第75話 探せ、二本目の道を
学園の剣道部が使う道場を一時的に借り、詩の舞を舞う。
爺さんの言った通り違和感がある。もしかしたらその違和感の先に俺の舞が見つかるかもしれないと思い、試しに舞ってみた。
「…!」
やっぱり違和感しかねぇ…ずっともやもやする。
根本の動きは焔舞に似ている。でも焔舞と違って詩の舞はこう…何だ?ガツンとした手ごたえがない。
…自分の為に完璧にしろ、か。
(…自分の為)
思えば、自分の為に行動したことってあったか…?
まぁいいや。とにかくここから先は俺自身で見つけろってことか。
でも、どこを変えればいいんだ?
詩の舞は刀身を左、右へと振り払い、上に切り上げてそのまま下へ振り下ろす。
そして振り下ろした刀身を右へと回しながら回転斬りをして…納刀。
短く、そして見れば普通の舞だが…舞ってる側としては短すぎて、何というか単調な動きと不満がありつつ、もっとあるだろうと違和感がある。
焔舞は切り上げた先が変わっている。上に切り上げ回転しつつ右斜め上、左斜め上と更に切り上げて右へと一閃。振り抜いた刀を自身の身体に近づけ、力強く突き、切り上げる。
これが母の焔舞。
母の力に合った舞だ。ここからは俺の推理になるが…母さんは『連撃』が武器だったのかもしれない。
俺よりも早く、俺よりも強く振るっていたのだろう。
…だが俺の武器はなんだ?
同じ刀で同じ型とはいえ、俺は連撃を戦いで用いない。
連撃をするときは焔舞を使うときだけだ。
「俺の武器は何なんだ…?」
真剣の刃先を眺め、一言。
俺は皆の武器を知っている。
フレヤなら高い狙撃精度と空間認識能力。
葵なら二本の刀による二刀流の斬撃。
アナスタシアなら迫撃砲を撃つ際の予測とナイフ。
レベッカなら数多の武装を用いた射撃と判断力。
水津なら薙刀と拡張武装の制圧。
雪華さんなら氷を操ったつかみどころのない攻撃。
アイヴィーなら聖剣を用いた騎士道。
…俺はなんだ?
赫蝶で使う皆の武装はいわば真似事。母の焔舞もそうだ。
俺の力は、何なんだ?
「…」
とりあえず、今日はこれくらいにしよう。
このまま続けても何か掴めるような気がしないし、何よりそろそろ剣道部や柔道部の人たちがくる。
撤収しよう。
すぐに片づけて寮へ向かう。
その道中、向かいながらもずっと考えていた。
俺の武器は何なんだと。
今までに言われたことを振り返る。
1つ、相手の動きを学び赫蝶を使って我がものとすること。
2つ、1つの技を極めたほうが強い。
3つ、赫蝶を使えること。
…こう振り返ると、俺自身の力って見て学ぶくらいしか見つからないな。
てか、これだと相手依存の力になってしまう。
それに1つの技を極めるといっても、大体は爺さんから習った奴で決め手は母さんの技だし…俺の力じゃない。
俺の武器は何処にあるんだ。
「いてっ」
考え込みすぎてよそ見していたら壁に顔面をぶつけた。
鼻辺りを摩りながら部屋に向かって歩いていく、といってももう目と鼻の先だけど。
学生証をドアにかざしてロックを解除し中に入る。
誰も居ない、当たり前だ。バッグを床に置いてベッドに制服のまま倒れる。
「はぁ…」
仰向けになり照明を眺める。
あー、このまま寝れたらよかったのに。考え込みすぎて寝れねぇ…。
何もしないのもあれだし、過去の俺の戦闘データでも見るか。何かしらヒントを得られるかもしれないし。
ビジョンシステムを立ち上げて俺の過去の実戦のデータを見る。
「…」
黒鉄、白鉄、焔の実戦データを1から最後まで確認するが、これといって何も…。
「…?」
ふと、思う。
己自身の決め手として使っていた技を。
俺の戦法は黒鉄、白鉄から連撃ではなく、一撃で倒しに行く一撃必殺の戦い方。
そして…今、思い出した。
俺は、焔を使うようになってからは母と同じ技を無意識に使っていた、それはもう無意識に。自分の特技、自分の技を頭から完全に切り離し、母と同じ様に有るべきだと考えていたのかもしれない。
俺の技。俺の本来の特技は…!
