさんに聞いてみようよ


そんなことで会話が弾む日が何度も重ねていた


田中健二が12月27日 会社の忘年会が予定通り終了してほろ酔い気分で 駅に向かっている時に

いきなり 交差点に信号を無視した車が彼の方に向かってきた


暗かったのではっきり分からなかったが 跳ねられるかもしれないと その時は感じて 雪の降りそうな夕暮れ であったが 冷や汗が滲んでいた


車のナンバーもあるいは 田中健二は生涯 車用 車以外の車に乗ったことがなかったからどこのメーカーの車で など全くわからなかった

ただ 緑色の濃い色で中型の車に思えただけであったが


ひと月ほど前のプラットフォームでの事故といい そして今また 真っ暗闇の中で車が飛び出してきて轢かれそうになったのである


座り込んだまま 立ち上がる力も忘れて度重なるショックに心を乱していた


止めてくれよ!

なんでこんな私に恨みがあるのかよ 

何者だ お前は


ライトを消したままで 消え去って行った車にムカついてくる 気持ちと悲しさが込み上げてきていた 


一度ならともかくわずか1ヶ月ほどの間に2度にわたって このように命を狙われるように思えたのは今回わざわざ ヘッドライトを消して

猛スピードでぶつかってきたから 決定的にそのように思えたのである


これは警察に言わないと


田中賢治は速度にそのように思えてきて ほろえ 気分で夜風に当たっていたが 一瞬にして何もかんが吹っ飛んで


気持ちは一目散に警察に向かうことを心に浮かべていた


警察へ行くと

いつも来られる 刑事 も居られて


あー 田中さん いつもはお世話になっており申し訳ございません

事件は今のところ 膠着状態で難儀しております

ところで今日お越しになったのは?


それが ですね

えーと 担当の 刑事さんはおられたら良いのですが


担当と申しますと?


はいお隣の事件とは関係ないのですが 私自身がこの前駅で


あそうでしたね 突き飛ばされそうになったとか そうでしたね?


そうです あの時 担当してくださったおまわりさんがおられたらありがたいのですが


名前 分かりますか?

いえ、そこまで


では せっかく いつもお世話になっておりますので 私がお聞きしてもよろしいですけど


そうですか 実は聞いてもらっているように1ヶ月ほど前に プラットフォームで突き落とされかけて 

今日また40分ほど前に

またヘッドライトを消した車に猛スピードで跳ねられかけて それはとにかく 逃げて 命拾いをしましたが

だけど どうして この私にそんなことが起こるのか不思議でなりません そして本当に怖いです

これで2度目

また今度同じことが形を変えて怒るかもしれないと思うと


そうでしたか

それはそれは大変でしたね

それで 車の名前とか色とか大きさとか 年式とか


それは私 車には音痴で

この歳まで一度も車を買ったこともなく また会社の車も1ヶ月に15回ぐらいしか乗らなくて それも15分ほど 銀行へ行くぐらいのことで


では 全く覚えてないのですね

大きさとか色ぐらいはわかるでしょう?


色は緑の濃いような色と思いました 大きさは普通の乗用車で

かなり古い車 かも分かりません

なんか変な音がしているのが聞こえましたから エンジンの音っていうよりかなんか 擦れているような音でしたから


それ以外に思い当たることはありませんねー


それだけですか?

覚えておられるのは?

運転していた人物は全く覚えてないですか?


ええ、何しろ 暗闇でしたから


そうですか だけど これだけの内容ではなかなかどうすることもできませんね

実際 命を狙われている可能性もあると考えても不思議ではないですので

できるだけ多くの人の中で行動するとか暗闇を避けるとか一人で行動するのを避けるとか

そんな 年齢 じゃ ないと 思いますが

でも犯人が実際存在したなら必ずあなた 命を狙ってくることが考えられますからね

どんな方法を使って狙ってくるか分かりませんからね

とにかく気をつけてください


分かりました 気をつけます


田中健二はさほど落ち着くこともなく 警察署を後にした


一体誰だろう 何のために

この前は駅のプラットフォームで そして今日は駅から30分ほどの 国道筋の一筋中の一般道路で

忘年会を済ませてから7分 か8分歩いた場所で駅に向かって


だけど何一つ覚えがない

人に命を狙われるような 覚えなどどこにもない

だけど全身が煙に包まれたようになってどこからともなく殺意を感じてしまう


こうして警察から出てきて駅に向かっている今この時でも

どこかで犯人が私を見つめているかもしれない


では家族はどうなるのだろう

家族は関係ないのか

それとも 今のところ 家族が被害に遭うようなことは起こっていないだけだろうか

妻はあまり 警戒することもなく趣味のクラブに時々出かけるし

長男も順調に学校へ行きながら 卓球 クラブにも通っているし弟の直哉も今のところ変わったことはなさそうだし

もしかすると 私は誰かに間違われて 命を狙われているかもしれない


そうだその可能性がある

田中健二は駅に向かいながら頭の中で 走馬灯のようにいろんな思いが次から次へと 湧き出るように浮かんでいた


ついでに駅の事務所にもお邪魔して今日もひき逃げされそうになったことを話すと 駅員さんは


まさかそんなことが

それで大丈夫なんですか?

怪我とかされてないんですか?


立て続けにいろいろ聞かれたが

大事に至っていないことを伝えると


駅員さんは神妙な顔をして


だけどそれが事実なら怖いですね

犯人は2度にわたり 失敗したということでしょう

つまり もう一度狙ってくることも考えられますね

犯人が本当にいるなら


そうですか 私がなぜそのような

命を狙われるようなことをされるのか 本当に不思議です 

わけが分かりません


でもお聞きしていると

世の中にはそんなこともあるのかと私も不思議に思います

これから出勤する時も お帰りになる時もできるだけ 駅員に声をかけてください 防犯カメラがありますのでさらに注意できると思います


前に防犯カメラに映っていた あなたの後ろで電車を待っていた若い男の人

もし 犯人 なら また現れることも

あり得る話ですからできるだけ 注意するようにします

もちろん モニターで拡大写真を撮っておりますから

ただ服装を変えたり髪型を変えたり髪の色を変えたりするとなかなか それも難しくてね


そうでしょうね 私にしても煙に包まれたような話でさっぱり分かりません

だからと言って警察のように拳銃を待つこともできないし

通販で防御用の何かを買う必要があるかも分かりませんね


とにかく気をつけてください

警察も 放おっておかないと思います


ええ そうです 今も警察に行って話しさせてもらってきましたから


では お大事に


田中健二は 家路に向かいながら 今日あったことはあえて口にしなかった

プラットフォームでの出来事でおけでもまだ家族の記憶にはっきり残っていてその上にまた命を狙われた となると


妻 みのり はもとより長男 洋一も 次男 直哉も気になるだろうと

ましてや 次男 直哉は来年はいよいよ 入試 だから 影響してはいけないと それもあった


新しい年を迎え 2025年が始まった



田中健二 一家は地元の 橿原神宮にお参りに行った


元旦はそれはそれはすごい人がお参りに来ていて健二 達一家は人混みの中を流されるように 拝殿に向かっていた


ケンジはその時 思った

この中に自分を殺そうとする 犯人がいたなら 多分 犯人の思う壺だろう


懐にナイフを偲ばせていて一気に襲いかかってきて心臓のあたりでも突き刺されれば 一気に殺されることになるだろう


隣の妻はどうなる 同じように命を狙われるのか あるいは横を歩く 長男 や 次男もその時どのような被害に遭うのかも 想像できない


あのプラットフォームで後ろから突き飛ばされて電車にぶつかり手をくじきながら 跳ね返ってホームに転がった時に私を取り囲むようにしたあの時の人たちの目と同じようなものを感じながら 拝殿に向かっていた


二礼 して手を合わせて目をつむった時も

後ろから押さないでくれ どうか 犯人よ

こんな私を苦しめないでくれ 殺そうとしないでくれ

目の前の神様に いやいやそうではなくて背中の魔物に 田中健二は心を震わせてそのようなことを願っていた


妻 みのりも隣で静かに手を合わせながら 家族が安全でありますようにと 小さな声を震わせながら吐き出すように口にしている


これで 橿原神宮に元旦にお参りにしたのは何年目だろう

だけど今年ほど身に迫る思いでお参りしたのは初めてやると痛切に感じていた


長南 洋一 も次男 直哉も真剣な顔をして手を合わせている


合格祈願のお守りを妻のみのりが何のためらいもなく 求めて直哉に手渡している


心が落ち着いたか 誰一人 そのことに気がつくこともなく 橿原神宮を後にした田中一家は


とにかく 田中健二が

どうか今年は無事な1年であってくれますように それに直哉が第一志望に合格するように

家族がみんな健康で幸せな1年でありますように


車の中でハンドルを持ちながら 田中健二は独り言を言うようにその言葉を口にしていた


それまで黙っていた妻 みのりが

何か美味しいものでも食べましょうか?

笑顔を作ってそのように言ったが 誰一人として その言葉に賛同しなかった


どうしたの みんなお正月だというのに


次男の直哉は

俺は帰る 帰って寝たいから

昨夜は結局大晦日から一睡もしてないから


勉強してたんだ


いや違うテレビを見ていた


洋一はどうする?

妻 みのりはお正月ぐらい美味しいものを食べようよ とさらに催促したが


俺今日午後から友達と会うことになっているから いいよ

家にも美味しいもの いっぱい買っている しね


二人の息子たちにそのように言われて 妻 みのりは ちょっと落ち込むような感じであったが


その様子を伺っていた夫 健二は


2人とも大きくなったから仕方ないか

親と一緒に食事をする 喜びなんてないのかな?

お母さん

諦めたら  

家に帰って母さんが作ったおせち料理 みんなで食べさせてもらうよ

一生懸命作っていたのだから


すると 諦めたようにみのりは


分かりました じゃあ とりあえず家に帰ってみんなでおせち料理を食べようか・・・


いよいよ 家に着く頃になってくると

間違いなく お隣の横を通り過ぎて自宅に向かうのであるが

お隣の 山川さんの家はひっそりとしていて誰もいないかのように静まり返っている


去年のお正月は旦那さんの山川 源氏さんが元旦早々に玄関先で挨拶を交わしたことを覚えている 田中健二にとって 


複雑な気持ちで お隣さんの横を通り過ぎていた


玄関に入るなり妻の みのりが


お隣 静かでしたね いないのかしら?

それとも今も落ち込んでいて お正月って気分じゃないのでしょうね


その言葉に夫健二も


それは源氏さんが殺されて今田も犯人もわかっていないし心中穏やかではないだろうね


それに あの女性の保険外交員との関係も奥さんにしたらかなりショックだっただろうし

最も 警察がそのことを何も話していないなら 知らないことだろうけど


妻のみのりも

多分 警察はおじさんと保険の外交員の関係を口にしていないと思うわ 出して 奥さんかわいそうすぎるでしょう


そうだね 事件にかなりあの保険外交員が関わっているとかなると話は別だけど


だっておじさんが死んだら保険の外交員の人 困るの じゃないのですか?

余計な 死亡保険金が発生する可能性もあるから


確かにその通りだな

ただ あの女性に同じ世代の男友達がいてそれも深い関係になっているとかだったらそこに

警察が目をつけると思うから


だけどあの人 お通夜かお葬式の時 見かけたけど隣のおじさんとも深い関係になっていて しかも 他に若い恋人がおる

そんな感じには見えなかったけど 


だけど直哉が見かけたその女の人って割と大胆な感じであったと言っていたからな

寄り添って歩いてる姿から そのように感じたと


だから今頃は警察があの女性を調べていると思うわ 何か 繋がりがあると普通 考えるわね


2人は 今も解決していないお隣の山川源二 さんの殺害事件の犯人を想像しながら同じくして 去年は夫の健二が2度にわたって 命を狙われたかもしれない 現実が頭の中をよぎった


突然妻 みのりが

お父さん 隣のおじさんの殺害とお父さんのいわば 殺人に未遂 事件 何か関係があるの じゃないのかな? もう一度考えてみて


そんなこと言われても何も思い当たりないよ

何しろ元気さんとは ゴルフも一緒に行くし釣りにも一緒に行くしとにかく仲の良い お隣同士だから

もし 関係あるとしたら そんな煙に包まれたような何かがあるのかな


煙に包まれたような ですか?


