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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
89/122

第87話 晴れのち嵐

「はぁぁぁッ!!」

「早いだけじゃねぇ!?何てパワーだ!おい、ハリケーン!援護寄こせ!」

「ちょっとダーリン!私も狙ってよ!」

「言われなくとも!!やってやるよぉぉぉ!!」


常にフルブーストで、パワーエネルギーの消費なんてものは頭から捨て攻撃し続ける。

ダメージは受けやすいが、攻撃し続ければエネルギー吸収が出来るので、回避&攻撃!


「あらあら、そんなストレートな攻撃じゃ当たらないわよ…!」


確かに分かりやすいパンチやらキックやらをしても回避されちゃ意味がない。

なら、あえて動きを変える。

サイクロンはアックスでの大ぶりの攻撃が多かったので、俺もカウンターや後隙を狙って攻撃すればエネルギーを吸収しつつ、ダメージを与えられる。

逆にハリケーンは接近すればこっちのもの。放たれるレーザーに意識を割きつつ的確な攻撃を仕掛ければいい。

テンペスタなら…


――ガキィン!


「…やるわね」

「あまり…女性を蹴りたくないんだけどな!」


あえて大ぶりの右ストレートをテンペスタに向けて放つが、当たらない。

先に言っておくが当てるつもりはなかったぞ、当たったらいいなくらいでやった。

本命は俺の左足の後ろ回し蹴り。右ストレートを囮にしてその際に生じた身体のひねりの力を左足に集中させて、蹴るが防がれた。

でも完全に読み切ったというわけじゃ無いようだ。

テンペスタになら攻撃の後の繋ぎや、フェイントを織り交ぜ完全に読み切られない攻撃を仕掛けることにしよう。

俺の足に装着されたレッグダガーとテンペスタの腕に装着されたレーザーカッターがぶつかり合い火花が散る。


「九条春斗君…君をタービュランスに入社させておくべきだったと後悔してるわ…!」

「返答なんぞ、分かり切ってるだろ…!」

「そうかもしれなくとも…ね!」

「オラァッ!!」


テンペスタと俺の鍔迫り合いにサイクロンのアックスが割って入り大ぶりの振り下ろしをしてくるが、クローで横に受け流し溝辺りを蹴り飛ばし後ろに下がる。

そこにハリケーンのレーザーの雨が降り注ぐが


『複製、シールド!』


何も言わなくても椿が理解してくれる。

目の前に赫蝶が集まりシールドが展開され、レーザーを防ぐ。

俺と椿の連携の賜物だ。


「流っ石ダーリン!一筋縄では行かないね♡」

「おい!女性は蹴らないんじゃなかったのかよ!」

「お前たちは敵だろうが!」


ツッコミつつサイクロンのアックスを回避し、時にクローで受け流しつつカウンターで腹目掛けてパンチするが。


――ドシュウゥゥン…。


クローはテンペスタのバリアのせいでサイクロンのAGには届かなかった。

クールタイムの方が早かったみたいだ。もう少し…早く!


「やぁっ!!」


死角からのハリケーンのソードを右足の回し蹴りで防ぐ。

…勘で行ったがギリギリセーフ。


『春斗!テンペスタから高エネルギー反応!』

「!」


椿からの忠告を受け、テンペスタの方を見ると両腕に装備されたスコール・ヴィオレントのレーザーライフルのバレルに粒子が集まり始めている。

流石にこのまま受けるわけにはいかないので、ハリケーンのソードを受け止めた右足をそのまま自分の身体に引き寄せハリケーン目掛けて前蹴り。


「がっ!?」


前蹴りをもろに受けたハリケーンのバランスが崩れ、俺から離れたことを確認した瞬間、テンペスタ目掛けてインパクトブースト。何も話さなくとも椿には伝わるはずだと信じて。


『複製、シールド及びビット!』


やはり通じた。共に訓練を重ね、連携を身に着けた成果が出てきている。

正面からテンペスタに接近する俺の前にシールドが展開し、横からビットが飛び出してテンペスタ目掛けて一斉射撃。


「本当…厄介極まりないわね!!」

「テンペスタッ!」


しかし間にサイクロンが入り、ビットの射撃は風のシールドによって方向を捻じ曲げられ壁に着弾し、アックスにビットを全て破壊されてしまった。

だが、このままいくぞ!


「うおぉぉぉぉぉっ!!!」

「チッ!」


下から顎にかけてのアッパー。

サイクロンにアックスで防がれるが、間髪入れず逆の腕で顔面目掛けてのパンチ。


「ぐっ!?だが、効かねぇなぁ!!」

「!?」


殴りぬくが、ひるまない!?

