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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
85/122

第83話 蝕まれた桜

翌日。

早朝、専用機持ち全員で水津製の武装のチェックを行っていた。


「…照準完了」

「約10km先の的を目掛けて射撃を。なおシールド強度、キャッスルのデータのマイナス2%」

「チャージ開始!」


フレヤのスプライトのアビリティであるアクセラレータと連結した迫撃砲『スターゲイザー』のバレルに稲妻が走る。


――キィィィィィン…!


「チャージ率20…40…60…75…」

「80%で射撃を」

「了解ですわ。80%チャージキープ、射撃します…!」


フレヤがトリガーを引いたと同時に稲妻と粒子が銃口に集まり…。


――ドキュゥゥゥン!!


超高速で撃たれた弾丸は稲妻を纏いながら的に向かって一直線。

そして…着弾。


「…シールド貫通。内部機器にダメージを確認」

「ふぅ…」

「二人ともお疲れ様」

「フレヤ、どう?照準のラグやズレとかはない?」

「全くありませんわ。むしろ狙いやすくて心地よいくらい」

「こ、心地いいのか?」

「えぇ。本来のAGでの射撃であれば浮遊しつつライフルを構えないといけないので」

「なるほどな」


俺にはない感覚だな。

二人に水の入ったペットボトルを手渡す。

対ハイエンド用質量投射砲こと『スターゲイザー』。

細かな仕組みとかはわからないが、質量弾を発射するためにアクセラレータの電撃と質量砲の雷撃を融合した雷電で火薬を誘発させ、爆風で発射。

速度、質量が合った射撃はいとも容易くシールドを貫く弾丸となる。


「春斗、『アンブレラ』は…どう?」

「最終チェック中だと思うし、そろそろ」


と言いかけたときに専用機持ち全員が入っているプライベートチャンネルからアナスタシアの声が聞こえてくる。


『春斗、スターゲイザーはどうだ?』

「大丈夫そう。そっちは?」

『完璧だ。水津の技術力ならば我がMS隊にも匹敵するだろう』

「だってよ」

「買いかぶりすぎ…」


矛であるスターゲイザー。そして盾であるエネルギー調和シールド『アンブレラ』。

アンブレラの作用は、受けたエネルギーの出力をシールド内で調和しかき消すというもの。

これならばキャッスルのリボルバー型のレーザー照射連装砲に耐えられるかもしれない。


「ではこれで完成ですの?」

「ある程度は…でもスターゲイザーは流石に1つしか出来ない」

「となればアンブレラの作成を最優先ですわね?」

「うん」

「スターゲイザーは?」

「今のところ修正点はないから、来る日が来るまでメンテナンスをする」

「分かりましたわ」


フレヤはスプライトを待機状態に戻した。


「じゃあこれから皆のもとに向かうか」

「そうですわね」

「うん…!」

『…春斗、よろしいですか?』

「?」


三人でアンブレラのチェックを行っている皆の元へ向かおうとしたが急に椿から話しかけられた。


「すまん二人とも、先に行っててくれ」

「どうしたの?」

「椿が俺に聞きたいことがあるみたいだ」

「椿さんが?」

「椿?」

「…はい。出来れば春斗と二人で話させてください」

「分かりましたわ。水津さん、皆さんの元へ参りましょうか」

「う、うん」


俺の身体から出現した椿が水津とフレヤに二人で話したいと言うと、何かを察したのかフレヤは水津と一緒に皆がいる所へ歩いていった。

二人が見えなくなり、椿に聞いた。


「それで…椿、どうしたんだ?」

「春斗。どうしても聞きたいことがあるんです、もし青葉と戦うことになったら…どうするつもりですか?」

「話を聞く」

「武力同士の戦いになった場合は…」

「無力化して、話を聞いてもらうしかない」

「…殺しは」

「するわけないだろ」


青葉を殺すわけにはいかない。

彼女の過去を知っているからこそだ。椿と青葉は自分たちの意思でこんな力を手に入れたわけじゃない。もっと巨大な悪が存在し、そいつらが力を無理やり与えた。


(それに…俺には)


