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1 序章
本編の2年前に起きたとある事件のお話
「あ、しくじった」
男はぼんやりとそんなことを考えた。
「頼む、頼むからっ、目を開けてくれ!」
「クソっ!! 早く取り押さえろ!」
「早く手当をっ!」
「重傷者一名、場所は…」
頭上で怒声が行き交う。撃たれた箇所がジクジク痛む。
ああ、死ぬんだな あいつとの約束破っちまうな
「おいっ!死ぬな、死ぬんじゃねぇっ!勝ち逃げなんか許さねえぞ!」
「うるさいな…まだ死んでねえだろ」
そんな悪態が血と共に男の口から溢れた。
「いいか、ヒュー、ゴホッッ。つたえて…ほしいことがある」
頭の中に靄がかかっている気分だ。もう傷口の痛みも感じなくなってきた。
「ーーーーー」
誰かの命と、涙がこぼれた音がした。