驚きつつもサイクロンのアックスの振り下ろしをステップで回避すると。


「今度は私の番だよ!」

「ハリケーン…!」

「風穴だらけにしてあげるッ♡」


ハリケーンの方からのレーザーの雨。


「こっちも…よ!」


そして真後ろからのテンペスタのレーザー。


『春斗!』

「両腕にシールド展開!」

『はい!』


レーザークローを装備したまま、両腕にシールドを生成し構える。

正面からレーザーを受け止めるのではなく、斜めに防ぐ。そうすれば衝撃を正面から受けることはなく、レーザーは横に受け流せる。

だがそうも言ってられない、ハリケーンの専用アビリティの影響で何処からレーザーが俺に着弾するかわからない。

なら…!


「!」


テンペスタの放ったレーザーを上に受け流し、天井に着弾したことを確認しすぐさま上に飛び、舞い上がった爆煙に突入し煙を周囲に振りまく為に天井に正拳突き。

天井にヒビが入り、砂煙のようなものと一緒に割れた天井の瓦礫が下へ落ちていく。


「…」

「クソ、これじゃ見えねぇ!」

「ダーリン、何処行ったの!?」


砂煙の中で待機する。


『どうします、春斗…』

「流石に制御室には向かえない。仮に逃走しようとしても追いつかれる、あるいは制御室で混戦になる可能性もある。なら…俺がここで戦い続けるしかないだろう」

『でも…!』

「分かってる。だが俺たちが向かうべき場所は制御室ではなくコア区画、制御室の攻略は皆に任せるしかない」

『…』

「でもいい点はある。制御室にタービュランスは現れない、この場にいるからな」


俺がタービュランスを引き付けている間に頼むぞ…皆!