「椿、起きてるか?」
『はい、起きていましたよ。どうしました?』
「明日の訓練で試したいことがある、いいか?」
『試す…ですか?一体何を』
「取り戻す」
「俺の技を…!」
ーーー
翌日、戦闘訓練。
いつも通り赫蝶をフルで使う俺との合同訓練。
「本日は時雨、アレクサンダーがペアで九条と訓練だ。総員AGを装備しろ」
「「「はい!」」」
今日の対戦相手は葵とフレヤか。
なんだかんだ言ってこの二人は結構馬が合っているようで。レベッカとアナスタシア並みのコンビネーション力は無いがそれに近い物を持っている。
…二人そろって尖った部分があるからな。
「春斗?」
「今、何か失礼なことを考えませんでした?」
「…いや何でもないぞ」
何で分かるんだよ。
それはそうと焔、飛脚、スプライトを装備し、お互いに距離を取る。
『両者準備は良いか?』
「はい」
『大丈夫です』
『いつでも戦えますわ』
『では…始め!』
「椿!」
御影先生の合図が聞こえた瞬間、赫蝶を纏い葵と正面から衝突する。
「くっ!?」
「この感じ…なつかしいな!」
葵と刀を互いにぶつけ合い、火花を散らす。
そこへ。
レーザーが放たれる。
『私をお忘れになっては困りますわ!』
その声と共にビットとスターダストが俺に向かって放たれる。
葵との鍔迫り合いを無理やり終了させて、距離を取る。
『複製シールド!』
椿がシールドを展開し、レーザーを受け流してくれた。
「はぁっ!!」
「く…やるな…!!」
一瞬意識がフレヤの方に向いたが直ぐに葵に向き直る。
…二人のコンビネーションが良いと思う部分はココだろう。
お互いに尖った武器や戦い方がある。斬撃波、ビット、村雨と白露、スターダスト。
このお互いの尖ったところがピタリと合っているのだろう。
「それで…このコンビネーションかよ!」
葵の斬撃を受け流しつつ、篝火で反撃。
「甘いぞ!」
俺の篝火を受け止めたと同時に、もう一方の刀を振りかざしてくるが。
ガキィン!!
「なっ!?」
「それは、こっちのセリフだ!」
左手で魔剣を逆手持ちし、受け止める。
「…」
まだだ。
まだ、取り戻すな。
(取り戻すのはもう少し先だ…!)
◇◇◇
「…」
三人の戦いを眺める御影先生と柊木先生。
そして木手吾郷。
「うーん…やっぱり九条君一人にこの戦闘は難しいのでは」
「かもな。だが現状一番手ごたえのある訓練はこれしかない」
「全く!なんで訓練用AGを使ってくれないのさ!」
「あれじゃ弱すぎる」
「何だって!?」
「…ハイエンド並みの強さを持つ訓練機でなければダメだ」
「…アレね」
三人の大人は三人の勇士を見る。
すると。
『椿、やるぞ』
九条の声が聞こえてくる。
何らかの作戦なのか椿にそういったと同時に一気に距離を離す九条。
「九条君の作戦でしょうか?」
「…」
「何をする気かな?」
◇◇◇
俺の特技、己が武技。
距離を離し、地面に足を付けて篝火を納刀する。
左手で鞘を握り、構える。
『はぁっ!』
『貰いましたわ!』
ーー俺の武器は。
キィィィィィィン!!!
鞘から篝火の声が鳴り響く。
そして地面を蹴り飛ばすと同時に標的に捉えた二人に向かって抜刀。
『なっ!?』
『えっ!?』
取り戻した、俺の武技。
抜刀術。
黒鉄、白鉄の時に使っていた俺の特技。
俺の決め手になっていた技。
「行くぞ!」
抜刀した刀を再度鞘に納めて鞘を握る左手と柄を握る右手に力を込める。
予め話しておいた通り椿が篝火に集まっていく。
そして…フレヤ目掛けてインパクトブーストしながら縦に抜刀。
炎と共に赤い斬撃が放たれる。
『な、なんてパワーですの!?』
…焔舞は使う。
母の技だけど二度と使わないわけじゃない。
だが…ココからは俺の技で戦う。
俺の戦闘スタイルで!
「はぁっ!!」
抜刀したまま葵に斬りかかる。
「くっ!?」
鍔迫り合いになったと同時に上に刀を振り上げて葵の態勢を崩させたと同時に斜めに斬り払う。
「があっ!?」
『負けられませんわ!!』
フレヤのレーザーが飛んでくると予測して、回転斬りのモーションになるよう身体を捻りながらフレヤの方を見る。
やはりレーザーが放たれた。それを。
ーーガキィィン!!
レーザーを斬り、消したと同時に納刀。
先程と同じように両手に力を込めて…!!
