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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
82/122

第80話 椿が咲き、散った理由を

景色が変わり、次に広がったのは…。


「…ここかよ」


滅茶苦茶見覚えがある施設が目の前にある。

アレだ、あの実験施設。

もうぶっ壊したくてたまらない。こんなゴミみてぇな施設。

人様の命を何だと思っているんだ。ゴミ共め…。


「んで二人は、そこか」


正面から見たらただの病院にしか見えないが、二人が居る方向を見る。

裏口みたいな方へ目を向ける。


「…」


頑丈そうな分厚い扉が開き、様々な研究者の奴らが二人の少女を出迎えて拍手している。

最も、その拍手が少女二人に向けられたものとは思えないがな。

十中八九、新しいモルモットが来たみたいな喜びの拍手だろう。

あぁ…殺してぇ…!!


「いい方向に持っていくなら…この子たち二人を逃がすのが賢明か」


周りを見ると丁度いいところにメスを持っている奴がいた。

ソイツの手をへし折りメスを手に取る。確かメスって市販の包丁以上の切れ味を持つって聞く。


「!!」


そして俺は拍手喝采している研究者たち全員の首元にメスを突き刺し、深々とねじ込んだ。

大量の血しぶきが俺を襲うが…どうでもいい!

こんなゴミ共にかける慈悲など…うん?


「コイツ、見覚えあるな」


懇切丁寧に殺しまわっていると見知った顔があった。

俺がIGD学園に入学する前、しつこく申請書を書かせて来た研究機関の奴らの中にコイツが居た。

…ということは。


「テメェ!!!」


ソイツの顔面を地面に叩きつけ、メスを突き刺し続ける。

あの研究機関って…ココだったんだな。

我ながら反吐が出る。

そうして俺は顔と腕を血で染め切った後、また男と女の心臓部にメスを突き刺し乱雑に壁に投げ飛ばす。


「椿、青葉…」


一軒家と同じように二人の拘束を引きちぎり、顔を見る。

本当に、酷い顔だ。

俺には理解できないくらい、とんでもないことをされていたんだな。

というか1つ疑問が湧いてきた。

俺を狙った研究機関がココの奴らと関係あるんだよな。

んで学園に居れば俺は狙われることはない。でもさ…京都の時に椿が俺を病院に連れてかれる前にIGD学園の宿泊施設に避難させたと言った。

ということは俺を避難させたのは椿だよな。

…じゃあ学園は一体何を。


「いや結論に至るのはまだ早い」


と考えているとまた衝撃波が飛んできた。

研究施設諸共空間が歪み、景色が変わる。


◇◇◆


「…!?」


今度の景色は…。


「うっ…!?」


目の前に広がった景色を見た瞬間、あまりにも悍ましく惨い状態で…吐き気がこみ上げてくる。

とてもじゃないが…見てられない。見たくない。

でも見なきゃだめだ。俺は…椿の過去を知らないといけないんだ。

俺は呼吸を整え、見る。


「…」


唇を噛み締め、目を逸らさない。

きちんと見る。

俺の目の前には。

激痛のあまり断末魔を上げてるかのように顔をゆがめ、そんなことも気にせず子供たちの肉体に薬品やら何やらを注入し、一部の子供は研究者に殴られていたりしている。

その中に椿と青葉らしき少女たちも居た。

…何なんだコイツら。

本当に、人の命を何だと思っているッ!!

ガリッと唇を噛み締め口から血が垂れてくるがそんなことどうでもいい。

…本当に可哀そうだ。子供なのに、これからの未来があるっていうのに。

身体中血だらけで、傷だらけで、あざだらけで、見たこともない色に変色している。


「…これが件の薬品か」


butterfly。

読んで字のごとく『蝶』。

赫蝶と青葉が纏う緑色の蝶はここでなったのか?

…待て。そういえば適合手術の成功例はないって話だ。じゃあこれは…この拷問は何なんだ?

時間や俺の知る限りの情報を考えるとまだ赫蝶は居ないはず。

ということは…これは適合手術がまだない頃の話?

この子供たちは成功例やありもしないゴールに向かって無慈悲に搾取されているだけなのか?

…。


「くッ!!」


俺は近くにあった様々な物を手に取る。

この際何でもいい!こいつらをぶっ殺せるなら!!


「死ねっ!!死ね死ね死ね!!!死ねッ!!!」


研究者たちを次々と殴り、突き刺し、抉り取り、引きちぎる。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


こんな奴が何で生きている?

何でこんな奴らに未来を潰されないといけない?

何で…椿と青葉は…!!