2つの出来事をくっつけるのはあまりにも無理があるように思うけどな


じゃあどうしてお父さんが 命を狙われなければならないのかな?


全くわからない


とにかく これからも 出かける時はお父さんは気をつけないとね どこで何が起こるか?


だから今日は 橿原神宮であれだけの人混みの中に俺たちはいたから 正直怖かった

拝殿で目をつむって 手を合わせている時も正直 プラットフォームのことを思い出していた

後ろから誰かが 襲ってこないことを気にしていた


それは分かります 

だから私 お父さんの背中に近づいてくる人のことを気にしていたわ まあ 息子たち二人は

お父さんを守っていてくれたようにも思うわ


そうか そうだったのか

ありがたいな 2人とも立派になったからな


そうですよ 

だけど問題は私たちの家族みんなが狙われているのか お父さんだけが狙われているのか

そこは分からないんですからね


今年はそんなことを考えて毎日送らさないといけないと思うと まだ今日は元旦だけど嫌な1年が続きそうに思うね


実際 お父さんが2度にわたって 狙われた

犯人って全くわからないけど

どうして主人を狙うんですか?

主人にどんな恨みがあるんですか?


そのように聞きたいですね


全く!



二人はまるで全く検討のつかない 殺人犯に対してどうすることもできない 二人であることを再認識していた



奈良県にもちらほらと雪が舞うようになり

それでも 奈良公園には相変わらず世界各国から観光客が訪れて 鹿と戯れる姿が YouTube になどで盛んに流されていた


寒い冬も通り過ぎて橿原には川沿いに見事な 速度が咲き始めて行き交う人々の心を和ませていた


その頃になってくると 田中健二も家族も

命を2度に渡って狙われたことは 過去の出来事と捉えるようになってきていた


そして 吉野のさくらも散り始めた頃に家族で

休日を利用して出かける計画を立てていたが

次男の直哉が自宅から大学に通うのはちょっと厳しいということで大学の近くのアパートに引っ越し することになり

家族で旅行するというのも 中止になり次男直哉の引っ越しの手伝いをすることになった


直哉は名古屋の大学に行くことになり

引っ越し先の近くのレストランでお別れの食事をした時も


妻 みのりが

直哉 去年 お父さんのあんなことがあったからあなたもいつも心の中であのことを忘れないでね  

犯人はお父さんを狙っているのか それとも私たち家族を習っているのか それもわからないから 十分気をつけて頑張って


結局その言葉が一番大事であるように妻 みのりは真剣な目つきで そのように口にしていた


5月のゴールデンウィークがやってきて なんとなく心が明るくなったような気がした父親の健二は


妻のみのりに対して

 母さん 3日 4日 5日の どれかで釣りに行こうと思っているんだけど 構わんだろう?


いいですよ でも気をつけてね 海へ それとも 川へ? それとも池かな?


バス釣りに行こうと思ってるのだけど

大きい ダム 湖か琵琶湖のようなところか

60cm ぐらいのがかかるところに行こうかなと思って


前に何度か言っている 池原 とか?


うん まだ決めてないけどどこにしようかな?


洋一は一緒に行くの?


イヤー あいつは釣りに興味がないから無理無理


では1人で行くの?


そうだよ


でも大丈夫?


大丈夫だと思う 慣れているから


いえいえ そうじゃなくて 命を狙われているわけだから


そうか そっちか!

でも あれから半年も経っているから

もちろん気をつけるよ 去年の秋からあんなことがあってからそれに 源氏さんが亡くなったこともあり 釣りのことを忘れていたからだからそういった 面でも今度の連休は是が非でも釣りに行こうと思っていたんだ


5月4日

田中健二は バス釣りの道具をいっぱい用意してネットで有名になっている名前 こそ知らなかったが2時間ほどレンタカーを走らせてかなり大きめの湖に着いた 


太陽光発電が一面に張り巡らせた湖で

その約半分ぐらいが手付かずの湖であった


ネットに書かれた通りに車を走られてたから 簡単に目的地に着くことができた


だけど釣り人はまばらで 5月の連休はいたるところのダム湖や湖でバス釣りの大会をしているために日頃よりむしろ お客さんの数はすぐなかったようだ


健二は久しぶりに竿を握りしめてやや興奮気味で第1丁目を投げた 貸しボートがあるとか

そのような湖ではなく 全く 管理人のいないような自然な湖で

そもそもこの湖は土地の村が所有しているようで 誰が入っても咎められるようなことはない場所であった


たった一人で神経を尖らせて バスを狙っていた

待望の1匹がかかり 健二は心を躍らせて 35cm ばかりのバスを岸に放り上げるようにして確保した


2匹目も同じぐらいのサイズがかかり 久しぶりの釣りであったがために子供のように嬉しさを感じていた


1時間ほど楽しんだ時に

嫁のみのりが作ってくれたおにぎりを頬張りたくなってきて 竿を置いてその場に座り おにぎりとお茶を並べていると

同じく 釣りの格好した若者が 田中健二の方に近づいてきて


こんにちは 釣れておりますか?


笑顔でそのように口にした


健二は笑顔で近づいてきた若者に同じように笑顔を作り


今のところ 4匹かかっております 35cm ぐらいが2つとあと20cm の中頃が一つ それと あと1匹は 42cm ぐらいですかな


そうですか すごいですね

私これから なんですけどどこへ入るかと思ってただいま 思案中です


初めてなのですね?


はい 奈良県に来るのは初めてです


そうですか どうしてここを?


なんか YouTube でしたかどこかで この場所が結構有名なことを見たことがありましたから


そうでしたか 私も一緒です


二人はそのような会話を笑顔で交わしながら

その若者は


右の指をさして

あの辺りでやらせてもらいます 構いませんね


ええ どうぞ 何しろ 広いですから


若者はそう言って 20m ほど離れたところで釣り道具を用意し始めた


健二はその姿を時々見ながら嫁が作ってくれたおにぎりを頬張ってお茶を飲み

まるで至福の時が来たように気分でおにぎりを噛みしめていた



ところが時折見かけるその若者が

どこかで見たような気になり始めていた


どこで?

どこかで見たような気がする!


だけど神経を集中させてもそれ以上のことは 思い出せなかった


やっぱり 勘違いか、

見るわけがない  第1あの人奈良県は初めてだと 先ほど言っていた

だから絶対見ることなどありえない


そのように自分自身を諭すように 言いながら おにぎりを2つ食べて また釣りに頑張ることにした


それからまだ2時間ほど 釣りをして十分楽しみながらも

その間にとんでもないことに気がつき始めた


あの男もしかすると 駅のプラットフォームで

私の後ろにいた若いやつと なんとなく似ているように思う


健二はそのように思い始めたのである


まさか と思いながらも そのまさかが 本当かもしれないという気持ちも半分があり

健二の心の中は穏やかでなくなり 心臓が波打つようにまで思えてきて

全身に恐怖心を感じるようになった


もしもあの男が あの時の 犯人 なら

またここで 命を狙われるかもしれない


そのように思ってくると 釣竿を持つ手も汗がにじみ 震えてきた



そして逆にそうでないことを祈りたくなった


妻の顔が頭に浮かんできて 息子たちの顔も目の先に ちらついてきて


それでも 何食わぬ顔で一生懸命 釣りをしているその若者を時々見ながら健二は心穏やかではいられなかった


その若者がまた近づいてきた


僕は下手だから なかなか釣れませんね

まだ1匹もお目にかかっておりません


そう言って笑いながら健二の顔を覗き込んだ


そうですか 

あまり経験がないのですか?


はい 何度かはしていますが 考えが甘いでした この場所は大きいのがかかると YouTube で見ましたから そんなにうまくいきませんね


そうでしたか わざわざ 奈良県まで来られて


はい、残念です


ところでどちらから?


大阪です 


そうでしたか わざわざ遠くまで

だけど 大阪にも バス釣りするとこ いくらでもあるでしょ?


そうですね


有名なバス釣り場で大阪の場合はどこかな?


あまり詳しくなくて


そうでしたか 


約15分ほど 2人で会話が弾んでいたつもりであったが

だけど なんとなく ちぐはぐ で この若者は

バス釣りはほとんど知らないというのが印象だった


健二の心の中には2つの考え方があり

1つは 初めてこの若者は 奈良県に来たという彼の言葉と

そうではなくて 大和駅のプラットホームで

健二の背中をついて電車の下敷きにしようとした殺人犯ではない かと思う気持ちの 2つが

競い合うように心の中でもがいていた


だから 思い切って健二は

その核心部分に触れようとしたのである


奈良県のことはほとんど知らないのですか?


はい


一度も来られたことがないと言っておりましたが?


今日が初めて


それで お車で?


いえ、電車とタクシーで


それでわざわざ ここまで


はい


健二はなんとなく違和感を感じながらもだけどプラットフォームで突き飛ばされてその後 振り向いた時に目が合ったことは間違いなかったが それは彼を取り囲んだ ほとんどの人と

恐怖感に怯えながら目を合わせていたから

正直 具体的に何一つ覚えていなかった


男も女も若い人も年老いた人も

おそらく 20人ほどの乗客が彼を囲んでいたから


だから今その疑いをむしろ 静めるようにも考えていた

自分自身が不謹慎にも思えた

なぜなら若者は笑顔で喋っていたから 失礼でもあった


その裏付けとして全くあの時の記憶とは 髪型が違っていたから あの時は結構長い紙髪であったけど今目の前にいる若者はしっかり刈り上げて 今流のファッションに包まれている姿であった


だから いつのまにか どんどんと親しくなってきて

二人が並んでフィッシングをするようになってきた


その時 色々アドバイスをしてあげていると

その若者は

かかりました と甲高い声で叫ぶように大声を出した


釣竿は大きく曲がり いかにも 大物らしい引きである


うわぁ  すごいです 重いです


若者はまるで解説するように興奮しながら そのように叫ぶように言いながら 魚とやり取りを繰り返していた


10分ほどかかったが ブラックバスの53cm ほどの大物が草むらの中に釣り上げられて彼は

初夏の日差しを受けながら おでこ一面に汗を光らせていた


健二は

すごいな! おめでとうさん そうだ写真を撮らせて こんなの見たの 正直言って 初めてだから 


健二はまるで自分で釣ったかのようにスマホに収められた写真を見ながら なんとなく嬉しくなってきた


彼はまだ今日何とかつった 43cm ほどの ブラックバスが実は記録で50cm を超すような大物は釣ったことがなかったから


ちょっと悔しさを交えながらも ほとんど 素人 と思われる若者が釣り上げたことに賞賛する気持ちもあった  


すっかり仲良くなって夕方になってタクシーで来たという若者を車で駅まで送ることにした


ありがとうございます お世話になりました


なんとなく気持ちよく 1日を過ごせたことで健二は満足な気分で 家路に向かいながら


だけどやはり一人になってから 若者のことを気にしていた


いい青年だったと思いながらもどこかで 何か引っかかるものを感じていた

名前も知らない青年を車に乗せて駅まで送ったことが 若者を下ろしてから後悔するような気持ちになっていたのである


2度も 命を狙われて こんな甘い考えではダメだなと つくづく自らを戒めるようになっていた


その若者の首筋には小さなほくろがあった

そのほくろ 何でも釣りをしている間に見ることができた

特に大物がかかった時は手を大きく持ち上げて胸のボタンがはじけるばかりに 肩甲骨のあたりが丸出しになっていた


ほとんど首の付け根にそのほくろがあった


健二は無事帰宅して翌日まだゴールデンウィークの真っ最中であったか大和駅を訪ねていた


健二は事務所の駅員に

すいません 多分私の勘違いだと思うのですけど

前にね プラットフォームで 突き落とされそうになった時のビデオをもう一度見たいのですが こんなお忙しい時に申し訳ありませんが


何か分かったことがあるのですか?


