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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
84/122

第82話 不退転

「…本当かこれは」

「信頼出来るかどうかは分かりませんが、データはある方がいいかと思いまして共有しました」


翌日。

丁度学園自体は休みだったが、休めるはずもなかった。

急遽、専用機持ち全員が管制室に呼び出された。

理由は言うまでもない。

世界からの命令が来ていた。内容は…キャッスル攻略戦。

本作戦は全世界の戦力で一斉にキャッスルを攻撃し、内部に侵入。

その後臨機応変に行動し、キャッスルを完全に破壊し地面に叩き落とす。

これが今回の作戦なのだが…俺は知っている。

だからこそ全員にこの作戦のヤバさを伝えるために昨日確認したデータを共有した。

反応は…絶句。

あの御影先生ですらも驚きのあまり表情が若干歪みつつある。


「これは…流石に、ですわね」

「うん…」

「例え専用機持ちと言えど限度がある…!」


フレヤ、レベッカ、アナスタシアがやや打ちひしがれている。

そりゃそうだ…。


「…その九条君」

「はい」

「九条君は…その」

「どうして怯んでないのかってことですか?」

「は、はい…」


柊木先生がふと俺に質問する。

俺が怯まない理由か、まぁ昨日見たし何よりも。


「俺にはやらないといけないことがあるんです」

「やらないといけないことですか?」

「俺は…変革者に、青葉に聞かないといけないことがあるんです。そのためにもこんなところで怯むわけにはいきません」

「…」

「…教員が目の前に居る状態でこんな宣言するのもあれですが、もしこの作戦が実行されないのなら俺は単騎でもキャッスルに向かいます」

「はぁっ!?」

「何言ってるの春斗君!?」


葵と雪華さんが声を上げる。


「…正気か?」

「はい、正気です」


御影先生が俺の前に立ち、質問し始めた。

その眼光に睨まれても怯まない。


「即答か。一応聞くが何故だ?」

「先程も言った通り聞きたいことがあるんです。個人的に」

「自分の命を散らしてもか?」

「はい…!」

「…勇敢と無謀をはき違えるなよ小僧。嘘をついて、単独で皆の為のそんな行動は」

「別に勇敢に立ち向かうとかそういう気持ちはありませんよ。純粋に聞きたいことがあるだけです」

「馬鹿者め」

「初めていわれました」

「皆、遠慮して言わないだけだ」


そのひりつく空気の中、一人の少女が声を出した。


「あ、あの…!」

「水津?」


水津が挙手し、何か言いたげそうな反応を示している。


「どうしたの水津ちゃん?」

「もしかしたら…何だけど」


――攻略できるかもしれない。


「…へ?」


一瞬、聞き間違えかと思ったが違う。

攻略できるかもしれない?


「春斗から貰ったデータを元に色々と考えてみたんだけど…もしかしたらシールドを撃ち破ることも、攻撃を防ぐことも可能かもしれない…!」

「えっ!?」

「何だって!?」

「本当なの水津ちゃん!」

「う、うん…ちょっとこれを見てほしいの」


水津がビジョンシステムで俺が送ったキャッスルの見取り図と武装などのデータを表示する。


「えっと、このシールドの事なんだけど確かに強固。でも弱点は明確」

「弱点?」

「うん。このシールドは分厚いし多分だけど完全に撃ち破ることは不可能に近いけど、あくまでそれはレーザー兵器の場合。丁度いい例があって…アリーナのバリア」


アリーナのバリア。

確か遮断シールド。AGの戦闘を観戦するために作られたシールド。

AGの火力を抑えるために作られたものだが…それが?


「あのシールドは『物理』の攻撃には弱い。春斗はよく知ってると思う」

「え、俺?いや、物理で遮断シールドを斬った覚えなんて…」

「タイタン」

「…!」


そうか、タイタンか!

俺が初めてフレヤと決闘したときの襲撃者の事か!

思えばそうだ、あの長方形のブロックが遮断シールドを貫通して俺たちの前に現れたんだった。


「キャッスルのバリアのデータを見る限り、アリーナの遮断シールドよりも少し硬いくらい。だったらあのタイタンが襲撃したときのブロックの速度以上が出せてそれを射出出来るものがあれば…」

「あのバリアを撃ち破れるってことか!?」

「うん…!」


流石、水津と言うべきか。

唯一生徒で拡張武装を作成できるからこその着眼点とも言えよう。


「水津、それは作成可能なのか?」

「はい。実は拡張武装というより元々のハイエンドに対抗するために新しい武装の開発をしていて…」

「ハイエンドに対する武装…お姉ちゃん、知らなかったな?」

「ご、ごめん」

「責めたわけじゃないのよ、でも感慨深くてね」

「?」


何故そのタイミングで雪華さんは俺を見る?