「はぁっ…はぁっ…!」


拷問部屋が子供たちだけではなく、研究者たちの肉片や繋がっていた部位や、血液が散乱する。

罪悪感もない。俺にあるのは怒りと殺意だ。


「…子供たち」


また椿と青葉の拘束を引きちぎり、他に捕まっていた子たちの拘束も引きちぎる。

怒りのあまり、気が狂いそうだ。


「…」


俺は子供たちが感じているのか分からないがみんなを抱き寄せた。

こんなの、見てられねぇよ…。

そしてぎゅっと抱きしめた後また衝撃波が放たれた。

拷問部屋諸共塵となっていき…景色が移り変わる。


◇◆◆


今度の景色は、椿一人しかいなかった。

青葉はいない。


「?」


俯き男の後ろを歩いて行っている椿。

拘束とかそういうのはついていない。どういうことだと思い、椿の様子を伺おうとした。


「!!!」


その顔を見て俺は…絶句した。

両目は深紅に染まり、瞳辺りに赤いヒビが出来ていて…頬を涙で濡らし、虚無を見て微笑んでいた。


「椿…」


こんな表情を見たことがないし、見たくもない。

一体何が?

俺は前を歩いていた男の書類を奪い取り確認する。


「『赫蝶ブラッド・バタフライ計画』…?」


赫蝶についての書類だ。


被検体『桐生椿』。年齢8歳。

薬品『butterfly』との適合率31%。これ以上の実験は意味を持たない為処分とする。

なお適合率は低くてもbutterflyに耐えることが出来たため、更にbutterflyを投与し、兵器として運用することとする。

念のため完全な服従をさせるために被検体『桐生青葉』を人質とし強制的に離れさせた。

これで椿を失ったという絶望感に打ちひしがれ、青葉は二度と逆らわなくなる。


「…。」


…。

…。

…。


書類作成者『桐生枯葉きりゅう こよう


「テメェ!!ふざけてんのか!!!」


怒りのまま男の首を掴み壁に叩きつける。

桐生…桐生だと!?

じゃあテメェは椿と青葉の父さんか何かか!?


「実の娘に…!!こんなことをするのか!!」


全身から力が湧き出る。

怒り。殺意。それらの感情が頭の中を支配する。


「ゴミがァァァァァ!!!」


怒りのままその男の顔面に拳を叩き込む。

そして…壁にヒビが入ったと同時に男の顔面は潰れた。


「はぁっ!はぁっ!!」


殺してもなお怒りは収まらない。

足りねぇよ…足りねぇよ!!


「あの時の…青葉の打ちひしがれていた理由はコレなんだな」


どんな手法を取ったのかは知らん。

聞きたくもないし、知りたくもない。

だが…。


『私の…せいだ…』


『私が…守れなかったから…!』


お前たちの手法は本当に効いたようだな。

…クズは普通じゃ考え付かないことをやってのけるよ。

そのままどっかで野垂れ死ねばいいのに。

と同時に衝撃波が飛んできた。


◆◆◆


恐らく最後の景色だ。

何というかそんな気がする。


「…本当に、蝶になったんだな」


最後の景色は、儚かった。

椿の身体から赫蝶たちが飛び出していき、椿の身体の半分以上は塵となっていた。

これが原因で椿は記憶を失い、赫蝶となってあのゼフィルスの時のように兵器として運用されたんだな。

…椿。

塵になりかけている椿の右手をそっと握る。


『どうだ、俺』

「…」

『酷く、惨く、悲しい過去だろう』

「何で俺がここに?」


俺の後ろに黒龍纏いをしている俺がいた。


『前の話を忘れたか?』

「そうだったな…」


俺が居るってことは俺の身体は椿に…赫蝶に奪われてしまったのか、黒龍となって。

一瞬の景色だったが俺の両腕に自壊の予兆が見えたと同時に鎖が飛び出して、そこで記憶は途切れている。

もう後悔とかどうでもいい。

ただ、悲しい。


『…眠るか?二度と目は覚めないが』

「…」

『悪いが俺の意識はもうじき消える。赫蝶たちや椿によってな』

「…」

『結局俺は守れず、死んで』

「違う」

『…何が違う?』


違う。俺には、分かる。


「まだ、終わってない」


俺はまだ死ねない。

俺はまだ生きたい。

椿と青葉を救いたい。


『だが何をする気だ?俺たちには何も』

「分かるんだ、椿の位置が正確に」

『…救いたいんだな?』

「あぁ」

『分かった。なら嫌でも救えよ?どれほどの茨の道でも』

「あぁ!」


黒龍纏いをしている俺が黒い塵となって俺の中に入った。

行くぞ、椿を助けるために。


◆◆◇


「…」


目を開ける。

そこには炎で燃え広がった赤い彼岸花の花畑と。


『―――』


鎖に巻きつけられた椿がいた。


「椿――」


次の瞬間。


『アァァァァァァァ!!!!』

「!!?」


椿の頬から血の涙が落ちたと同時に鎖が俺に向かって放たれる。

走りながら、躱す。


「椿…!」

『アァァァァァァァ!!青葉!青葉!!青葉ぁァァァ!!!』

「…お前も俺と同じだったんだな」


俺と同じ、守れなかったモノ。

でも…お前はまだ守れる、青葉を!