ええ、ちょっとだけ気になっていてそれを確かめたくて


ちょっと待ってくださいね

いつのことだったでしょう?


去年の11月頃でした 電車を待っている時に後ろから突き落とされそうになって入ってきた電車に私は手を出してなんとか 命拾いをしましたが


ああ あの時のことですね分かります

だけど残っているか でもここになかっても警察へ行けば 多分残っていると思いますよ


そんな会話をしながら

駅員さんは手際よく パトロールカメラを調べ始めた



正確な日にちは覚えておられませんか?


多分11月の中頃だったと思います


分かりました それなら このフィルムの中に

記録されてると思います


駅員さんが手際よく フィルムから当時の様子を映した パトロールフィルムを見つけ出して


これじゃないのですか?


そのフィルムに映っていた若者は 田中健二の真後ろで電車を待っている姿であった

やがて 電車が入ってきて 健二の近くまで来た時に後ろから突かれるようになり 電車に手を差し伸べてなんとかホームに叩きつけられるようにして彼は転んでいる


今見直しても後ろの若者が健二を突いているような動作は分からないが間違いなく 接近していたことは事実である


11月だったので 若者は結構 分厚い 防寒着を着ていたこともあり首筋にあるほくろ などは

確認できるような状態ではなかった


それに 髪型もはっきり 違っているから全く別人であると その時は思えたが


駅員が

そんなほくろのことを気にされていたとしても このフィルムでは無理ですね

例えば 髪の色を変えているとか髪型を全く違う髪型にしているとかそんなことも考えられますが



その一言で 田中健二はハッとした


写真 写真ありますよ


そう言ってスマホを取り出して 昨日 若者が53cm ほどの ブラックバスを釣った時の写真を駅に見せた


バトロールフィルムに写っている若者は長髪で髪の毛を今流の特殊な色に染めている


それだけでもまるで別人に思えたが

駅員さんが写真とパトロールフィルムの 男を見比べながら 


だけど 顔立ち は そっくりですね



そのように言ったことで田中健二もハッとした


本当だ! まるでそっくりだ!


田中健二も大げさに叫ぶようにそのように口にした


確かに あなたがおっしゃるように目つきが似ています それに この若者 カメラを睨んでいますね カメラがあることをもしかして気にしているのかもしれませんね 

だけどね この若者 私には 奈良県は初めて来たとそのように昨日言っていましたよ 

その言葉を信じて しかも 髪型も全く違いましたからね


でも本当によく似ている


ちょっと 雰囲気を変えてみましょうか

駅員はそのように言って 頭髪の部分を両手で

覆うようにして


これでどうでしょう ?


顔だけが浮かび上がってきて


田中健二は認めてしまう 怖さを感じながら

やっぱり間違いないですね このスマホに写っている人物とビデオカメラに映っている人物が同一人物ですね


それで 昨日この人を偶然見かけたわけですか?


いや そうじゃなくて 私が魚釣りをしている時にこの若者がやってきて そばに それで親しくなって帰り 駅まで送ってあげたのですよ


なんとなく気に入っていてだけどいつも笑顔で接してきたから

まさか同じ人物だとは

もちろんこの人がそばで釣りをしている時にもね なんか気になっていたことは気になっていました

だけど 話をしたりしている間に全く 髪型も違うし 疑う気持ちも薄れて

だから帰る時は車に乗せてあげたりして


それじゃあどうして今日は来られたのですか?


だけどこの若者と別れて帰りながらなんとなく気になっていたわけです 何かわからないけど

もしかすると この若者は 香水をつけていたのかもしれないし

とにかく疑う気持ちがどこかにあり

これから 警察へ行って話を聞いてもらって

相談しようと思っております 


そうですね この人物が犯人だとは決められないけど だけど可能性としては 一番高いですからね 間違いなくあなたの後ろで写っていてほとんどあなたとは全く 隙間がないですからね


この人 奈良県は今が初めてですと 昨日は言っておりました

だけど 昨日が初めてではなくて 奈良県人かも分からないです 同じ人物なら


駅員さんは申し訳なさそうに


ごめんなさいね 今日はちょっとゴールデンウィークで立て込んでいて


その言葉で田中健二は駅員さんの立場をに気がつき 急いで駅を後にした


別れ際 駅員さんが

あのその写真ね 送ってもらってよろしいですか

多分 髪型を変えてこの写真ならもし 奈良県の人ならさらにこの駅を利用している人なら すぐに分かりますから


お客様におこった出来事は警察も関係しておりますから それに 実際 殺人未遂事件なら大変なことですからね

駅の方でも注意するようにしておきます


田中健二にとってその言葉は嬉しかった

何かが動き出すようにも思えた


警察へ足を運ぶように思ったが

あまり早合点するのも 警察に迷惑をかけるのではないかとそのような思いもあり 取りやめることにした


駅員さんのようによく似ておりますね という言葉は田中健二も思えたが


だけど心のどこかで やはり 別人だと思う気持ちもかなりあり

心のどこかで 無理に 同一人物だと拍車をかけるように思っていることも事実であるから

ここはもう少し冷静にという気持ちになっていた


ゴールデンウィークも終わり

次男は希望通りの学校に進学することができてレベル的には一流の大学ではなかったが だけど彼はその大学に 専門分野があることにこだわっていて まるで水を得た魚のように のびのび溌剌としていた


田中健二は

こんな穏やかでごく普通で嫌われるようなことなどしたこともないし また現実にそんなことは怒っていないにもかかわらず


なぜ命を狙われるようなことになるんだろうなと そのことだけが 頭の中から四六時中 離れることはなかった


それは 妻 みのりも一緒でもちろん 長男 洋一 も 次男 直哉も心のどこかでいつも気にしていた

だけど若い彼らは 体育系の体をしていたのでその分は 何かがあっても たくましく対応できる体力も気力も備えていたように思えているから 父親ほど気にしていなかった


それから暑い夏が来て また 秋になり

田中健二も妻 みのりも そして家族も

殺されかけたかもしれない 2回の出来事もやがて時間の経過とともに遠ざかって行き


田中賢二の心の中からもあの忌まわしい出来事は次第に消え失せようとしていた


ゴールデンウィークにブラックバスを釣りに行った同じ場所に久しぶりにまた出かけようと 田中健二はまた羽を伸ばしたくなっていた


それで レンタカーを借りてまた出かけることにした あの ブラックバスを釣った場所に


そうすると 思いがけない人物と出会うことになった

 

前に行った同じ場所に行くと

あのゴールデンウィークで出会った若者がすでに釣りをしていた 


田中健二はその若者の姿を見た時に

心のどこかが身震いするような気持ちになっていた なぜなら 大和の駅のホームで彼を突き落とそうとした犯人かもしれないと思う気持ちが

だけど 若者はが田中賢治の顔を見るなり笑顔を浮かべて ペコンと頭を下げて挨拶した


その動作が 田中賢治の疑う気持ちを払拭させていた


だから 田中健二の方からむしろ 積極的に声をかけた



お久しぶりです 来られていたんですね


はい あれから やみつきになって ほとんど毎月こちらに来ております


へーそうでしたか それはそれは


あの時ね ゴールデンウィークにあなたとご一緒して大きな バスを釣れたでしょう

あのことが俺を夢中にさせたみたいです


そうでしたね あの時は確か 50cm 起していましたからね


そうです 感動して あれから毎月のように来て2回ほど同じようなのまた釣っております

60cm 近く あったのも 1匹


そうでしたか それは素晴らしい


これまで 田中研二が心の中のどこかで抱いていた若者に対する不信感が その席が煙が風に流されるように心の中から一気に消えていった


やっぱりこの若者は別人だ!

人を殺すようなことは絶対できない 清々しい若者だ

間違いない 絶対私の勘違いだ


そのように 電光石火のごとく 心の中ははればれとなっていくのが 田中健二には分かった


そして 相変わらず笑顔を崩さない若者を見直していた


そして彼は冗談に

お兄さん、今度は私が教えてもらう番になりましたね

何しろ 43cm が私の記録ですから


そのように照れくさそうに言うと


反論するように

でもね やっぱり ここは YouTube でやっていたように大きなが結構かかるみたいですね

この前から何度も 60cm 起こすような大物を釣り上げたのを見ていますよ 実際

だからここに通ってきているとあなたも 間違いなく大物を釣れると思いますよ


田中賢治の心はもう若者に次第に放り込んでいくような気持ちになっていた


帰り道 また彼を駅まで送って清々しい気持ちで 家路に着いた

それはゴールデンウィークの時との気持ちとは全く違って 正反対のものであった


忘年会の帰り 裏道を歩いている時にライトを消した車にはねられかけて あれから1年近くが経とうとしていた


あれ以来 事件 らしい出来事もなく 田中研二は何とか1年間を無事で 少しことができた

家族にもなんだ 変化がなく家族が心配するようなこともこれと言って 思い当たるものはなかった


お隣の山川源治さんが殺害されその犯人も 検挙されることなく 山川の奥さんと息子さんは

心が落ち着いてきたのか 平静を取り戻していた

お隣の 山川さんに変わったことが起こるといえば 息子さんが真っ赤な新車を購入していたことだけである

もしそれが山川 源氏さんの保険金が元金となっているかもしれないがそれを誰も咎めるものなどいないわけで

ただ真っ赤なスポーツカーだったので周りの人たちは やっかみと 驚きで少しは 話題にしていた


現実に 息子さん一人が頑張ってお金を貯めて車を買った にしては高価な車であった


田中健二は 妻のみのりさんに

源氏さんの保険金で あの車になったのかな?

笑いながら そのように言ったが 妻のみのりさんは受け答えすることもなく


そうかしら


そのようにだけ口にして口を包んだ


妻 みのりは日頃から源氏さんの奥さんのノブさんから色々聞いていたから


息子さんがやんちゃを言うように親父の保険に目をつけているように何度も言っていたようで

そのことを随分 苦にしてみのりさんに愚痴をこぼしていた


だからみのりさんは事情を知っていたから 夫の話に乗る気にはなれなかった


お母さんのノブさんを庇うことも そして 息子の トオルさんを責めることもどちらも嫌だったから


田中健二はその後も

源氏さんを殺した犯人 今も見つからないって

どうなっているんだろうね?

今流行りの闇バイトとかそのようなものなら 案外 証拠を残したりするから それに 割とあまり知恵を使わないで 犯行に及ぶようだから

犯人は 簡単に見つかると思っていたけど


そうですね あの保険の外交員の女性 あれから来なくなったけど 何か 犯人と関係ないのでしょうかね 

名古屋の話では割とやり手な女性みたいだし

犯罪の鍵に女あり

そのように言われてるけど全く関係ないのかな?


だけど あれから 警察も来なくなったし

噂でも犯人が特定されたとも一切聞いていないし

まさか 迷宮入りの事件とかならないかと

心配になってくるね


山川さんの家 なんて親子3人で普通に暮らしている家であった

別に大金持ちでもないし人に嫌われるような 源氏さんじゃなかった

周りの人ともうまくやっていたし波風を立てるような性格でもなかった


だけど殺されてしまった


でも お父さん やっぱりおじさん 女性関係に

問題があったのかもしれないよ

他に殺されるような理由がないとするなら

例えばあの女の保険の外交員

警察 徹底的に調べたのかな?