「許可云々は後でいい、それでその武装は」

「これです」


そういい水津は新しい画面に切り替えると、黒く光り、光沢が反射し、それは姿を見せた。

ロングバレルで滅茶滅茶大きい迫撃砲のようなものが映る。


「対ハイエンド用質量投射砲、名前は…まだない」

「すっげぇ…」


映像だが、迫力が直に伝わってくる。


「これを使えばバリアは撃ち破れる、ということですの?」

「恐らく。でももう少し調整する、撃ち破れるという確実性を上げるために」

「となればバリアは何とかなるが…あのレーザーはどうする」

「あれは拡張武装『ミストバスター』のシールドを応用した物を作る」

「あの大型シールドをか?」

「うん。まだ完成図とかはないけど元々作ってた失敗作を応用してみる」

「となれば今できることは水津の開発を最優先だな」

「べ、別に最優先じゃなくてもいい…です」

「いや作戦としても相手に大打撃を与えられるのは水津のみだ。自信を持て」

「は、はい…!」

「では水津は武装の作成を最優先、九条と雪華は水津の補助を」

「はい!」

「承知いたしました」

「残りの専用機持ちは解散だ、だがいつでも出れるように心構えはしておけよ」

「「「「「はい!」」」」」


誰も諦めることはなかった。

抗うために、勝つために。


◇◇◇


御影先生に言われた通り、俺と水津、そして雪華さんの3人でその武装が保管されている収容区画に歩いていく。


「前から思ってたけど水津って結構行動力あるよな」

「そ、そんなこと…ない」

「いやある方だぞ?ハイエンドに対抗するためにあんな迫撃砲みたいなのを直ぐに作る人なんてそうそう居ないし」

「…だって」

「?」

「春斗が…」

「す、すまん水津聞き取れなかっむぐっ!?」

「はーいそこまで」


何かを察した雪華は人差し指で春斗の口を閉じた。


「そこはちゃんと聞いてないとダメでしょ?」

「むご…」

「それに聞きなおしちゃだめだと思うな」

「?」


口を塞いだまま雪華は水津に近づき問いかける。


「…春斗君を守りたかったんだよね?」

「…うん」


予想通りだったようだ。

現在ハイエンドと最も多く戦っているのは九条春斗。

必然的にハイエンドとの遭遇率や戦闘率も高く、その分春斗にも負傷や外傷も増える。

それを極限に減らすためには守ることも大切だが、春斗は一人だけ守られるのは嫌だと水津は知っている。となれば即殲滅の方が春斗の傷を増やしづらい。

そう考えた水津は対ハイエンド用の武装を作り上げたのだ。


「…」


当の本人はそれをしらず、今だ雪華に口を塞がれていることを不服そうに見ている。

最初は口元を塞いでいたのは人差し指だけだったが、いつの間にか片手で覆っていた。


「もごごっ」

特別意訳:『雪華さん』


「何?」


「もごごごごごごご」

特別意訳:『解放してください』


「ヤダ」


「もごっ!?」

特別意訳:『何でぇ!?』


「お、お姉ちゃん…春斗が可哀そう」

「それもそうね」


水津の助けの元、春斗は口を解放された。


「ぷはぁっ!?な、なんで鼻も塞いだんですか!?」

「え~っ?私の妹に無粋な事を聞いたからかな」

「えぇ…?」

「と、とにかく…いこ?」


コツコツと足音を鳴らして、歩いて行っていると壁が広がった。


「え、行き止まり?」

「ううん」


春斗が行き止まりだと思ったが、水津は近くにあったコンソールに学生証をかざすと壁が横に動き始めた。


「扉なのか…」

「うん…ここは学園の収容区画だから色々なものがある。盗まれたらマズい物も」

「だから春斗君、盗んじゃだめよ?」

「俺を何だと思われてるんですか、何も盗みませんよ…」

「「…」」


春斗の『何も盗みませんよ』と言う単語に反応し、水津と雪華の目はジトーっとなり春斗を見る。


(乙女の心泥棒なのにねぇ…?)