俺にだけ向けられたメッセージ。


「…」

「春斗?」

「いや何でもない、聞きたいことはそれだけか?」

「はい。でも少し安心しました」

「もしかして俺、青葉を武力で制圧すると思われていたのか?」

「い、いや…春斗が優しいことはわかっています。ですが今まで歩んできた道の中で知っていることがありまして…」

「?」

「春斗って敵に容赦がないので、青葉もそこに含まれていたらどうしようと」

「含むわけないだろうが…」


ーーー


その後、皆と合流しアンブレラのチェックを行った。

どれも予定の基準を満たしていたので後はこれを生産するだけ。

まぁまぁシステムも複雑と言えば複雑なので量産には時間がかかるんじゃないか?と軽く水津に聞いたが


『大丈夫。マニピュレーターアームを自動化したから残りのアンブレラは全部自動生産。それに…今回試験してもらったのは自動生産してもらった物だから…』


何というか水津の凄さを改めて知ったよ。

自動生産の方も、水津が1から組み上げたものと遜色変わりない性能をしている。

…結局、攻略が難しいという所を水津一人で何とかなってしまったな。

後は来る日が来るまでにどれほど作れるのかにかかってくるとのこと。

ハイエンド達が世界に宣戦布告してからはハイエンドからの攻撃などは無いが…。

空を見上げるとあの空中要塞が居る。

現在、キャッスルは日本列島の中心にあって、真下に住んでいる人たちは既に避難している。

あんなのが真上に居る状態でまともに生活できるわけないだろ。


「…」


今はいつも通り授業を行っている。

正直、集中できない。多分他のみんなもそうだ。

これから何が起きるのか、これからの生活どうなるのか、家族たちの安否とか。

未来への不安が皆の中につまっていると思う。

…椿と青葉。

そしてその研究者の中に、父なのか分からないが血縁関係を持つ者が居たことは確かだ。

しかも強制的にとか、無理やりとかそういうわけでもなく率先して二人に実験をしていた。

…意味が分からねぇよ。

一人二人でもなく多くの子供たちの未来を奪っておいて、何様のつもりなんだ…!


――ボキッ!!


「あ」


怒りのあまり気が付いていなかったが、右手で握っていたペンを握りつぶしてしまった。

インクが零れて手に付着する。

…色々と最悪だ。

ティッシュで手に付着したインクをふき取り、粉々になったペンとティッシュを一か所に集める。


「…春斗、大丈夫?」


後ろからトントンと背中に触られた感触を感じ、後ろからレベッカに話しかけられた。


「大丈夫だ。すまんな、心配をかけて」

「大丈夫なら…良いんだけど」

「レベッカの方こそ大丈夫か?」

「…少しお母さんのことが心配。大丈夫って言ってたけどね」


流石のレベッカもお母さんのことが心配みたいだ。

気持ちはわかる。

俺も爺さんと婆さんの事が心配だ。正直、胸がはち切れそうなくらい。


『…九条春斗』

「!!?」


急に頭の中から声が聞こえてきた。

椿…じゃない。この声は青葉!?


『今――翠蝶――で話しかけています』

「…」


翠蝶…?

もしかしてあの緑色の蝶の事か?


『貴方の――答えを聞きたいです――どうですか?』

「…」


悪いが縦に首を振ることはできない。

俺にだけ向けられたメッセージの中に俺に対して問いかけたものがあった。

…それに答えることは今はできない。


『そうですか――私たちは諦めません――そろそろ計画を進めなければ』

「九条君?」

「…」

『ですので貴方には――通達します』


――明日、攻撃を開始します。


「はぁっ!?」

「え!?どうしたんですか九条君?」


明日…明日だと!?

あまりにも唐突な事に声を荒げ椅子から立ち上がってしまう。


『こちらも時間がありません――それと――代償が来ます』

「代償…?」

『貴方は――龍を倒すためにお姉ちゃんを使った――その代償が』

「…一体何を」


――九条君!後ろッ!!