だってそこしか考えられないでしょう?


そうだね

ただけんじさん2人で何度も釣りに行ったり ゴルフに行ったりしてきたけど

だけど 例えば 男同士でここだけの話だけど と言いながら女性の話をしたとか 浮気の話をしたとかそんなこと一度もなかったから


それはお父さん だからよ

この人に この話を言っちゃいけないって 隣のおじさんは分かっていたからよ

自分の心証が悪くなることが嫌だったと思うよ


そうか そんなものかな?


おいさんにもし浮気をしていたら それを 隣の旦那さんに話しするかな?

しないでしょう? できたら 極秘で粛々と 楽しむ それが男の考えでしょう?


かもしれないけど そうか・・・げんじさん

そうかもしれないね


だからね 犯人が捕まったなら おそらく

あの女 外交員が何らかの形で関わっていると私は思うな


それしかないか 思い当たることは



2人でそんな会話をしながら 1年近く 山川 源氏さん 殺人 犯人は見つかることなく年の瀬を迎えていた


令和7年元旦

田中健二 一家が橿原神宮へお参りして

1年間無事でやったことに深く感謝申し上げ

家内安全のお守りをいただき家路に着いた


田中賢治は 帰り道 大混雑している人の中に 去年は去年はさっきだったものを感じていたが 今回はそのような思いはほとんど消えてしまっていた

だから 去年とは打って変わって 心は晴れやかで陽気な気持ちにもなっていた


ところがお正月のお屠蘇気分も薄らいところに

二人の警察官が 田中家を訪ねてきた


2人の警察官は

山川 源氏さん殺害を追求している2人である


今日はどうして お越しになったのですか?


まるで親し 友達をと会うように田中賢治は2人の警察官に笑顔で話しかけた


ちょっと動き出しましたから

それで


動き出したとは?


山川 源氏さん殺害に関してのことです

それで 今山川さんとこへお邪魔してそのついでといっては何ですし息子さんにもご協力いただいていますし

それに大一お正月ですからご挨拶方々


そうでしたか わざわざ ご丁寧にありがとうございます

ところで動き出したとは 源氏さんの殺害犯人が分かりかけてきたということですか?


ええまあまだ 口にできる段階ではありませんが


すると それまで黙っていた妻の実りが


刑事さん 私ね 思うんですけど 隣のおじさんを殺した犯人って あの女の外交員となんか 繋がりがあるように思うのですけど

違いますか?


いやそれは今話せる状態ではありませんから


そう言って笑顔を作ってごまかした


さらに妻 みのりが何かを言いたそうだったけどその様子を見ていた 健二は

お母さん ド素人が余計なことを言ったら失礼だよ プロの 刑事さんに


その言葉で話は ピリオドとなった


刑事さんたちが帰ろうとしたので


刑事さん私と源氏さんとは 釣り したり ゴルゴをしたり 結構 仲が良かったのですよ それで 源氏さんとこも私も別にお金いっぱいあるわけじゃないし ごく普通の生活をしてるだけの家庭 なんですよ

だからやっぱり 源氏さんのことをいつも思い出すわけです いい人だったから 波風を立てることは嫌いな人だったからだから 1日も早く捕まえてあげてください

よろしくお願いしておきます 協力できるものがあれば協力させてもらいます


分かりました 集中してやっておりますので

しかも今 わずかですけど 動き出したようにも思いますから


2人の刑事が帰って行った

田中健二は その後 瞑想にふけるようにしていろんなことを思い出していた

わずか2ヶ月のその間で 田中健二は 命を狙われたように思えた


だけど あれから1年間まるで何事もなかったように過ぎた


なぜだろう?

もし実際 犯人がいて 私の命を狙うものがいたとするならこの1年間 何もなかったことが逆に不自然である

もし この事実が不自然だとするならそれはなぜ不自然であるかということとなる


大和駅のパトロールカメラで写っている若者とブラックバスを釣りに行った時の若者が同一人物なら

あの時あの若者は私に対して かなり 優しかったように思う だから彼といる時は別れた あと 清々しささえ感じた


それは間違いなかったのだろうか


ヤマトの駅で駅員さんが

本当によく似ておりますね そう 顔だけをアップにして 見比べた時の彼の印象であった そして私も同じように思えたことであった


果たして あの若者は?



お隣の山川源氏さんの殺害犯人は今もわかることがなく そして 田中健司を襲ったと思う 犯人も見つかることもなく 月日は過ぎていた  


そんなある日 田中家の弟の直也がまたみんなが興味をそそるようなことを言い出した


隣の保険のお姉さんって言うんか その人って最近見かける?



母みのりは

家 全く見かけないわおじさんが亡くなった時にお葬式とかお通夜とか来ていたけど あれからあまり見かけないわ


俺ね

今日また見かけたよ 今度ね また違う男の人と親しい感じで仲良く歩いていたよ


へーそうなの またおじさんぐらいの歳の人


いやもっと若かったお姉さんの彼氏と思うような年代だった 40過ぎぐらいかな


そうなの 割と お盛んな人ね あの人 

もしかすると あの女性の男関係でお隣のおじさんも事件に巻き込まれたのかもしれないね


そうなの おじさん 変な女性にちょっかいを出したそういうことかな?


そうかもしれないね やりけのお姉さん かも



二人がそのように話していてたがその内容は

田中健二にも知らせるべきだそう 妻 みのりは考えていた


そして会社から帰ってきた 夫にその話をして

警察 に知らせてあげようかと気にしながら喋っていた


そしていつも来る警察官に電話を入れることにすると


40過ぎの男の特徴を言ったところがすでに警察は分かっていたようで

つまり 常習犯のような存在ではないかと 田中健司も妻も そして息子の直也も感じることとなった 


源氏さんがあの女性に口説かれるようにして保険に入ることとなった


若くて色気の あるあの保険の外交員に 源氏さんは引かれて深い関係になった


源氏さんは殺されたのは土曜日から日曜日の深夜 奥さんと息子さんは実家のお父さんが具合が悪くてお見舞いがてら 泊まりがけで帰京していた 


その日に 源氏さんが殺された


もしあの保険の外交員が関わっているとするなら でもそれって繋がらないな


女性外交員と源氏さんが別れ話か何かでもつれるとか金銭的に何か不都合が起こるとか それで揉めたとして警察にあの外交員の女性が引っ張られていたなら すでに白状しているだろうしだけど今でも相変わらず いろんな男の人と親密な関係になっているような感じだし

果たして 源氏さんはあの女性とどのような関係になっていたのだろうね


警察も今もなお 犯人を特定できていないこの前来られた時には少し 動き出したと言っていたが あれから何の音沙汰もなく今に至っている

おそらく 警察は動き出したというのはあの保険外交員の女性の男関係だろうと思うけど



田中健二は 長々とお隣の源氏さんが殺された事件の中身を解くようにしゃべり続けていたが


妻 みのりが夫の考えることを肯定するように

多分あの女性が大きく関係しているでしょうね

お隣も家も別に資産家でもあるまいし 狙われるようなことなんて考えられないですからね

第一あの事件 源氏さんの財布はそのまま手付かずであったみたいと あの頃 新聞に載っていたし

多分 金銭目的じゃなくて 怨恨という 線で警察は捉えているでしょうね


ではあの女性 一体何者かな?


警察が前に来て動き出したと言っていたでしょう

それってあの人が関係しているのかもしれないですね



2人の会話はそれ以上続かなかった

まるで 煙に包まれたような話で二人には確証 たるものは弟の直哉が 保険外交員の女性を再び見ることになったというだけのことであった


ただその外交員もお隣の源氏さんが亡くなってからは その女性の会社の保険には奥さんも息子さんも入っていなかったようで 完全に縁が切れたように思えた

 

それからまた1年と月日は流れたが

田中健二はそれからも 命を狙われるような危険なことは一切 起こらなかった


あの事件以来変わったことが起こった といえば

ブラックバス釣りでともに釣りをした大阪の若者市岡進 という青年 と親しくなったことであった


田中健一は 市岡 進むとはそれ以降 何度も ブラックバス釣りを同行する機会があった

良き釣り仲間になっていた

それは親しくしていたお隣の山川源治さんと同じくほどの 親しい中になっていた


山川 源氏さんから殺されてから5年の年月が過ぎていて

げんじさんを殺した犯人は見つけることもなくやがて 迷宮入りしそうになるように誰もが捉えていた


もちろん 警察が その後 どのようなやり方で犯人を追求していたのかが分からなかったが結果的には5年の歳月が流れても 犯人を検挙することはできなかったようだ



田中健二にとって 釣り仲間となった市岡進さんはそれからも 2ヶ月に1回ほど 釣りを同行していた


いい仲間ができたと田中健二は心の中から喜んでいた


そしてこの年も桜が散り 初夏と思われるような暖かい日差しが差し込んでいる 4月の 半ば


この日も 田中賢治は市岡進 さんと 彼が降りてくる 電車で待ち合わせをしてそれから田中健二の車で彼を乗せて いつもの釣り場所に向かった


春のいい季節だったから 池の周りにはときたま 釣り客や観光客が出会うこともあり また釣り場も結構人気があったから いつもどこかで誰かの姿を見るようになっていた


田中賢治と市岡進は いつもの場所に入り またいつものように2人は 黙々と仕掛けを用意して釣りを始めた お互い 20m ほど離れていて たまに顔を見合わせては 首を振ってまだまだ かからないことに対して 嘆きがを見せあがっていた


約1時間ほど経った時に

市岡進は ちょっと危険なように思われる 急斜面の崖に登って釣りを始めた


足元にはまだ立ち枯れの木は何本も沈んでいて バス釣りには学校の釣り場だったかもしれないが 田中健二はそこは危険だと思ったからあまり行こうとは思っていなかった だけど一応か進むはあまりにも乾かない日はかからなかったから無理やり その場所に足を進めていた


本能 わずかの間に 彼は初めて ブラックバスを この日にすることができて思わず笑顔を 田中健二に向けて その ブラックバスを持ち上げて見せびらかすかのようにしていた


ところがその時に 彼はバランスを崩し 崖から滑り落ちるようにして 湖の中に落ちていった


うわーという大きな声を出しながら落ちていったので 田中健二はその姿を見るなり 自分の竿をその場に置いて彼が落ちて行った崖の方に小走りで向かって一旦 沈んだ市岡進を見つけた


市岡進は頭まですっぽりと水の中に静まりながらも浮いてきて 首だけを水面に出して ハアハアと 息をしながら また 目の辺りまで水面まで浸かってもがいている


田中健二は何とか 崖の途中で小さな松の木を握りしめながら助けようと思った


市岡進がバランスを崩してその場に落とした彼の釣り竿を拾い上げてその釣り竿を水面に顔を出す 彼に見せるようにして目の近くに近づけた

市岡進はその釣り竿を見つけて合わせて手を伸ばして掴んだが その部分がかなり先の方で細かったのでに何度か 振り回してる間に 竿が折れたのである

竿先が鋭く尖っていたが 残った竿で田中健二はまた彼の名物の近くまでその折れた竿を近づけた


だけど市岡進の様子がおかしい

彼の胴体のほとんどが 水中の中に沈んでいて そして 首から上も時々息を吸うために水面に出てくるが それでも ほとんど 沈んでいっている


田中健二は

市岡進の様子がおかしいことに 急に危機感を覚えて


市岡さん どうなりました 早く


飛び込んで助けなければならないような雰囲気になってきた


どうしたんですか?

