第89話 日没
ギリギリ…葵と青葉の間に割って入れた。
本当、間一髪!
「九条春斗…」
「青葉、会いたかった…よ!」
「タービュランスたちは?」
「さぁ?その代わりに…俺の道を塞いできたハイエンドたち切り刻んで来たからな!」
二本の魔剣と篝火が火花を散らし、ぶつかり合う。
「青葉…お前の真意を教えてくれ」
「…今は無理」
「そうか…!」
お互いに剣を弾き、距離を取る。
「お前が戦うことはよく分かった。なら俺はお前を止める、いいな?」
「やれるものなら」
「なら、遠慮なく行くぞ!」
『援護します!』
椿の援護射撃と共に青葉に向かって突撃する。
あの龍の頭からの火炎放射を回避しつつ接近し、篝火に赫蝶を纏わせ、横に振り抜きつつ一閃。
連続で攻撃はしない、的確にヒット&アウェイだ。
『ダメージ確認。青葉、大丈夫ですか?』
「大丈夫。本当…脅威ですね、九条春斗」
青葉と正面から向き合い、構える。
先程の斬撃はアジ・ダハーカの横っ腹辺りの装甲を切り裂いたがすぐさま再生している。
恐らくだけど、AGの力だけじゃなくてハイエンドの力も備わっていると思う。
だが、斬撃が通ったということはシールドエネルギーは無いのか?
…いや深く考えるのはよそう。
水津のミストバスターの様子と葵のAGの状態を見れば一目瞭然、七機でも青葉には敵わなかったという事だ。
だからといって逃げる理由にはならない、俺は青葉を止める。
「…!」
今度は青葉から仕掛けてきた!
正面から防いだところで押し負ける可能性がある。
回避に集中しろ!
青葉の二本の魔剣の舞をかわしつつ、納刀し…。
「!」
一瞬の隙が見えた瞬間、上に切り上げながら抜刀。
すぐさまバックステップし、距離を離すが。
『ゴアァァァッ…!』
「マジか…!?」
想像以上に4つ首の龍の火炎放射のチャージが早い!
こうなればこっちも放つしかねぇだろ。
左腕に力を込めて…!
「劫火よ!」
赤い炎と緑の炎がぶつかり合う。
すると
――パキッ…!
「ぐぅっ!?」
左腕に激痛が走る。
今、見えないが…レフトアームの中にある俺の左腕にヒビが入った。
『春斗!?ヒビが…!』
それは椿も理解してる。循環の影響が今、俺の左腕に起き始めた。
なんて、タイミングだよ…!?
「クソ…!?」
「九条春斗…?まさか!?」
何故そこで青葉が驚く…!?
緑の炎が止まり、俺も激痛のあまり劫火を一度止めて離れる。
「春斗、どうした!?」
「何でも…ない!」
復帰した葵がすぐさま俺の方に飛んできた。
これを…話すわけには、いかない。
「いいから止めるぞ、青葉を!」
「あぁ…!」
いつの間にか俺の周りに皆が集まっていた。
俺の腕なんぞ…どうでもいい!
ここは戦場なんだ。
「九条春斗…!」
…青葉の顔が焦り始めた?
先程までの落ち着いた表情と打って変わり明らかに顔色がおかしいぞ。
何故このタイミングで…?
「行きますわよ、アイヴィー!」
「はい!」
フレヤとアイヴィーが青葉に攻撃を仕掛けたと同時に、他のみんなもそれに続く。
俺も…いかないと!
激痛に耐えながら、右手で篝火を握りしめて突撃する。
抜刀術は使えない…激痛のあまりとてもじゃないが鞘を握ることが出来ない。
「うおぉぉぉぉぉっ!!!」
皆の攻撃を防ぎ、受け流し、弾き返した青葉に対して篝火の大ぶりの振り下ろし。
火花を散らし、青葉は魔剣で防ぐ。
すると
「九条春斗…もう、戦わないでください…!」
「何を言って…?」
お互いに鍔迫り合いをしていると青葉が小声で話し始めた。
「今なら…!お願いです、これ以上戦わないでください…!」
明らかに様子がおかしい。
今の様子は…あの『ごめんね』と謝った時の様子に似ている。
「貴方には…死んでほしくないんです…!椿お姉ちゃんの為にも、貴方の存在が必要なんです…!」
「!」
「訪れる未来のために、貴方は必要なんです!」
俺が、必要?椿や未来の為に?
「本当にお前は…何がしたいんだ…!」
「…細かく話せば、聞かれてしまいます…」
「聞かれる…?誰にだ!?」
話しながらも鍔迫り合いの真っ最中。
一歩も譲れない。
「この変革の…!」
――元凶に!