「!!」
インパクトブーストしながらゼロ距離でフレヤ目掛けて横に抜刀。
回転斬りの応用で回転抜刀斬り。
炎と赤い斬撃が円を描くように広がる。
『きゃあっ!?』
『スプライト、ジェット機構破損』
「マジか!?」
やっぱりこの技だ。俺の戦術によく合う!
でもジェット機構を破壊するのは想定外!急いでフレヤを受け止める。
「すまん、やりすぎた!」
「だ、大丈夫ですわ…そ、その春斗さん」
「うん?」
「ち、近いです…」
「す、すまん!?」
二度目の謝罪。
緊急時とはいえ、こうガバッと抱きつくような形になってしまった。
『春斗?』
「ひっ!?」
葵からめちゃめちゃトーンの低い声が聞こえ、恐る恐る葵の方を見ると…何だろう。
見るだけで身の毛がよだつようなオーラを纏い、両目のハイライトがどっかに行ってしまっていた。
「ふ、フレヤ。とりあえず安全なところで降ろすぞ!」
「わ、分かりましたわ…でも」
「?」
「も、もう少しこのままでも」
『春斗?』
「ごめん俺が殺される、出来る限り最速で行く」
少し速度を上げて先生たちがいる辺りに降ろしてすぐさま元のエリアに戻った。
『春斗』
「な、なんでございましょうか」
『…その…後で私にもしろ』
「へ?」
『その!アレだ!後で私にも抱きつけ!』
「何言ってんのお前!?」
『は?』
「すみませんでした…」
ひとにらみで俺の身体は震えあがり、要求を飲まざる負えなかった。
「とにかくやるぞ!」
『あぁ、一刀蒼刃剣!!』
葵の連続斬りが飛んでくる。一度はその刀に負けたんだ。二度も負けるか!!
お互いに刀をぶつけ合う。
鋭い金属音が鳴り響くとともに火花が散る。
『強い…!』
「そっちもな…!」
押し押されを繰り返す。なら…!
「!」
葵の剣を横に流しつつ、胴目掛けて一閃。
だが交わされた。それを見越したうえで今度を突く。
それを葵が受け流したと同時に身体を捻りながら納刀。
「甘いぞ春斗!」
「残念だったな!甘いのは…」
納刀した所を葵は狙ってくるが、それも分かっている。
葵の斬撃を上に飛んで交わし、鞘を縦に構える。
「なっ!?」
「そっちだ!」
貯めて…放つ!渾身の一撃を!
「抜ッ刀!!」
俺の剣技は基本一撃必殺。
当たらなければ意味がない物だと思った。
だが、それが当たれば俺は強い!!
抜刀し上から下へ切り伏せる。
葵も蒼刃剣で受け止めるが。
『え、エネルギーが!?』
どうやらダメージを負いすぎてシールドエネルギーが先に底をついたらしい。
『飛脚、停止。流石です春斗』
「あぁ…だが」
『春斗?』
「これ…やばいな」
直ぐに地面に降りて焔を解除し、膝をつく。
「春斗!?どうしました?」
「体力の消費もそうだけど…想像以上に頭を使う…!相手の動きを先読みつつ次の行動を決めてたから、集中力と判断力に頭を使いすぎて頭いてぇ…!」
「…春斗」
「何?」
「なんというか…自分の身体の事も考えましょう」
「何も言えねぇよ…」
自分の身体の事を考えなさ過ぎて精神世界に足を踏み込んだくらいだしな。
…もう少し労わったほうがいいかと思った。
ーーー
『青葉…』
「分かってる!」
薄暗い部屋の中、青葉が何かの端末を弄っている。その画面にはおびただしい量の数列と何かの設計図が映し出されていた。
『これは、もはや手遅れなのでは』
「黙って!」
『…』
怒りのままに端末を操作するが…。
『Failure』
「…くっ!!」
端末に拳を叩きつける青葉。
『…青葉』
「分かってる…!」
『もう一度九条春斗に接触し、これまでの事と先の事を話すべきです』
「そう…だね」
そして青葉は付近にあった小さな入れ物に色々な物を詰め込んで歩き出す。
(…多分、これが最後のコンタクトになる)
(これを失敗すると…本当に終わってしまう)
(世界も、私も、お姉ちゃんも…!)
そして少女は走り出した。
月夜に照らされた空の下で。
だがその姿を、見ていた突風達。
「あの子ね」
「そうらしいぜ」
「ふーん?あの子がダーリンを狙ってるメス?」
「…あの子を捕まえるわよ、私達のために」
突風たちは動き出す。
己の欲望の為か、はたまた依頼の為か。
正体不明のまま。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




