第88話 破滅の龍 HAG『アジ・ダハーカ・ラグナロク』
「お話は済んだかしら?」
「あぁ、お前たちを青葉の元には行かせない。ここで倒す」
「あら、元々行く気はないわよ?例え青葉さんとそちらの皆が戦ったとしても、ね」
「どういう意味だ」
「九条春斗君以外じゃ勝てないって事よ」
俺以外じゃ勝てない?
それってどういう…。
「それとね、九条春斗君」
「…」
「先に言っておくけど私たちが戦う理由はもう無いわ」
「は?」
「これから私たちは復讐を始めるの」
するとタービュランス全員、AGを待機状態にした。
本当に戦わないのか?
「ストリームのか?」
「えぇ。その為にも、貴方たちに制御室を明け渡す必要があったのよ」
「…なら何故俺だけを足止めした」
「演出しないといけないでしょ?私たちタービュランスは貴方たちの為に戦っていると」
「!?」
じゃあ…わざとか?
思えばそうだ…椿曰くこの付近にハイエンドは居ないといっていた。
もしかして、本当に俺をここに抑えるというのを演出するために…?
それと、貴方たちの為に戦っている?
ハイエンドで知っているのは青葉だけだ。まさか他にもいるのか?
「それじゃあね、九条春斗君。先に言っておくけど貴方との縁はまだ切れてないから」
「…」
そうして俺は静かに歩いていく三人を見送った。
…何でハリケーンは俺に投げキッスしたんだ?
「戦わないならそれでいいが」
『春斗、大変です』
「どうした?」
『ハイエンドたちが先程の戦いの音に気が付いたのか、こちらに向かってきています』
「…」
山あり谷ありだな。
タービュランスの次はハイエンドたちか。
さっきの人型じゃなくて、獣。しかも…何処かで見たことあるやつらだな。
「狼に鴉、か」
あの時と同じだ。
青葉と初めて接触した時に遭遇したハイエンド。
「グルルル…」
「キュルル…」
「…」
こいつらをさっさと倒して皆の元へ行かないとならない。
そして、聞く。
(真意を…!)
篝火の鞘に左手を添えて、柄に右手をかける。
ここで止まるわけにはいかないんだよ。
「退いてもらおうかッ!!」
インパクトブーストで狼と鴉に接近し、抜刀。
火花を散らしながら二回戦が始まった。
◇◇◇
「やぁぁぁぁっ!!」
重く、分厚い扉を水津のミストバスターのチェーンソーで切り裂き、中に突入していく七機のAG。
その場所は先程の制御室よりも広く、丸い空間が広がっており7人の少女の先に緑色の管と中心に鎮座する緑色のオーラを放つ球体がそこにいた。
「来ましたね」
「青葉…さん」
そしてその球体の下で振り向く、この変革の元凶と思われる人物。
青葉がそこに居た。
「…九条春斗とお姉ちゃんは居ないんですか?」
「タービュランスと戦っているわ」
「そう…それで?貴方たちがここに来たということは、私と戦うと?」
青葉がそういいながら7人の方へ向き直し、歩き出す。
「…いいえ、違うわ」
「違う?」
「ッ…春斗君のお願いを果たすために、まずは聞かせてほしいの」
異様、謎の圧力が7人を襲うがそれにひるまず雪華は話し始める。
「何故…こんなことをしたの」
「こんなことですか?言ったはずです、この世界には変革が必要」
「違うわ…と春斗君ならそういうでしょうね」
「…」
「貴方、本当は何か別の計画があるんでしょう?」
雪華がそう問いかけると青葉の歩いていた足がピタリと止まる。
「…貴方たちに何がわかるの?」
「えぇ、分からないわ。でも…助けになるはずよ」
「いいえ、絶対になりません」
「どうしてそう言い切れるの?」
「そう言い切れる十分の理由があるからです」
「…」
「…ここに来た人が九条春斗なら良かったのに」
「何故春斗君にこだわるのかしら」
「あの人だけが…私達の過去を知っているからです」
青葉の目線が鋭くなる。
「過去も知らないような貴方たちに真意を話せと?無理に決まっているでしょう、信用も何もない人間に」
「…」
「それに私の計画には九条春斗が必要なんです。そして確実に言えることがあります」
そうして青葉は二本の『魔剣』を握る。
「貴方たちIGD学園は私の作戦において邪魔にしかならない。ならその学園の主力がここに集結しているのであれば…ここで消し去ります」
「…戦うのね」
「はい」
「ごめんね、春斗君…全員戦闘態勢!」
7機のAGが構える。
それと同時に雪華は少し後悔をした。もしこの場に春斗が居たのならと。
青葉が春斗にこだわる理由は『私たちには計りしえない理由がある』のだと理解し、後悔した。
だがそうも言ってられない。これは戦い、戦争だ。
勝つか負けるしか存在しない。
「mother」
『はい、サポートします』
「HAG『アジ・ダハーカ・ラグナロク』」
青葉を緑色の閃光と黒色の装甲が包み込む。
初めて装備した時と同じようなAGの形状になるが…違う。
更に閃光と装甲やその他の部位が形成されて行き…アジ・ダハーカの本来の姿を7人に見せた。
緑色の閃光、黒色の装甲だが淡く緑色の浸食痕が残り、浮遊ジェットは2つから4つに増え、二本あった龍の頭のような武装は4つの龍の頭となりより禍々しさを演出する。
そして、青葉のAGに握られている二本の魔剣。
その魔剣には見覚えがあった。
(あれって…春斗の…!?)