時たま 息をするために水面から顔を出す 彼に叫ぶように声をかけたが


それでも市岡進は相変わらず 水面に ほとんど 沈んだままでなっている


田中健二には意味が分からなかった


どうして助けたらよいのかそれすらもわからなかった

同じように 池の中に飛び込んで助けようとも思ったが だけどなぜ彼が水面に顔を出せないのかわからなかった


そして とにかく 釣り竿を捕まえてもらうために彼の目の辺りまで折れた釣り竿を近づけて彼につかむように 何度も 促した


ところが その時 市岡進が 力を振り絞るようにして水面に顔を出した時にその釣り倒すの先が彼の 片方の目に突き刺さるようになった


うわー


彼は目を抑えたがその抑えるた指の間から血が噴き出すように 出始めた


市岡さん


釣り竿を引き抜くようにして 田中健二は

沈んだ気を伝えながら市岡の手を鷲掴みにして引っ張るようにして 助けようとした


田中健二 もまた 胸まで水につかり それでも必死になって市岡進の手を引っ張り続けたが

彼もまた 水中の木が重みで動き出してとうとう 溺れるように 水の中に全身が埋まってしまった


市岡の手を引っ張っていたその手も離れ 田中健二 自体が岸に這い上がるようにして 難を逃れたが すり鉢になっている 岸辺は 簡単には這い上がることができなかった


田中健二が はい上がった時に市岡進は全てを水の中に沈めていて


田中健二はとうとう パニックになってしまった


今飛び込んで そして潜って彼を助ければ良いが だけど 沈んでいる木が入り組んでいて

簡単ではなかった


それでも なんとか気を取り直して再び水の中に飛び込んで必要か 進む に近づいたが だけど彼もまた水温の急激な低さに怖さを感じるぐらいになっていた湖の表面は結構 4月だから あったかったから 2m 近く そこはかなり冷えていてどうすることもできなかった


市岡進は足を木の間に挟まれていて動けなくなっていたその場所はかなりの 立ち枯れや あるいは流れ着いた木が集まっていて簡単には行かなかった


田中健二はどうすることもできず 途方に迷っていたが とにかく落ちそうな 崖の上から

市岡進の安否を気遣う 以外に方法はなかった


助けてあげたい

助けてあげたい

だけど どうにもならない

どうしたらいいのか こんな時は


頭の中でいろんな気持ちが入り乱れたが

だけどどうすることもできなかった


それから 自分の釣り場に戻り 携帯電話を持って救急車に電話を入れていた


しばらくして救急車が来たが それでも40分ほどは過ぎていて市岡進は救急の甲斐もなくその場で水死したことが確認された


田中健二は震えながら事故にあった全てのことを話したつもりであったが

消防隊員はなぜ助けることができなかったのかと疑問に思うように彼の顔色を伺っていた


つらいです

こうして何度も釣りに来ていい仲間だったのに どうして助けることができなかったのか

悔いが残ります

一度は 飛び込んで潜って彼を助けようとしましたが この状態ですから 簡単には助けることができずに 私が死なせてしまったようなものに 今では思います 


私はあの場所で釣っていて彼がこの場所にやってきて いきなり1匹を釣ってそれを私に見せて笑顔で自慢するように


ただ 私もここには何度も来ておりますが この場所はやっぱり危険ですので一度も来たことがなかったけど彼もまた今日は1匹もかからずに それで仕方なしにここへ来たの と思います


この様に危険なことは危険だから私は避けておりましたが

だけど彼がバスを1匹釣って ちょっと笑顔になって喜んでいて その後 バランスを崩してそれではまってしまい


気づいた 私はここに飛んできました


それで彼が落とした 竿があったので市岡さんに近づけると彼はその竿を握りしめましたが

きつく握ったのか それとも 先の方だったのか 折れてしまい

仕方なしに またその折れたそう 彼の見やすいように 目の近くへ近づけると

彼はとにかく 首から上が水面に出すのがやっとの状態であったようで  たまに 水面に顔を出した時に竿を近づけたのですが

その竿の先がちょうど 折れた部分が彼の目に刺さるようになり血を流しながら彼が沈んで行ってまた浮いてきてはまた血を流しながら 沈んで行って

たまらなくなって 私は飛び込んで彼を助けようとしましたが この状態で木がいっぱい まつわりついていてどうすることもできず

彼の足はおそらく木に引っかかって抜けられないようになっていた ように思います


それでも何とかしてあげたいと底まで潜って頑張ったのですが何しろ 2m ほど 底は暗いし そして急激に温度が冷たかったので怖くなってきて

助けようとは一生懸命になりましたが それでも無理でした


友達になってこうして何度もこの湖に2人で釣りに来ていましたから 本当に辛いです


田中健一は消防隊に対して口早に事情説明している間に変わり果てた市岡進さんはタンカーに乗せられて救急車の方に向かって行った


パトカーも やってきていて 田中健二は さらにおまわりさんに詳しい事情を 聞かれそうになったが その時に消防隊員が


これから大学病院へ直行することになりましたと甲高い声で叫ぶように 田中健二に伝えた


やがて救急車はサイレンを鳴らすこともなく現場から遠ざかって行った


二人の警察官に囲まれるようにして田中健二はショックで立っていることさえ 辛くなって

いた


そんなことは お金 なしに警察官が2人


あなたと 被害者の方はお友達ですか?


はい


それでご一緒に釣りをしていてそして彼が あの場所から池に滑り落ちたということですか


はい


でも目の辺りがかなり大きな怪我をしていましたね あれはどうしたのかな?分かりませんか?


ええ 分かります 彼が溺れていて あの場所はとにかくご覧のように急な場所です 彼が足元を滑らせて 湖にはまって それであの場所は 立ち枯れの木とかあるいは流れ着いた気などがたまり場所になっていて彼はそこにズボンを引っ掛けて抜けられないようになっていたみたいで消防隊員の方がそのように言っておりました

私も助けようとして飛び込んで潜ったのですが 何分 水が急に冷たくなっていて しかも 薄暗かったから結局 助けてあげることはできませんでした


それと 彼の目の当たりが血まみれになっていたのは彼に竿を持たせて引っ張り上げようとして ところがその竿が売れて今度俺たちを彼の目の近くへ近づけていくと彼は溺れていたから勢いよく顔を持ち上げたの好きにたまたま目に突き刺されるようになり そして大怪我になりました


もっと他の方法があったかもしれないけどだけどあの時は思いつかなかった 周りに気なんか もなかったし彼を引っ張り上げようと 最初 手を引っ張り出したけど でもその時も思うように行かず 今度は 潜ってなんとか助けてあげようと思ったけどそれもやっぱり うまくいかず 何しろ 彼はだんだんと溺れていくように思えたから 私も焦ってしまって多分足にかかっていた気が浮遊していて だから彼が引っかかったことによってその太い木はさらに沈んだかもしれません そして彼のズボンの裾 なんかがスヌキのどこかに引っかかっていたか あるいは 挟まれていたか 何かがあったと思います だから私も頑張って金も必死になっていたけどどうすることも 結果的にはできなかったです

だいたい分かりました

そうでしたか 大変でしたね 友達の方がこんな目に遭うとはね あなたもつらいですね


あの方はどちらの方ですか お住まいは?


そこまでは 詳しくはないです 大阪の方だと聞いておりますが それ以上のことは知りません この場所で 何度も出会っていて釣りをして そして今度またいつか ここでありましょう という約束をして そういった関係だったから


分かりました とりあえずこれから病院の方へ駆けつけてあげるわけですか?


はい ただ気になっていることは彼の家族はどう考えておりますか それも分かりません 


まさかね こんなことになるとは あなたも 思ってもいなかっただろうし とにかく また 署の方で詳しくお聞きすることになりますので

連絡先などを教えてください



一応の取り調べを済ませて 警察官は帰って行った


田中健二はそれから 釣り道具をしまって重い 気持ちのままで大学病院へ足を運ぶことにした


市岡進は病院でも荷物から身元を証明するものもなく病院は警察に連絡を入れていた


とにかく市岡進は 身元を証明するものなど一切持っていない 風変わりな人であったようで 病院も戸惑っていたようである


霊安室に入れられた市岡進は 身元不明のまま 安置されることになっていたが

警察官が 再度 事故現場に訪れて放置してあった釣り道具を発見してその釣り道具の中に有名なチェーン店の釣り道具屋のシールが道具入れに貼られていたのを見つけていた


そして 警察官はその時 思ったのは

水死した市岡進は大阪の出身だと 田中健二さんが言っていた その言葉を思い出していて

早速 釣り道具屋の 大阪営業所を訪ねることにした


釣り道具屋は万引きを防ぐためにも パトロールカメラはしっかりつけられていてその中に写ってないかを調べてもらったが

だけどそれらしい 該当者はいなかった


そして 釣り道具屋の店員さんが道具を全部細かく調べていて口にした言葉は


これは うちの店じゃないと思います

確かにこれはシールが貼っていて うちの店かもわからないですが 他の釣り道具はほとんど家では扱っておりませんね  


もし この方が 常連 なら他の釣り道具も当店で扱っているものがかなりあるはずですから

だからおそらく当店のチェーン店とは違う店に行っておられると思いますよ

当店のチェーン店は全て同じ商品を扱っておりますから


警察官は少し気落ちしたが釣り道具店を後にして奈良に引き返すことにした


ただ一つ救いがあったのは

ブラックバス ツリー専門の道具ではなくて海釣りの道具で山田スペシャル と印字されたウキがあった

その字はすでにかなり薄れていて金箔を貼られた その文字は何とか読める程度であったが

山田スペシャル という文字であることは何とか分かった


それで 警察官は 山田スペシャル という文字を探すために 山田釣具店を検索してみた 


該当者なし


さらに 山田 釣り用 浮き製造所なども 検索してみたが 該当者はなかった


ところが それから2日ほど大阪の釣り堀のへら釣り コーナーを訪ねた


経営者の 上白 なおさんはかなりの高齢で小遣い稼ぎのために 釣り堀を経営している状態でやってがだけど名阪国道から見えている釣り堀で ずいぶん 古くからやっていることを警察官は知っていた


山田スペシャル

なんと 懐かしいものを持っておられますね

よく知ってますよ この浮き 結構 流行ったというよりか 結局はこの山田っていう人物が相当 減らずりが上手だったんでしょうね 伝説の釣り師とまでは言わなくとも私の耳にも結構入ってきましたよ

もう25年ぐらい前になりますかな


そこまで行った時に警察官は

だけどね この浮きを持っていた人はまだ20代の半ば 若い人なんですよ


そのように言うと

何しろ 昔有名だったから誰かが大事に持っていても消して不思議ではないと思います へら釣りの好きな人なら 気持ちは分かりますよ


それでこの山田さんっていう方の住所をお分かりですか


確か 奈良県じゃなかったのかな?


奈良県ですか?


そのように聞いたことがあったように思います  


分かりました 他に思い出すことがあったなら またご連絡お願いしておきます


警察官は少しは身元判明に近づいたかもしれないと思いながらも何しろ 25年前の話で あったことから 期待度としては薄いものであった


お父さん 辛いでしょうね せっかくお友達になれたのに  お隣の源氏 ちゃんといつも釣りに言っていてだけど 源氏さんも殺されてしまい なんとかあれから5年ほど過ぎたけどせっかくお友達ができたのに お父さんはかわいそう


まあまあ 私のことはともかく どうして あの時助けてあげれなかったのかと今でもやっぱり辛いよ

あの時は必死になって助けてあげた つもりだったけど


田中健二は意気消沈していた

何しろ せっかくできた 釣り仲間であったにもかかわらずこのようにして目の前で亡くなってしまったこととそれを助けてあげれなかったことが いつまでも彼の心をふさいでいた


妻みのりも彼の気持ちを指して励まそうとしながらも同じように 辛い気持ちになっていた

 

それから3週間ほど過ぎた時に

田中健二は5年前に隣の山川 源氏さんが殺されたあの時と同じように心はふさぎっぱなしであった


そんな日の夜 大和警察署から電話が 田中健二にかかり


色々お聞きしたいことがございまして 一度 警察の方へお越しいただけませんか?