「!!!」
その元凶という単語が聞こえた瞬間、青葉に吹き飛ばされ壁に激突する。
「がはっ!?」
「春斗!!」
背中から抜ける衝撃の強さがあまりにも強く、操縦者保護機能とシールドエネルギーを貫通したのか俺の口いっぱいに鉄の味が広がり、吐血する。
「ゴホッゴホッ!?」
床に這いつくばりながらも青葉の方を見る。
「…無様ですね」
…様子が変わった?
何だ?一体、青葉は何をしているんだ?
それに『元凶』っていったよな。
まさか、変革を訪れさせようとしたのは青葉ではないのか!?ということは、青葉を止めても変革は止まらない…?
それを何故俺に明かした?
いや待てよ…元凶が青葉ではないということを他の人にも明かせばそもそもこの戦い自体が終わるはずだ。
青葉が告げればこの戦い自体の意味が無くなる。
でもそれをしない…いったい何を考えてんだ…!?
『青葉、時間がありません。本当はやりたくありませんが…アレをしましょう』
「…えぇ」
すると、青葉の魔剣が緑色の蝶、翠蝶となって俺の方に飛んでくる。
そして左腕についた瞬間。
「があぁぁぁぁぁぁぃッ!?!!?」
今も続いている激痛よりも更に痛い痛みが左腕から流れてくる。
痛い痛い痛い!?う、腕が…!?内側からねじ切られそうだ…!?
「春斗!?」
「貴様…春斗に何をしたッ!!」
「私に構っている場合ですか?」
「!」
「…私を早く倒さなければ、九条春斗は死にますよ」
「貴様だけは…殺すッ!!」
「同感…!」
自分の消えかけている意識を何とかつなぎとめる。
眠るな俺!ここで寝たら本当にヤバいぞ!
だがそれ以上にマズいのは俺の身体の方か!
レフトアームのみ部分解除を行うと、俺の左腕には緑色のヒビが腕全体に広がっており、もう少しで肩にたどり着きそうな勢いだった。
たかが片腕だけと思っていたが、循環が本当にヤバいモノだと後悔する。
今、俺は激痛に蝕まれ意識が消えかけているが、身体は今までにないくらい生き生きとしている。
今すぐにでも立ち上がって、青葉に襲いかかることが出来るくらいの活力はあるが…身体が言う事を聞かない。
「葵さん!」
「春斗の…仇!!」
「無駄です!」
「がっ!?」
「水津さん!」
「人の心配をしている場合ですか?」
「なっ!?きゃっ!?」
「フレヤ様!!」
皆が戦ってる…!
一方的に連携も、培ってきた力も、何もかもが正面から崩されていく…。
今の俺には何もできないのか…!?
『あの時』と同じように動けないのか!?
「ク…ソが!」
『春斗!無理に立ち上がらないでください!このまま参戦しても…貴方の身が』
「分かってる…!」
左腕はピクリとも動かない。全身が激痛を感じ、麻痺しているのか知らんが身体が動かず、指先1つも動かすことが出来ない。
(動け…動けよ…!)
こんなところで寝てる場合じゃないだろ俺!!
皆が、戦ってるんだ!皆が、世界を守るために戦ってるんだ!
俺は指をくわえて高みの見物か!?
結局何一つ守れず、ここで見てるだけか!?
違うだろ…!!!
(もう二度と…失いたくない…!)
守るために戦ってきたんだろ!?
家族を、友を、親の意志を…守るために!