そう、春斗が使っていた魔剣にそっくりだった。
違う部位として春斗の使う魔剣は刃が赤く、人並みの刀身を持っていたが…青葉の持つ魔剣は二本あり、緑色の刀身を持ち、刺々しいツルのような装飾が付けられていた。
「嘘…こんな出力って…!?」
「どうした水津!」
「対象…HAGアジ・ダハーカ・ラグナロク…今までのAGよりも別格な力を持ってる」
「流石、情報収集が早いようですね」
いつものAGとは一回りも二回りも性能差がある。
かつて戦ったゼフィルス以上の出力。はっきり言ってスペックが違いすぎる。
アーマー・ギアを越えた、ハイ・アーマー・ギア。
それが目の前にいるこの『アジ・ダハーカ・ラグナロク』。
「いえ…ここで怖気づいている場合ではありませんわ」
「フレア様のいう通りです!」
フレヤとアイヴィーは怖気づく仲間たちを鼓舞する。
この場で負けてはならない。
「よく立ち向かえますね。九条春斗の影響でしょうか?」
「…」
「…本当に、何者なんでしょうかね。彼は」
『青葉、戦闘を開始してください。そろそろ見始める頃合いかと』
「分かった」
「見始める…?」
青葉は二本の魔剣の刃を同じ方向に向けて構える。
するとその刃に緑色の蝶たちが集まっていく…。
そして
「消えろッ!!」
――ザキュウゥゥゥゥンッ!!!
七機目掛けて緑色の斬撃波が放たれる。
「避けて!!」
レベッカの声に反応し、各々がその斬撃波から逃れるために散開する。
全員が斬撃波から逃れることが出来たが…驚くべき点はそこではない。
威力。
「何て威力ですの…!?」
緑色の斬撃はキャッスルの壁に巨大な二本の爪痕をくっきりと残した。
全員、春斗の魔剣の威力を知っているからこそ感じている。
青葉の操る魔剣は春斗のよりも強く、一撃一撃が即死に繋がる攻撃と判断した。
「「はぁっ!!」」
先程の斬撃波に臆することもなく葵、アイヴィーは二刀と聖剣で斬りかかるが…。
――ガキィン!