優しくそのように言われて 伺うことにした



警察官は3人 取り調べ室で


田中さん いろいろ水死された方のことがわかってきましたからお知らせします


優しく丁寧な言い方で警察官はそのように口にした


そして1人の警察官から説明されることとなった


亡くなられた 市岡さんはあなたが大阪の方だと言っておりましたが 奈良県の方です それも 香芝町の方です


まさか!私は何度も 大阪の方だと聞かされていますよ


何かの都合で嘘を言っていたんでしょうね


どんな都合でしょうか?


とりあえず市岡さんとは 奈良県香芝市の出身で年齢は28歳独身ですね それに身内の方と言うと 今のところまだ 判明しておりませんだから遺体の引き取りっても今の段階では不明ですね


それで 市岡さんが水死された場所にもあれからも 潜水法を交えて行っておりますが

多分彼は20cm ほどありの太さで3m ほど抜きにまつわり着いたようになって溺死していたから気の毒な死に方でした


それといちごさんの目に突き刺さっていた 釣り竿というのはほぼ 6 CM ほど刺さっておりましたね あれは偶然起こすわ考えにくい かもしれませんね


いえいえ 必死だったから 偶然です


そうでしょうか?


そうですよ、まさか あんなことになるとは


田中さん 田中さんはあの人のことをどのように思ってあるんですか 改めてお聞きしますが?


はい 仲の良い 釣り 中まででした


本当にそうですか?


そうですよ この1年ほどの間に何回も行かれそうあの場所に釣りに行っておりますから


何回も行った それは釣りが目的だったのですか?


どうしてそのようなことを聞かれるのですか


実はね あなた これまでに こちらに何回か 来られてますね ホームから突き落とされそうになったという時とその後も車で轢かれそうになったというご相談で


はい 確かに 何年か前にそんなことがありました


つまり あなたは必要か 3 のことを 釣り仲間と何度も口にされておりますが 実は 心の底で 市岡さんがあなたの命を狙った犯人かもしれないという気持ちもどこかにあったのではないのですか?


今そんなこと言われても 確かに 遺伝にはそんな気持ちがありました 何しろ 2階にも渡って 命を狙われたわけですから 誰だって同じような気持ちになると思います


つまり あなたは99%は 市岡さんのことが 仲間だぞ 思いながらも1%でも心の趣味でもしかしてこの人が私の命を狙った犯人かもしれないという気持ちがいつもどこかに心の隅にあった 違いますか?


そんなことはありません あの時は必死になって私は 助けようとした それ以外の気持ち など 1ミリもありません


だけどね どう考えても 153の目が完全に潰れたようになっている あんなこと 簡単に怒るように思いませんが 助けてほしいとあなたの方を睨みつけていた1億3の目にあなたは 釣竿の先をその目を向かって突き刺したのと違いますか?


何を言います バカなことを

どうしてそんなことをしなければならないんですか


だから先ほど言ったようにあなたは 市岡さんにいつか復習してやろうという気持ちも 心の隅で常にあった

違いますか? あなたは 市岡さんに2度にわたって 命を狙うかと思っていたわけですよ


そんなことはありません 助けてあげようと必死でした それ以外の気持ち など一切なかったです


だけどね あなたは2度に渡って警察にね 犯人探しを依頼してきている ヤマトの駅でも 駅員さんに何度も犯人探しをお願いしている


お隣の山川源治さんが殺された時の担当の刑事にもその話を何度もしておりますね


つまり 田中さん

あなたのこれまでの言動は犯人を捕まえたいという気持ちだけしか 長州には残っていないのですよ その後 犯人と思う人物と親しくなって2人でいつも釣りに行ったとおっしゃいましたが 

あなた 正直言って仕返しする機会を狙っていたのではないのですか


違います そんな気持ちは1ミリもありません

とにかく彼を助けたかった それだけです

5年前に 山川 源氏さんという釣り仲間を失い 本当にあの時は殺されたということで ショックでした そしてそれから 市岡 さんと知り合いになりもちろん 最初はいろいろ思うこともありましたが 次第に命を狙われることもなくなってきて そして彼とも会うたびに親しくなってきて だからそんな彼を私がこの手で殺そうなんて 全く考えたことは一度もないです はっきり申し上げます


田中さん 5年前に 犯人を捕まえたいという気持ちが相当あったはずです これから家族の方にも色々お聞きすることになりますが

あなたの命を狙った犯人に対しては相当な憤りを感じていたと思うのが当たり前のこと

そしてあなたは 市岡さんが犯人ではないかと 5年前に強く感じた 駅員さんも一応さんが プラットフォームで写っていた パトロールカメラとあなたが持ち込んだ写真とかほとんど同じ人物であるだろうと そんな話をしたはずです これは 駅員さんの口から聞いております


だから 田中さん

あなたに殺意がなかったといくら 今 言われても 警察としては信じられないのです そして 先ほども言いましたように目に6cm 近い 刺し傷があるのも これは偶然起こりうることだとは考えられないからです


つまり あなた方は私をどうしても 市岡さんを釣竿で突き刺して無理に沈めたと推測するわけですか 

ばかばかしい 情けなくなってきますわ


田中さん 今日はこのまま取り調べをさせてもらいますので

とにかく 警察としては市岡さんは釣りをしていて全て池にはまって 亡くなったと それで解決しようとは思えないわけです だから不審な点があったので彼を司法解剖 もしております


本当に単なる水死 事故だとあなたは言い張りますか


そうです 単なる水死ですよ


警察官と2人の刑事とそして 田中賢治との間にはかなり太めの溝ができているように お互いに感じていた



二人の刑事がひそひそ話を始めてそれから 1人の刑事が部屋を出て行った


しばらくしてその刑事に代わって1人の警察官が入ってきて両手を机につけながら 田中賢二の顔を笑顔を浮かべながら見つめ


田中さん覚えていてくれてますか?


そのように 優しく口にした


田中健二はその言葉に戸惑いながら

いえ何の意味か分かりません


そうですか 5年前にね 私 大和 警察署に勤務していた時に

あなたが訪ねてこられてね それで大和の駅で突き落とされそうになったとこかあるいは 車でひかれそうになったとか

だから犯人を見つけてもらいたいとあなたに 嘆願されたのを覚えておりますよ


あ、あの時のおまわりさんですか あの時はお世話になりました 何しろ 5年以上前のことですので それに あの時のように危険な目にもあれからずっとあったことがないですので忘れておりました


本当にそうですか?あの時 かなり深刻な顔されて相談に来られたのを覚えておりますよ

でも忘れてしまったと


はい 何しろ 5年以上前のことですから


だけどあなたは殺されそうになったとかなり興奮もしておりましたし そして恐怖感も感じ取れましたから簡単に忘れられることではないと今では思いますが


だけど正直なところ 忘れておりました


そうですかなぁ 簡単に忘れられる出来事ではなかったと思いますが


だからあなたはこの1年半 ほどの間で1億さんを釣りに誘ってチャンスを伺っていたのではないのですか?復讐してやろうと


違いましてやっぱりお巡りさんもその話に持って行こうとする

本当に忘れておりました 犯人を恨む気持ち など 5年も6年も人を恨んで生きることができるますか 

それに 市岡さんが悪い人なら私も裏も気持ちは消えなかったかもしれません でも彼は明るくて優しくて いい青年ですよ 彼に対して 犯人かもしれないと思った 気持ちが逆に私はつらいでした  どうして人を心の底から信じられないのかと思った日も何度もありました


相変わらず 平行線になってきたの 居残っていたもう一人の刑事が



田中さん 今日は申し訳ないけど このまま取り調べを続けさせてもらうから


どうしてですか?

私が市岡さんを殺した犯人だと決めつけているのですか?


田中さん 田中さんには初めての経験だと思うけど私たちはね あなたのようなタイプの人を何人も 何人も経験しているのですよ

どれだけ 凶悪な事件を起こしてもほとんどの犯人は知らなかった 関係ない そればっかりを繰り返すわけです あるいは黙秘権を使ったりして

だけど結局しまいにやっていたことを自供する ほとんどの罪人は このパターンですよ


だから 田中さん ももし本当に実行していて一岡さんを殺したなら早く言うべきですよ 罪が軽くなる ちょっとでも


田中賢二は結局 市岡進 推進事件の重要参考人ということで身柄を 大和署に確保されることとなった


どれだけ 田中賢治は違いますと 繰り返したかだけど警察は状況を判断して彼を重要参考人として目柄を確保していた


そして同時に 田中賢治の自宅も 家宅捜査して職場にも大和警察は証拠 固めに邁進した


それから10日間 田中健二は連日 大和警察署によって 激しい 取り調べを繰り返されていたが一貫して彼は無罪であることを言い続けていた あくまで助けてやろうという気持ちが100%で殺害するような気持ちなど1ミリもなかったことを何度も何度も繰り返していた


さらに 延長 交流 となり 大和警察署の刑事たちは22日間で基礎に持っていくだけの証拠を示さなければならないことで取り調べはさらに厳しさを増していた


刑事さん 私はもうこれで何度言いました同じことを彼を助けようと必死だったと

そして彼とは仲の良い釣り仲間になっていたことを

どうして私の言うことを信じてもらえないのですか?


あなた方は疑ってとにかく 証拠を見つけてそして を 犯人に仕立ててしまう

私からお前は実に悲しい 仕事ですね


田中健二はそこまで皮肉を言うようにまでなって心を定めていた


ところが 新聞では

ブラックバスを釣りをしていた2人の釣り仲間の一人がなくなり 池にはまって水死したのであるが どうも 相棒の人に殺されてたのではないかとして警察は相棒の人物を重要参考人として 身柄を確保しております

釣竿の先が折れていてその折れた先で溺れている釣り仲間の目を突き刺して強引に溺れさせたように 警察は 述べておりますが 犯人と思われている人物は全て否定をしているようです

警察は2人の間に殺意を抱くような過去があったことを突き止め重要参考人に厳しく追求しているようです


交流機関の10日間も過ぎてさらに延長 交流と なり大和市の話ではおそらく後の10日間で解決し起訴に持っていく 誰と確信しているようです


では次のニュースです



田中健二を警察に引っ張られてそのまま拘留された現代 棚 ケッケは妻 みのりと長男 陽一 次男の親子3人で耐えるように暮らしていた


だけど一体何がどうなっているのかさえ 誰もがわからなかった

家族に警察から伝えられたことは夫 田中健一は同行していた 釣り仲間の市岡進さんを殺害した容疑で重要参考人として 留置している


それだけであった


取り調べは激しくて ヤマト 警察署の刑事たちは 市岡進さんを田中健一が殺害したようにとりあえず 捉えようとしていた


一方 田中健一は アラ の疑いをかけられてどうすることもできなかったが だけど心で思っていたのはたった一つ自分は 市岡さんを100% いや 200% 助けようという気持ちだけがあったということである


彼はこの10日間ほどの間で取り締まりのいろは が分かってきて逆に 毎日火を重ねるたびに 落ち着いていくように自分自身が思えてきていた


そのように思えるのは あの袴田 岩尾 事件に興味があったから 何度も ニュースになるたびにコメントを書いていた どうして 57年も58年も彼は無実を訴え続けたのか そして なぜその間に無罪である証拠を見つけることができなかったのかそのことがいつも健一の 頭の中から離れることはなかった

