第5話
その後、俺はモンスターの軍勢を殲滅した。
相手はなかなかの強さだったがシグマの敵ではない。
町に被害を出さないように気遣うのが大変だったくらいだった。
助けた人達に聞いたところ、あのモンスターは魔物と呼ばれているらしい。
魔王軍という組織に属する彼らは、人間を支配するために動いているのだという。
それを阻止するため、この国は異界の勇者を召喚するに至ったそうだ。
事情は分かった。
拉致同然の方法で呼ばれた挙げ句、勝手に失格扱いで捨てられたが、今回ばかりは大目に見ようと思う。
この国は予想以上に追い詰められている。
首都に魔族が強襲するなど、よほど劣勢でなければありえないだろう。
もし俺が迎撃しなければ、あっという間に虐殺されて占領されていたに違いない。
結果的に俺を召喚するという判断は正解だったわけである。
戦いが終われば今度は復興作業が始まった。
俺が食い止めたとはいえ、魔族による被害は甚大だ。
今後のためにも早急に対処しなければならない問題は多い。
人々が怪我人の運搬や治療を行う中、俺はシグマで瓦礫の撤去を手伝った。
当初、謎の兵器を操る俺は人々から警戒されていたが、友好的だと分かるとすぐに打ち解けることができた。
魔王軍から町を守ったことで感謝され、俺も彼らのために働くことで応える。
たとえ異界であろうと俺は誰かのために力を尽くしたかった。
そうして数日が経過し、俺は町の広場に呼び出された。
今回の功績を改めて認めてもらうらしい。
たくさんの人々に見守られる中、俺は大々的に表彰される。
「オノデラ・シュート殿。そなたは勇者として魔族の侵攻を打ち破り、国の防衛に多大なる貢献を――」
苦々しい顔で語るのは、最初にステータスを確認した男だ。
聞けば彼は国の大臣らしい。
俺を無能認定して追い出したことが気まずいらしく、あまり目を合わせてくれない。
(別に気にしなくていいのに……)
俺は苦笑しながら大臣の話を聞く。
この世界は数値化された能力――ステータスがすべてだ。
そこに記された情報だけが真実であり、個人としての強さが嘘偽りなく示されている。
だから俺みたいな存在は例外中の例外だろう。
肉体的には常人レベルなのに、無敵のスーパーロボットを所有しているなんて想定できるわけがない。
大臣の話が済むと、次は国王が現れた。
国王は朗々とした口調で問いかけてくる。
「勇者シュートよ。汝は英雄となり、王国のために戦うことを誓うか?」
「いいえ、誓いません」
俺の返答に周囲がざわつく。
すぐさま「不敬だ!」という声も上がった。
場が困惑する中、俺は腕のデバイスのボタンを押す。
城の上にシグマが降臨し、テレポートで俺をコックピットへと移動させた。
俺は拡声機能を使って地上の人々に告げる。
「魔族と戦っているのは王国だけじゃない……俺は最強のヒーローとして、世界を守ることを誓います! だから見ていてください!」
俺の宣言に人々は歓喜の声を上げた。