◇◇◇


管制室。


「春斗君以外が集まったわね…」


管制室に突入した面々。

見知った顔があるが…一人、この場にいない。

そう、春斗だ。

現在春斗はタービュランスと戦闘中。

そして現在キャッスル全体にジャミングが起きている為、外部との通信ができない。

もちろん春斗との通信も出来ない為、春斗がこの場にいない理由は7人とも分かっていない。


「春斗…」

「心配している場合じゃないわ。水津ちゃん、ハッキングで制御端末にアクセス出来る?」

「やってみる…!」


水津が制御室の制御端末にアクセスする。


「私たちはどういたしましょうか」

「とにかく、警戒だ。こんな易々と制御端末を落とさせるほどハイエンドは愚かではない」

「アナスタシアのいう通りだよ、今は水津を待とう?」

「あぁ」


水津以外は周囲の警戒を行うことにした。

忘れてはならない、ここは敵の本拠地。どんなことをしてくるのかすら分からない。


「アクセス開始…それとここで制御できる物を全て展開…迎撃及び攻撃システムの停止を受理」

「どう?」

「迎撃システムや攻撃システムの無力化は出来るけど…キャッスル本体の制御はここじゃできないみたい」

「となれば…」

「これから目指すべき場所はコア区画…」

「うん…え、ちょっとまって」

「どうしたの水津ちゃん?」

「春斗がタービュランスと交戦中!」

「なに!?」


すぐさま制御室にあるモニターに監視カメラの映像を流す。

その先には、三体一で戦う春斗の姿が。


「ここにこれなかったのはタービュランスと戦闘中だったからか!」

「すぐに助けに…!」

「待ちなさい!」


すぐさま助けに行こうとしたアナスタシアとレベッカを静止したのは雪華。


「何故止める!」


アナスタシアは雪華に反論する。


「…今の春斗君には耐えてもらうしかないわ」

「何を言っている!そんなことをすれば」

「分かっているわ!…でもチャンスなのよ」

「チャンスだと…?」

「今、このキャッスルには主力と言えるタービュランスが一か所に固められているの。今のうちにコア区画でハイエンドの親玉を倒すべきよ」


雪華の説明は理にかなっていた。

青葉との戦闘で確実に障害になるのはタービュランスの三人。

ましては青葉の使うAGのようなものはスペックなどの情報は1つもない。

となれば七対一での短期決戦で青葉を攻撃する方が良いと考えた。


「…」


その説明にアナスタシアは苦虫を噛むような顔をする。

軍人としても分かっている。この状況なら春斗に一点にとどめてもらいその間にこの場にいるAG七機で倒した方が確実だと。

しかし…アナスタシアは春斗に好意を抱き、尚且つ恩がある。

この場で見捨てるには…それ相応の覚悟が必要だった。

だが、その覚悟を迫られていたのはアナスタシアだけではない。

葵、フレヤ、レベッカ、水津、アイヴィー、そして雪華本人。

それぞれの想いがある上で春斗を見捨てろ、と決断しなければならない。


――そこへ。


『迷っているな、小娘ども』

「み、御影先生!?」

「ジャミング取り除き、完了…通信回復!」


水津が制御端末にてジャミングも取り除き、IGD学園との通信が回復し双方の連絡が取れるようになった。


『よくやった、こちらからもキャッスルの攻撃が止んだことは確認している。これで本格的に救助に入ることが出来る…だが迷っているようだな』

「…」

『…少し待っていろ』


御影先生から待てと入り、少し待っていると。


『こちら九条!通信が回復したが何があった!?』

「春斗!」


そこに九条からの通信が入る。


『皆が制御室を制圧したようだ、そちらは?』

『現在タービュランスと戦闘中!』

『九条、頼みがある』

『何ですか御影先生!?』

『――これより九条を除いた残りの小娘たちでコア区画に向かう』


皆がいえないことを御影先生は春斗に話し始める。


『お前がハイエンドの青葉に話したいことがあるということは聞いている。だが、これは世界に関係する作戦だ。私情は、挟めない』

『…』

『そうして今、タービュランスを引き付けている九条にだからこそ頼みたい。タービュランスをそこに抑えろ、青葉との戦いに参戦させるな』

『…』

『…九条』

『皆、聞いてくれ。俺から頼みがある』


すると今度は春斗が皆に頼みがあると話し始めた。


『私情が挟めないのは十も承知だ、けど…青葉の話を聞いてあげて欲しい』


春斗は敵に対して話を聞いてほしいと祈願した。

突入している専用機持ちや、この通信をきいている御影、柊木、吾郷の三人は春斗が敵に対して容赦しないことを知っている。だが、今回は違う。

慈悲を持ち、戦わないでほしいと懇願しているようだ。


『あの子の過去を…俺は知った。酷く、惨いモノだった…正直二度と思い出したくもない。そんな子が…涙を流して俺に対してごめんねと謝ったんだ。絶対に何かがあるに決まってる』

『九条…私情は』

『わかってますよそんなことッ!!』

『ッ!?』

『でも…ッ!!あの子は絶対に自分の意志でこんなことをするとは思えない!』


春斗の叫び。

それは…この戦いの戦火を生みだした元凶と思われる子に対して慈悲を与えようとしている。


『どうか…頼む…!』


彼が本気で願う声が聞こえてくる。


「…わかったわ」


それを肯定したのは雪華だった。


『いいんですか…?』

「春斗君、君はどれだけ信用されていないって思われてるの?」

『…』

「私たちは君に助けられたお陰で今、この場にいるっていっても過言じゃないんだから」


少女たちは、春斗に助けられたお陰でこの場にいる。

もし春斗が決闘で助けるために手をさし伸ばさなければこの場には居られなかった。

もし春斗がいじめに立ち向かい手をさし伸ばさなければこの場には居られなかった。

もし春斗が過去の烙印を払拭するために戦わなければこの場には居られなかった。

もし春斗が母親と少女を助けるために戦わなければこの場には居られなかった。

もし春斗が教員から生徒を助けるために動かなければこの場には居られなかった。

もし春斗が光を遮られ闇に包まれかけた騎士を助けなければこの場には居られなかった。

もし春斗が自分を捨ててまで去った学校の為に動かなければこの場には居られなかった。

そんな七つの『もし』を彼は全て叶えた。

少女達、友人達、家族、困った人。

その全ての人たちに手を伸ばした。

手を伸ばしたおかげで、皆は陽の下で歩ける。

その『もし』が無ければどんなことになっていたのかは分からない。きっと酷いことになっていたのだろう。


「そうですわ、私も春斗さんの事を信頼していますもの」

「あぁ、昔からな」

「春斗のいう事だ、きっと何かしらあるんだろう」

「うん、僕も春斗に話を聞いてもらえたから無事だったからね」

「…信じる」

「私もだ。元は救うために春斗と刃を交えたが助けられたことに変わりはない」

「と、みんなこう言ってるから、ここはひとつ!お姉さんたちに任せなさい」

『みんな…』

「でも…相手が剣を抜くのなら例え春斗君のお願いであっても容赦はしないわ」

『…了解です』

『良いんだな、小娘ども』

「御影先生、この結論が出ていて再度確認するのも野暮じゃありませんか?」

『…そうだったな』

『タービュランスたちは俺に任せろ。倒すことが出来たらすぐに向かう』


◇◇◇


「…」

『いいんですか、春斗?』

「あぁ」


篝火を構えて、タービュランスたちを身構える。


「信頼している皆だからこそ、任せられる。赤の他人とかだったら頼めねぇよ」

『そうですね』

「…さて!」


燃える刀身をタービュランスたちに向ける。


「速戦即決で行こう!」


青葉の事は皆に任せる。

俺は今、俺が出来ることをする!

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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