袴田巌さんは無題を勝ち取り今は 自由のみとなったがだけど健一にとってはそのことが一言のように思えていなかった


今まさに 健一は袴田巌さんと同じ立場に立たされていることで辛さの中にも袴田巌さんのあの人生が常に彼を支えていたように思う


刑事さん何°c繰り返し繰り返し聞かれても私は市岡さんを助けたかった それ以外のことは思っていなかった過去にどんな気持ちがあったにしろ 私はあの場では市 岡さんを助けることだけを考えたそれ以外の何もなかった 何度同じ言葉を繰り返しましたか これで そしてあなた方は何度私が彼を殺したと言い張りましたか


田中さん 本当のことを言ってください

あなたは間違いなく 犯人を探しているのではないですか 今でも

それが一応か進むさんなのでしょう あなたを二度にわたって殺そうとしたその人が

だけどあなたはその人に対して今は好意を持っている むしろ 友人だと思っていると本当にそのように思っておりますか 違うでしょう

心のどこかで 必ず仕返しをしてやろうとチャンスを常に考えていたでしょう


だからあなたは1億さんが崖から滑り落ちて湖に落ちて溺れている姿を見てその時にあなたは99%がね 友達と思っていたとしても後の1%でね 殺してやりたいと 仕返しをしてやりたいと思っていた気持ちが表に出てきて そしてあなたは思わず彼を釣り竿の先で続いて沈めようとしたのと違いますか


だから違います 作り話はやめてください


田中さん 私たちはねいろんなタイプの事件にねこれまで関わってきております

だからわかるのですよ あなたの心の中まで

家のかよっては どんな人間でもね 2度にわたって 命を狙われた相手に対してね 許すような気持ちなど絶対ありえないと思いますよ そういう瞬間はあるかもしれない でもね 冷静になった時は その気持ちはね 必ず心のどこかにしっかり 残っていると思いますよ あなた今ね 胸に手を当てて考えてください やっぱりね 仕返しをしたい やられたからやり返したいという気持ち 今でもあるでしょう 心の中にあるでしょう 違いますか?


刑事さん いつまでも同じことを繰り返して あなた方は同じことを言って私を犯人に仕立て上げようとしているだけで 私は彼を助けようと必死になっていた お互い同じ言葉を繰り返しておりますね

でもこれ以上 今の状態が続くと私は黙秘権 というやつを使いたくなりますね

だけどそうすることによって あなた方はいよいよ私が犯人だと決めつけるんでしょうね

黙秘権を使ってこの男は逃げようとしていると

だけどあなた方は正直 悲しい商売ですね

罪のない人間を疑って傷つけて追い詰めて

それで 犯人ではなかったなら あなた方はどうするのですか?

すまんだすまんだ 悪かったと言って頭を下げたら終わりですか

責任を取って警察官を辞めますか?


田中さん 私たちはあなたにね 私たちの人生のアドバイスをもらえているわけじゃないのですよ そんなことを考えるならね 絶対自分がやっていないということを具体的に証明されたらどうですか?


だから言ってるでしょ 私は彼を100% 助けることしか考えなかったと


だけどそれは証明できないでしょ?


でもどうして私をあなた方は 殺人犯のようにしたいのですか それがあなた方の生きがいですか?


田中さん いつまでたっても平行線のままだからこのまま 延長 交流 ということで手続きさせてもらいます

この延長 交流の間にね 白状する参考人も結構いますからね 

あなたはね 正直な気持ち どうなのですか?


何が?


だから一応か進さんが亡くなったことに対して


かわいそうだと思いますよ お気の毒なことになったと


だけどその市岡進さんがあなたを2度にわたって殺害しようとした犯人だと分かった今でも


・…、


はっきり言えないのですか?

今までのように100% 助けてあげたかった そうはっきり 素直に言えないのですか?


いいえ 私は今 思ったのは

刑事さんが唐突にそんな質問をしたからです

確かに今なら考えてしまいますよ それは私も家の通った人間だから

ただ あの時は100% 助けてやろうとしか考えていなかった それが事実です


そうですか でもあと10日間 話ししましょうよ

裁判所に延長 交流を申し出ておりますから


田中健二は結局大和警察署によって重要参考人として交流され連日 取り調べ が激しく続いていたが それでも彼は無実であることを常に口にしていただけど警察は同じようなパターンを何度も経験しているために彼を 90%ぐらいは犯人と位置づけていたのだろう


牢獄に管理された田中健二は

家族のことやお隣の山川健二さんのこと そして げんじさんの家族のこと あるいは親戚のこと あるいは 隣組 自治会のことなどが頭に浮かんできたが だけど彼は1回して無罪であることを心に誓っていたので 何を警察に言われるとしても怖くはなかった地震があった


交流期間が延長して再び同じような取り調べが繰り返されたが

田中健二は一歩たりとも 譲ることなく 無実であることを口にしていた


拘留されてから15日目 大勢の警察官とともに 田中健二は 殺害現場の疑いのかけられている湖へ出かけていた


ほとんど 崖っぷちで

水面 1m も進めば 1m 50ぐらいの深さにある すり鉢型あった


警察は変なことを言い出した

田中さんはこの釣り場に何度も来ておられますか?


はい 何度も来ております 


この場所には?


ここは危ないから初めてです もっと 安全な場所で いつも釣りをしておりますと言って


田中はいつも釣りをしているエリアを指をさしていた


そうすると刑事が


あなた市岡さんにこの場所に行けばかかるかもとか いったことはありませんか?


ありません だって自分が怖いと思っているところを人に勧めたりは するわけがないでしょう

変な質問ですね!


もう一度ね あなたが言っているように

この釣竿であの時と同じような動きをしてもらえませんか?


分かりました バスの釣竿は皆さん 同じでこのように 日本 繋ぎになっていてあの時はあ


あの時はとにかく合わせていて彼がこの竿をこの辺に落として それではまったわけですから 私も飛んできて とりあえずこの竿を見つけてそして彼に差し出したわけです このようにして そしたら彼は合わせて 先っぽ を使いました でも 溺れていたから 手に力が入ったのでしょうね サーバー 先っぽが勢いよく折れてそれで再び 折れた竿を彼の顔の方に近づけたわけです このようにして

だけど彼は頭の先まで 使ってしまったり 浮き上がったりを繰り返していてそして 浮き上がってきた時に目の近くには消してなかったのですが それでも彼がその釣り竿に向かって 思いっきり顔を近づけたのです

溺れていたから彼も息をするのに必死だったようです 多分流木か何かが足にまつわ い に ついているとかだと思います

彼は大きな声で うわーっと叫ぶようにしながら両手で身を抑えていました でも指の間から血が流れ落ちて 大変なことになったかもしれないとその時思いました だから私もすぐに彼を 助けなければいけないと湖に入りましたが それでも思うようには行かず それからもまた 泳ぐようにし潜ってみましたが だけど 立木と流木 などが重なり合っていてさらに2m ほどの深さがあるから 薄暗くて彼を助けることはできませんでした


田中健二はいつのまにか涙が出てきシャツでそれを拭きながら


刑事さん あなた方に 犯人扱いされて このようにしていますが だけどあの時市岡さんが

目から血をいっぱい 流しながら 沈んでいったのですよ

どうしてあげることもできず

だけど私は不思議に思えたのです どうして市岡さんは死ななければならなかったかと

別に 心臓麻痺を起こした様子もないし 親指の方は全くダメで 金槌 だったかもしれないけどだけどまさか死ぬとは思っていなかった


おそらく彼が沈んでいったあの辺りね 流木のかなり太いのがあります それは分かりました その流木が何か影響してるのかなと また先生の人にでも調べてもらってください あまりにも彼が簡単に死んでしまったように思うから


田中さんでもあなたは目の前で 市岡さんが沈んでいったと

それを見つめていたわけですね その時に 市岡さんのことをどのように思いましたか?

あなたを2度に渡って殺そうとした犯人ですよ 一岡さんは


だから私は助けたかったけど助けられなくて あの時は本当に辛いでした 路頭に迷うようになっておりました


だけど死んでくれてほっとしたのじゃないのですか 何しろ 殺人未遂の犯人だから


そんなことはありません 今も とてもつらいです もうこれ以上何も話したくなくなっています


市岡さんの持ち物の検査をしておりますが 携帯電話は持っていませんね

ご存じないですか?あなたと一緒に写った写真とか何かがあったら良いのですが もちろん その中に重要なことを写されているかもわからないし

本当に知らないですか?


知らないです そういえば 彼は携帯とかスマホとか持っていたかな?

彼がね 昔 出会った頃に 53cm の大きな ブラックバスを釣ってそれで私のカメラで写してあげてその時にメールで送ったか あるいはそんな話はしなかったかそういうことはありましたが それから彼が携帯を持っている姿は正直 見たことがないですね


それも不思議な話ですね こんな時代に


刑事さん 彼は私に対しては大阪から来ております 電車で そして最初は確か タクシーで来たと言っておりました この湖までそれを聞いたから 私は彼に嫁さんが作ったおにぎりを差し上げたり 帰りは駅まで 私の車で送ってあげたり まあ 私もレンタカーでしたが 別に変な気持ちもなく送ってあげましたから もちろん その時はよもや私を二度に渡って 命を奪おうとした犯人だということなど知りません でしたがね


だけどあなたはその頃に 大和駅にも行ってバトロール カメラの映像を見せてもらい そして 警察にも電話をかけてきて

それから あとあなたは事故にあって病院に入院してその時も話をいっぱいしてますね

つまり あなたは今 全く彼に対して恨みがまるでなかったというのが どうしてもね 納得いかないわけです だって 2回にわたって殺されかけたわけですよねわかるでしょう 殺されかけた相手をね あなたは見過ごしたというのわけですか許してあげたと

そしていい友達であったとこうして溺れたらね 助けたい気持ちで100%であったと


人間はね やっぱり血の通った動物だから

恨みとか憎しみとかはね 簡単には消せないはずですよまして復習となってくるとね 相手がはっきりしていてその相手が何をしたかいうのも はっきりしているからね


簡単には記憶から消してはいないはずですよ それはわかるでしょう


刑事さんの 言われることはよく分かります 私もねあの頃は本当に怖いでした 嫁も心配してくれるし 息子たちも心配してくれるし

第一 犯人像が全く頭に浮かばないわけです 会社でね トラブルを起こしたわけでもないし 家庭は穏やかな普通の家庭 だし お金も別にたくさん持っているわけじゃないし じゃあなぜ私の命を狙うのか

まるで煙の中からナイフを持った犯人が現れて私に襲いかかってくるそんな夢を見たこともありますよ


あの頃に それをね 今 憎しみという形でしっかり 心の中で残っているかといえばそれは残っているかも分かりません人間ですから だけどこの市岡さんの事故に関しては 今言ったような気持ちは一切なかったです

むしろ逆に今 ふつふつと怒りのような気持ちがこみ上げては来ておりますが だけど

まさかこんなことになるとは


田中さん 今日はこれで帰りますが 気持ちは変わりませんか

我々としてははっきり言って あなたの言っていることを信じてあげたいけどだけどやはり2度にわたって 警察や 大和駅の事務所に駆け込んで犯人ではないかと市岡さんを疑っていたわけですからね

また帰ってじっくり考えてください 正直なことを


正直ですよ 私はこれまで もうこれから先も同じことを繰り返すつもりです

黙秘権 のようなものが仮にあったとしても関係ないです 私は何もやっていない

本当なら 今日 この場所に来るのなら花束の一つでも持ってきてあげたかった


市岡さん 助けられなくて本当に申し訳なかった 

だけど どうしてあなたは私の命を狙ったの?

2度にも渡って それと ここに何度も2人で釣りに来ているけど

その間も市岡さんは私の命を狙っていたのかな?

