第93話 IGD学園防衛線
朝の陽ざしが私たちを照らす。
全生徒及び全教員たちが壁の上に立ち、周囲を見回している。
IGD学園に接近するのであれば可能性としては三つあると御影先生は言っていた。
1つ、IGD学園と大陸との架け橋や地下通路を使ったアクセス。
IGD学園は人工的に作られた島の上に位置する。となれば周囲は海であり、接近するとなるとモノレールや地下のトンネル。そして最近作られた大橋。
元々全ては物資輸送や来客用として活用していたが、今回となるとハイエンドたちが使用してきてもおかしくない。
2つ、空からの奇襲。
大橋や地下通路は基本的に一方通行、となるとハイエンドからしたらある意味ハチの巣にされるであろう死の道。それを避けるために空から奇襲を仕掛けてくる可能性もある。
現に鴉や春斗が戦ったワームも空を飛んでいた。
3つ、海底。
空からの奇襲も迫撃砲で落とされる可能性もある。それで最後の可能性に繋がる。
それは海底。IGD学園はよくも悪くも周りが海で囲まれている。
海底からの侵入であれば対応できない可能性もある。
…といった三つの可能性を上げたが全て教員たちや水津を含めた技術班で様々なものを作り上げ、完全に叩き潰すために念入り準備を進めた。
正直、これなら勝てるだろう。
守り切れるに違いない。
「葵さん、大丈夫ですか?」
「あぁ、飛脚も絶好調だ。そっちは?」
「こちらもですわ」
「スキャンの方は?」
「ビットを壁の周りに飛ばしていますが…これといって反応なしですわ」
私とフレヤはIGD学園の大橋にて待機している。
あとのレベッカ、アナスタシアは対空砲付近で空の警戒。
雪華さんは地下通路。
アイヴィーと水津は海底近くの区画で待機している。
…すると。
「…いえ待ってくださいまし!IGD学園大橋の先からハイエンドの軍勢を目視で確認!」
「!!」
フレヤの叫び声と通信の声が連鎖し、IGD学園と大陸を繋ぐ大橋の先を見る。
「ハイエンド…!」
AGのカメラ機能を使い、視界をアップにして大橋の先の状況を確認すると…とんでもない量のハイエンドたちが橋を渡ってきていることに気が付く。
『聞こえたな!専用機持ち全員はIGD学園大橋に集まれ!残りの地下通路、空、海底はその場の教員及び4年で警戒していろ!』
御影先生が指示を出し、各々が動く。
「いよいよだね…っと!」
「ここは通さんぞ…!」
レベッカ、アナスタシアが私たちと合流する。
対空警戒とはいえ元々大橋近くにいたので合流は早かった。
『お姉さんはもう少しかかるわ』
『私も…』
『こちらもです、直ぐ向かいます!』
雪華さん、水津、アイヴィーは地下通路、海底近く区画にて待機していたので合流にはまだ時間がかかるようだ。
「来たな」
「私たちも頑張りましょう!」
大橋にて鎮座していた御影先生と柊木先生のもとに集まる。
「アレクサンダー、敵総数は?」
「おおよそになりますが1万は越えているかと」
「今も計算中か?」
「はい、今も数は増大中です」
「…アンノウンは?」
「今のところは確認できませんわ」
まだ幸いか。
あのアンノウンも行動理念は不明のまま。
だが戦闘力は並のハイエンドよりも高い。
「計算完了しました。敵総数1万8千体です」
「大体二万のハイエンドか。編成は?」
「人型のハイエンドが大方を占めていますが、狼、蛇のような大型のハイエンドも数体見受けられます」
「…ブルーノ、アガポフ、アレクサンダー。射撃用意」
「はい!」
三人が各々の射撃武器を構える。
「他の射撃部隊及び近接部隊も構えろ!三人の先制攻撃で迎撃開始とする」
私も村雨、白露を構える。
そして、首にぶら下がったネックレスを見る。
春斗、見て居てくれ。IGD学園を守り切る私たちの姿を!
「ロックオン完了しました!」
「こちらも!」
「いつでも打てます!」
「よし、迎撃開始ッ!!」
御影先生の合図でフレヤのスターダスト、レベッカのデュアルアサルトライフル、アナスタシアのパンツァーカノーネの射撃が一斉に進行するハイエンドたちに向かって放たれる。
――ドォォォォォン…!!