と柊木先生が俺に声をかけたが遅かった。

後ろを振り向くとそこには緑色の蝶を纏った人がそこにいた、そう認識した瞬間俺の視界はぐらっと変わり教室の窓ガラスを破壊しながら外へ飛ばされた。


「があッ…!?」


AGもまともに展開できず衝撃が背中から全身に走る。


「ツばキぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「うぅっ…!?」


クソ…身体が動かねぇ!


『春斗…?春斗!?』


椿は今、目が覚め、俺の状況を見て驚いた声を上げた。


「前の…奴が来た」

『か、回避を!!』

「したいけど…衝撃を貰ったせいか身体が動かん…!」

『鎖で回避します!』


俺の右腕から鎖が伸びて、校舎に突き刺さると同時に鎖が一気に巻き取られ身体が中に浮き校舎の方へと飛んでいく。

だが、アイツの方が早かった。

宙に浮いた瞬間を狙ったのか分からないが俺の左足を掴み。


「がはっ!?」


そのまま地面に叩きつけた。

背中の衝撃で肺の空気が全部外に出た気がする。


「ツばキぃぃぃ!!!」

「がぁぁっぁ!!?」


俺を地面に押さえつけ、左腕に緑色の蝶が粒子となって入っていく。

前と…違う!?

前のアイツは俺の左腕を握りつぶそうとするくらいの怪力で変形させたのに今は違う。

俺に抵抗させず、とにかく左腕に緑色の蝶を粒子として入れているのか!?


――ドクンッ!


「はぁっ…!?」


いつの間にか緑色の蝶は全部俺の左腕の中に入った。

同時に心臓が跳ねる。


「ぐ…ぐぉぉぉぉ…ッ!?」


全身から力が溢れる…だがこれはダメだ!

本能的に理解できる、溢れる力が…抑えられない!

左腕から激痛が現れ始める。


『春斗!?』

「がぁぁぁぁあっ!!?」


右手で左腕を握り、抑えつけようとするが…ダメだ。

左手からヒビが入り始め、徐々に伸びていく。

左手…左前腕…肘窩と。

自壊、じゃない!俺の左腕の中に…何か別の物が存在するかのような感覚。


「九条!」


視界の端で御影先生がAGを纏いこちらに向かってくる。

それを認識した瞬間、俺の左腕から触手のようなものが生え始めてその触手から棘のようなものを作り出す。


(これって…!?)


あの時戦ったワームみたいな…。

その触手は地面に突き刺さり俺の身体を無理やり浮かせて御影先生の方へ飛ばす。

俺の指示ではピクリとも動かない左腕が勝手に動き始め、棘の生えた触手を纏い握りこぶしを握る。


「御影先生避けて!!」

「ッ?!」


俺の左腕が勝手に御影先生に拳を振り下ろす。

振り下ろした拳の先に風が吹きあがり、校庭に爪痕を残した。

地面を抉るように。


「止まれ…止まれ…!!」

「鎖よ!」


右手で左腕を握り、椿が鎖で左腕の触手諸共縛り付ける。

だが


――パァンッ!


鎖は跡形もなく壊されてしまった。


「九条!どうした!」

「力が…抑えれません…!」


心配そうに御影先生が俺に声を掛けてくるのが分かる。

こうなったら…!


「椿!魔剣で俺の左腕を切断しろ!!」

「えっ!?」

「無理やり止めるなら…それくらいしかないだろ!」

「ちょ、ちょっと待ってください!それは」

「これしかねぇんだよ!!」


何とか動かせる範疇で…左腕を前に出す。


「やれ!!」

「…出来ません」

「椿!?」

「私に任せてください!」


魔剣で切断するという提案を拒否した椿は赫蝶になり、俺の左腕に入っていく。

何だ…徐々に痛みが緩和されていく?


「椿、一体なにをしてるんだ…?」


問いかけに椿は答えない。

本当に何をしているんだと思ったと同時に頭の中に声が聞こえてきた。


『九条春斗』

「!」


椿じゃない、この声は青葉か!?