本当に分からない どうして あなたに命を狙われなければならないのか?

刑事さんは何か知らないのですか?

私が1億さんに命を狙われなければならない その理由を


分かりませんね 市岡さんが生きていて逮捕したんなら 白状すると思いますが



それで 刑事さん 彼は 香芝町で住んでいると前にいっておりましたね

彼の住まいを調べられましたか?


いえ今のところは まだ 何しろ 被害に遭われた方ですから


だけど 刑事さん 私も被害者ですよ 彼に2度も 命を狙われたわけですからだから市岡さんは加害者でもあるわけですから当然 家宅捜査をするのが当たり前ではないのですか?


もちろん 別の掲示が言ってるはずです


それで 今のところ何も分からないということなのでしょうか?


とにかくあなたは 命を狙われたわけですからね 2度にわたって 狙った1億32は必ず同期というものがあるはずだから徹底的に調べることは調べますよ

あなたが知らない間に市岡さんに迷惑をかけているかもしれないし とにかく調べます


とにかく今のところは 私には検討がつきません そして なぜ彼が私のそばに近づいてきたのか 何が目的であったのか

いくら考えても思いつきませんね

それに 正直あの出来事があってからもう4年も5年も経つから 正直全く気にしなくなっていたこともう事実です

そもそも 気にしているなら あれから何年間という間に何回にも渡って2人で魚釣り などできませんよ 違いますか? 例えばね 去年もまた殺しかけられたとかね 狙われたらとかねそんなことがあったのならずっと気にしていると思いますよ だけどもう4年以上 何事もなく今に至っているでしょう 正直言って忘れておりました

第一 市岡 さんとは本当に仲良く この4年間釣りをしておりましたから


だけど 田中さん

市岡さんはあなたに接近してきて何年間という間 あなたとこの場所で釣りをしてその間に

あなたの命を狙うことを考えていたかもしれないですよ

つまりそれを言い換えるとね

あなたも 道岡さんをかなり 疑っていた自分を殺そうとした人と思ったことも 何度もあったから

つまりね 市岡 さんもあなたにも 殺意というものがともにあったということですね だから私たちはあなたの身柄を拘束してそして何もなかったとあなたは何度も言っておるけどだけど間違いなく殺意を持っていたことも現実だから



刑事さんもうその話は疲れます 辛いです

今でもね 市岡さんが私の命を2度にわたって 狙っていた人だと正直 思いたくないわけです

なぜならこの4年間ほどの間 彼とこの場所で ブラックバスを釣ることが本当に楽しかったから

だから彼が亡くなって そして彼の素性が分かりかなり 私もショックですが だけど 通常は知りたくなかった ただ 素直な気持ちで彼の死を悔やみたかった

刑事さん一刻も早く彼が名で私の命を狙っていたのか それを調べてくださいどうしてそのようにしなければならなかったのか 彼はこの4年間の印象では とても 優しい人でした 思いやりもありました 私はむしろ 彼のことが好きでしたよき友だと心の中で常に思っていました だから私もお隣の 山川さんとよく釣りに行きましたが それは ブラックバスではなくて ほとんど海釣りでしただけど 市岡 さんと知り合いになってそれから ブラックバス釣りがなお 好きになって本当にいい釣り仲間だと思っておりました


そうですか とりあえず市岡さんの住まいをしっかり調べて 原因を究明させてもらいます


ええお願いします

それと 私は何度 どんな言い方をされても 今

話していることに嘘偽りはありませんから



田中研二は市岡進さん殺害 容疑の重要参考人として交流されていたが

みじんたりとも 刑事たちが喜ぶようなセリフは口にしなかった


それでも何度も取り調べ 間の刑事たちは しつこく 田中健二がボロー出しはしないかと企んでいた刑事たちは しずく 聞いたのは助けようと思って 竿を出してその先をつかんだ 一翼さんであったがすぐに折れてその俺とそうで 彼は目の玉を疲れているわけである それも 4 CM も午前中も突き刺さ刺さっていた

こんなことは現実に起こるだろうかと 何度も何度も 刑事たちは市岡さんに詰め寄った


延長 交流もあと2日を残し

田中健二はどれだけ 同じセリフを繰り返しても元々2度に命を狙われたことによってその事実を覆すことはできなかった つまり 刑事たちはそのことをいくら違うと言っても聞き入れようとはしなかった


あといつか もすれば 田中健には起訴になるかもしれない

それも 殺人の罪をかぶることになるかもわからない


どれだけ違います 正しいのは私の言っていることですと 田中健二は何度も何度も口にし地震もあったが結局それを裏付けるものがなくまた刑事には5年前に 田中健二が持っていた犯人探しの気持ちを棚上げにすることはできなかった

 

田中健二は毎日の厳しい 取り調べの中で

どうすれば自分の意見を分かってくれるのだろうかと 何度も何度も考えていたが思いつかない

事実だと言ってもそれを分かりましたと彼らは絶対言わない


田中健二はあの袴田巌さんの事件を何度も思い出していた

58年間 無実だ知らないぞ 言い続けた 袴田巌さんはどんな気持ちだったのだろうかと

自分がこのような立場になるまでには袴田巌さんのことについて結構 興味があった


どのような 興味かと言うと

どうして彼は57年も 8年間も無実だと言いながら それを証明する具体的な何かが一つでもなかったのだろうかと はがゆいくらいに思えたことである


袴田さん たった一つでもないのですか あなたが犯人じゃないと証明する何かが


裁判のためにコメントも書いたりもした


だけど今自分が同じ立場になって そして 刑事に白い目で睨みつけられて

正直なところ どうすることもできず田中賢治は思いつかなかった


とにかくあれから5年経った今も覚えているのは

まるで煙の中からさっと現れていきなり手には凶器を持っていて襲いかかってくる

そんな夢を見たことがあったことが頭の中にへばりついていた


夜は うなされた日もあったよに思われる

妻のみのりも相当 心配していたようで 彼女もかなり 神経質になっていたの検事は分かっていた そして2人の息子たちも彼らなりにかなりの心配をしてくれていたようにも感じていた


拘留期間はあと3日間となって

田中賢二は全く覚えのない罪をあと23日でかぶせられて そして 基礎になるかもしれないと思うと怖さ さえ感じてきた 何しろ市 岡さんは命を落としていることから そして警察が重要参考人として 田中健二の身柄を拘束して取り調べ が続いていて一向に警察は彼の言うことを鵜呑みにすることはない むしろ いつまでたっても5年前に彼が 石岡 さんに疑いをかけていたことを基本に考えている だから 殺人罪で起訴されることも覚悟しなければならないと思えていた


弁護士の先生も 頭をかいて うなだれるように苦悩な姿を見せていた


そんな日々が続いて 田中健二にはどうすることもできなくなっていた


そして ありもしないことで 次第に焦り始めていた

何度も 袴田巌事件を思い出し 出向いた どうして彼は57年も8年の間 無実であると言い続けただろうけどそれを証明することができなかったのか具体的にそのことが今になって自分の身に降りかかってきているように思えて仕方なかった


自分は今 とんでもない体験をしていると思いながらもだけど思い通りにいかないことの加害者に法律という 得体の知れない何かに金縛りにあっているように思えてきていた


そしてある朝 真夜中と言うべきか 事件のようなことが起こった 


田中健二はいつものように眠りについたが その日の夜はいつもになく 押し迫ってくる 拘留期限日が気になりに包む 眠りについていた


そして 真夜中

おい田中 どうした?

おい田中!

看守の声が鳴り響き 田中健二はその甲高い声で目が覚めた


目をこしりながら 虚ろなままで夢から覚めて大きく ため息をついた時に歌手が言葉を投げかけてきた


どうしたんですか 田中さん 大丈夫?

ひどくうなされていて苦しそうでしたよ

悪い夢を見たのかな?

それとも現実を思い出して そうそう市岡さんの夢でも見たのかな?

実はあの人を湖に沈めてしまったことを思い出したのかな?


看守は相変わらず 犯人扱いして田中健二を睨むように喋り続けた


止めてくださいよ 変なこと言うの

違いますよ

確かに今私夢を見ていました 怖い夢を

どんな夢かというとね

あなた 松本清張のね 天城越えて言う 小説 知ってますか

家出をした少年がね 娼婦と知り合いになって 天城の道を歩いていて

その道で 山仕事をしているような大きな男とすれ違った時に娼婦に男が興味を持って それで 娼婦も商売になるかと言って 少年を遠ざけて 男と 草むらの中に入って行ったわけですところが少年はその2人を 草むらから見ていて男が勝負の上にまたがっていく姿を見てね いじめられると思ったのか それとも 少年は恐怖に恋心を抱いていたのか 男のなたを取り上げて それで男の朝もちょうど 眉間の辺りをかち割ったわけです そして殺してしまったわけです


あの映画のような夢を見たわけです 怖かった

煙の中でから突然男が現れて手には包丁の ようなものを持っていていきなり襲ってくる夢を見たわけです

真っ白い煙の中から突然現れ手には 出刃包丁の ようなものを持っていていきなり襲われる夢を見たわけです


5年ほど前に命を狙われて あの頃 同じような夢を見たのを覚えております


もし私がね市岡さんの夢を見たなら おそらく 目尻に涙を浮かべているでしょうね


そうでしたか

本当に苦しそうに見えましたから 殺人を犯すものも結構 同じような状況におかりますから


どうすれば良い どうすれば良い

田中賢二の頭の中はその言葉だけが高速で回転していた 

つまり これと言って打開策を見つけることはできていなかった

たった2人で湖で釣りをしていて片方が溺れて死にそして助けようとしたにもかかわらず それが災いして立派な大人が死んでしまったわけである


あまりにも 状況が単純だっただけに 田中健二にはそれを 事故 だと決めつける 説明は思いつかなかった  


いよいよ拘留期限前日までこれといった 進展 もなく日は と過ぎていた



田中研二は次第に覚えのない殺人犯人に近づいて行っているように思えてきてしまっていた

刑事に何度も

市岡さんは事故で溺れて亡くなったとどれだけ繰り返したかだけど 刑事たちは5年前に市岡さんを

自分の命を狙った 判例 犯人ではないかと決めつけてそして駅にも警察にもその胸の内を何度も口にしている 田中健二の

100% 殺意などなかった 助けようと思った

その気持ちだけで100%だったとそのセリフを何度繰り返してるかだけど 刑事たちはその言葉を信じようとしなかった

5年前に警察に相談にもした事実を最優先する考えから離れることはなかった

その頑なな態度を肌で感じている 田中健二にはもしかすると自分は起訴されるかもしれないと心の中で何割かは思えてきたのであろう それは 袴田 岩を事件申し上げることながら 多くの冤罪事件も戦前戦後を通じて何度もあったと言われているから

それを知っているだけに 怖さは毎日のように増してきていた

市岡進さんはあまりあの日は魚がかからなかった だからそれまで足場が悪い あの場所へは行くことはなかったが あの日はあまりにもかからないので無理に行ったように思う 命綱がいるような急斜面の場所だったから


冤罪で捕まりに軽の執行に準じなければならない そんな人生を経験しなければならないかと思うと

田中健二はうすらと目に涙を浮かべていた


書物で呼んだけど 青森弘前大学教授夫人の強姦殺人事件で逮捕された男は冤罪であった

真犯人が名乗り出て初めて 無罪であることがわかった だけどなのに出ていなかったなら そのまま死刑にされているわけである 


袴田巌 事件も同じで57年間もの間 無実を訴えながら検察 裁判所は決して無実とは言わなかった

田中健二が今 どれだけ必要か 進さんの死に関係ないと車検 だとしても一向にその言葉を信じない 警察が存在するわけだからどうすることもできなかった


拘留2日前の夜





























































































































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