第73話 平穏は何処へ
俺が三日間寝込み目覚めた後、AG隊から事情聴衆やハイエンドの情報について色々聞かれ、やっと暇が出来たのは大体2日後だった。
それで久々に食堂に行くと、いつもざわざわしていたが今日はいつも以上。
理由は、食堂に備え付けられたモニターを見ればわかるだろう。
今、モニターでニュースが放送されている。内容は…ハイエンドについてとこれからの世界の体制だ。
結果論としてはこのハイエンドという勢力を『全世界敵対勢力』とみなし、武力行使の元鎮圧することになった。
…一部の人の中には対話での対処を求めた人もいたが、対話しに行った者たちは誰一人として帰って来ていない。
この状況を見てもなお『対話を』なんていうやつは居る。勿論俺も言われた。
だからこう言い返した。
『じゃあ、アンタが行けよ』
こういった瞬間誰もが言葉を発さなくなった。
高校生の俺が言うのもあれかもしれないが、何考えてんだ?
自分の命は大切で他人の命は見殺しか?甘ったれんな。そもそも対話が出来たのなら世界敵対勢力とみなさねぇんだよ。
…失敬。
そんなわけで若干戦争が始まりそうなのは言うまでもない。
『こんなニュースばかりですね』
「…あぁ」
食堂の席で静かに食事をしながらモニターを見る俺と椿。
「仕方ないさ、今後の生活にも影響するし何よりも対抗できる戦力が現状AGのみだからな」
『…どうすればいいのでしょうか』
「今の俺たちは力を貯えることが大切だ。来るべき日に備えて」
実はアレから赫蝶のエネルギーの消費を抑えている。
自壊するんじゃないかって思うかもしれないが…左に緑色の蝶が居ると知った時からやや自壊が抑えられていて、身体にはヒビが出てこないし激痛に蝕まれることもない。
でも完全に起きないわけじゃないから時々はやらないといけないけど。
「春斗、隣いいか?」
「アイヴィ?別にいいが…」
モニターを見て居ると隣からアイヴィーが話しかけてきた。
「飯は?」
「もう既に食べた後だ。だが…ニュースの事が気になって」
「だな」
「…自壊は大丈夫なのか?」
「あぁ、予兆もないし御影先生が組んでくれた訓練のお陰でな」
「アレか…」
御影先生が組んだ訓練のメニュー。
今の学園は生徒たちの戦う力を身に着けることに力を入れている。となればより強い者と戦う力を付けるのがベストだと判断された。
だが学園に居る者で強い者は限られている。それにわざわざAG行動隊に来てもらうのにもリスクと学園以外の防衛力がやや下がる為、様々なところで影響する。
そこで御影先生が目を付けたのは、俺の赫蝶の力だ。
御影先生と雪華さん曰く。
『赫蝶を纏った春斗君は…正直、私でも勝てるか分からないわ。君は自分自身がどれほど脅威に気づいていないでしょ?』
『…もし九条が敵だったのなら私は出来ることなら戦いは避ける』
てなわけで焔と赫蝶のエネルギーをフルに使った俺を敵と見なし、専用機持ち及び生徒全員での合同訓練が行われるようになった。
「実際、春斗の戦闘センスはずば抜けているからな。訓練の質はかなりいいが…毎回死ぬ気で戦わないといけない」
「うーん、俺からしたらどうなんだろうって感じだぞ」
「普通に考えてみろ。AGを使い、赫蝶を纏い、相手の動きを学ぶ敵を」
「…出来れば戦いたくないかな」
「それが訓練をしている時の皆の気持ちだ」
「謝ってきた方がいい?」
「いやそのままでいい。先程も言ったが質はかなりいいし、連携も取りやすくなる。それに春斗も全員の動きを学べるだろ?だから…そのなんだ?いっせき…」
「一石二鳥」
「それだ」
アイヴィーのいう通り俺も学べている。
今までもAG同士の一対一や二対二とかは訓練でもあったし、慣れたものだったが…今の敵対勢力はAGではない。もっとヤバい物だ。
だからこそいつもの訓練よりも質の良い訓練が必要。だから俺対多数みたいなのが出来上がったんだろう。
「…そういえば春斗」
「うん?」
「お前は、この学園を卒業したらどうするんだ?」
「へ?」
「きゅ、急にすまない。少し気になったんだ」
俺の…将来か。
思えば一度も考えたことはないな。
あ、小学生の頃は…父さんと母さんと同じように科学者になりたいと考えていた時期もあったが、失ってからは何一つ考えていない。
「悪い、答えられない」
「そうか…」
「一番答えたいのは俺じゃなくて今の4年生の先輩たちだと思うぞ」
今の4年生の先輩たちは卒業が近づいてきている。
だが…そうも言ってられない。ハイエンドの出現によりこれからどうなっていくのかが分からないからな。
「これからどうなるんだろうな」
「誰も分からないと思う」
「そうだな。うし、教室に戻るか」
「あぁ」
空になったトレーを持って返却口に戻し、教室に向かって歩いて行く。
(将来か)
何になるんだろうな、俺は。
それから授業はいつも通り終わり、放課後。
アリーナにて戦闘訓練中。
「はぁっ!!」
『春斗後ろです!』
「あいよっ!!」
今日は相手が多人数の場合の戦闘を行っている。
あのハイエンドたちが多数で攻め込んでくる可能性も捨てきれないし、今の俺に必要なものは体力と様々なことに臨機応変に対応できる判断力、椿との連携、そして反射神経。
今までハイエンドと2回戦ってきているからこそ理解しているのだが、アイツらのパワーや速度はヤバい。普通に喰らったら致命傷にもなりかねない程のダメージを受ける。
現にワームから出てきたやつに殺されかけたしな。
「魔剣!」
篝火を左手で納刀しつつ、右手に魔剣を出現させ斬撃を放つ。
「甘い!」
他の機体が俺に詰めてくるが魔剣を投げ飛ばし、剣が突き刺さると同時に顔面を握りしめて地面叩き落とす。
うぬぼれているかもしれないが、俺なりにも戦闘センスが上がっている気がする。
『凄いですね、色々と』
「まぁ…な!」
ふぅっと息を吐き、精神統一。
(焔舞!)