大橋の遠くで爆煙が上がる。
「…どうだ?」
誰かがそう声を上げる。
「来るぞ!一斉に動き始めた!」
しかし敵は少ししか減っていなかった。遠くから歩いて行進していたハイエンドたちが駆けだしてIGD学園に向かってくる。
「射撃部隊、一斉射撃!攻撃の手を緩めるな!」
IGD学園に属する生徒の中でも特に射撃センスの高い人たちで結成された射撃部隊の一斉射撃が進行するハイエンドたちに風穴を開けていく。
「お待たせ!」
「ミストバスター起動…!」
「お待たせしました!」
遅れて雪華さん、水津、アイヴィーも合流。
そして水津のミストバスターの水蒸気爆破型多段ミサイルがハイエンドたちに向けてはなたれ、それと同時に雪華さんのメイス『シャルーア』で地面を抉り氷壁がハイエンドたちに向かっていく。
しかし。
『ガァァァァッ!!』
「防いだ!?」
カメラで確認すると狼が身体を前に出し、後ろに攻撃がいかないように身を挺して守った。
その影響で狼の後ろのハイエンドたちに水蒸気や氷が行くことはなかった。
「ッ!!」
なら私も行くぞ!
エネルギーの出し惜しみは無しだ!
「くらえ!!」
二刀の刃の先にエネルギーを纏わせ、斬撃波を放つ。
本来、狙うのは難しいがこの数なら誰かしらに当たる!
「現在1万3600体生存しています」
「確実に減っている、このまま攻撃を続けろ!」
「私もレンジに入ったので撃ち始めます!」
この弾丸の雨に柊木先生も参加し始め、更なる豪雨がハイエンドたちを襲う。
「…一方的」
「一方的でいいの…よ!」
「えぇ、私たちの想い人を殺した奴らにはそれ相応の報いが必要ですわ」
「その通りだ…私も弾丸一つ一つに殺意を込めて撃とう」
「そこは…魂じゃないのかな」
「とにかく、私たちも斬撃波で応戦しましょう!」
「あぁ!」
各々の攻撃がハイエンドたちを確実に削っていく。
…こう見ると相手の戦い方は大型ハイエンドを盾にしつつ、人型ハイエンドたちで接近している様に見えてきた。
だが…それでどうなるんだ。
私を含めた専用機持ち全員は人型ハイエンドの脆さや性能を知っている。
大型のハイエンドに比べたら耐久力も、装甲も、ましては再生もしていない。
はっきり言うなら、駄作だろう。
まるで人型のハイエンドたちが主力のような動きをしている。
一体なぜなんだ…?
ーーー
防衛戦が開始してから約10分の時がたった。
1万8千体だったハイエンドたちは気が付けば1万を切っており残り9800体となっていた。
だが、距離を詰められてしまい近距離部隊も最前線で武具を振るいハイエンドたちを切り刻んでいる。
幸いにも人型のハイエンドだけが私たちの方へ接近してきているので何とかなっている。
…それでその、残りの大型のハイエンドたちはどうなったかというと。
「貴様らか…私の生徒に傷を負わせた駄獣共は、殺す」
御影先生がズタズタにした。
明らかにキレていると思えるほどの覇気と怒声。
後ろから見て居る私たちでさえ、少し恐怖を覚えるくらいだ。
「フレヤ、敵の状況は?」
『お、大型のハイエンドは見るまでもありませんわ…』
『だよね…あれは、敵だけど同情するよ』
『あぁ…』
『残りの敵の状況を見ても大型は残り8体、他は人型で間違いありませんわ』
となれば後は雑兵の数に押し切られる前に叩き潰せばいいのか。
『…む?』
するとアナスタシアが声を出した。
「どうした、アナスタシア」
『今…何か降ってこなかったか?』
『え?どのあたりに?』
『あそこだ、丁度砂埃が舞っている』
アナスタシアの視界の映像が共有される。
…何かが降ってきたのか、あるいは爆発したのか分からないが確かに砂埃は舞っていた。
『…爆発したのかな』
『でも、砂埃が舞うとするなら大橋というよりかは大陸側のはずよ。一体何が…』
――キィィィィン…。
「?」
一瞬だが私たちの通信にジャミングのような音が流れた。
『待ってください!アレは…!』
「フレヤ?」
『アンノウンです!大橋からこちらに向かって急接近してきています!』
「!?」
やはりというべきか、アンノウンが現れこちらに向かって急接近してきている。
『射撃部隊!人型ではなくアンノウンを狙え!』
『分かりましたわ!』
御影先生の指示のもと、射撃部隊全員の射撃がアンノウンの方へ放たれる。
しかし。
「―――」
『倒れた大型のハイエンドを壁に…!?』
私たちに接近する前に倒れた大型のハイエンドや山となった人型のハイエンド達を壁にしつつアンノウンはこちらに向かって信じられないスピードで迫ってくる。