だから、こんなところで暴走するな!


「椿ッ!!」

『青葉!青葉!!青葉ァッ!!』


また鎖が放たれる。

回避は…。


(いや…回避はするな。あの鎖の攻撃は椿が守れなかったという自分へ対する無力感の攻撃。俺はそれを…!)


――受け止める!


無数の鎖が俺の身体を貫く。


「ぐうっ!?」


痛い。苦しい。辛い。

ぎちぎちと鎖と俺の肉体が擦れる音が聞こえてくる。


「はぁっ…椿!」


鎖に貫かれた状態で意識をなんとか失わない様に集中して、一歩踏み出す。

受け止めろ、椿の全てを。

悲しみを!怒りを!無力感を!


「うおぉぉぉぉぉ!!」


身体中から血液が吹き出ようとも関係ない!

椿の…為に!


『青葉!ごめんなさい!お姉ちゃんのせいで!お姉ちゃんのせいでぇぇぇぇ!!!』

「があっ!??」


一気に身体が重くなる。

あの時と同じだ、初めて椿を受け入れた時と同じ…いやそれ以上の重さが俺に圧し掛かる。

でも俺は、止まらん。


「つば、き!」


痛くても関係ない!

苦しくてもどうでもいい!

辛くても気にするな!

椿を兵器として運用した奴らよ。この子は、人だ。

自分の妹を守るために自分を犠牲にした女の子だ、兵器なんかじゃない。

俺は、尊敬する。後から気が付いたのではなく、気が付いたうえでの最善を尽くした椿を。

だからこそ


「お前を、全部を受け止める!」

『!!!』


また鎖が放たれる、それを!


「ぐぅっ!!?」


右腕で防ぐ。

右腕に鎖が突き刺さり、貫通し…動かなくなった。

右目にも鎖が薙ぎ払われ、何も見えなくなった。

それでも…!


「それでも、俺は!!」


動かなくなった右腕を前に出し、防ぎながら椿に向かって走る。

衝撃波が放たれようとも、鎖が放たれようとも、重力に押しつぶされそうになりそうでも、関係ない。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!」


血だらけのまま走り続け、椿の懐に入り…そして。

椿を。


――ぎゅっと抱きしめた。


「はぁはぁ…椿」

『―――』


右腕は鎖で貫かれピクリとも動かないので左腕を回す。

優しく、落ち着かせるように。


「大丈夫か?」

『は、ると…?』

「あぁ、九条春斗だ」

『わたしは…』

「見たよ、椿の過去を」


本当に惨くて悲しい物を。


『私は…まだ兵器じゃないですか?まだ青葉を救えますか?』

「お前はまだ兵器じゃない。俺と同じ、心は人間そのものだ。それに青葉は救える…絶対にな」

『春斗…!』


椿を縛っていた鎖が塵となって消えて、俺の身体に腕を回してきた。

頬をそって流れる血涙が透明な涙に変わる。


『ごめんなさい…私のせいで』

「いいよ。いつも助けてもらったしな…」

『本当に優しいんですね、春斗は』

「優しくないよ」

『いえ、唯一私を受け入れてくれたんですよ春斗は』


唯一、か。

…もしかして、適合手術というより赫蝶を使えるようになる条件は、この子を受け入れることじゃないかと思う。

椿の過去を受け止め、椿の願いを受け止め、椿の後悔を受け止める。

そういうのじゃないかって。


「椿」


今でも椿の過去を知っただけだ。気持ちを完全には理解できない。

…俺がやるべきことは決まってる。


『はい』

「絶対に助けるぞ、青葉を。俺も命をかけて助け出す」

『はい…私も、もう二度と失わない様に…!』


椿の腕によりいっそう力が入る。


――椿は優しく咲いた。


――桜の木と共に優しく咲き誇った。


――次来る夏へ供えるために。


――元気な鮮緑な青葉を迎え入れるために。


「さて、そろそろ目を覚ますか」

『あ、あの…』

「うん?」

『も、もう少しこのままで…』

「お、おう?」


で、出来れば身体中痛いから早めに目を覚ましたいと心の中で思った。


◇◇◇


「これって…!九条君のバイタルサインが急激に回復しています!」

「何!?」


丁度赤龍への攻撃を開始しようとしたタイミングで、春斗のバイタルサインが急激に回復していった。

脳波も、心拍数も元に戻るように。

そして。


ーーパァァァァッ…。


「…』


赤い龍は赤い蝶となっていく。龍を模していた形はやがて本来の姿を見せた。


「春斗!」


龍は人へと戻った。

有るべき姿へと返り咲いた。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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