前よりもはっきりと聞こえてくる。


『最悪な事態になりましたね』

「最悪…?」

『…貴方にまだ話せなかった代償について関係します』


さっきいってた代償についてか。


『私が纏う緑色の蝶、『翠蝶(すいちょう)』は『赫蝶(かくちょう)』と1つになるように動く習性があります。原因は分かりませんが』

「1つに…」

『故に赫蝶を発見、あるいは赫蝶の力を使用した痕跡などがあれば一目散にそちらへ向かい1つになろうとします』


だからか。あのワームが赫蝶を使った瞬間、俺を狙うようになったのは。

そういえばあの時、椿が『狙われている気がします』って言ってたのはこういう理由だったのかもしれないな。


『…それで問題が1つになった時です。赫蝶は無限のエネルギーを吸収しますが、逆に翠蝶は無限のエネルギーを生成します』

「陰と陽みたいだな…でもいいことじゃないか?循環が出来上がるし」

『その循環に人間が耐えれるとでも?』

「!?」


やや食い気味に告げる青葉。


『例え貴方がお姉ちゃんの力を使えても、AGを使えても不死身ではないんですよ?』

「…」

『この際はっきりと言います。私もやりたくなかったのですがこちらにいる赫蝶一匹と翠蝶一匹で試してみましたが…融合した蝶が一匹ですら人は循環に耐えきれません。身体が衰弱していき、最終的に死にます』

「それが今俺の身体の中に居ると?」

『居るというより現在進行形で左腕に出来上がっています』


今の椿がしている事か。

原理はわからないが融合しているということはわかる。


「どのくらいもつ?」

『分かりません。どれほどの蝶が融合しているのかすらも』

「そうか」

『それと、前の返事についてなのですが』

「…悪いが縦に振れない」

『そうですか…』


少し遡る。

俺に向けられたメッセージについてだ。


『九条春斗、貴方にお願いがあります。私たち、ハイエンドの一員になってほしいのです』


『急な事で驚いていると思いますが無理もありません。ですが、私たちには時間がなく…この作戦を完璧に遂行するためには貴方の協力が必要不可欠です。私と椿お姉ちゃんの過去を唯一知っている人に』


『どうか、お願いします』


悪く言うが…俺に学園やみんなを裏切れと言われたんだ。

青葉の計画も気になるがその計画が世界の変革なら協力するわけにはいかない。

あの涙は流石に嘘じゃないと思っているが…流石に無理だ、信用できない。


『九条春斗』

「何だ」

『私たち…いえ、私は諦めません。キャッスルのコア区画にて貴方を待ちます』

「待て!俺の質問に…!」

『無理です。もうそろそろお姉ちゃんが帰ってきますので…それとそろそろ我々は動きます。心構えをしておいてください』


その声を最後に青葉の声は消滅した。

…結局聞けなかったな。青葉の作戦とかその辺の奴。


『…抑制完了しました。どうですか、春斗』


椿の声が聞こえてきた。

左腕にあった激痛はいつの間にか消えていて、自由が効くようになったがヒビは入ったままだった。


『春斗?』

「いや、何でもない。ありがとう椿」


お礼は言うが…ある意味、俺自身にタイムリミットが出来上がった。

どれほどもつかわからない俺の左腕、あるいは肉体。


「九条、大丈夫か?」

「大丈夫です…それとすみません、殴りかかってしまって」

「あぁ、気にするな。お前がそんなことをするやつじゃないくらい分かっている」


倒れた俺に近寄り、声をかけてきた御影先生。

本当にこの先生は…。


「――それと九条」

「はい」

「気が付いているな?」

「…はい」


空を見上げる。

綺麗な青空は、緑色に染まり…空に浮かぶキャッスルから緑色のエネルギーのオーラが現れ始めた。


「始めるかもしれないな」

「…明日」

「ん?」

「明日、攻撃が開始されるかもしれません」

「今日ではないのか?」

「…青葉曰くですが」

「…そうか」


御影先生と共に空を見上げる。

この戦い、一体どうなるんだろうか。

資料集更新

更新内容:翠蝶、赫蝶。


誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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