『ガァァァァッ!!』
「何ッ!?」
「くっ!?」
2つの龍によってその攻撃を防がれ、残りの2つの龍から緑色の炎が巻き散らされ、回避を余儀なくされた。
「何だ、コイツは!?」
「葵、大丈夫か!?」
「大丈夫だ…だが、どうする」
「アナスタシアさん、レベッカさん!」
「あぁ!」
「うん!」
近距離がきかないのなら今度は遠距離をしかけると互いの意図が伝わったのかアナスタシアのパンツァーカノーネ、レベッカの二丁のアサルトライフルの連射、フレヤのスターダストがアジ・ダハーカ・ラグナロクを襲うが。
「ふん!」
二本の魔剣の舞でレーザーは弾かれ、実弾は真っ二つに切断され弾としての機能を失い床に落ちた。
「この程度ですか?」
「ううん…!!」
「これなら…どう!!」
水津と雪華の水結界と氷結界の合わせ技。
アジ・ダハーカ・ラグナロクの周りを凍らせていき、チェーンソーとメイスでの攻撃を仕掛ける。
しかし。
「貴方たちの氷じゃ、私の炎を止められない!!」
「きゃあっ!?」
「水津ちゃん!」
完全に機体が凍りつく前に4つの龍の頭が回転しながら凍結していった部分を炎で燃やし、青葉本人が魔剣でミストバスターを切り刻み、チェーンソーはバラバラになった。
「なんて…斬撃…!」
『貴方たちでは勝てません』
「くっ…!」
たった一度の衝突ですら力の差を青葉に分からされる。
圧倒的、無謀。
「…では私からも仕掛けましょうか!」
青葉は魔剣を用いて襲いかかる。
「フレヤ様!」
その二本の魔剣を一本の聖剣が受け止める。
「なんだ…その力…!」
アイヴィーの両腕に力がより一層入る。
かつての黒龍の拳を受け止めていたくらいの衝撃が全身に伝わっていく。
「…甘いですね、この程度では」
魔剣を受け止めるアイヴィーに4つの龍の頭が伸びて、口元から少しずつ緑色の炎が溢れ出していく。
「アイヴィー!」
それにいち早く気が付いたフレヤがビットとスターダストを龍の頭目掛けて発射し、爆煙に包まれた瞬間、アイヴィーを引っ張り脱出した。
「…連携ですか、良いですね」
「すみません、フレヤ様」
「いいですわ…しかし」
「はい…」
爆煙を振り払う青葉。
異端、異様な存在。春斗以上の化け物は今、目の前に存在する。
とてもAGでは敵うような相手ではない。
この世界の最強の力をもってしても、今まで学んできた連携をもってしても、この終に勝つことは出来ないのだと7人の乙女は感じる。
だが…諦めない。
「うぉぉぉぉっ!!」
「…!」
防戦一方の状態から一転、葵は単騎で突撃する。
村雨、白露をアジ・ダハーカ・ラグナロク目掛けて振り下ろすが、一本の魔剣により刃を防がれてしまった。
「無駄です」
「があっ!?」
魔剣で刀を弾かれ、斬撃の雨が葵を襲う。
そしてそのまま吹き飛ばされ、壁に激突。
「葵っ!!」
「貴様…!」
アナスタシアが怒りを露わにし、ナイフを構え突撃する。
それに反応したレベッカはアナスタシアの突撃に合わせ、ショットガンで射撃しつつ共に近づいていく。
「はっ!」
目にも止まらないナイフと魔剣の攻防戦。残るのは金属と金属がぶつかり合う音と散る火花。それに合わせるレベッカのショットガンとパイルバンカー。
だが…。
「流石の連携だと思います」
「嘘!?」
「何だと!?」
二本のナイフを魔剣で受け止め、もう片方の手で刺突したパイルバンカーの杭を素手で受け止めた青葉。
ギリギリと火花と拮抗する力勝負。
もちろん、勝つのはアジダハーカの方だと理解した水津、雪華は攻撃を仕掛ける。
メイスに氷を纏わせ、バラバラになったチェーンソーを換装し、パイルバンカーに切り替えて攻撃するが。
「これでもダメなの…!?」
「何てAG…!」
龍の頭によって二人の攻撃も受け止められてしまう。
「ごほっ…!?」
「7対1でも私には勝てませんよ。さて…そろそろ、一人」
――終わらせるとしましょう。
その発言と共に四機の鍔迫り合いを無理やり終わらせたアジ・ダハーカ・ラグナロクは黒色と緑色の残像を残し、消える。
消えた先には、丁度立ち上がろうとしていた葵と飛脚が。
「葵さん後ろッ!!」
「な」
葵の目の前に広がる魔剣。
徐々に迫りくる刃。
(間に合わない…!?)
村雨、白露で防ごうとするが…間に合わないと理解する葵。
(すまない、春斗…お前に話を…)
心の中で謝りながら死を覚悟する。
――ガキィンッ!!
「…?」
魔剣の刃が葵に振り下ろされることはなかった。
代わりに目の前に広がる焔と赤色と橙色の装甲。4つの浮遊ジェットと火の輪。
誰もが知る、その背中。
「――間に合った…ようだなッ!!」
「ッ…!春斗!!」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
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超絶不定期更新ですがご了承ください…