(女たらし…)


心の声は何も盗まないという無自覚唐変木乙女の心怪盗に対する文句ばかりだった。


「な、何ですか?」

「べっつにぃ?」

「…何でもない」

「???」


春斗は頭の上に疑問符を浮かべながら首を傾げた。

その状態のまま3人は歩いていき、水津が使っている区画にたどり着いた。


「ここ?」

「うん…」


水津はまたコンソールに学生証をかざして、表示されたディスプレイにパスワードを入力する。

すると、ガコンと鍵が開いた音が鳴り扉が開かれる。

その先には…。


「お、おぉぉぉ…!」

「これを水津ちゃんが、ねぇ」


先程の画像で見た迫撃砲が照明に照らされ、鎮座していた。

画像で見た時よりも迫力が凄く、春斗は目を輝かせている。

戦場で戦う少年とも言え、こういうかっこいい武装には目を輝かせてしまう。そういう男子らしいところがあるということを忘れてはいけない。


「あ、そういえば…開発なら整備室じゃないのか?」

「ううん、実は学園側に…これを申請して貰ったの」

「?」


水津はやや恥ずかし気に一枚の紙を見せた。


「AG武装開発特許申請書?」

「うん。えっと…春斗、わかる?」

「す、すまん…その辺は分からない」

「簡単に言うと、水津ちゃんは企業や開発部門関係なしでAGに関する武装を作っていいって事」

「へぇ、凄いな水津!まさか企業関係なしで…え?企業関係なし?」

「うん」

「し、申請書とか必要だよなアレ?」

「うん」

「…ってことは水津だけでAGの武装を作れるほどの技量やら何やらがあるって事?」

「うん。あ、でも私が作ったものはIGD学園開発元になる」

「わぁ…すごぉい…って」


――えぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!??!?!!?!


この区画に男の驚きの声が響いた。

AG武装開発特許申請書。

本来、この特許はAGの武装を作成するために企業や開発部門が必要とする書類。

それ相応の技量や技術、知識がなければその申請書は通ることはない。

それもそうだ。無法に作られた武装関係は銃刀法違反になりえないし、何より危険が伴い死者が出てしまう可能性がある。

つまり、この桐ケ谷水津は…その企業や開発部門に匹敵する技量、技術、知識を一人で持っているハイパー凄い学生なのだ。


「水津」

「うん…?」

「天才?」

「えっと…」

「そう!私の妹の水津ちゃんは天才!秀才!かわいい!ここは1つお姉ちゃんが褒めてあげよう~、よーしよしよし!」

「あっ…頭撫でないで…」


雪華に頭を撫でられたじたじになる水津。


「水津製の武装か…」


その間、春斗は水津が作り上げる武装について考えていた。


(水津の武装って言ったら拡張武装であるミストバスターのイメージがあるな。ミストバスターと言ったら)


頭に思い浮かべるミストバスター。


ーーギャルルルルルッ!!


刃の回転する音と共に真っ二つに切られるAG。


――ドゴォォォォォン!!


パイルバンカーで胴体に風穴を開けられるAG。


ーーバガァァァァンッ!!


水蒸気爆破型多段ミサイルにズタボロにされるAG。

とこれらの情報が春斗のイメージの中で繰り広げられた。


(…思えば高火力な武装しか見たことないな)


そう思いながら春斗は目の前に広がる迫撃砲のようなものを見る。


(水津製の武装って…もしかしてヤバい?)


すこし身体をブルッと震わせる春斗。

水津は比較的大人しい子ではあるが、開発する武装が…はっきり言うと相手をぶっ壊すような高火力武装が多い。


「春斗?」

「な、何だ!?てか、何があった!?」


春斗が考え込んでいると水津が話しかけ、少し驚き春斗は水津を見るが…水津の髪が少しぼさぼさになっていた。


「いっぱい撫でられた」

「そ、そうか…」

「お姉ちゃんの手が止まらなかったわ…もしかして封印されし右腕が」

「なでなでで解放される右腕まぁまぁ嫌じゃないですか?」

「え?なでなでしたいという欲望を封印した右腕」

「…ちょこっと納得しかけました」


そうして3人は軽く雑談を交わし、早速この迫撃砲の調整に入った。


◇◇◇


「春斗、マニピュレーターアーム起動しておいて欲しい…」

「了解、えっと…こうか」

「春斗君、稼働部位のチェックしたいから観測キットをちょうだい?」

「はーい!」


水津曰く殆どは完成済みで残りは稼働チェック、出力調整、その他もろもろらしい。

こんなバカでかいのを三人で出来るわけないだろとは思っていたが…元は水津が頑張ってくれたからだろうな。

マジで感謝。

観測キットを雪華さんに渡して俺は弾丸の設計と作成。

とは言ってもそんなに難しいことじゃない。殆どは水津の設計図をみながらやればいい。

…にしても本当にデカいな、この弾丸。


(300㎝質量弾…3mの弾丸とか食らいたくねぇ)