――守レ
◇◇◇
『嘘…全滅…!?』
管制室で八機対一機の戦いを見ていた柊木、御影、吾郷。
そのあまりにも強すぎる相手のスペックに驚愕する。
AGとはこの世界の最強の存在。
その最強が八機が1つの対象を狙って攻撃を開始した。
普通はただでは済まない。AGが一機あれば軍事基地も完全に破壊できるとも言われている。
にもかかわらず、あのHAGは八機を圧倒した。
完膚なきまでに。
「ぐ…ぁ…」
「こんなことが…あり得ます…の…?」
「僕たちの力が…」
「及ばないだと…!?」
「あり…得ない…」
「はぁ…はぁ…!?」
「…くっ!?」
今、立っているのは雪華と葵のみ。
全AGは装甲にヒビが入り、操縦者全員の肉体に切り傷やレーザーによる火傷痕のようなものが付いている。
そしてAGのヘルスエネルギーも残りわずか。
『大丈夫か!?』
「御影先生…正直、マズいです…」
雪華には珍しい弱音。
この学園最強ですらコイツには敵わないと分かるほどの圧倒的な個の暴力。
一騎当千、天下無双、百戦錬磨、万夫不当、完全無欠。
天上天下唯我独尊。
このアジ・ダハーカ・ラグナロクという破滅の龍に対抗するAGは、この場には存在しない。
『撤退を…!』
「この状況じゃ…」
『クソ…!何故私を行かせなかった…ッ!!』
マイクは御影先生が机に拳を叩きつけた音を拾った。
「…そろそろ終わりにしましょうか」
倒れた者、あるいは満身創痍のまままだ戦う意思を見せる者に対して蔑んだ眼を向ける青葉。
『承諾。アジ・ダハーカ・ラグナロク、専用アビリティアンロック…完了』
――乙女たちに、終が訪れようとしていた。
「障害は――排除…しなければならない…!」
青葉の二本の魔剣が一本の魔剣となり、その魔剣に4つ首の龍たちが炎を纏わせながら魔剣と一体化していく。
やがてその魔剣は本来の姿を現した。
HAGよりも大きい刀身を持ち、緑色の炎が周囲に露出し、禍々しい龍のような装飾に加え、元々付いていたツルのような棘は更に刺々しくなり…その刃を7人の少女に向けた。
「ここで終わりにします。せめて、聞きます…最期に言い残すことは」
…誰も話さない。
むしろ話せない。目の前から迫りくる最期に対して口が開けない。
「無し、ですか…では」
「殺します」
その声とともに魔剣の先に緑色の炎と翠蝶達が集まっていく。
最期の手向け。
(春斗…)
ピクリとも動かなくなった春斗を見る、葵。
(今までありがとう、あの時…私を守ってくれてありがとう)
思いにふける葵。
今、この状況ではこれくらいしかできない。
(感謝しかない。ずっと一緒に居たかったけど…ここまでのようだ)
チャージされていく魔剣を見て、思う。
(…ただ1つ、後悔がある。それは…)
「専用アビリティ解放…『虚無』ッ!!」
7人に向けて放たれる全てを消し去る緑色の斬撃波。
迫りくる『終』。
(――春斗。お前に…好きだと伝えたかったな)
しかし…その終は。
――少女たちには届かなかった。
何故か。
「ぐぅぅぅっ!!!がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「春斗!?」
「春斗君!?」
「春斗さん!?」
『終』を止めるために立ち上がり、守るために動き出し、助けるために『終』を代わりに受け止めたモノが居たからだ。
暁光来光の状態のまま篝火を横に構え、刃に左手を添えて虚無をその場で受け止める。
「うぐぅぅぅぅっ!!!?」
受け止めることはできたが、その顔は明らかに辛そうだった。
AGのシールドエネルギーはもう無いが、立ち上がれるほどの気力と根性、そして想いが彼にはあった。
もう二度と人を失いたくない。
守る為に彼は自分の身体に鞭を打って起き上がった。
その先がどれほどの地獄であろうとも。
「雪華…さん!葵…!みんなを運んで早く…離れろッ!!」
「何言ってるの!?このままじゃ春斗君が…」
「俺のことは良いです!!良いから早く逃げろ!!」
「春斗…!」
「葵…頼むッ!!」
徐々にヒビが入っていく、左腕と焔、そして『篝火』。
そして九条春斗の肉体にもダメージを与えていく。
(せめて…皆を…!!)
足を地面につけ、踏ん張り虚無を少女たちの元へ行かせないようにする。
「がぁぁぁぁぁ!!!」
循環の影響か左目から血涙し始めた春斗。
『春斗…』
そんな春斗に話しかける椿。
『私の力を使っても…もう、防ぎきれません。このままでは…』
所謂助からない、ということは春斗に報告する椿。
そんな春斗の回答は。
(すまなかった)
『え…?』
謝罪だった。
(確実に俺はここで死ぬ。だから謝る。約束を守れないで、こんな宿主ですまなかった)
『…!』
(俺が…もう少し強ければ、守れたならこんなことにはならなかった…だから)
(――ごめんな)
――パキッ…!
「春斗!全員の避難が完了した!早くお前も逃げ」
――カァァァァァンッ!!!
「…え」
虚無が春斗を襲った。
全てを無に帰す斬撃波が春斗を襲った。
「は、春斗ぉぉぉぉぉッ!!!」
葵の叫びと共に晴れていく爆煙。
そして7人の少女たちの視界に広がる『結果』。
「―――」
少年は立っていた。
焔が粉々になろうとも、篝火が折れていようとも立っていた。
だが…肉体は、左腕、左目を失い。
――ドサッ。
篝火の折れた刃先が地面に突き刺さったと同時に、地に倒れこんだ。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