『くっ…パンツァーカノーネ!』
アナスタシアのダブルバレルの迫撃砲からシングルバレルに変更し、アンノウンに向けて爆裂弾を放つが。
「―――」
『なっ!?』
尻尾のブレードを倒れた人型のハイエンドに突き刺し、壁にして防いだ。
使える物は全て使う、例えそれが死体であろうとも。
『行かせんッ!!』
御影先生が大型のハイエンドをある程度退け、アンノウンの方へ向かい正面からぶつかり合う。
御影先生のAGの大型の槍をアンノウンは発達した両腕で握りしめ、受け止める。
『柊木!』
『はい!』
槍を受け止められた御影先生の後ろから柊木先生が現れ、二丁のショットガンの連射をアンノウンに向けて射撃しようとしたが…出来なかった。
『えっ!?』
尻尾のブレードが先に柊木先生の構えたショットガンを縦に切り裂き、バレル諸共真っ二つになってしまった。
『…!?』
「―――」
『チッ…!』
切り裂いたブレードが御影先生に向けられたと同時に、大型の槍でアンノウンを振り払い距離を離す。
…御影先生、柊木先生とアンノウンが互いににらみ合い、お互いが次の動きを警戒している。
「―――」
『!?』
次に動いたのはアンノウンだったが、二本の尻尾のブレードをズタズタの大型のハイエンドに突き刺し御影先生と柊木先生を目掛けて投げる。
『クソ…!?』
『くっ…!?』
いくら先生たちと言えど質量に圧倒され、少し後ずさる。
その隙を逃さず、アンノウンは先生たちに襲いかかると思われたが…違う。
「―――」
「こっちに…!」
御影先生を無視して、こちらに向かってきた。
射撃部隊が一斉射撃を行うが一発も当たらず距離を詰められてしまう。
「はあっ!!」
そこへ、アイヴィーが聖剣を握りしめて突撃し、攻撃を仕掛ける。
――ガキィンッ!!
だがその攻撃は爪で防がれ、そのまま懐に入られた瞬間アイヴィーを上に蹴り飛ばし、蹴り飛ばしたアイヴィーのAGの足を掴んでフレヤに向かって投げた。
『アイヴィー!きゃあっ!?』
『がはっ!?』
二人は衝突し、落ちていく。
『アナスタシア!』
『分かっている!』
今度はアナスタシアとレベッカの連携。
隙の無い斬撃、隙の無い射撃の連続、だが。
「―――」
『嘘!?』
『何だと!?』
アンノウンはその連携を知っているかの如く、避け続けた。
射撃や斬撃は掠りもしない。
「―――」
『くぅっ!?』
『レベッカ!コイツ…!』
「―――」
次はアンノウンがレベッカを目掛けて尻尾のブレードを射出する。
レベッカは急いでアサルトライフルをシールドに換装し、防ぐ。
本当にギリギリ防げたが、衝撃を完全に受け流せず後ずさる。
そこへアナスタシアのナイフの斬撃がアンノウンを襲うが。
「―――」
『!?』
ナイフを握る両の腕のアームを握られ、攻撃をすることが出来なかった。
「―――」
「やらせるかッ!!」
尻尾にブレードがアナスタシアに向いた瞬間、私は白露と村雨でアンノウン目掛けて斬りかかるが、躱される。
そこへ。
「水津ちゃん!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
雪華さんの氷結界でアンノウンの足を凍らせて、動きを封じた瞬間、水津のミストバスターのパイルバンカーが胴体を捉え、貫く。
「―――!」
アンノウンは吹き飛ばされ、大橋を転がっていく。
「アナスタシア、大丈夫か!?」
「大丈夫だ、大した外傷はない」
「良かった…」
「…おかしい」
「どうしたの水津ちゃん?」
アンノウンを貫いた水津がおかしいと呟く。
「手ごたえが…おかしかった」
「何だと?だが確実に」
「うん…確実に捉えたはずなのに…何というか装甲が何枚も重ねられているような」
――キュルルルル…!
転がっていったアンノウンは何かの音を響かせながら立ち上がる。
すると。
――バキンッ!!
「装甲が…!?」
全身の装甲が一気に剥がれて、空に舞う。
中心にはAGを纏っていない普通の人間くらいの大きさのハイエンドがいて、それを中心にしてアンノウンは新しい形を形成する。
その形は何処か見覚えがあった。
緑色と黒色の装甲に、二枚の浮遊シールドとジェット機構。
AG並のスナイパーライフルを握りしめ、私たちを見下ろしていた。
あのハイエンド…違う、あの機体は…!
「ス、スプライト!?」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