人間に向かって打ったら人体丸ごと無くなるな、ぐちゃっと。

そう考えると恐ろしい。例えAGを装着していてもだ。


「…」


青葉。ずっと考えている。

…あのメッセージ。


(とてもじゃないが正気とは思えない…)


俺だけに向けられたあのメッセージ。

恐らく、内容は本当なんだろう。だが、それだと色々引っ掛かる。

…。


(いや今は考えるな、きちんと正面で会った時に聞くしかない)


静かに弾丸の作成に戻る。


「春斗、どう?」

「ん?作成はしているがこんな感じでいいのか?」

「ばっちり。でも…」

「でも…どうしたんだ?」

「今、砲撃の詳しい調整が終わったんだけど…最大の欠点が見つかった」

「最大の欠点?」


といい、水津は俺の隣に座りビジョンシステムで何かを表示した。


「…これは?」

「データを元にバリアを貫けるように出力を上げた数値、それで…ここ」


水津が指をさす。そこは銃身のバレルの位置だ。


「ここがどうしたんだ?」

「出力を上げた結果で…自動ロックオンが使えない」

「え?」

「本当は自動ロックオンも同時に搭載したかったけど…出力の調整で自動ロックオンその物が使えない、そこまで電力を回しきれなかった。こうなると手動での射撃しか出来ない」


手動での射撃。もはや誰でも撃てるような代物ではないってことか。


「そうか手動…となると射撃が出来るやつにこれを撃ってもらうしかないってことか」

「うん…」


そこへ。


「話は聞かせてもらいましたわ」


金髪の髪を靡かせた少女が現れた。


「フレヤ!」

「どうしたここに…?」


驚いていると、視界の端で雪華さんがこちらを向いてピースサインをしている。

雪華さんがフレヤを呼んだんだな。


「長距離狙撃とあれば私の得意分野ですわ。この狙撃、任せてくれませんか?」

「う、うん…そっかフレヤの機体は長距離狙撃型。なら…!」

「み、水津さん?」


水津が何かを思いついたのかフレヤの手を握り迫撃砲の方へ歩いていった。


「…フレヤのアビリティのアクセラレータにこの迫撃砲の出力を乗せれば…うん、行ける!フレヤ、アクセラレータの出力データって貰えないかな」

「勿論です。お友達ですもの、共に手を取り合いましょう?」


本当に仲良くなったな、皆。

初めて会った時とは大違いだ。

別にみんなの親ってわけじゃないけど、少し嬉しいな。


「春斗君」

「はい?」

「君もあの子たちの仲間であり、友達なんだからね?」


そう、合ってくれると嬉しい。

それからあの迫撃砲はフレアのアクセラレータに合う形に改良することになり、それに続いてアイヴィー、葵、レベッカ、アナスタシアが区画に来て結局専用機持ち全員で水津を中心とした開発と調整を行うことになった。


「水津さん、これでどうです?」

「もう少し…えっと、アイヴィーさん。そこのデータスキャナーを取ってもらってもいい…?」

「アイヴィーでいい。これか?」

「うん…!」

「うんうん!お姉ちゃん、嬉しいな。水津ちゃんがこんなにも笑えるようになって…よーし!私ももう少し頑張っちゃお!」


「300㎝質量弾…これはAGじゃ使用できないね」

「あぁ。レオンのパンツァーカノーネでもこの大きさは撃てん、だがこれくらいの質量があればバリアは貫通できるという事。水津、あと何発必要だ?」

「現時点は試験用であと3発。本格的に作成するときは…もう少し作るかも」

「分かった、春斗。空薬莢を渡してくれ」

「わかった」

「なら僕はアームで操作するね」

「春斗、弾頭の作成は」

「俺と葵でやるぞ、手伝ってくれるか?」

「勿論だ!」


これから戦い赴くヴァルキリーたちは互いに互いを支え合う。


「青春、ですね」

「そうだな」

「…作戦は成功出来るでしょうか」

「出来るはずだ。それに私たち教員はは生徒たちを支えつつ導く存在だ、アイツらを支えないとな」

「はい…!」


それを陰でこっそり見て居た教師たちもまた戦士として見守っていた。


『御影、聞こえる?』

「あぁ、どうした吾郷」

『こっちも色々と準備を進めているよー、それにしてもそっちの学生は凄いね…何というか時代を感じるよ』

「ババ臭いぞ」

『…ま、いっか。また連絡したいことがあったら言って吾郷技研も勢力を上げて頑張るから!』

「あぁ…頼むぞ」


変革を止める為に。

今の世界を守るために。

皆、立ち上がったのだ。誰一人として諦めずに。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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