地面を蹴り上げ、一機一機をロックオンするように捕える。
左、右と斬り、上に切り上げながら次の機体を捉え、ターンを描くように近づき右斜め上、左斜め上、右へ一閃。
そして…。
「椿!押せ!!」
『はい!!』
突きの構えをし、インパクトブーストしながら貫く。
インパクトブーストだけではなく、椿の…赫蝶の力で後ろから押してもらい駆ける。
「うぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁ!!!!」
貫く為に伸ばした右腕をそのまま薙ぎ払うかのように降る。
「はぁ…はぁ…き、キツ!」
『だ、大丈夫ですか?』
「あぁ…」
実は前々から椿と話し合って考えていたことがあった。
俺の必殺技というなの母の技の複製『焔舞』。
これが本来の技なのかすらわからない技だが、何とか昇華させたかった俺は焔舞に赫蝶の力を上乗せするという方法を取ってみた。
すると威力などは上がったが…それ以上に変わったのは操作性の難易度の上昇と俺の身体に掛かる負荷が上がった。
例え身体がシールドエネルギーに守られているとはいえ、掛かる負荷は掛かる。
元々暁光来光状態で赫蝶の力を乗せようとしたが…無理だった。
一度試してみたが出力が高すぎてシールド諸共、俺の身体がズタズタになりかけた。
「…」
肉体の強化…というより筋トレとかで身体を鍛えようとしたが、計算上無理だと水津から言われた。
『これは…多分というより人間には無理だと思う』
『人間には?』
『春斗も含めて…とてもじゃないけどAGよりも操縦者がもたない。計算上…生身でマッハ2の圧力を受けることになる』
『マッハ2っていうと戦闘機並みか。それの圧を受けるってなると』
『うん、死んじゃう』
『うーん…いい線だと思ったんだけどな』
流石にこれは使わない。最終手段にしてはあまりにもデメリットがデカすぎる。
それと水津から1つ、提案されたことがある。
それは…俺の『拡張武装』についてだ。
俺の機体には拡張武装がない。白鉄に拡張パーツはあったんだがな。
正直良いなとは思ったが製作元の吾郷技研の吾郷さんに相談してみたんだが…。
『はっきり言うと無理』
『無理なんですか?』
『うん。いや出来ないこともないけど…君の場合は御影から言われたと思うけど君のお母さんと同じように一本の武具を極めたほうがいい。勿論、焔と君の赫蝶を用いた戦闘データを元にした上での答えだ。だからこそ無理というより止めた方がいいって感じかな』
『そうなんですね…ありがとうございます』
ということになった。
俺は一本の道を極めたほうがいいと言われた。そこまでは良いんだが…1つ、俺の悩みがある。
今の俺は母の技を使っている、模倣のね。
でも…それだけでいいのかって。
刀の振り方や剣技は人それぞれなのは分かる。でも今の俺が振るっているのは母の剣技だ、俺のじゃない。
それに対策された場合一本の技だけじゃ足りないと思っている。
勿論、御影先生と吾郷さんから言われたことは知っている。1つの技を極めたほうがいいのも…だとしても、俺独自の剣技が必要だ。
篝火を用いた俺の剣技を。
俺の二本目の技を。
『春斗?』
「あぁ、すまんぼーっとしてた。さ、続きだ!」
『はい、サポートは任せてください!』
魔剣を解除し、篝火を構える。
「…来いッ!!」
俺はまた数多のAGに立ち向かった。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




